新築リスニングルームの設計2〜残響時間の設計(2008/1/26)
前回の記事で勾配天井と可動間仕切りを使うことでリスニングルームに適した拡散音場が構成できることを述べた。今回は、「残響時間」について考えてみよう。
リスニングルームに適した残響時間は諸説ある。加銅の文献によると12畳で0.50Sec、20畳で0.55Secを奨励しているが、これも好みの問題といえる。なお、この残響時間は500Hzの規定であり、周波数別にも考えなければならない。これについても諸説あるが、低周波のこもりを防ぐため500Hz以下を−0.05Sec/octで減衰させ、500Hz以上はフラットとする設計例がある(最新・オーディオ技術P290 オーム社)。
残響時間Tは下記に示すアイリングの式で計算可能だ。
T=0.162V/(−S・Ln(1−α)) (Sec) (1)
V:室容積(m^3)、S:室内表面積(m^2)、α:平均吸音率
吸音材の「吸音力」は、吸音材の吸音率×施工面積で決まる。オクターブバンド別に使用する吸音材の総吸音力を求めてSで割ることで平均吸音率αが求められる。あとは(1)式の結果が目標残響時間に近づくよう、吸音材の種類や施工面積を調整すればOKだ。
実例を示そう。下記のグラフは、前回図案を示した計画中のリスニングルームに関する検討結果だ。残響時間は500Hz以上が0.55Sec、500Hz以下で−0.05Sec/octを目標値としている。

この特性を実現するために、穴あき石膏ボード(φ6、ピッチ22 タイガートーン)を 36m^2、ダイケンのコンサート(TA2711)とボーダ(TA2713)をそれぞれ8.5m^2、7m^2用いればよいことがわかった。「音響用」に作られた高額な材料を使う必要はなく、材料の特性を上手に利用することで、低コストで理想的なリスニングルームを作ることが可能である。
なお、上記の設計は部屋が「拡散音場」であることを前提としている。一般の正方形、長方形の部屋で残響時間を思い通りにすることは難しく、定在波が目立って失敗するだけだ。一般の部屋では残響時間の確保は諦めて有害な定在波が立たないことを優先するのが正解といえる。
コンタクトオイルの結論〜業務用オイルとの頂上対決(2007/5/19)
世の中には「コンタクトオイル」「接点復活材」という名前の付いた様々な商品が市販されている。これらの目的は、基本的に
(1)接触が悪くなった接点を復活させる(ガリ等を軽減する)。
(2)防錆。接点の腐食を防ぎ、接触抵抗の増加を防止する。ガリ等のトラブルを未然に防ぐ。
(3)潤滑。抜去、スライドの際の摩擦を軽減し、接点(メッキ)の摩耗を軽減する(寿命を延ばす)。
である。オーディオ製品は長く使う物だから、長期的な視点も必用だ。すなわち、オイルがゴムやプラスチックに触れたとき劣化させないことや、蒸発して無くならない事、酸敗して機能的に悪影響を及ぼさないことも重要な条件だ。
しかし、接点復活をうたう商品のほとんどが(1)のみの効果であり、使うと一時的に接点の調子が良くなるが、その後の経時変化については何の保証もない。中には、導電性粒子を混ぜてノーマルよりも接触抵抗を減らすという商品もあるが、これも同じだ。接点復活剤には浸透性の強い物が多く、そこら中に広がってベタベタになってしまうから、これを嫌う人もいるだろう。
このような状況から、当館では(1)よりも、(2)(3)に注目してコンタクトオイルの調査および開発を進めてきた。最終的に到達したのが、永久的に蒸発・酸敗しない「液体フッ素」である。ところがこのオイルは、潤滑は優れるものの、腐食を防止する効果がなく、濡れも悪い(表面に塗ってしばらくすると水玉状に集合してしまう)という問題があった。そこで改良・テストを重ねながらこの問題点を改善し、完成したのがRational001sである。
(2)(3)に関しては、業務用で実績のある商品がある。Rational001sの価値を最終的に判断するには、これとの比較が必用だ。最近、たまたま業務用を入手する機会があったので、比較テストをしてみた。下の写真がその結果だ。

鉄ワッシャによる屋外暴露実験結果(36day)
当館では以前から屋外暴露実験を主体としている。時間がかかるが、短時間で行われる塩水噴霧や硫黄ガス試験より、実際に近い評価ができる。
今回テストに用いたT社のC-9030は業務用途で長年実績のあるオイルだ。これより当館のRational001sやRational002の方が錆の発生がやや少ないことがわかる。これによって、当館のオイルが業務用製品よりも防錆に関して同等か、それ以上であることを実証できた。
防錆だけでいえば002が最高だ。これはスクワランベースの廉価版だが、ゴムやプラスチックを変質させる問題がある。これまで002のプラスチックに対する影響は小さいと見ていたが、最近これを保管していたプラスチック容器が変形して蓋がしまらなくなっているのに気が付き、積極的に勧められなくなった。002だけマジックのマークがないのも、溶けて消えてしまうためだ。
Rational001sは相手を気にせず万能に使えるし、若干錆びるといっても裸の鉄を屋外で使った場合の話である。防錆効果は専用に作られた業務用オイルを上回るから、室内では十分すぎるほどの効果を発揮するだろう。
コンタクトオイルに関する過去の記事
Rational002 ニッケル、銀メッキ用コンタクトオイル
接点にオイルを塗ると、接触が悪くなるか
金メッキは錆びる〜その3
金メッキは錆びる〜その2
コンタクトオイルの総合評価
コンタクトオイルのテスト3
コンタクトオイルのテスト2
コンタクトオイルのテスト
接点復活剤はどんなものがいいか
オリジナル商品
新築リスニングルームの設計〜可動間仕切りを活用した理想設計の例(2007/5/17)
新築を機にリスニングルームを持ちたいという人も多いと思う。お金が豊富にあるならオーディオ専用ルームもあり得る話だが、大抵は限られた土地と予算の中、旦那の趣味だけのためにオーディオ&シアター専用の部屋を作ることは難しいはずだ。第一、奥様が許さないだろう。
しかしあきらめるのは早い。ただ一点だけ妥協すれば、十分な広さの理想的なオーディオ&シアタールームを実現することが可能だ。妥協点とは、「子供部屋と兼用」することである。
子供部屋は必要なものだが、長いライフステージの中で、実際にそれを使う期間は短い。子供が小さいうちはまず使わないし、就職、結婚等で出て行けば、空き部屋になってしまう。人数分の子供部屋を作っても、空き部屋になる期間が長く無駄になることが多いのが実態だ。そこで、最初は1部屋のオーディオルームとして使い、子供部屋が必要になった時点で2部屋に間仕切って使うのである。
これを実現するには、1部屋として使えるよう部屋はきれいな長方形でないといけない。長方形の形は自由だが、子供部屋1つに6畳とると最低でも12畳とれる。この場合、短辺で3.6mとれるようにするとベストだ。部屋の最適寸法比は諸説あるが、きれいな整数倍にならなければ大差ないと見られる。気になる人はモードを計算して縮退を調べてみるといいだろう。
リスニングルームで最大の課題が「残響時間」と「有害反射防止」の両立だ。特に残響時間は音の「潤い」を得るための重要スペックといわれる。平行な壁面を無くせば達成するが、これを完全にやるのは現実に難しく、現実は有害反射対策が優先され残響は犠牲になりがちだ(平行な面の有害反射を消すには、一方の壁面に吸音処理するしかなく、結果的に残響時間が犠牲になる)。
しかし今回のケースでは、「間仕切り」するという前提がリスニングルームの設計にプラスに作用し、困難とされた「残響時間」と「有害反射防止」の両立が合理的な形で実現できる。 具体的には、次のようにする(PAT.Pend)。
- 「可動」間仕切り壁を反射板に使う
間仕切りに可変自由な壁(フリーウォールなど)を用いる。1部屋で使うときこの壁は邪魔で置き場所に困る存在だが、これを「反射板」として活用する。
- 天井を「天井勾配」に沿って傾斜させる。
中央で2.7m、最大で3mとれればベスト。
- 部屋の長手方向の一面に2.4mくらいの高さで250〜300mm程度の出っ張り(水平リブ)を設ける
間仕切り壁を反射板として使う際この水平リブを利用して突張り固定する。2つのドアのうち一方を反射壁で隠してしまい、遮音を向上させると共に平行面を減らす。
- 部屋の中央に間仕切り壁固定のための梁もしくは三角リブを作る
三角リブは遮音性がありプライベートな空間を作るために便利だ。ただ前後の壁間で平行面が出来るので、部屋を完全に1/2にする位置に配置せず少しずらすといい。
- 部屋の4隅に低音を吸収するための穴あきボードを設置する
反射板は低音に対して効果が少ないので、部屋の4隅で吸音する仕組みをつくる。この場合の吸音原理は、壁内の空間を利用したヘルムホルツ共鳴器だ。4隅がいいのは、すべてのモードで音の腹になるためである。壁内にグラスウールを充填するのをお忘れなく。
次の図は、その実施例である。

図1のようにすると部屋に平行な反射面はほぼなくなる。天井は壁と同じ仕上げ(石膏ボードにクロス貼り)でいい。前後の壁は平行になるが、通常はどちらかに吸音処理するしセンターはオーディオラックや人間が配置されることが多いので特に何もしなくてもよいといえる。四隅の平行面は吸音ボードを貼るので問題ない。
ホームシアターを計画する場合はスピーカケーブルを予備配線しておくといい。ナショナルに壁埋め込み型のSPターミナルがあるのでこれを使うと便利だ。
以上の構成により、十分な広さを持った理想的な音響空間が、一般家庭でも実現できる。これは実際に計画中なので、完成したら写真を披露しよう。
ブラインドテストの落とし穴2〜アンプ、ケーブルの比較はすべて間違っていた(2007/5/6)
前回の記事で、ブラインドテストをする場合は物理的変動分の影響を排除しないと意味がないことを述べた。今回は、その中のダンピングファクタ(DF)に注目して補足しよう。
左のグラフはDFによるスピーカの特性変動を示した物だ。DFによって周波数特性に大きな変化を生じる事がわかる。DFが10を超えると特性の変化が少なくなるが、耳のいい人は過渡応答の違いを聞き分けられるかもしれない。そんなDFは、次式で表される。
DF=Rs/(R0+R1) (1)
Rs:スピーカの公称インピーダンス、R0:アンプの出力インピーダンス、R1:ケーブルのインピーダンス
分母のR0とR1はどちらもミリオームオーダだから、ケーブルの音の違いを正確に知るためには、DFを一定にするためにケーブルの抵抗値R1を揃える必用があることがわかる。
注:可聴域のR1は一定だから、直流抵抗で考えてかまわない。
大抵の人はことのことを知らないから、ケーブルの違いはブラインドテストで明確になると考え、太さが違うケーブルを「同じ長さ」に切りそろえて、取っ替え引っ替え比較視聴を行い、
「これこそが、スピーカケーブルによる音の変化である」
「ケーブルで音が変わることを実証した」
と勘違いしてしまう。極端に太さが違うケーブルを「同じ長さ」に切りそろえて比較すれば、差が出るのは当たり前といえる。
グラフ1 ダンピングファクターと周波数特性の変化
「強くなる!スピーカ&エンクロージャー百科」誠文堂より(絶版)
アンプを比較する場合も同様の理屈でDFを一定にする必要性が見いだされる。これをやらない比較視聴は、単に出力インピーダンスの違いを聴くだけになってしまう。もしスピーカ端子のところでゲイン校正をしていない場合は、それ以前の問題といえる。
スピーカケーブルやアンプを正確に比較するために、DFを意識して抵抗値を揃えた事例はほとんどみかけない。従って、従来実施されきたこれらの音の比較視聴は、単に抵抗値の違いを聴いていたに過ぎないと推察できる。抵抗値を統一してブラインドテストをすれば、「ケーブルの音」などというものは存在しないことが証明できるだろう。
また、「真空管アンプの音」もDFによって多くが説明できる。真空管アンプのDFは一般に10以下だから、グラフ1から真空管アンプは低出力の割に低音が良く出て、響きが多い音になると予測できる※。これは、一般に言われている真空管アンプの音の傾向と一致する。
半導体アンプもDFとゲインを正確に揃えて比較すれば、出力の大きいアンプほど音が悪い(歪みが多い)という本来の傾向が見えてくるに違いない。
※「真空管アンプは、トランジスタアンプより10倍の駆動力がある」という論評は、このような低音が多めに出る性質を素人が勘違いしたものだろう。半導体アンプにうんと細いケーブルを繋いでDFを1に設定すれば、真空管アンプに似た音が、ずっと特性に優れた形で出せるだろう。とすると、真空管アンプにしかない、独特の「音色」や「味」などというものは存在せず、「単に歪みっぽい音」という結果になるだろう。これをブラインドテストで証明すると面白いかもしれない。
アンプの出力インピーダンスの違いを「それもアンプの音の一部だ」とする解釈もある。しかしプレイヤーやプリアンプの出力インピーダンスとは違い、スピーカから見たアンプ側のインピーダンスは繋ぐケーブルでコロコロ変わってしまう。高いDFを実現できるアンプは、「音の一部」ではなくて「性能の一部」と解釈するのが適当だ。
アンプの結論(2007/5/2)
Hi-Fiアンプに関しては、結局下記条件を満たすものを購入すればよい。
- 必用最小の出力
- 同じ音量で鳴らした場合、一般に出力の大きなアンプほど音が悪い(歪みが大きい)。これは電流容量の大きなトランジスタ、FETほど電気的特性が悪い傾向にある為だ。アンプの出力は使うスピーカの能率で決まる。具体的にはこちらのグラフの条件を満たす必要最小の出力とする。
注:(07/5/14追補)
但し、出力段にICモジュールを使ったアンプはこれにあて填らない。ICアンプはディスクリートに比べ歪み率などの特性が1桁悪いからだ。ミニコンやラジカセが小出力でありながら音が悪かったのは、ローコストなICモジュールが使われていたせいである。デジタルアンプの場合このような事情はなく、音を犠牲にすることなく小出力のものが作れる。デジタルアンプの場合はクロック(スイッチング)周波数が高いため、小出力なことは性能面でより有利になる。最近、小出力のデジタルアンプが注目を浴びているのはこの為だろう。
- ダンピングファクタが40〜100程度であること
- 出力インピーダンスで言えば0.2〜0.08Ω(at 8Ω)。ダンピングファクタがこの範囲にあると市販のケーブルを使ってスピーカのQ(音色)をコントロールしやすい。この範囲を逸脱すると、DFで音色を調整しようとしたときケーブルが長すぎたり、太すぎたりして扱いずらい。忠実再生の観点からいえばDFは高いほど良いが、100を超えて高い性能は家庭で使う場合ほとんど意味がない(変わらない)。
- 精密なボリウムコントロール
- どこまで絞っても左右同じゲインでガリ等の経年変化が起こらない物。すべての入出力ゲインが校正されたアンプが理想。アンプの価値(価格)はボリウムコントロールとゲインの正確さで決まるべきものだ。
- 品質の良いメッキがされた端子
- 入力端子はすべて厚手の銀もしくはスズメッキされているもの。金メッキの場合はしっかりした下地メッキがあってかつメッキ厚が0.5ミクロン以上あることが条件となる。
- 締め付けトルクを管理できるSP端子
- 確実な接続と接触抵抗を維持管理するために必用な条件だ。ラチェットが付いていて適正な締め付けトルクでSPケーブルが取り付けられるもの、もしくは六角穴もしくは二面幅が付いていて市販のトルクレンチが使えるものがよい。ターミナルナットに目盛付きトルクレンチを内蔵していれば理想(PAT.Pend)。
次に、選定の対象とならない項目を挙げる。
- 筐体の素材や重さを重視したもの
- 筐体の素材や重さと音は無関係である。やたら重くて豪華な作りのアンプは、無駄な部分にコストがかかっていると考えて欲しい。
- 無駄に出力が大きいもの
- スピーカの能率は最低でも90dB欲しい。となると必用なアンプの出力は100W以下となる。家庭用で100Wを超えるアンプは能率の低いSPを駆動するための特殊品と考えておきたい。
- 炭素皮膜、金属皮膜抵抗のボリウムを使ったもの
- ローコストな機種では仕方ないが、何十万円もするアンプでこのような部品を使っているのは問題だ。
- トランスからうなり音が聞こえるもの
- アンプは騒音、震動源である。うなり音や振動問題はローコスト製品に多い。トランスの音や振動をゼロにする事はできないが、リスニングポジションまで離れても聞こえるくらい大きいものは問題である。
上記の条件を全部満たすアンプは残念ながら存在しないので重要なポイントだけを押さえておけばいい。端的に言えば、アンプは使うスピーカの能率にあった最小出力ものを用意すれば終わりだ。予算に余裕があれば、ボリウムコントロールにこだわって欲しい。
出力の小さいアンプほど音(歪み)に対して有利※だから、出来るだけ小出力で済むように、能率の高いスピーカを選ぶことも大切である。
※但し、出力段にICモジュールを使ったアナログアンプは除外される。前述の注参照。
アンプの基本機能は、あくまで信号を忠実に増幅して、かつそのゲインを正確に調整することにある。アンプにメーカやブランド固有の音色を期待したり、音色の不満をアンプのグレード(価格)で改善しようとするのは間違いだ※。音はダンピングファクタに大きく影響されるから、音を変化させたい場合はケーブルの抵抗値でDFを調整すればよい。カタログの能書きや雑誌の論評は判断を狂わせる原因になるから読まない方がよいだろう。
※アンプに期待できるメーカ、ブランド固有の特色は、外観(見た目)だけである。
チャンネルデバイダと複数のアンプを用いてユニットを個別に駆動する「マルチアンプ方式」が存在する。ネットワークのインピーダンスが無くなり特性上は確かに有利だが、測定環境も技術も伴わない素人が音をまとめるのは不可能に近い。2ウェイなら出来るかもしれないが、3ウェイ以上ではまず無理と考えていい。マルチアンプは泥濘の始まりだから手を出さないのが正解だ。
<関連記事>
アンプのブラインドテスト
音楽之友社 stereo 2004年3月号 に掲載されたブラインドテストの結果
JBL JRX115は究極のスピーカか(2007/4/26)
とあるサイトでJBL JRX115がHi-Fi用途に強く推奨されていることを見つけた。過去、「スピーカは30cmを超えるウーファ+広帯域ホーンを組み合わせた2Wayシステムが音質的に満足できる」と述べたが、現在こういうシステムは一部の高価な品を除き存在しない。JRX115はSR用で、プロ用機器を扱うショップでなければ絶対に出てこない選択肢だ。民生機器しか見てこなかった人にとっては盲点といえる。このスピーカは能率が98dBもあり、こちらのグラフからすると、組み合わせるアンプは20Wもあればいいことになる。
こういった高能率のスピーカは過渡応答に優れ、能率が90dBを下回るような低能率のスピーカでは絶対に得られない音を出す。聴感上は、「生々しい」「明瞭」「音離れがよい」と感じるだろう。「生々しい」音は、大口径ウーファを擁する高能率スピーカが得意とすることだ。私がオーディオに興味を持ったきっかけも、手を伸ばせば掴めそうなくらいのリアルな音像体験にある※1。
欠点は、中域が張り出す分、相対的に低域のレベルが落ちる点にある。重低音再生など最初から期待できない。低域が出ない傾向は、能率が高いSPほど強い※2。しかしJRX115のウーファは38cmあるので、一般家庭の視聴距離では不満無いレベルは出ていると推察される。
※1 私が学生のころ、オーディオショップで聞いてショックを受けた音がこれだ。タンノイのアーデンかバークレイだったと思う。オペラが鳴っていて、そこに本当に人がいるかのようだった。
※2 民生用SPに低能率なタイプが多いのは、再生周波数の下限をユーザが強く気にするからだろう。
JRX115にはもう一つ問題がある。ツイータを耳の高さに持っていくための「台」が必用な点だ。これはウーファが2連になっているJRX125を選ぶ事で改善する。こちらは台が要らないし、聞き比べれば、JRX125の方が低域が豊かに聞こえるはずだ。ウーファの面積が2倍になることで放射インピーダンスが改善され低域がダラ下がりに伸びるだろう。ただ、JRX115よりクロスオーバが高く下のウーファからも中域が出るのでこれは遠距離SR用とみるべきか。家庭に持ち込む場合は後で述べるような改造が必用になるかもしれない。
このサイトには他にもおもしろい記述があるが、残念ながら、技術的な解釈や考察には間違いが多い。例えば、ダンピングファクタ(DF)に関する記述だが、アンプでいくら高くても、ケーブルや接触抵抗の影響ですぐに1/3以下に落ちてしまう。アンプのDFは40もあれば十分で、あまり大きいと過制動で低音が不足する場合がある※3。しかし、技術解釈、論理展開は無茶苦茶でも、結論だけは正しい記事もあっておもしろい。経験だけでも注意深く観察すればある程度正しい解を得られるようだ。
※3 電線を含む総合DFが30を上回ると聴感上差はほとんどなくなる。スピーカのQが小さい(0.7以下)場合はむやみにDFを大きくとると低音が出なくなってしまう。
プロ用アンプではDFが100を超えるものが多いが、SPケーブルを数十メートルで使ってもちゃんと駆動できるようにする為である。
JRX115、125を鑑賞に使う場合不満が出るかもしれない。そんな場合は下記のチューニング記事を参考にライトチューンしてみてはどうだろうか。元々安い作りのスピーカだから、これをベースに、好みの音に仕上げていくのも楽しみといえよう。
(2008/2/9 追補)
JRX115に適当なスピーカスタンドが無いのが欠点だったが、紹介者自身おもしろい解を見つけたようである。定在波に関する知識、理論は相変わらず無茶苦茶だが、コーナに配置しツイータの軸線をずらすことでJRX115の弱点である低域の弱さと高域のキツさを同時に解消できるのは確かだ。3次元的に自由なセッティングが可能なスタンドはユニークで評価できる。
<関連記事>
FAPSラボ(JBL JRX115 ピュアオーディオ向けチューン報告)
<参考購入先>
JRX115
(サウンドハウス)
JRX125
(サウンドハウス)
ヘッドフォン選びの落とし穴〜補足(2006/5/18)
こちらでヘッドフォンの特性について述べたが、難しくてよくわからない、という意見が多いようだ。そこで、もう少し簡易な表を作ってみた。

これは音響工学にある「受話器の原理」を参考にしている。しかし教科書に書いてあるのは基本原理だけであり、実際のものは様々な機構や工夫が取り入れられている。そこで、実物を購入して測定、分解しながら機能を一つ一つ調べあげ、まとめ上げたのが前回の記事だ。
ヘッドフォンには多くの形式があり、音色の傾向も異なるが、理屈を知ったうえで機種選びをすれば、散財することなく好みの機種を早く見つけることができるだろう。
また、理屈がわかったうえで改造すれば、期待される結果を得やすく、無駄な試行錯誤をしなくて済むだろう。いくつかの例を示そう。
- 低域が強すぎる。音がこもる(密閉型の場合)
- ハウジングにポート穴がある場合は塞ぐ。分解してハウジング内部に詰め物をする(等価的な容積を減らす)
- 低音が出ない(オープンエアの場合)
- パッドを潰して耳とドライバを近づける。パッドの密閉度を上げる(パッドを外して詰め物の量を増やす)。パッド内部と外との連通部の抵抗を増やす(要するに密閉度を高める)。
- 低音が出ない。パッドを変えても改善しない(インナーイヤの場合)
- 調圧穴の大きさを小さくする(調圧穴にテープを貼って針先で新しい穴を開ける)。パッドの密閉度を上げる(密閉度の高いパッドに交換する)。
音質に評判のあるHD650は、完全なオープンでなく密閉度を少し確保して低域よりの音質を実現した物と考えられる。
密閉型の高級機はパッドに密閉度のあまり高くない素材を使い、若干解放よりの特性にして高域共鳴機の依存度を減らしていると推測される。
Rational002 ニッケル、銀メッキ用コンタクトオイル(2006/5/5)
ニッケルメッキ、銀メッキは錆びやすく、Rational001では十分保護しきれない場合があった。そこで新たに開発したのがこのオイルである。これはフッ素オイルを使ったRational001と違って材料が容易に手に入るため、面倒な個人売買はせず、製法を公開することにした。
準備するもの
1.合成スクワランオイル(G&Gスクワランオイル アーパス取扱)
2.局方ワセリン
3.電子秤(1g単位で計れるもの)
スクワランオイルはいろいろあるが「天然物」は酸敗しやすいため避ける。天然か合成か解らない場合は、なめてみるといい。純粋なスクワランは無味無臭である。なめてみて、味を感じるものはダメだ。
スクワランオイルとワセリンを、重量比4:1(標準)で混合する。配分は多少変えてもかまわない。ワセリンを均一に溶かすため、湯煎にかけながら攪拌する。
完成したオイルは適度なチキソ性を示し、塗りやすく、垂直な面に塗っても垂れない。潤滑に優れ、水を通さないワセリンの性質によりCRC並の防錆効果が得られる(写真)。もちろん、スキンケアに使っても差し支えない。

鉄ワッシャによる屋外暴露実験結果(48day)
欠点は、プラスチックやゴムに対する影響がゼロでないことだ。特に天然ゴムに対する相性が悪く、染み込んで膨潤させてしてしまう。プラスチックも材質によっては変形させてしまうから、金属以外は塗布しないことが賢明だ。
(06/7/2追加) ミガキ銅板の屋外暴露実験結果(9day)
銅板の下半分にRational002を塗布し、屋外においておいたもの。塗ったところの光沢は試験前とほぼ変わらないレベルを保持している。銅板の腐食実験は以前も実施しているが、変色しやすい銅板でこのように明確な差が出たのは初めてである。
<参考データ>
コンタクトオイル比較表
ピュアオーディオの将来(2006/4/11)
その昔、レンタルレコードというものがあった。私が学生の頃、レコードを買うお金が無くて、せっせとレンタルしては、カセットテープにダビングしていた。後から編集が出来ないので、時間を積算ながら曲の構成に頭を悩ませていた。レコードにもテープにも「頭出し」という神経を使う作業が必要で、失敗してはやり直しをしたものである。
時は流れ、MDが登場した。レンタルもCDが主流になり、ダビング作業もかなり楽になった。しかしダビングは依然実時間であり、タイトルやアルバム名の記入は手書きであった。
現在は、iPodのおかげでリッピング&ICプレイヤーという図式が誕生した。優秀な管理ソフトと、CDDBとの連携により、ダビングや編集作業が大幅に高速に、かつ省力化され、編集作業タイトル名の入力も必要なくなった。手持ちのCDを全部HDDにリッピングし、プレイリストを作れば、好きな音楽を自在に再生することが可能だ。ダビングや編集の苦労はもう過去の物といっていい。
この仕組みは携帯オーディオだけのものではない。フルデジタルアンプを組み合わせることで、ピュアオーディオの環境も構築可能だ。これを次に示そう。
パソコンには「音楽管理ソフト」を導入して運用する。音楽管理ソフトはiTunesという優秀なお手本があり、これを真似たいくつかの管理ソフトが市販されている※。
※BeatJam、SonicStage(フリー)などがある。前者はタイトルのカナ変換機能が充実しておりMDをメインに使う場合は便利だ。ソフトの品質は後者の方が上である。
入り口から出口までデジタルだから、音質劣化はなく、アナログハイエンドに匹敵する十分な高音質を得ることが可能だ(但しWindowsのボリウムコントロールは常時最大にする必要がある)。CDソースを聴きたければ、パソコンに付いている物がそのまま使える。1bitアンプはSM-SX10が現行品としてある。もし手に入れば、SD-SG40でもいい。前者はやや高価だが、ファンなど故障する部分がないので末永く使えるだろう。
このようなパソコンで音楽を管理、再生するシステムに対して、
「音楽を聴く姿勢に問題がある」「音楽に対して失礼だ」
という人がいるかもしれない。しかし、椅子に座ってグラス片手に目をつぶり、音楽だけを聞いている人はどれほどいるだろう。大抵の人は、何かを見ながら、あるいは何かをしながら音楽を聴いているはずだ。今後は、「インターネットを見ながら、音楽を聴く」というスタイルが増えるだろう。
リッピングする際のフォーマットはATRAC3 132kがサイズと音質のバランスが最もよいだろう。ATRAC3Plus256kはCD並だが、ATRAC3との音質差は少なく、サイズが2倍に増えるだけのメリットはない。両方聴いてみて差がわからないなら、ATRAC3 132kで十分だ。この形式はMDにLP2で転送する場合再エンコせずに済むため高速転送できるメリットもある。
リッピングしたソフトを外に持ち出す場合はICプレイヤーが便利だが、ヘッドフォンで高音質を求めると、今のところ1ビットMDしかない。MDは1枚当たり177MBの容量しかないが、複数を携帯することである程度カバーできるだろう(Hi-MDに対応すれば305MB)。
音楽ソースの入手源として、インターネットのミュージックストアが新たな選択肢に入る。しかし1曲200円前後という値付けは不当に高価だ。配信されるソースの質や使い勝手からすると、1曲50円以下が適正価格だろう。この状況が変わらない限り、入手源は当面レンタルCDが主になると考えられる。
このシステムで問題になるとしたら、パソコンのファン音だけである。部屋にはエアコンの空調音もあるから、パソコンのファン音だけを悪者にするのはおかしい。ファン音がどうしても許せない人は、デジタル出力付きのMDを使えばいいだろう。
プチノイズ対策
パソコンの再生環境ではデジタルであっても「プチ」というプチノイズが乗ることがある。これは常駐ソフトや割り込みなど様々な原因が議論されているが、波形の飽和が有力だ。ボリウムコントロールでBassBoostなどのイコライジング機能が有効になっている場合はこれをミュートすることで改善する場合がある。これでもダメな場合はメモリを積んでいるサウンドカードの導入を検討して欲しい。CREATIVEがお勧めだ。
このHPの内容を試される場合は、ご自身の責任において行ってください。また、使用感や考察はあくまで私見であり、決して断定的な結論を下すものではありません。
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