スピーカーケーブルはどんなものがよいか(2002/5/9)
下の図はパワーアンプの出力回路近辺を示したものである。通常、半導体アンプの出力には、R1,R2,C1,L1で構成されるような補正回路が入っている。SP端子にはスピーカーケーブルが接続されており、R,L,Cのラダーはスピーカケーブルの等価回路を示している。

このような回路は、どのような負荷をつながれるのかわからない一般ののオーディオアンプには必ず搭載されている。シンプル&ストレートを信条とし、パワーアンプの出力素子の次はスピーカ端子だと思いこんでいた人にとっては、ショッキングかもしれない。
R1,C1は、スピーカのL負荷に対する高域のインピーダンス上昇を防ぐ回路であり、L1,R2はスピーカケーブルの容量性負荷(C)に対する高域のインピーダンス低下を防ぐ回路である。
市販のパワーアンプでは、ユーザーがどんなスピーカ、ケーブルをつなぐかわからないので、何をつながれても発振などのトラブルが起きないよう、これらの定数は、かなり安全サイドに設定されていると考えられる。これらの素子は音質(特性)に影響するが、ローコストな機種ではよい部品が使われていない可能性が高い。音を差別化するための手段として使われている可能性もある。
スピーカーケーブルのRは抵抗成分であり、これが(ダンピング・ファクター)を大きく劣化させる原因になっている。銅線の純度はOFCクラスもあれば十分であり、そこからさらに純度を高めるよりは、ケーブルを短くしたり、太くした方が遙かに簡単で安いのは言うまでもない。
Lはインダクタンス成分であり、高周波の減衰に関係する。市販のケーブルではスターカッドにしたり、ツイストにしてこれを低減しているものもあるが、特に何もしなくても、ケーブルの長さが常識的な範囲であれば無視できる。そもそもボイスコイルやネットワークのところに大きなL成分があるのに、ケーブルのわずかなLを論じるのは意味ないといえる。
Cは静電容量で、誘導ノイズや高周波の減衰に関係する。市販のケーブルでは絶縁をポリエチレンにしたり、プラスマイナスの線間を遠ざけたりして対策しているが、通常アンプの出力インピーダンスが非常に小さいので、数百pFではまったく影響しないと考えてよい。そもそもアンプの出力回路に大きなCがあるのに、ケーブルのわずかなCを論じるのは無意味である。
その他、ケーブルを防振対策しているものも見られるが、ケーブルが自分で振動して気になるような雑音が発生したり、振動がケーブルに影響して音を濁すことはないから、選定の参考にしなくても良い。どうしても関係あると思う人は、オシロを端子につないで、スピーカーケーブルで縄跳びでもしてみるといい。もしオシロの波形が動いたら、こちらをチェックしてほしい。
結局、スピーカーケーブルが最もシステムに影響を与えるのはDFを劣化させる抵抗成分であって、これを小さくすることをひたすら追求すればよい。これは、昔から言われている「短く太く」の考えに通じるものである。
高価なケーブル1本買うよりは、安くて太いケーブルを大量に買って、何本もパラにしたほうが効果がある。極端な話、数十本をパラにしてしまってもいい。いくらパラにしても、悪いことは一つもない。ただ、ダンピングファクターに関係する抵抗はアンプの出力インピーダンスとの和になるから、アンプの出力インピーダンスより十分小さければ、そこからいくらケーブルの抵抗を下げても、効果は少ない。
スピーカケーブルをパラにする場合、スピーカ端子に入るケーブルの太さには制限があるから、両端で全部のケーブルをハンダ付けして1本にし、端子に入る太さの短いケーブル1本だけ延ばして端子に導く。途中がいくら太くても、両端が細いのでは意味がないと考えるのは、間違いである(伝送路の抵抗は、断面積×長さによって決まる)。
ちなみにスピーカーケーブルのコストパフォーマンスは(直流抵抗値(ミリohm)×価格(\/m)で表し、この数字が小さいほどコストパフォーマンスの高いケーブルと見ることができる。市販のケーブルを調査して、表を作ってみると参考になる。
バイワイヤリング用に複数の端子が用意されている場合は、付属の部品を使ってスピーカ側の端子をショートし、出来るだけ多くのケーブルをパラに配線するといい。左の写真は、S3100のバイワイヤリング端子を使ってスピーカケーブルをパラに接続したところ。パラにすると電線のインピーダンスは一挙に半分になる。
バイワイヤリングの目的は、ウーファの逆起電力が他のユニットに干渉するのを防ぐことにあるといい、なるほど、理屈はわかる。しかし、そもそも逆起電力が問題になるのは、DFが劣化しているためであって、それを放置し、他のユニットへの干渉をどうこうするのは、本末転倒といえる。
アンプとスピーカの組合わせを特定して、スピーカの中にアンプを内蔵してしまえば、このような補正回路は必要最小限で良くなるし、ケーブルもきわめて短くできる。すなわち、お互い音質的に最高の専用設計ができるというわけである。しかも、アンプは振動の影響を受けないから、音質的に悪いことは一つもない。スタジオモニターにアンプが内蔵されているのは、このようなメリットによるものである。
スピーカケーブルの長さはどの程度まで許されるか(2002/5/8)
ケーブルによる弊害の一つに、DF(ダンピングファクター)の劣化があげられる。DFが劣化すると、スピーカのf0やクロスオーバー付近で制動が効かなくなり、音に締まりがなくなるほか、周波数特性も乱れて音が変質してしまう。
スピーカをケーブルで接続したときのDFは次式となる。
DF=Rs/(R0+R1) (1)
Rsはスピーカの公称インピーダンス、R0はアンプの出力インピーダンス、R1はケーブルのインピーダンスである。ここで、ネットワークのインピーダンス特性を考慮しなくてもいいかという問題があるが、スピーカシステムの特性は、スピーカ端子のところで測定されており、音質の評価もネットワークコミで行われているので、(1)式でDFを評価すればよい。
R0はアンプのDFから逆算できる。例えば、ダンピングファクターが100のアンプの場合、R1=0、Rs=8として、(1)式に当てはめれば、0.08オームということになる。ここで、例えば3mのスピーカーケーブルを使って接続した場合、ケーブルの直流抵抗が15ミリオーム/m、と仮定して、
R1=3*0.015*2 = 0.090 オーム
となる。最後に2倍しているのは、プラスマイナスの往復分である。これを(1)式に当てはめると、
DF=8/(0.08+0.090)=47
となる。これは、アンプのDFがいくら高くても、3mのケーブルを付けたとたん、50前後に落ちてしまうことを示している。ここで、DFがどの程度まで許容できるかが問題になるが、一般に10以上とされている。そこで、10を絶対防衛ラインとして、ケーブルの長さを逆算すると、24mという結果が得られる。Rsが6オームとしても、17mである。6畳間でどんなにケーブルを引き回してもこれ以上になることはまずない。しかし、ケーブルがこれだけ長いと、電力ロスの方が問題になってくる。
DFに関する音質への影響度合いをもう少し定量的に知るために、Qの上昇を考える。DFとQの関係は、次式となる。
Q=Q0(1+1/DF) (2)
Q0は、スピーカシステムのQ値で、通常0.7あたりになるよう設計されている。正確な数値はf0付近のインピーダンス特性から求めることができるが、この計算ではQ0=0.7として差し支えない。
(2)式によれば、DFが10のときのQへの影響は約10%もあり、耳のいい人は聴感でわかるかもしれない。ケーブルが5mの場合はDF=32.7、Qの変動率は3%となる。このくらいの変動は、製造のばらつきや経年変化により容易に起こりうるレベルであるから、問題ないと考えていいだろう。
しかし、アンプの内部抵抗が数十ミリオームオーダーであることを考えると、アンプやスピーカ端子の接触抵抗が敏感に効いてくるから、この部分の取り付けは特に注意する必要がある。スピーカケーブルの接続用に金メッキした高価な圧着端子やバナナプラグが市販されているが、これらを使うと、その接触抵抗だけで数十ミリオームものロスになる場合があり、5mでよかったケーブルをもっと短くしないといけなくなる。スピーカーケーブルの端末処理は、スズメッキされたごく普通の圧着端子が最も適している。
失敗のないスピーカの選択方法(2002/5/6)
オーディオコンポーネントの中で音を決定づける最も大きな要素がスピーカである。自分の音と音楽の好みを考えて、慎重に選択する必要がある。投資額も、スピーカに重点をおくといい。自分に合ったスピーカを見つけることが、幸せな音楽ライフを送るうえで欠かせない。
- ユニットの数はいくつが妥当か
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全般的な傾向として、ユニットの数が多くなるほど、歪や周波数特性などの諸特性が優れてくる。しかし、3ウェイ以上になると音をまとめるのが難しく、どうしても不自然さが残ってしまう。スタジオモニターには4ウェイ以上のものがあるが、これは音の細かな違いを明確に聞き取るためであって、音楽鑑賞が主目的ではないので注意が必要である。
1本で全体域を再生するフルレンジ構成の場合、周波数帯域の確保に無理があって、性能的にも聴感上も満足いくものを作るのが困難である。メーカの周波数特性は平坦でも高域は分割振動で音を出すため、過渡的な応答が鈍く、聴感上、高域が不足しがちになる。変調歪みや分割振動により高域の位相特性がぐちゃぐちゃで、単一の音源でありながら、音像定位が悪い。大口径になるほど指向性が強く、リスニングポジションが狭くなって、ちょっとでも軸線をずれると高域がほとんど聞こえなくなってしまう。
16センチ以上のものは共振で高域のレベルを稼いでいるものも見られ、歪みも多く高域の音色はかなり汚い。10〜12cmでは周波数特性が平坦でも実際は中域の音圧が高く、低域と高域が不足する。BOSEの101シリーズでは中域のレベルをかなり落とし、高域を持ち上げるようなイコライザ回路を内蔵しており、聴感上のバランスをとっている。
2ウェイの構成は音質と性能のバランスがよく、名器とよばれるシステムも2ウェイのものが多い。ウーファが30cmを越えるとツイータとのつなぎが苦しくなるが、広帯域のホーンドライバを使うことにより、音質的に満足いくシステムを作ることが可能である。オーディオシステムを音楽鑑賞に使うなら、私は2ウェイのシステムをお勧めする。
- 振動板の素材はどんなものがいいか
- 過去様々な素材が試行錯誤された時代があったが、そのほとんどが廃れてしまった。セルロース繊維(パルプ)より物理特性が優れた素材は多くあるが、出てくる音は、どこか無機質である。振動板が振動すると必ず歪みを伴い、どんなにヤング率の高い材料を使ってもゼロにはならない。無機質に聞こえるのは、歪みによって発生する高調波成分の出方が、不自然だからだろう。アコースティック楽器の多くがセルロース繊維でできていることを考えると、振動板もやはり同じような材料にするのが適当なのかもしれない。
- ジャンル別に最適なシステム
- 1つのスピーカで全てのジャンルの音楽を最良の音で再生するのは困難である。スピーカを選ぶ際には、自分の音の好みを把握し、聞きたいジャンルの音楽を明確にすることが必要になる。忠実再生を目的としたモニタースピーカでは、あらゆるジャンルの音楽を無難にこなすが、音楽鑑賞を目的とした場合、忠実再生するモニタースピーカよりも、ジャンルを特定し、その音楽がもっとも良い音で鳴るよう、音色を傾向付けされたスピーカのほうが、ずっと音楽を楽しんで、よい気分に浸ることが出来る。モニタースピーカは、文字通りそれが必要な業務用途か、忠実再生を追い求めるマニアだけのものと考えたい。
音色に特定の傾向を持つスピーカを、別のジャンルの再生に使うと、まったくダメということがある。例えば、クラッシックが好きな人は、タンノイのようにたっぶり響きのあるスピーカが有力な選択肢となるが、ロックではそれとは正反対の締まりのある音が求められる。そこでもしロックが好きな人がタンノイを選ぶと悲劇が予想される。そこで、スピーカの音の傾向を知るのは、とても重要である。
国産スピーカにはいったい何を鳴らしたいのか、不明なものが多いが、製造メーカや、システムの構成、振動板の材質等から、ある程度推測可能である。コンセプトがはっきりしないスピーカや、意味不明な構成のものは避けた方が無難である。
ロック、ニューミュージック?が好きな人は、ツイータがメタル系のものを選ぶといい。この手の音楽は、小型のあまりHi-Fiでないスピーカで鳴らしたときバランスよく聞こえるように録音されているので、性能の良いスピーカは適さない。お魚天国やTVアニメの主題歌についても、同じことがいえる。
肉声がほとんど入らないフュージョン系をメインにする人は、エンクロージュアが密閉式のものが適している。3ウェイ以上のシステムを選択しても欠点が目立たず、再生周波数の広さがプラスに作用する。フュージョン系で特にお勧めなのがヤマハのNS-1000Mである。もうカタログから消えてしまって中古しか入手できないのが残念なところだ。
小編成の室内楽などアコースティック系の音楽を好む人は、16〜20cmウーファ+ソフトドーム系のツイータを備えた小型の2ウェイがいい。小型スピーカのメリットは良好な音像定位である。室内楽やギターを臨場感たっぷりに再生してくれるだろう。エンクロージュアはバスレフ式になっていて、低域の再生限界を欲張っていないものがいい。小型スピーカでは密閉式のものが多いが、低音を稼ぐためコーンが重くて能率が低く、音色も暗い。
スピーカの置き台も、定位の良さを生かすため、スマートな支柱一本で高さを持ち上げるようなものがいい。
ジャズの場合は、パルプコーンでできた軽量のウーファと、中型ホーン+ドライバを組合わせた高能率システムがゴキゲンなサウンドを聴かせる。それは、ホーンスピーカの歪みが、同じホーンを利用したペットなどの音色とマッチするからだろう。こういう構成のシステムは、国産には少ない。昔はジャズといえばJBLと相場が決まっており、S3100がこれに近かったが、生産中止でもう入手できない。このJBLサウンドを受け継ぐモデルが現在あるかどうかは、不明である。
大編成オーケストラをそれなりのスケールで再生するためには、フロアタイプの大型スピーカが必要であり、必然的に投資額が増える。ウーファのサイズより、エンクロージュアの内部容積の大きいものを選んで欲しい。エンクロージュアは、バスレフあるいはホーン型、吸音材も少な目で、減衰が小さい作りのものが適している。クラッシックしか聞かないのなら、タンノイのエジンバラがいい。クラッシクのツボにはまる音のクセを持っている。但し、このクセは結構大きいので、必ず視聴して自分が気に入るかどうか、確認したほうがよい。
音質のテストをメインとし、とにかく録音に正確な音が欲しいという人は、エクスクルーシヴのスタジオモニタ240Xシリーズということになる。240Xは最初ナローレンジで音もかなり堅いので、視聴の際には注意して欲しい。音がほぐれて本来の実力を発揮するには、時間がかかると思われる。
その他、アッテネータに可変抵抗器を使ったものや、スピーカのエッジがウレタンになっているものは避けた方がよい。可変抵抗器は接触不良になりやすく、ウレタンエッジは空気中の水分と反応して加水分解し、いずれぼろぼろになってしまう。
インシュレータによってなぜ音がかわるのか(2002/5/4)
オーディオ用と称して様々な素材のインシュレータが市販されている。市販のインシュレータには妙チキリンな構造や訳の分からない能書きを付けているものが多く、値段も異常に高めである。インシュレータの利用とそのリポートは数多いが、定性的で試行錯誤的なものばかりである。
インシュレータがどのような物理特性をもち、オーディオ機器の下に敷くことで、どのような物理変化をもたらすのか。これを知れば、無駄な出費や試行錯誤を減らすことができるだろう。
基本的にインシュレータはバネとダンパーでモデル化でき、効果に関係するのは結局バネ定数、ダンピングなどの物理定数であり、材質や価格は関係しない。インシュレータの形状は固有モードに関係するが、周波数が高いし、挟んで使ったとたん減衰がかかって、まったく関係しなくなる。
コンポの下にインシュレータを敷いた場合の共振周波数f(Hz)は、
f = SQR(k/m)/(2*π) (1)
で表される。SQRはルート関数、kはインシュレータのばね定数(N/m)、mはコンポの質量(kg)である。これはインシュレータを扱う上で必要な基本計算である。インシュレータのばね定数は、コンポを乗せたときのたわみから簡単に求めることができる。
- スピーカとインシュレータとの関係
- スピーカには土台がよく使われるが、これは質量と形状、構造減衰などがポイントであって、材料や価格はやはり無関係である。
床の上にコンクリートブロックを置いて、インシュレータを置き、スピーカを載せると、2質点系のモデルとなる。インシュレータが硬い材質で作られている場合は、エンクロージュアの減衰特性に影響を与える。これについては、トピックをわけて詳述しようと思う。
- プレーヤとインシュレータとの関係
- 振動に最も敏感なのがプレーヤーである。CDプレーヤに振動が加わると、サーボ電流が変動してアナログラインを揺すり、音を濁す。これが、CDプレーヤの振動対策が必要な理由である。主役がアナログプレーヤからCDプレーヤになった現代でも、プレーヤの振動対策が重要なことに変わりはない。
振動対策は、空気伝搬と固体伝搬の2つがあるが、プレーヤの場合、一般に固体伝搬だけを考えればよい。
固体伝搬を対策するには、インシュレータ(防振ゴム)が有効である。その振動絶縁の効果(振動伝達率τ(%))は、式(1)によって求めたfを使って、下記の計算で求めることができる。
τ = 100*ABS(1/(1-(fa/f)^2)) (2)
ここで、faは加振周波数(Hz)である。よくわらかない人はエクセルを使っていろんな数字を入れてみるといい。faがfより低い領域では、効果がないどころか、振動を拡大してしまうケースがあることがわかる。式(2)から、より低い周波数まで絶縁効果を得るためには、fを低くする必要性が読みとれる。すなわち、インシュレータのバネは柔らかいほどいい。また、式(1)より、プレーヤの質量mを大きくしても、同様の効果が得られることがわかる。プレーヤは重いほど振動に有利で、対策もやりやすいといえる。
しかし、市販のCDプレーヤの足を見ると、このような理屈とはほど遠いものが付けられている。CDのピックアップメカ自体も筐体内部でバネにより防振されているから、それで十分と考えられているからだろう。カーボンコーンや金属の板をプレーヤの下に敷くのは、見当違いも甚だしい。
- アンプやケーブルの防振対策は本当に音に効くのか
- インシュレータを敷くことで最も影響が少ないと考えられるのがアンプ類である。たしかに磁束の中で導体が動けばノイズ電流が流れるが、そもそもそれが問題になるような大きな振動が加わるようなことはほとんどないと考えられる。
納得できない人は、アンプの天板を外して、ヒートシンクやコンデンサ、トランスなど好きな部品をインパルス加振して出力波形を観察してみるといい。アンプは適当な負荷をつないで電流を流している状態でもかまわない(テストは自己責任でおねがいします)。
インパルス加振とはハンマーで叩くことである。この時のハンマーは、非磁性体でなければならない。これによって、広い周波数帯域を一様な力で加振することができる。加振周波数の上限は、ハンマーの堅さで決まる。よく拳でコンコン叩く光景をみかけるが、拳では柔らかすぎて、低い周波数帯域しか加振できない。
アンプで防振対策が必要なのは、端子、スイッチの接点、ボリウムなどの接点部分であると考えられるが、残念ながらこの部分に注目して対策している製品はほとんどないようである。 アンプの中には、「トランス」という震動源がある。このトランスの振動によって、シャーシなど他の部品が振動し、それが騒音になって音楽鑑賞を妨げるという理由から防振が必要だというのであれば、それはそれで理解できる。もし自分でコンデンサやトランスなど、特定の部品に防振対策をした結果、聴感でわかるほどの音の変化があったら、そのアンプは「設計不良」の可能性があると考えて欲しい。
ある評論家がアンプを計りに乗せたり、ヒートシンクをハンマーで叩いたりし始めたせいか、防振対策と称してアンプの重量のかさ増しが行われている。確かにアンプの性能は重量に関係するが、無意味なかさ増し分を差し引いて比較しないと、本当の価値は見えてこない。
地球には磁場があるから、アンプやケーブルに振動の影響が全くないかと言われれば、ノーである。しかし、その影響の程度問題を考えることが、正常な判断をするうえで大切なことだ。
機器とケーブルの音の違いを定量的に計る方法(2002/5/3)
これまでオーディオ機器やケーブルの音の違いは、評論家による曖昧な主観的評価しかなく、数百万円もするアンプや、1本数万円もするケーブルが、実際に投資しただけ音がよいかどうか、知るのは困難であった。
評論家の主観的評価に頼らざるを得ない理由に、歪み率や周波数特性などの測定データが、オーディオ信号に対してまったく問題ないレベルに収まっており、測定値同士の比較が、事実上無意味になっていることがある。しかし、この素晴らしい特性は、単体で抵抗負荷により測定されたものであって、実際の使用条件で必ずしも同じ特性が得られるとは限らない。実際に音色が違って聞こえるのは、実際の使用条件における特性が、抵抗負荷による単体測定時と異なるからだろう。以下の測定法により評価すれば、数百万円もするコンポーネントが、価格相応の実力があるかどうか、チェックするための有力なパラメータを提供できると考えられる。
出力インピーダンスを測定する
1つ前のトピックで書いたように、機器の「出力インピーダンス」は音に影響する可能性が高い要素の一つだ。これを知ることができれば機種選びの際に参考になるだろう。ところが、出力インピーダンスをカタログに明記してあるメーカは少ない。不明であれば、調べるしかない。シャーシをばらして部品を調べればわかるが、ばらさなくても外から測定することができる。

上の図は、ON/OFF法?による出力インピーダンス測定回路である。自分で考案したのだが、ネットでみたら既に存在していた。
縦線から左が測定対象(CDプレーヤ、プリアンプなど)と考えて欲しい。Rxがいま問題にしている未知の出力抵抗である。Rxを測定する回路は、抵抗RDと、スイッチ、交流電圧計によって構成される。RDは、330〜1Kオーム程度が適当だろう※。
測定方法は、1KHzの正弦波が記録されてるオーディオチェック用CDをプレーヤにセットし、再生する。スイッチを開いたときの電圧計の読みが、Voutである。次に、スイッチを閉じて、同じように電圧計を読み、これをVとする。これで終わりだ。(測定は自己責任でお願いします)
未知の出力インピーダンスRxは、図の下に書いてある式で求めることができる。面倒な計算をしなくても、右のグラフのようにV/Voutの比とRxの関係をあらかじめ求めておけば、V/Voutの比から直ちにRxを知ることができる。表1は、これまでに測定した出力インピーダンスである。今後、更新していこうと思う。
表1 各機器の出力インピーダンス 1KHz SIN,RD=330ohm(2002/5/12)
| 機器名 | メーカ | IMP(ohm) | 価格 | 備考
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| PD-N901 | パイオニア | 931 | アンプとコミで5万くらい | ミニコンポ CDチューナ
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| DCD1650G | デンオン | 101 | 99,000 | -
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| JA3ES | SONY | 902 | 108,000 | MDレコーダ
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| A-10 TYPEIV | NEC | 600 | 125,000 | プリアンプ出力、カタログデータ
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| CD-23 | マランツ | 101 | 200,000 | 公称150ohm
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| D-500 | ラックスマン | 203 | 250,000 | -
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| C-275 | アキュフェーズ | 47 | 480,000 | 公称50ohm
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| DP-75 | アキュフェーズ | 48 | 580,000 | 公称50ohm
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※RDは小さいほど、測定条件としては厳しいが、あまり小さすぎると出力バッファアンプを過電流で壊してしまう可能性がある。RDが小さいと、ソース側機器の出力カップリングコンデンサとでフィルタを構成し、1KHzが減衰する可能性があるが、それはそれでより厳しい測定条件といえる。
ケーブルの特性を測定する
ケーブルの特性を測定するため、次の回路を考案した。6Nとか8Nとかいう純度が、本当に能書き通りいいものかどうか、これで検証できるかもしれない。

回路といってもケーブルの入力側に抵抗Rが入るだけである。Rを入れることで、ケーブルのシールド性能や誘電体による信号の歪み率、周波数特性などが観測しやすい形で現れると考えられる。例えば、Rを47Kオームくらいにして、信号源を除いてシールドと接続すれば、誘導ノイズの簡単なテストが出来る。
Rは言うまでもなくオーディオ機器の出力インピーダンスを模擬しており、表1と比較することで、有益な情報が得られと期待される。
オーディオ機器の組み合わせによってなぜ音がかわるのか(2002/5/2)
下の図は、機器間の接続を示した模式図である。Voutの端子を出しているのがソース側機器であり、例えばCDプレーヤ、プリアンプなどに該当する。Vinの端子を出している方は、入力側機器であり、一般にプリメインアンプや、パワーアンプである。ここで、R2が出力インピーダンス、R4が入力インピーダンスに相当する。R3,C2はノイズカットフィルタであり、C1,C3は直流をカットするためのカップリングコンデンサである。これらは各メーカの設計ポリシーによって、適当な値が設定されている。

この回路から、次のことがわかる。
- 出力インピーダンスR2によって、ケーブルによる影響の受けやすさが変わる
R2があると、R2以降の伝送経路で誘導ノイズを拾いやすくなる。R2が大きいほど、その影響は大きい。従って、ピンコードはそのシールド性能が重要になる。また、R2とケーブルの静電容量Cによって、ローパスフィルタが構成され、R2が大きいほど、高域の減衰が大きくなる。R2が十分小さければ、ノイズやケーブルの影響は小さい。
- 出力インピーダンスR2によって、ハイエンドが抑制される
R3,C2はノイズカットフィルタであり、一般に可聴域より高く設定されているが、入力側機器を接続するとR3と直列にR2が入るため、カットオフ周波数が下降して高域の減衰が大きくなる。R2が十分小さければ、この影響は少ない。
- 出力カップリングコンデンサC1と、入力インピーダンスR4によって、ローエンドが抑制される
ソース側機器のC1,R1はハイパスフィルタを構成するが、入力側機器を接続することでR4がパラに入り、カットオフ周波数が上昇して低域の減衰が大きくなる。C1に十分な容量があれば、R4の影響は少ない。
- 入力インピーダンスR4によって、誘導ノイズの影響をうける
R4が大きいほど、信号は正確に伝わるが、Vin端子以後のラインで誘導ノイズの量が大きくなる。ケーブルを差していない空き端子は裸同然で、最もノイズに弱い。そのため、一部のセレクターでは、使用外の端子を意図的にショートしてしまうものもある。
以上から、次のことがいえる。
- 接続する機器によって伝送特性が異なる。
機器同士を接続すること、上記のようにお互いの入出力端子に存在する素子が相互に作用して、単独とは違った特性になる。これが、機器の組合わせによって音が変わったり、相性問題が発生する原因である。海外製のモデルでは、入力インピーダンスが数キロオームというものもあるので、注意を要する。
- 出力インピーダンスR2は、音のクオリティに大きな影響を与える
R2は理論的にゼロが理想である。小さいほど、ノイズの影響が小さくなり、周波数特性が良くなる。しかし、ゼロだと、ユーザーが誤ってショートさせたときに、過電流が流れて出力バッファアンプが壊れてしまう恐れがある。
R2は小さいほどいいが、小さくするほどバッファアンプの電流容量を増やす必要があり、コストアップになる。だから、普及機ではコストの関係でR2が高めになっている可能性がある。実際、R2は機器の価格に反比例するようである。
- 高級機ほどローエンドがよく延びているのは、C1にお金をかけているからではないか
ソース側機器の単独のローエンドは、C1、R1の積で決まるが、抵抗よりコンデンサの方が高価であるから、普及機ではコストの関係でC1にあまり大きなものが使われていない可能性がある。
高級機ではしっかりローエンドが延びていると言うが、それはC1に十分大きなものを使っているか、あるいはDC出力構成になっていて、入力インピーダンスR4の影響を受けない形になっていると考えられる。それは一方で、ローエンドの延びをC1一個の部品でコントロールできることを意味している。あまり邪推してはいけないが、これで普及期と高級機の差別化ができてしまう。
高価な重量級CDプレーヤや太いピンコードはいかにも低音が出そうな印象を受けるが、そもそもオーディオ信号の実体は電気であるから、重量やケーブルの太さなど、低音再生とは無関係である。
- ケーブルの導体純度は音質と無関係
信号ケーブルで音に関係する要素があるとすれば、耐ノイズ性能(シールド構造)くらいだ。R2は通常10^1〜10^3オームのオーダーだから、ケーブルの直流抵抗や、導線の純度が音質に影響するとは考えにくいし、静電容量についても、同様の理屈で同じことがいえる。
結晶粒界が音に影響しているようなことを書いている記事をみかけるが、根拠がない。そもそも、オーディオ信号が結晶粒界などハナから論外な無数の抵抗器やプリントパターン、ハンダの中を通るのに、ケーブルだけ結晶粒界を問題にすること自体がおかしい。ケーブルで音が変わったとすれば、主観による思い込みか、こちらの要因によるものだろう。
- 高い機種ほど安いケーブルで十分
出力インピーダンスR2が低いと、ケーブルの影響はあまり受けない。高級機ほどR2が低いので、安いもので十分ということになる。また、ケーブルの音をテストする場合は、高級機では音の差が出にくいので、テストには適さない。「ケーブルへの投資は、機器の10%が目安」など言う人もいるが、根拠がない。
- バッファを入れることで音質が改善する
入力機器と出力機器の中間に、利得1のオペアンプ(バッファ)を入れると、機器相互の影響が切り離されて、理想的な信号伝送が実現出来る※。オペアンプの入力抵抗は非常に高く、出力抵抗はゼロに近いことを利用したもので、「インピーダンス変換器」とも呼べる。
バッファが入ると多くの人が気にするように、S/Nや歪み率が劣化する心配があるが、石を注意深く選べば問題ないし、そんな問題を補ってあまりある効果が期待できる。プリアンプも同じ役割を果たしており、単なる信号セレクタではなく、インピーダンス変換器として重要な役割を担っている。CDプレーヤが登場した当初、パッシブアッテネータでパワーアンプと直結することが流行ったが、R2が極端に大きくなってまともな信号伝送ができない。何でもシンプル&ストレートがいいと考えるのは間違いである。
※オペアンプは、正負両電源で動作させ、カップリングコンデンサが入らないよう(DCアンプの構成)にする。電源は一般ユーザーの場合は電池などのバッテリで動作させるのが簡単だ。バッファの入力側ケーブルは、短くする必要があるが、出力側は、ローコストなケーブルを長く使っても良い。この出力インピーダンスは、どんな高級コンポもかなわない。但し、ショートさせるとオペアンプが壊れる可能性があるから注意が必要である。
<参考例>
上記の影響を定量的に評価するには各素子の定数が必要だが、ソニーの高級MDレコーダをバラしたところ、次のようであった。高級機の一例として参考にして欲しい。
R1:100Kオーム
R2:910オーム
R3:470オーム
R4:100Kオーム
C1:100マイクロF(電解)
C2:100pF(セラミック)
C3:100マイクロF(電解)
ローパスフィルタ、ハイパスフィルタのカットオフ周波数f(Hz)は、次式で計算できる。
f = 1/(2*π*R*C) (1)
ここで、C:静電容量(F)、R:抵抗(オーム)。f ではゲインが-3dB、位相歪みが45度となるからf が可聴域を超えていても可聴域に影響する可能性がある。f が可聴域から10倍離れていれば、ほぼ影響ないと判断できる。
忠実再生を目指すとどうなるか(2002/4/29)
オーディオセットは決して安くない。オーディオを趣味とするなら、その目標を何にするかは、きわめて重要である。
オーディオの目標は、「忠実再生」といわれている。何に対して忠実かというと、「録音」である。つまり、よい再生機とは、録音されている信号を忠実に音波に変換する装置であり、それは同時に、CD制作者の意図を、聞き手に間違いなく伝達できることを意味している。
変な話かもしれないが、これによると、家庭における音楽再生は、CD制作者が造った音を堪能するものだとも解釈できる。実際、コンサートホールの演奏を、2chステレオでの再生を前提として録音した時点で、「別物」になってしまう。その「別物」は、その後さらにいろんな加工をされて、最終的にCDにプレスされる。そうしてできた作品は、録音芸術作品といえるのかもしれない。
忠実再生の定義からすると、スピーカから出てくる音が録音通りになっていることが重要であって、原音と一致する必要性は、まったくない。つまり、オーディオ装置は、メディアに記録された信号を、忠実に再生することだけを考えればいいのであって、メディアの記録以前のことは、問題にしないのだ。原音を、どういう音に加工し、記録するかは、CD制作者の範疇なのである。
現実の音を自宅で再現することを「原音再生」という※1が、2chステレオ方式で原音を再現することは、原理的に不可能である。2chステレオ方式は、所詮、現実とはかけ離れた、疑似再生にすぎない。だが、理屈のわからないマニアや評論家の一部には、特性が理想的※2であれば、これができると勘違いしている人もいるようだ。もし原音再生ができると信じて、それを目標にしている人がいたら、即座にやめたほうがいい。解がないものを追求するのは、無駄である。
オーディオの目標が忠実再生だからといって、私たちの目標もそれに合わせるのは、適切でない。なぜなら、CDの録音をいくら忠実に再現しても、それで音楽が楽しめるとは限らないからである。録音者が、私はこんな録音をしました。ぜひ楽しんでくださいとっても、それが自分に気に入るかどうかは、まったく不明である。だから、自分が音楽を楽しむときは、録音の再生音をさらに自分が気に入るように加工するのが適切であり、その自分の音を造るのが、オーディオの趣味といえる。
忠実再生を目指した一つの完成形が、我が家のシステム2である。録音の中身を漏らさず忠実に描き出すその再生音は、録音のモニターとして有益だが、そういう性質は、音楽を鑑賞するうえで、必ずしもプラスにはならない。忠実再生はあくまでオーディオ機器の技術目標であって、リスナーである私たちの目標と区別する必要がある。
※1:Hi-Fiオーディオでいう原音再生とは、録音に対する忠実再生のことである。紛らわしいので、間違わないように注意して欲しい。
※2:現在の技術では、ディジタル・フィルタを使って適応制御することで、リスニングポイントにおける周波数、位相特性を、完全に一直線にすることが可能である。しかし、聴感上、特に際だった変化はなかったようである。
オーディオマニアがはまる落とし穴(2002/4/28)
これまでオーディオに関心の無かった人が、機器を買おうと考えるきっかけは、自分の好きな音楽を、いい音で聞きたいという、純粋な願望であるケースが多いと思う。そのときの自分の好きな音楽とは、アニメの主題歌だったり、アイドルの曲だったり、お魚天国だったかもしれない。そんな人たちはその後、次のパターンに分かれるようだ。
幸せなパターン
自分の好きなCDを持ってショップに行き、予算を提示、予算内で買えるコンポを適当に視聴して、これにしましょうと決め、その後オーディオのことは忘れてしまう。ほとんどの人がこのパターンで、その後、幸せな音楽ライフを送っている。
不幸なパターン
慎重派に多いパターンで、カタログを収集したり、オーディオ雑誌を購入したりして下調べを行う。一通り予備知識を得ると、ショップに視聴に出かけるが、予備知識による先入観が邪魔をして、正常な判断ができない。結局、評論家の評価と、価格(高いものほどいい音がするだろう)の2つだけを頼りにしてしまう。
最初のコンポを買って帰るが、それは、雑誌ですべての項目に二重丸が付いていたわけではなく、妥協したものである。評論家の意見を基準に買い物をしてしまうと、そのような不満が心の隅につねに残るのである。しかし、その後、幸いにもオーディオに関する興味も薄れ、雑誌を見ることもなくなった人は、正常な音楽ライフを送ることができる。
オーディオマニアへの序曲
最初のコンポを買った後、雑誌の評価が気になる状態が続いた人は、いずれ買い換えようと思って引き続きオーディオ雑誌を熱心に読む。読めば読むほど、余計な知識が増え、現状への不満が募る。また、高価なアクセサリやケーブルに興味を持ち、高い評価が付いている高級コンポや、評論家が絶賛する舶来製品にあこがれを抱くようになる。こうして、泥沼ともいえるオーディオ機器への投資が始まるのである。
オーディオマニアが頼りにする本(2002/4/18)
「オーディオマニアが頼りにする本」をご存じだろうか。マニアが突かれたくないところを直接グスグス突いてくる本である。中傷非難が多く良識に問題があるように思えるが、私のような電気や振動の工学的知識が若干ある人にとっては、結構納得できる内容になっている。逆にそういった知識が全くなく、オーディオ雑誌だけを頼りにしてきた人にとっては、理解しづらく、ただ腹が立つだけかもしれない。
多くのマニアは、工学的知識に乏しく、オーディオ雑誌が唯一の有力な情報源となっている。そこで、その雑誌の記事を長年読んでいるうちに、雑誌の評論や、雑誌に描かれているオーディオの世界に染まってしまい、それが正しいと信じ込んでしまうようである。
多くのオーディオ評論家や、雑誌のライターたちもまた、工学的な知識の乏しい素人である。オーディオ雑誌に書かれている記事を、時々目にすると、滑稽に思えたり、疑問を感じる部分が結構ある。
これら素人の評論や意見は、本に書かれて全国に配布され、業界にも影響を与えている。たとえ評論家の考えがおかしくても、雑誌で良い記事を書いてもらいたいから、メーカがそれに迎合した製品を作るのである。マニアは、メーカがやっていることと雑誌の評論の一致をみて、それが本当に効果があることのように錯覚してしまうのである。
評論家は一般に、高価な製品、高価な材料ほど、その実体とは無関係に好ましいと評価する傾向にあるようだ。そこには、お金がかかっているほど、良いもの「だろう」という、主観が働いているように思える。そのため、マニアが数百万円もする海外製のコンポーネントにあこがれを抱き、ケーブルやインシュレータに無駄な投資を行い、本来の音楽鑑賞をわすれて、自己満足の世界に浸るのである。
「オーディオマニアが頼りにする本」の著者は、こういった、理屈のわからぬ評論家と、その素人意見を鵜呑みにするマニアと、それに迎合した商品をつくるメーカや業者を非難しているのである。
ラジカセはハイファイオーディオの音を越えるか(2002/4/16)
今お魚天国が流行っているが、CDを買って自宅で聞いた人は、どのような印象だったろう。現在はミニコンが主流だが、それ以上のセットをお持ちの方は、意外な印象を受けた人が多いのではないだろうか。
我が家でも、家族がミーハーに漏れずお魚天国を購入してきた。早速うちにあるシステム2で聞いたところ、本当にこれがお魚天国かと思えるほど、印象が違う。
私たちが普段慣れ親しんでいるお魚天国は、売場の過酷な再生ですり切れたテープと安物のラジカセの組み合わせから聞こえてくる音である。自宅のハイファイ・オーディオセットの再生音は、そこからかけ離れていており、まるでアレンジが変わってしまったかのようである。
過去にも、同じような体験をしたことがある。それは、「宇宙戦艦ヤマト」、「およげたい焼きくん」などだ。これらのレコードを自宅のステレオセットで聴くと、TVのスピーカや、たい焼きの店先から聞こえてくる音とは全然違っていて、ガッカリしたのを覚えている。およげたい焼きくんは、やはりカセットテープ+ラジカセの再生音が一番と今でも思う。
ピュアオーディオの現状(2002/4/16)
フルサイズのオーディオコンポーネントは、この不景気と相まってもはや死んだも同然である。20年くらい前までは、フルサイズのコンポにあこがれていた時代だった。整然と積み重ねられたコンポーネントは、家庭のリビングを飾り、羨望の的になっていた。しかし今や、ミニコンポが全盛の時代である。音楽以外に興味の対象が増え、多くの人が、自宅でじっくり音楽に耳を傾けるといったような楽しみ方をしなくなった。
こういう状況になった原因について、メーカーが「良い音」をユーザーに理解させる努力をしてこなかったせいだ、という意見もある。しかし、今時の大衆は、音にこだわらない。一部のマニアがこだわるような、解像度、音像定位、周波数特性などとったファクターは、もはや、どうでもいいのである。
我が家には、古き時代のコンポーネント・セットのいくつかが、ほとんど使われないまま鎮座している。その構成は次のようである。
システム1:

CDプレーヤ マランツ CD-23
アンプ マッキントッシュ MA6800
スピーカ JBL S3100
システム2:

CDプレーヤ アキュフェーズ DP-75
アンプ アキュフェーズ C-275,P-550
スピーカ ダイヤトーン DS-A1
ケーブルなど細かいものは省いている。
システム1は音楽性を追求したシステムで、JBLのS3100はフルオーケストラもそれなりのスケールで再生するし、フュージョンもまあまあといった具合で、あらゆるジャンルの音楽を無難にこなす。ジャズ系には大ハマりで、音が良すぎると思えることもある。昔、ヤマハのNS-1000Mを所有しており、フュージョンを鳴らしたらこれ以上のものはなかったが、スペースの都合で売り払ってしまった。
システム2はオーディオの目標とされる忠実再生を追求したシステムだ。アキュフェーズ+ダイヤトーンの組み合わせによる再生音は、きわめて録音に忠実である。録音の欠点やソースの質をハッキリと描写するが、音楽鑑賞の用途では、その忠実さがかえって邪魔になることが多い。
ここまで音が鮮明だと、ソースの質や解像度といった細かいことが気になってくる。音楽を楽しむというよりは、録音の良さや音質を診断するシステムといえる。
その昔、ソニーのプロフィールHGというモニターテレビを愛用していたことがあったが、CMが変わる度に映像ソースのクオリティの違いがハッキリわかるテレビであった。番組でも再放送のソースは一瞬でそれとわかってしまう。あまり性能の良いものは、番組を楽しむ前にソースそのものの質が気になってしまうのである。
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