お姫様


私はずっとあの子のことが
気になっている。
いつも可愛い服を着て、
きれいにお化粧をしている。
声も仕種も可愛いし、
まるでお伽の国のお姫様だ。

あの子と知り合いになりたい。
そして、お話をしてみたい。
一緒に食事をしてから、
手を繋いでお散歩したい。
そして、ずっと一緒にいたい。

思い切って、あの子に声をかけた。
そしたら、友達になってくれた。
そして、一緒にランチを食べ、
手を繋いでお買い物に行ってくれた。

それから毎日デートした。
一緒に食事をして、
一緒に買い物をして、
ファッションの話をした。

周りの人はみな、
あの子を見つめていく。
そんなあの子と一緒にいる自分を
誇らしく思った。
なんだか自分が
偉くなったような気がした。

あの子はいつも、
ファッションに余念がなかった。
新しい服やバッグを追い求め、
最新の髪型や化粧品に夢中だった。

あの子と過ごす毎日は楽しかった。
でも、ある日、ふと気が付いた。
あの子にとって大切なのは、
いつも自分が可愛いことなんだ。
みんなにかわいいと言われたい。
ただそれだけなんだ。

あの子にとって、私は単なる友達。
いつもあの子を可愛いと言うから、
これまで私と付き合ってくれた。

あの子はまだ、夢を見ている。
お伽の国のお姫様だ。
今もまだ、夢の世界で眠っている。

私はあの子を
眠りから覚ますことが出来なかった。

さようなら、眠れる森のお姫様。

いつかあの子に、
眠りを覚ましてくれる王子様が
現れますように。



YA_L   HOUSE


2018.10.9 Shotaro

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