洗車スポンジ濾材はこうして生まれた(2005/2/28)


 洗車スポンジ濾材が登場したきっかけは、過去の記事にも書いたが、もう少し補足しよう。

 始まりは、1999/7/30 東京ビックサイトの下水道展に行ったことだ。当時、最もらしい理屈をつけた濾材があふれ、ユーザーがそれに振り回されている状況に疑問を持っていた私は、ここでいろんな専門メーカの話を聞いて、濾材の基本的な性質を知ることが出来、これをヒントに家庭用濾材の理想特性について考察できた。そして、その条件を満足するものが無いか改めて調べてみた。
 ところが、アクア用に売られている濾材は業務用の流用が多く、適当なものが無かった。そこで、流用できそうなものを探し始めたのだ。市販の濾材は一般に高価だったから、「安く、手軽に使える物」という思いは、最初からあった。

 私が最初に注目したのが台所にある食器洗い用のスポンジだった。濾材を長期間使うには、ある程度の通水を確保して目詰まりを防がなければならない。そこで、通水性を調べるため、水道の蛇口のすぐ下に配置して水を流してみた。ところが、このスポンジは気泡が細かすぎて※、水が中を通りにくい。大半の水が表面を伝わって落ちてしまった。

※目の細かいスポンジは気泡の独立性が高く、水が流れにくい。

 台所には、コゲ付いた汚れ落し用の目の粗いスポンジもあった。これも同様にテストしたところ、今度は抵抗なく水が貫通した(これが後に、プレフィルタの選定基準になった)。水がよく通るということは、気孔率が大きい(表面積が小さい)ことを意味し、問題のように思えた。また、最近の台所用のスポンジには、「抗菌」の文字が目につき、これを濾材として使うことに抵抗があった。

 そんなとき、たまたまカーシャンプーのオマケに付いてきた黄色いスポンジが余っているのを思い出した。早速実験してみたところ、良い具合に(主観だが)水が貫通した。気泡の細かさは台所のスポンジと同じくらいなのに、なぜだろう?
 その秘密は、大小の気泡が混ざった構造にあるようだった。すなわち、小さい気泡だけでは水が通りにくいが、大きい気泡が抵抗を小さくして水の通りを良くしている。大きい気泡は詰まりにくく、長期間、濾過面積として機能すると考えられる。これは、少ない量で多くの表面積がほしい家庭用濾過装置に適している。

 しかし、これをそのまま使えばウールマットのようにすぐ目詰まりを起こすことは容易に想像できた。そこで、適当なサイズに角切りしたのである。こうして、「洗車スポンジ濾材」は誕生した。

 スポンジ濾材を検討しているとき、ADAから同様の濾材が市販されているのを知った。この濾材ももちろんいい物だが、私の見立てでは気泡のサイズが大きすぎ、どちらかといえば、プレフィルタ用に近いし、価格も問題だった。

 ただ、当初は私も「スポンジ」というイメージから来る安っぽさと脆さから、あまり期待していなかった。この時点で、洗車スポンジが濾材に使えると主張しても、「ふーん、そうかもしれないね」で終わっていただろう。当時、一般に入手できる角切りしたスポンジ濾材といえばADAのバイオキューブくらいしかなかったし、スポンジを濾材として積極的に使おうと考える人も少なかったのだ。

 ところが、実際使ってみるとなかなか具合がよろしい。亜硝酸の濃度はわずか2週間で下がり、従来言われていた1ヶ月という目安が半分に短縮された。それに、これまで確認が難しかったバクテリアの定着度合いが、臭いと色の変化ではっきりと確認できるのは、新しい発見だった。これは、黒っぽいスポンジ濾材を使っていては、決してわからないことである。こういうことは、実際やってみることが重要なのだ※。
 それから、本格的に耐久性試験、最適なカットサイズの検討、長期運用試験を経て、濾材として十分使えることを実証し、現在に至る。

※通常、新しいアイデアが世に出て広まると、それを妬んで根拠のない批判をしたり、「似たようなものが、過去にもあった」「私は、前からそれを考えていた」と主張する人が大勢現れる。前から知っていたのなら、なぜ行動しなかったのだろう。


 当サイトでは、洗車スポンジ濾材のことを、しばらくの間「オリジナル濾材」と書いてきた。10mm程度に角切りカットしたスポンジ濾材の商品は、ADAから既に出ていたから、それ自体はオリジナルではない。では何がオリジナルかといえば、「洗車用のスポンジが、濾材として使えることを見いだした」ことだけである。

 この濾材の最大のメリットは、圧倒的な低コストにある。これだけ普及したのも、安いからだろう。目下の欠点は、カットに手間がかかりすぎる点だ。ただ、アクアリウムは趣味なのだから、自分の水槽で使う最も重要な部分を、せっせと手作りするのも、愛着が沸いていいかもしれない。





スポンジ濾材の寿命は永遠か〜その2(2005/1/25)

前回の記事はこちら

 洗車スポンジ濾材が世の中に普及するにつれ、寿命を気にする声もちらほら聞かれるようになった。実際、ウレタン系のスポンジは屋外に放置しておくと、1年くらいでボロボロになってしまう。この様子から「スポンジ濾材は寿命が短い」と誤解する人が多いようだ。

 スポンジ濾材を使って水槽を立ち上げると、スポンジが褐色に色づくが、この現象について、劣化が関係しているか、考察してみよう。スポンジ濾材が褐色に色づくことについて考えられる仮説をまとめると、次のようだ。

 (1)微生物が持つ固有の色による着色
 (2)化学的な分解(加水分解)
 (3)紫外線による酸化
 (4)微生物による生分解

 下の写真は、これを検証するため、2年前にテストした結果である。



 左はポリエーテル系スポンジを裁断してビニールに入れ、冷暗所に保存しておいた新品。中央は、透明の容器に水道水と一緒に入れ、蛍光灯が当たる場所に3週間さらしておいたもの、右は、空気中の蛍光灯が当たる場所に放置しておいたものだ。中央と右のサンプルは隣接して置いたものなので、条件は水浸せきの有無だけと考えて良い。3週間という時間は、水槽の中で普通に使ってハッキリと色づきを確認できる時間を想定している。

 空気中に置いたものは、かなり変色しているが、水浸せきしたものは、新品とまったく区別が付かない。強度については、どちらも明らかな劣化は認められなかった。

 この実験によると、光源下に置いたスポンジが色づいたのは、(3)が原因とみて間違いないだろう。これは、低反発枕が褐色になってしまう現象と同じである。たとえ光があっても、水中にあれば全く変色しないことからすると、濾材に使ったスポンジが着色するのは、やはり(1)によるものと見て間違いなさそうである。これは、塩水中で立ち上げたスポンジ濾材が、全く着色しなかった事実も裏付けている。

 (2)は濾材の寿命に最も関係するファクターである。空気中では一般に(2)と(3)が同時進行し、ウレタン系のスポンジは屋外に放置しておくと、1年くらいでボロボロになってしまう。しかし、水中に置いた場合は、3年以上問題なく使えた実績があるし※1、劣化の速度は、空気中にある場合に比べると、かなり遅いようだ。それは、水中では水は多量にあっても、劣化を促進する要因、つまり酸素や紫外線が少ないためと推測される。

 (4)について、スポンジは有機物だから、これを分解して炭素源にする菌類がいる。土中に埋めた場合は顕著な生分解をすることがあるが、3年使った濾材を観察しても、微生物によって分解された痕跡はない。通常、炭素源やエネルギーといった栄養源は、利用しやすい物から消費される性質がある。炭素源については、水中のCO2をはじめ、スポンジの中にはバクテリアの死骸が豊富にあるので、苦労してスポンジを分解しなくても、こういったものから容易に得ることができるし、水中で発生するバクテリアは炭素源を主にCO2から得ていることからも、濾材として使った場合はスポンジの生分解はほとんど起きないだろうと予測される。


 前回の記事でも書いたが、スポンジの劣化は材料も大きく関係する。一口にスポンジといっても様々な素材があるし、私が材料として勧めているポリエーテル系のスポンジは、吸音材にも使われている※2ように、空気中で使っても劣化の少ない素材である※3。

 「スポンジ濾材は詰まってドロドロになる」というのも、当初聞かれた意見だが、私のところで詰まらないことは立証しており、他に実践されておられる多くの事例からも、現在でははっきり否定されたと思う。当然のことだが、プレフィルタを付けていないと、ドロドロになってしまう可能性は高い。それは濾材の問題ではなく、使い方の問題といえる。
 あと、スポンジを濾材に使ったら1年でボロボロになったという記事もみかけるが、素材を吟味せずに裁断したものを、上部濾過器などで空気に触れるような使い方をしたのではないだろうか。

 いずれにしても、スポンジ濾材が世に出てもうすぐ6年になるから、早く始めた人はそろそろ5年目を迎える人もいるかもしれない。これだけ多くの方が実践しているのなら、寿命についても時間とともに明らかになっていくだろう。


※1:私が最初に作ったスポンジ濾材は材質を意識しなかったので、おそらく最も劣化しやすいエステル系と思われる。
※2:ブリジストンのVDフォーム、VHフォームなどの吸音材にはポリエーテル系のウレンタンが使われている。
※3:100%エーテル系の材料ではないが、水だけによる加水分解で寿命を推定したら30℃連続で14.2年であったという事例もあり、100%エーテル系ならもっと長いのではと予測できる。





過密飼育のワナ(2003/10/22)

 初心者が失敗する原因のほとんどは過密飼育にある。今回は、過密飼育に至るプロセスをみてみよう。

黎明期
 熱帯魚に興味を持ち、自宅で飼おうと決心する。慎重な人はネットから様々な情報を入手して事前勉強を行うことだろう。 濾過の立ち上げという作業を知らない人は、わずか数週間で死なせてしまうが、事前に得た知識に基づいて立ち上げに成功した人は、次に魚の数を増やすことを考える。
試行期
 最初はネオンテトラだけだったのが、ショップで魚をみているうちに、あれも飼ってみよう、これも飼ってみようと欲が出てくる。気がついてみると、水槽内はネオン、コリドラ、グッピー、エンゼルなどが混在し、統一感のない、ワケのわからないものとなっている。水草も同様に、いろんな形、種類の物が混在している。
 数が増えるとコケが蔓延するようになり、その対策にとヌマエビやオトシンがさらに追加される。
苦難期
 水槽内は、超過密状態になっている。給餌も多く、毎日が病気とコケとの戦いである。いろいろ調べて様々な手を打つが、なかなか改善しない。
末期
 ある日突然死魚が急激に増え、ついに破綻。水槽リセットの憂き目にあう。

 過密飼育の水槽では、どのような対策も努力も無駄である。散々の苦労の末、待っているのは水槽の破綻だ。初心者の水槽をみると、過密飼育になっていることが多い。

 では、どの程度の数が適当だろうか。諸説はいろいろあり、どのような水槽にするかによっても異なる。水草水槽の場合は、水草が吸収できる窒素栄養分の最大値によって決まる。例えば、60cm水槽に水草を密生させた状態だと、窒素収支のバランスが取れる限界は、小型カラシン20匹程度のようである。
 エンゼルフィッシュの場合は、大きくなることや争いをすることを考えると、せいぜい2匹(1ペア)が限度である。グッピーの場合は、グッピー1匹=カラシン2匹分としてカウントし、必ずオスだけとする。グッピーは勝手に増えるので、品種改良が目的でない限り、ペアで飼うことはお勧めできない。

 当然、この基準は水草の種類や数量、給餌量によって異なるので、実際に魚をいれて様子をみてみないとわからない。実際はもっと少ない数になることが多いと予想される。

 もっとたくさん魚を入れたい人は、水草をやめて魚だけの水槽にする必要がある。低床(砂)もなくしてベアタンクにするといい。この場合は、1匹あたりの水量によって上限が決まるが、小型カラシン1匹/2Lを目安にすると、トラブルが少なく、管理も楽である。60cm水槽(50L)の場合は25匹が上限値となる。

 あとよくありがちなのが、オトシンやヌマエビを追加したのに、これらを数に入れていないことがある。これらのスカベンジャーを入れた場合は、その分をカウントしなければならない。石巻貝も1個=1匹分である。
 (但し水槽内にコケが豊富にあって、これらの給餌を別途用意する必要がないうちは、水草水槽の上限値20匹のうちには入れなくて良い。このときの個体の合計は、ベアタンクの上限値を目安にする。)

 自分の水槽にいる個体数をチェックしてみて、もし過密状態にある場合は、早やかにこれを解消することを強くお勧めする。

 少々過密状態でも、自分のところは濾過装置が大きいから大丈夫、と考える人がいるかもしれない。しかし、過密は、濾過能力の向上によって解消することはできない。それは、上記の基準値が、濾過能力と、環境変動に対する緩衝作用の2つから決まると考えられる為である。環境変動がゼロなら、濾過能力に比例して数を増やせるが、なんらかの原因で水質が悪化した場合、水量に余裕がないと濾過が追いつかなくなって破綻してしまうのである。



スポンジ濾材は詰まるか2(2003/1/14)

 前回の記事はこちら

 この写真は1999年中旬にセットアップした洗車スポンジ濾材(小)を真っ二つにカットして断面を調べたものである。
 左はカットしたものを上下に並べたもの、右の写真は別のサンプルの断面である。この濾材は、セットアップから3年半が経過している。一番最初に自分用に裁断したものなので、形はちょっといびつだ。



 これまでの写真からもわかるように、この濾材は粒同士の隙間の詰まりはゼロである。となると、中身がどうなっているかが問題になる。

 写真で茶色の濃い部分がバクテリアが密集している部分に該当する。最初、中はヘドロのようなものが詰まっていると思ったが、実際は色の濃い部分がまばらに点在し、それほど詰まってはいない。大きい気泡の部分は全く詰まっていないのも注目点である。
 濾材を軽くつまんでみると、簡単に水がにじみ出してくることからすると、スポンジ濾材の詰まり率は、60%前後と推定される。



水槽の大掃除(2002/12/31)

 今時分はどこの家庭でも大掃除をするだろう。さて、水槽の大掃除というと、みなさんは何をするだろうか。ちなみに私のところで実施した掃除の内容は次の通りである。

外部濾過装置のメンテナンス
 モータ部分を分解してインペラー(回転子)を取り出す。インペラーはシャフトを抜いてさらに分解する。
 分解した部品をカビキラーかキッチンハイターに漬け置きする(ゴム部品は除く)。インペラーが入っていたくぼみの部分(固定子)と排水経路はブラシと綿棒を使って水垢を取り除く。

 インペラーを元通り組み立てる前にインペラーシャフトを良く拭いて、生体に害のないシリコングリースかフッ素グリースをたっぷり塗っておく。これはインペラーの寿命を延ばし、異音を防ぐ効果がある。気泡がなくてもガラガラいう音が聞こえるのはシャフトを差し込んでいるマグネット側の穴が摩耗してギャップが広がってしまったのが原因である。グリスで改善しない場合は、交換するしかない。

パイプのメンテナンス
 ホースやパイプの内壁に付いた水垢をブラシを通して取り除く。内壁の水垢は大きな抵抗になって、水量を損ねることが多い。ナイロンの長いひもが付いた専用の器具が売っているから、これは是非とも用意したい。

低床
 プロホースで茶色いゴミを吸い出してしまう人がいるが、こちらで述べたとおりほどほどにしておく。

 大掃除が終わった後、パイプから出る水の勢いをよく観察しておくことが大切である。あとは、日常のメンテナンスをいつ通りすればいい。

 今後、排水パイプから出る水の勢いが、大掃除の時に比べてどうか、注意を怠らないでほしい。バクテリアが大量繁殖した濾過層は酸素の消費も多く、酸欠に弱い。水が弱くなったらプレフィルタの洗浄や濾過装置の点検を行う。それでも回復しない場合はパイプの内壁を掃除する。これは水槽を維持する上でとても重要な作業である。

 ちなみに我が家の日常のメンテナンスは、週に一度、水草のトリミングをするだけだ。水替えはもう半年以上しておらず、減った分をつぎ足しているだけである。ガラスにコケが全く付かないためガラス面も触っていない。これは、栄養塩類の収支がマイナスになっている証拠といえる。水替えをしていないのは、その必要がないからだ。こんな簡単な管理で、事実水草の育成や魚の状態には全く問題はない。




ダメなインバーターライトの修理その3(2002/11/24)


 前回修理したインバータライトがまた調子が悪い。スイッチが入っても時々点灯せず、水槽から外してしばらく放っておくと、また点灯するのである。

バラして調べてみたところ、Tr3(写真)※の足に水滴が付くと消えてしまうようである。一応防水コートをくまなく上塗りしてあるのだが、それでも足の部分を水で濡らすと点灯しない。かなりデリケートである。

 そこで、この部品をシリコンゴムでモールドすることにした。シリコンゴムはホームセンターで売っているバスコークがそのまま代用できる。これを部品の頭からグジュグジュと被せ、プリント板の裏側からもハンダ付けされた部分を厚塗りしておく。これで当分は大丈夫だろう。

 バラしたインバータライトを組み立てようと思ったが、今度は蛍光管がうまく填らない。フレームをよく見てみたら、熱で変形して反りあがっているではないか。どうやら、いい材料が使われていないようである。

 このインバータライト、プリント板の配置も熱設計も防水もダメである。抵抗器の発熱で、プリント板の表面がコゲている部分もみられる。部品にも十分な熱容量を見ていない。

 アクア用の蛍光灯は、プリント板が防水断熱構造の中に配置されていないとマズい。蛍光灯の中にプリント板専用のボックスなり仕切りが必要である。安定器付きの蛍光灯は損失と発熱が大きいが、安いし丈夫で壊れないという点がメリットといえる。


※2本のパワー素子(ヒートシンクが付いているやつ)の足にも水が付くと消えてしまうことが判明。これも足をシリコン樹脂でモールドする必要がある。




外れない吸盤の秘密(2002/11/23)

 アクア用品では吸盤を多用するが、外れて困ることも多い。吸盤が外れる原因は、隙間から空気なり水なりが侵入することにある。これを外れないようにするには、オイルやグリースを塗布して気密を高めるのが効果的だ。

 しかし、どんなオイル、グリースでもいいというわけではない。基本的に吸盤のゴムに対して悪影響が無く、水中で使う場合は生体に影響のないものを選ぶ必要がある。粘度が高い方が気密が良いし、蒸発も少ない方が効果が長持ちする。

 このような要求をすべて満たすものに、フッ素グリースがある。これはフッソオイル(パーフルオポリエーテル)にテフロンのパウダーを混ぜて増稠したもので、人畜無害で蒸発はほぼゼロ、物性についてもこの世で最も優れた特性を有する。ただ、きわめて高価でごく限られた用途にしか使われないため、流通も少なく、一般庶民が入手するのはまずムリである。

 当サイトでもフッソオイルは音楽苦楽部で個人販売しているが防錆剤が入っており、これが生体に影響を及ぼす危険がある。残念ながら手元にあるフッ素グリースはごく僅かであり、他人に譲れるほどの量はない。

 そこで代用品はないか検討したところ、スクワランオイルかシリコンオイルが使えそうである。これらは大抵人畜無害で水中で使用しても問題はない。

 これがどの程度使えるのか、現在水中に入れて試行中である。

2002/12/1
 フッ素グリース、スクワランオイル、シリコンオイル の3つで最も効果が高かったのがフッ素グリースである。これはグリースという物性に寄るところが大きい。スクワランオイルは材質に染み込んでしまってダメだった。一般的にはシリコンオイルをお勧めする。
 一口にシリコンオイルといっても非常に種類が多い。防錆剤などの添加物を含まない、なるべく粘度の高いものを選ぶ。スプレー式のものは一度瓶に採取して揮発成分をよく蒸発させてから使う。
 性状はグリースがベストだが、一般のグリースでは石ケン類を添加することで増稠してあるので使えないと思う。もしフッ素パウダーが入手できたら、これをシリコンオイルと混合してグリースを作るといい。
 いずれにしても、吸盤自体が硬化してしまったり、変形してしまったものの吸着力を回復させることはできない。吸盤は消耗品と割り切って、ダメなものは交換するしかない。



大磯砂の残留塩化水素は有害か(2002/11/15)

 当ページでは塩酸処理済大磯砂に2種類のグレードを設定している。ひとつはST(スタンダード)であって、これは塩酸処理しただけの大磯砂、もうひとつはHG(ハイグレード)であり、導入後、PHの変動を防ぐために残留塩化水素を十分除去したもので、高品質の証として最近では検査成績と保証書を添付している。

 いずれもできるだけユーザーサイドで自作していただくために製法はすべて公開しており、パテントも申請していない。現在、HGの製作プロセスで換水の頻度を減らすため、水酸化ナトリウムを使って中和する試行をしており、製法がFixできたらこれも公開する予定である。

 最近では煮沸処理は必要ない※1という意見もあるが、ケースバイ・ケースといえよう。実際、新規立ち上げの場合、あまり問題にならないし、当ページでもSTとHGの適合について説明してある。

 残留塩化水素を除去していない大磯砂が水をどの程度酸性に傾けるか、計算したことがある。たとえば当方のレシピに従って14kgの塩酸処理した大磯砂には、おおよそ1.3gの塩化水素が残留※2する。これを60cm水槽に入れて水を満たすと、水のPHは3.2まで下降する。このレシピは使う塩酸の量を必要最小限に留めている(消費率83%)場合のものだから、計量もしないアバウトな製法ではPHが2までイクかも知れない。実際にはすべての塩化水素が一度に溶け出すことはないので、ここまでいきなり下がることはない。丈夫なパイロットフィッシュを使って上手に換水していけば、問題なく乗り切れるだろう。

 しかし、すでに魚がいて、ろ過が完成している水槽の場合はどうだろう。実際、私のところでこれまで依頼された砂のグレードは、STに対し、HGが倍以上である。私自身、STの方が製作が楽なのでSTを薦めると、エビ水槽にするからとか、最初から好調を希望する等の理由から、HGを強く所望される方が多い。

 飼育環境は十人十色だから、残留塩化水素が問題にならない場合もあるだろう。まめなPHの測定と換水で乗り越えられるかもしれない。でも、問題になった場合は、やり直しが効かない。死んでしまったものは、生き返らないのである。

 残留塩化水素がなければ、測定や換水などの面倒な作業もしなくても済むし、不安も最初から存在しない。リスクを最小にできるという点において、HGの存在意義があると、私は考えている。

※1煮沸処理は処理工程の一部に過ぎないのだが、外の世界ではそれが一人歩きしているようである。
※2砂に含まれる炭酸カルシウム(CaCO3)は、重量比1%、細目大磯砂の吸水率は約3%Wb(実測値)として計算。処理に必要な塩酸の量からして、砂に含まれる炭酸カルシウムの量は、これまでの実績から1%以下と推定した。




塩酸処理済み大磯砂はこうして作られる(2002/8/13)

 左の図は、塩酸処理済み大磯砂を数多く手がけてきた経験から導き出した、最新の製作のプロセスを示している。自作の参考にして欲しい。ST,HGとはグレードを示し、当HPでオリジナル商品として用意しているものにそれぞれ該当する。

 カルシウムの溶解には強塩酸を使う。塩酸と水の量は、それぞれ200cc/10kg、 4L/10kgが基準である。塩酸はこの量を2回にわけて投入する。カルシウムと塩酸が反応すると水が出来、塩酸の濃度が薄くなるので、水の初期量は砂の表面と水面が一致する程度でいい。砂の品質は同じ原料を使ってもばらつきがあるので、いつまで経っても溶解が完了しない場合は塩酸を追加する。

 塩酸を入れたら、12時間置きに攪拌し、泡抜きを行う。これは、砂の中で貝殻の周囲を泡が覆ってしまい、溶解効率が落ちるのを防ぐ為である。
 処理の完了は、12時間後の攪拌時に泡が出てこないことをもって確認する。溶解の具合をモニターするために、貝殻の破片を入れておくと目安にはなるが、証明にはならない。溶解の完了は、あくまで攪拌時に泡が出ないことをもって判定する。

 溶解が完了したら、処理溶液と砂を振るい分けし、砂はよく洗浄し、廃液は中和して破棄する。中和にはいろんな方法があるが、水酸化ナトリウムを使うと少量で効率よく中和が出来て便利である。
 ここで砂を洗浄するので、最初の予備洗浄は省略してもかまわない。しかし、予備洗浄して置いた方が、溶解処理の確認がずっとしやすくなる。

 STの場合はこれで終わりだが、HGの場合は、引き続き砂に残留する塩化水素を抜くプロセスを実施する。

 処理した砂を水に漬け置きしながらPHの低下を観察し、PHが落ち着いた時点で全ての水を入れ替える。これを、PHが規定値になるまで繰り返す。砂に対して出来る限り多くの水を使う方が、換水の回数が少なくて済む。

 このプロセスで水酸化ナトリウムを使うと換水の回数を減らすことが出来る。砂を水に浸したら、水酸化ナトリウムの水溶液を加えてPHを10に調整する。定期的に攪拌をおこない、PHを測定して7を下回ったら水酸化ナトリウム溶液を追加し、2回目以降はPHを8に調整する。PHの変動がほとんどなくなったら最後に水を入れ替えて1日漬け置きすれば完了だ。

 最後のダメ押しに煮沸処理を実施する。これも、砂に対して可能な限り大量の水を使うほうが、品質のよいものができる。煮沸は長時間グツグツ煮る必要はなく、一度沸騰させればOKである。煮沸処理で塩酸は除去できないが、煮沸することで漬け置きではなかなか抜けない残留塩化水素を煮出すことができる。早く処理を完了したい人は、漬け置きのプロセスを煮沸の繰り返しに置き換えてしまってもよい。
 煮沸処理が完了したら、最後に煮汁のPHをチェックして、既定値をクリアしていることを確認する。最後に水洗いして煮汁を除去したら、完成である。

 このように大磯砂をアクアリウムに利用する場合は、結構大変である。砂の機能は、同型の石ころと変わりないのだが、それでも大磯が好まれるのは、色合いからだろうか。


<注意>
 この処理法を実際に実施される場合は、すべて自己責任にてお願いします。
 この処理法に関し、当方が特別な権利を主張することはありません。どなたでも、本処理法を自由に実施することが出来ます。
 この処理法は改良により予告無く変更する場合があります。






コケだらけになってしまった水槽を復活させるには(2002/7/4)

 どんなに努力してもコケが一向に減らない場合がある。これまで、一度コケをはびこらせてしまうと、復旧はかなり難しかった。コケを取る方法について、ここここに紹介してきたが、前者はコケの付いた部分を水槽から取り出さなければならず、水槽内のコケを完全になくすことは難しかった。後者はこれができるが、過酸化水素の投入による弊害が心配された。

 水草を取り出すことなく、過酸化水素を投入することなく、水槽にはびこるコケを一掃する方法がある。それは、極端な照明時間の制限だ。
 具体的には、次のように行う。

  1. 照明を常時OFFとし、水槽を暗い場所に設置する、あるいは光が通らないよう、水槽をカバーで覆う。
  2. エサは2日に1度とし、エサをやる10分前に照明を点灯、エサを与えたら、完全に食べきったのを確認してすぐに消灯する。エサの回数が少ないからといってたくさん与えてはならない。
  3. コケが全滅したら、1/2換水を行い、照明をいつも通りの点灯時間に戻す。換水の時にプロホースを使って枯れたコケの残骸や低床に溜まった糞等を取り除く。
  4. 以後2週間は水替えの頻度をあげる。

 この方法は、水草よりコケの方が光量不足に弱い性質を利用している。コケが全滅するには、通常1〜2週間程度かかるが、時間をかければ確実にコケはなくなる。しかし、パールグラスやグロッソなど光量不足に弱い水草は、同時に枯れてしまう。これを枯らしたくない場合は、水槽から取り出して屋外でしばらく水耕栽培するしかない。

 コケの全滅後、換水の頻度を上げるのは、枯れたコケから放出された栄養塩類を除去するためである。これをやらないと、またコケがはびこってしまう。

(上記の方法で、水草が枯れてしまっても、当方は責任を負いません。あくまで、自己責任で実施してください。)









目次に戻る