失敗と対策


 アクアリウムをやっている人の多くは、店頭の美しいディスプレイや雑誌の写真などをみて、あるいは単にブームだから、といったような動機で始めるた人が多いと思う。

 しかし、いざ始めてみると簡単ではないことに気が付くはずだ。買ってきた魚はことごとく死に、屍の山を築く。高価なものを使えば良い結果が得られるだろうと、訳の分からない液を買ったり、底砂をより高いものに替えたりと、試行錯誤は延々と続く。本人は努力しているつもりでも、状況は一向に改善されず、一方で出費はどんどん増えていく(ショップは儲かる)。

 最初に失敗した人は、たぶん本を買ったり、ショップに意見を聞いたりして参考にするだろう。しかし、本の通りにやってみても、人の言うとおりにやっても、なかなかうまくいかない。そんな状態の人が多いと思う。

 いったい、どうしてうまくいかないのか?

 その答えは、バクテリアの働きに関する認識が足りなかったせいだと、私は思う。

 バクテリアは魚の排泄物などによって生じる有害物を無害な物質へ変える(硝化作用)働きをする微生物で、熱帯魚の飼育=バクテリアの飼育と考えてもよいくらい重要なものだ。これを無視していたのでは、水槽という閉じた空間において、安全な生存環境の成立はほとんどあり得ない。

 熱帯魚の飼育においては、バクテリアを増やし、それを維持することが最も重要である。

 しかし、バクテリアを増やして維持するには、ある程度の知識を学び、理屈を理解することが必要だ。それは微生物培養とは無縁の一般庶民にとって難しいかもしれない。しかし、押さえるべきポイントを押さえておけば、すくなくとも魚を死なせずに済むはずだ。

 それからもう一つ、重要なことがある。それは、

 適切な給餌

 である。特に問題なのは、。これを多くの人が勘違いしている。給餌は、水槽負荷に直結するので、水槽システムが完璧でも、無神経に餌を放り込んでいたのでは、うまく維持することはできない。

 世の中、いろんな失敗があるが、原因を分析してみると、大抵この2つに起因しているようである。過密水槽はそれ以前の問題なので、もしそのような状態であれば、これを解消するのが先決である。




非常事態!どんどん魚が死んでいきます!!

久々に水槽をメンテナンスしたあと、気が付いたら煮魚になっていた

今まで何ともなかったのに帰ったら魚が死んでいた

薬浴をしたら魚が死んでしまった

生餌を与えたら調子が悪くなった

給餌の量について

魚を購入してきたら病気が蔓延した

病魚薬を投入したら病気が蔓延した

旅行から帰ってきたら死んでいた

水槽の立ち上げの失敗

濾材の洗浄による失敗

魚の大量追加による失敗




非常事態!どんどん魚が死んでいきます!!

 もし何らかの原因で水槽システムが破綻してしまった場合は、ひたすら換水するしかない。換水しながら、バクテリアによる浄化作用の回復を待つのが基本となる。濾過装置を点検し、ゴミが詰まっている場合は、取り除いておく。破綻を機会に、濾材を洗浄してしまう人がいるが、このようなことは、決してしてはならない。

 死魚が出るのは、水質の悪化が原因であることがほとんどである。とりあえず死魚の発生をくい止めるために、最初に大胆な換水を実行する。この場合、近藤式換水法を利用することで、魚へのストレスを最小限に押さえることができる。

 すなわち、
 1回目:20%の水を捨てて、水槽の水20%を追加。
 2回目:25%  ”
 3回目:33%  ”
 4回目:50%  ”

とする。魚が弱っているので、1回の換水につき、慣らし時間を十分に取る(1時間以上)。水槽にマジックでおおよその目安となる印を書いて実施すると、やりやすいだろう。
 4回目の換水が終わった時点で、古い水と新しい水の割合は、計算上、1:5となる。ここまで濃度が薄まれば、しばらくは大丈夫である。

 給餌は水質の悪化の原因となるから、水槽が復旧するまで徹底した給餌制限を行う。換水後は少なくとも4日間中止し、その後は2〜3日置きにごく少量を与えるだけにする。魚が体調を崩しているときに餌をやっても食べないし、かえって水質を悪化させるだけである。換水をしても給餌をやめない為状況が改善されないケースが多い。

 このまま換水しないでおくと、亜硝酸濃度が上昇してくることがある。この場合、安全レベル以下に収まるように、ねばり強く換水を行っていく。亜硝酸濃度が2週間をすぎても上昇してこないなら、ひとまず安心していい。

 亜硝酸濃度を減らす為に換水していると、突然、まったく検出されなくなる時がくる。この確認をもって、復旧したと判断できる。



久々に水槽をメンテナンスしたあと、気が付いたら煮魚になっていた

 電子サーモのセンサ部分を、不注意で空気中に出たまま放置したのが原因である。電子サーモがどのような仕組みで水温調整をしているか理解していないと、センサの重要性について認識が低くなり、このような失敗が起こりやすい。

 電子サーモは、センサの温度を検出して、水温が設定値になるよう、ヒーターをON/OFFするようになっている。ところが、ヒータが水中にあって、センサが水から出ていると、いくら水を加熱してもセンサの部分の温度が上がらないため、ヒータがONしっぱなしの状態になり、水槽の水が沸騰してしまう。

 最近は温度センサ一体型のヒーターがあり、これを使えばこのような失敗は起こらない。



今まで何ともなかったのに帰ったら魚が死んでいた

 いつも通り飼育しているつもりなのだが、今日は帰ってきたら魚が死んでいた。水質を調べたが、特に異常はなかった。

原因と対策
 このような問題の多くは、過密飼育や、給餌の量が多すぎるのが原因である。

 通常、食べ残しのエサや排泄物は水質を悪化させるが、濾過バクテリアの働きにより酸化分解され、水質は浄化される。

 しかし、普段から過密飼育などで濾過能力がめいっぱいの状態だと、そのほかの悪要因(例えば日中の温度上昇、給餌の量が若干多すぎたなど)が重なったときに、濾過能力が追いつかず、水質が急激に悪化してしまう。この、悪化のピークのときに、魚にとって耐えられないレベルまで上昇してしまうのである。

 後から水質を調べても原因がわからないのは、既に浄化されてピークレベルが下がっているからにほかならない。

 対策は、このような最悪パターンを想定して、飼育密度、給餌の量、濾過システムなどに安全マージンを取っておくことだ。飼育密度は、やはり一般的にいわれている小型魚1匹に対して2Lがセオリーであり、給餌の量はこちらを参考にして欲しい。




薬浴をしたら魚が死んでしまった

 魚が病気になった。苦しそうであり、すぐにでも治療をしたい。水槽に直接病魚薬を投入するのはいけないので、別容器に移して薬浴を実施した。ところが、薬浴を始めたとたんに死んでしまった。

原因と対策
 病気の症状が進んでいて、魚の体力があまりない場合、薬浴をしたり、別の水槽に移すと、すぐに死んでしまうことが多い。薬浴や水を換えることは、魚にとってかなりのストレスと体力の消耗を伴う。つまり、薬浴をすることで、とどめを刺してしまったのである。
 この場合の対処は、こちらに記載した。




生餌を与えたら調子が悪くなった

 生餌の方が栄養価が高く、よく食べると聞いたので冷凍生餌に切り替えたところ、病気になったり変な生物が水中にはびこるようになった。

原因と対策
 エサは生餌に近い方が栄養価も高く、嗜好性も強いのは事実だが、病原体や妙な生物を持ち込む危険性が非常に高い。いくら殺菌消毒されているといっても、加熱処理された乾燥餌とは比較にならない。

 生餌に限らず生に近いエサを与える場合は、一度熱湯に通すといい。
 初心者の場合は、テトラミンなどの加熱乾燥されたフレークフードを用いるのが無難で、生餌には手を出さないほうがいい。



給餌の量について

 熱帯魚の入門書、あるいは容器の説明書きをみると、「給餌は一日2回、5分程度で食べきる量を与える」と書いてあるのでその通り与えているが、水槽のコケは増加するばかりで、魚の調子はいつも悪い。

原因と対策
 実は給餌というのは意外に難しい。初心者とベテランの大きな違いは、その量だろう。ベテランの給餌は、初心者が見ると驚くほど少ない。説明書きの量は、多少の差はあっても明らかに多すぎる。量は多ければ多いほど元気に良く育つと考えるのは、間違いである。初心者の水槽では、魚が痩せていることは少なく、大抵食い過ぎで太っていることが多い。

 魚が欲しがらなくなるまで追加するのは、もってのほかである。エサは食べても食べ残しても最終的には水質を悪化させる原因となる。すなわち、

 給餌の量=水槽負荷(濾過システムへの負担)

であることを、認識して欲しい。水槽サイズと魚の数とのバランスについてセオリーがあるが、これは給餌の量も大きく関係している。水槽の負荷は、魚の数よりも、給餌の量によって決まるといっていい。だから、たとえ60cm水槽に対して魚の数が5匹と少なくても、給餌が多すぎては、うまく維持することはできない。

 給餌の量は魚やエサによって違うが、メダカやカラシンの場合、基本的に1日1回、1分以内で食べきる量を最大量とし、魚の体格やコケの発生状況を見ながら量を少なくしていく。水草水槽では、給餌間隔を2日に1回にしてしまってもいい。

 どんなエサでも、食べ残したものは放っておかずに必ず取り出しておく。(特にタブレットは要注意)。

 初心者の場合は、極力少な目を心がけた方が失敗は少ない。少ない給餌が原因で、魚が死んでしまうことは、まずない。




魚を購入してきたら病気が蔓延した

 入荷1週間をすぎているので大丈夫だとおもい、魚を買ってきて水槽に入れたら白点病が蔓延した。あるいは、ネオンテトラが次々に痩せ、死ぬようになった。

原因と対策
 原因は、魚選びの不注意と、安易な水槽投入による。外部から自分の水槽に生体を入れる場合は、慎重に行う必要があることを心得て欲しい。

 ショップの水槽の状態は様々である。購入の際は、まず、その魚がいる水槽をじっくり観察し、死魚がいないか、調子の悪い魚がいないか(白点、異常な痩せ、ヒレ腐れ等)をチェックし、該当する魚が1匹でもいるようであれば、その水槽から魚を購入するのは避ける。

というのは、たとえ感染していない魚を買ってきても、病魚のいる水槽の水は、病原体で汚染されており、魚と一緒に病原体を持ち込んでしまうことが多いからだ。だから、そんな状態の時は、別のショップに行くか、その水槽の状態が良くなるのを待ったほうが良い。

 どの水槽を見ても調子の悪い魚がいるようなショップは、管理がずさんである証拠であり、待っていても改善は期待できないから、別のショップを探した方がいい。
 水槽が合格な場合は、その水槽のなかでも最良の個体を入手する。魚をすくう場合も店員任せにするのではなく、できれば自分ですくう。これは申し出れば大抵OKがでるはずだ。

 魚を買ってきたら、いよいよ水槽に入れるわけだが、その前に予備水槽に入れて、3日〜1週間程度様子を見る。これにより、魚の体力とストレスを回復させることのほか、病気の発現をチェックすることができる。

 予備水槽が用意できない場合は、いきなりメイン水槽に入れるしかないが、水合わせの際の混合水は水槽に戻さずに捨てていき、最後はネットですくうなどして、ショップの水をメイン水槽に極力入れないようにする。



病魚薬を投入したら病気が蔓延した

 調子がおかしい魚を見つけたので本をみて症状を特定、ペットショップで病魚薬を購入。処方に書いてあるとおり水槽に入れてみたが、症状は改善されない。それどころか水が濁ってきて、他の魚の調子が悪くなてきた。そこでさらに病魚薬を投入、ところが調子が良くなるどころか、死魚が出始めた。

原因と対策
 病魚薬(あるいは食塩)は水槽内の悪い細菌や原生動物を殺すと同時に、有益なバクテリアにも重大なダメージを与える。調子の良い水槽システムに病魚薬を投入すると、あっというまにバランスが崩れ、水質が悪化して病気が治るどころか他の魚も体調を崩し、ますますひどくなってしまう。

 薬浴をする場合は必ず隔離水槽を用意して、そこで薬浴を実施しなければならない。

 また、魚が病気になるのは、水槽システムに問題があることが多い。対処療法に終始するのではなく、水槽システムの見直し(特に濾過システム)が必要だ。




旅行から帰ってきたら死んでいた

 明日から連休で旅行に出てしまう為、魚の世話ができない。魚が腹を空かせるといけないと思い、たっぷりとエサを与えておいた。連休が終わって水槽を見ると、魚が死んでいた。
 死魚を取り出し、水が濁っていたので換水を実行。長い間絶食していていたのでおなかを空かしているだろうと思い、またエサをたっぷりと与えたところ、翌日また魚が死んでいた。

原因と対策
 魚が死んだ原因は、エサの食べ残しによる急激な水質の悪化による。いくら沢山やっても、一回の食事で食べる量には限界があり、食べ残した餌は腐敗して水質を悪化させるだけだ。

 たとえ食べ切ったとしても、エサが多ければ排泄物も多くなり、普段より水が汚れることになるから、過密飼育で濾過能力が追いつかず、亜硝酸が検出されるような状態では、普段より多めの給餌が引き金となって死魚が出るのは不思議ではない。

 しばらく魚の世話ができないからといってエサの心配は必要ない。4〜5日以内であれば、大丈夫のはずだ。



水槽の立ち上げの失敗

 ペットショップにいくと水槽セットが安価に売っている。60cm水槽に照明、濾過装置ほかいろんな付属品が付いて1万円前後で手に入る。このセットを買えば、私の家にも熱帯魚の水槽が設置できる! 早速買って水を入れ、ヒーターに通電し、付属していた中和剤で塩素を中和し、ついでに魚も入れてみたが、1週間で全滅してしまった。

原因と対策
 実は水槽の立ち上げというのは難しい。2種類の有益なバクテリアが繁殖し、生物濾過が機能してそこそこ安全な環境ができるまで数週間はかかる。

 バクテリアを発生させるには、最初にパイロットフィッシュ(アカヒレが丈夫でよい)を入れなければならない。また、生物濾過が機能しているかどうか調べるには、アンモニアや亜硝酸濃度の測定が必要だ。いったん上昇した亜硝酸濃度が下がったのを確認して、はじめて本命の魚を入れることができる。

 こういったことはいろんなところに書いてあるので一度は目にしたことがあると思う。しかし、失敗した人は市販のバクテリア商品に頼って正規の手順を省略したり、1つ1つの手順がどうして必要なのかを理解せず、勝手な判断で手を抜いたのではないだろうか。この手順は、どこも手を抜いていいところはない。





濾材の洗浄による失敗

 水槽は無事立ち上がり、魚も無事に生きている。濾材が茶色く汚れてきたので洗ったら、次の日から魚の調子が悪くなり、1匹、1匹と落ちるようになってきた。

原因と対策
 立ち上がった水槽の濾材には、茶色い、においを嗅ぐと独特の異臭がするどろどろした物が観察できる。それこそが、水槽の命、ダイヤモンドよりも貴重な自家製の天然バクテリアだ(濾材に自然発生したバクテリアの濾過能力は、市販のいかなるバクテリアよりも優れているらしい)。あなたはその貴重な貴重なバクテリアを、洗い流してしまったのだ!!

 濾材にはバクテリアによる生物濾過と、ゴミを濾し取る物理濾過の2つの機能がある。本を見ると定期的に洗えと書いてあるが、私たちが洗って良いのは物理濾過によってキャッチしたゴミだけで、間違ってもバクテリアを落とすようなことをしてはいけない。しかし市販のウールマットでは両方の作用を同時にするので、バクテリアを殺さず流さずにゴミだけを取るにはテクニックがいる(というよりウールマットは目詰まりしやすいのであまりお勧めできないのだが)。

 生物濾過と物理濾過を分離すれば、メンテナンスが楽になるので、そんなシステムにしていきたい。




魚の大量追加による失敗

 今日はショップのバーゲンセールの日。このような機会はあまりないので普段から欲しかった魚を一挙に沢山飼ってきた。しかし、水槽の魚たちは日に日に落ちていき、1週間で大半が死んでしまった。数が少なくなったのでさらに大量購入、これだけいれば半数は生き残ってくれるだろうと思いきや、あっというまに全滅してしまった。

原因と対策
 バクテリアが繁殖するにはエサ(魚の排泄物から発生)が必要なことから、バクテリアの量は魚の数に比例すると考えられる。つまり、現存するバクテリアの浄化能力は、現在発生する汚染を浄化するだけの能力しか持っていない。

そこへ、大量に魚を追加投入すると、現在の浄化能力では追いつかず、急速に水質が悪化してしまう。バクテリアも増えはじめるが、水質の悪化のスピードの方が遙かに早いため、魚が全滅してしまうのだ。だから、死んだからといって何度魚を追加購入しても、同じことを繰り返すだけである。

 結局、魚を増やす場合はバクテリアによる浄化能力が追いつくのを確かめながら少しづつ追加していくのが安全だ。







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