創造の館 試聴室(2009/9/21)
以前紹介した新築リスニングルームを、「創造の館 試聴室」と呼ぼうか。以前ご紹介したように、ここにはJBL−S3100+ソニーTA-F501+CDプレーヤ(デジタル接続なら何でも同じ)のセットがある。このセットで半年間、いろんなソースを聴いてきた感想は次の通りだ。主観的な評価だが容赦いただきたい。
- ボリウム位置にかかわらず定位のセンターがきわめて正確。
- 低音が豊かで、芯がある。
- 音場のS/Nが抜群に高くて、細かな音が明確に分離して聞こえる。
- ボーカル、楽器のリアリティが高く生々しい。
- 何を鳴らしても心地よく、いつまでも聴いていたいと思わせる。
S3100から出てくる音が生々しいのは、高能率ホーンの功績だろう。やや重い38cmウーファから出てくる音も素直で、ホーンとの繋がりもよい。デジタルアンプがこのスピーカの良さを100%引き出しているようだ。ホーンや大口径2Wayシステムには物理的欠点がいろいろ指摘されるが、出てくる音からはそれを意識させず、無条件に良い音である。
このシステムで音楽を聴いていると、脳内からα波がドッと出るような感じがする。やはりオーディオはスピーカで決まる。そして、音楽を充実させるためには、十分な低音再生能力が何よりも重要であることを、改めて認識させられた。
低音再生能力は振動板の大きさ(および箱の体積)に単純比例する。スーパーウーファだろうが何だろうが、この原理原則を覆すことはできない。38cm相当の口径は最低レベルと思って欲しい。30センチ以下のシステムでは、いくら音が良くても満足できない時がきっと来るだろう。
オーディオの成否はスピーカで決まり、私のお勧めはやはり38cm(15インチ) 2Wayホーンシステムである。といっても、私が持っているS3100は絶版でもう手に入らないし手ごろな後継機種もない※1ようだ。サウンドハウスなどからSR用を探すとよいかもしれない※2。現代は中〜小型システムが主流で、海外製の高価な小型システムをみかけるが、口径の小さな機種はすべて論外、評論家の論評など無視してアレコレ迷わないことだ。
※1 S3100、当時の買値は2本で60万円くらいだった。
※2 SR用は能率が高いので相対的に低域が不足する。ウーファ2連の型がよいだろう。
運よくよいスピーカに出会えたら、あとは当サイトの記事を参考に合理的と思えるシステムを作ってほしい。ケーブルも以前述べたように太さを基準に1セット買えば十分である。
サブウーファは有効か(2009/7/5)
サブウーファは低域を補うために有効な手段といわれ、私も使ったことがある。しかし、サブウーファには次の問題があるという。
- 出てくる音に遅れがあり、メインスピーカと一緒に鳴らしたとき違和感を感じる。
- 置き場所を選ばないと言われるが、実際には方向性を感じる。
私が使った時も同じ印象で、結局使わなくなった経験がある。
「音が遅れる」原因は、サブウーファの振動系質量が重く、過渡応答が悪いことだ。
「方向性」を感じる原因は、カットオフ周波数以上で出てくる音の影響だ。
サブウーファには通常、中高域をカットするためのローパスフィルタが付いている。このフィルタはカットオフを境に音がゼロになるわけではなく、高域に向けて減衰するしくみだから、カットオフ周波数以上でも音が多少出てしまう。また、サブウーファは振幅が大きくなりがちで、このときの支持系に起因する高調波歪はローパスに関係なく出てしまう。それらを人間の耳が感知して方向性を感じてしまうのである。
振動系の重さに起因する過渡応答の悪さは、電流フィードバックで補償可能だ。この回路を内臓した商品にヤマハYSTがある※。YSTはメカニカルフィルタやヘルムホルツ共鳴器が組み合わされており、従来言われていたサブウーファの問題をかなり克服している。
サブウーファにはポートなど共鳴器を組み合わせたものが多い。共鳴させると位相が回るが、これらの位相回転はメインスピーカから出る音と打ち消さないよう極性を選ぶだけで問題ない。
方向性の問題は、置き方である程度改善できる。サブウーファをセンターしか置いたことがない人は、一度部屋の隅に置いてみて欲しい。部屋の隅は低周波の放射効率が最も高く、相対的に高周波のレベルを下げることができる。また、隅は部屋の共振モードを励起しやすく、方向性を曖昧にする上でも効果がある。
また、サブウーファを選ぶ際にもメカニカルフィルタ(共鳴器など)と組み合わされウーファが直接見えない形の機種を選ぶことが大切だ。
サブウーファも「放射インピーダンス」が関係する。数十Hzの低音を出すためには大きな空気の振幅が必要だから、歪や効率の点からもウーファやダクトの放射面積が大きいほど有利だ。また、少しでも音圧を稼ぐために、上記のように部屋も最大限利用すべきである(但し、壁が弱いと効果も薄い)。
本来、30Hzの低音を効率よく再生するためには10メートル以上の振動板がいる。たかだか、数十cmのウーファにポートを組み合わせてみたところで、本格的な低音再生は望めない。激しく空気が空振りするだけである。直近では30Hzが出ているが、リスニングポジションまで離れて聞こえてくるのは高調波歪が大半、という結果になりがちだ。
本格的な低音再生を望むなら、大口径のパイプダクトを使った気柱共鳴のシステムが一案だ。BOSEにバズーカのような商品があったと思うが、これがそうだ。これを縦置きしたものを自作し、部屋の左右隅に配置して電流フィードバックをかけて遅れを補償するとよいだろう。
JBL S3100エッジ交換(2009/3/21)
ウレタンエッジは朽ち果てる運命にある。S3100のウーファには光を通さないカバを嵌めていたが、やはりダメになってしまった。こうなることは、買うときに覚悟していた。
エッジ交換というと、最近ではそれ専門のショップがある。交換に使う材質は、ウレタン、ゴム、布、革など様々だ。布は粘弾性樹脂含浸、革はそのままか、樹脂含浸して使われる。これらの材質の違いは、ばね定数Kと減衰Cだけを考えればよい。ちなみに、
Kについては 布≒革<ウレタン<ゴム(厚みが同じ条件)
Cについては 布≒革>ウレタン>ゴム
耐久性は、屋内であれば 合成ゴム≒布≒革>>ウレタン と見てよい。
C、Kはエッジを押したときの反力や復元速度を調べることで誰でも比較できる。復元が遅いものほどCは大きい。エッジ共振を防ぐ意味でCは大きいほど良く、f0を下げるためにKは小さいほど良い。
元通りの音にこだわると「ウレタンに交換」するしかないが、エッジにウレタンが使われているのは「安い」からであって、必ずしも「良い」からではないことに注意して欲しい。
エッジ交換によって変わる可能性があるのは、支持系の非直線性歪、f0とQ0などである。交換後、f特を出してくるショップがあるが、ウーファで重要なのはf特ではなくf0とQ0が読み取れる「インピーダンス特性」である。一番の問題は「施工精度」に関係する非直線性歪だが、これを交換前後できちんと測定評価するショップは無いようだ。
次に、材質の違いを細かく見てみよう。
- 革エッジ
- 革をそのまま分割使用したものと、樹脂を含浸させて整形させたものがある。革はC,K共に理想的な素材だが形状が安定しない。そのため、何からの樹脂を含浸させて使われる。天然物は品質が安定しない。繋ぎ合わせたものは論外。樹脂含浸は不明なものが多く実績も少ない。色がオリジナルと大きく異なり見た目の印象が変わってしまうことが多い。
- 布エッジ
- 布をベースに粘弾性樹脂を含浸、もしくはこれに相当する素材を合わせて加熱成形したもの。特性、安定性ともに優れており、強度も高い。現在に至るまで広く使われている。
- ゴムエッジ
- ゴムといっても種類が豊富で、フッ素、シリコン、EPDMならまず問題ないが、それ以外のものだと耐久性に注意する必要がある。素材の性質上、Cがやや劣りゴム素材100%だと「ボンつく」結果になりがちである。「オリジナル」と称するゴムエッジで実績を重ねているショップがあるが、その中身はナイロンの芯材を合成ゴムでモールドしたもの。
最終的に私が選択したのは布エッジで、私はこれをBGMというショップに出した。出来栄えはまあまあ、特性は問題なしである。
左は布エッジに交換されたJBLS3100(ME150HS)。
このユニットのフランジにはザグリが掘ってあり、ボルトの頭がフランジの面まで埋まる。通常エッジ交換すると穴無しの仕上がりになるから、布エッジに貼換えたところへボルトをねじ込むと折角のエッジを巻き込んで破損してしまう(ウレタンなら問題ない)。後からエッジに穴あけするのは難しいので、ショップで穴あけしてもらうことが重要。似たような取付けのユニットを交換に出す場合は、この点をショップとよく相談して欲しい。
また、ショップが近所にある場合は一度訪問することをお勧めする。作業場の整理整頓、商品の取り扱いなど見れば、信頼できるか見当が付くものだ。
バナナプラグはどれがよいか(2008/8/12)
アンプのSP端子は圧着端子で接続できるのがベストだが、通常はバナナと裸電線しか使えない物が多い。こちらで述べたように、裸電線のネジ止めは不安定だから出来れば避けた方がよい。しかし、ターミナルの形状よって圧着端子が使えない場合があり、この場合は他の方法を含めた検討が必要になる。これをYES,NO形式で次に示す。
- 丸形、Y形圧着端子が使えるか YES=ベストです NO=2へ
- ナットが金属製か※ YES=棒形圧着端子を使うか、素線をハンダ上げする NO=3へ
- バナナが使えるか YES=以下の記事を参照 NO=素線がメッキされたケーブルを使う。
※ナットが金属製の場合、締め付けトルクが稼げるので棒形圧着端子や、ハンダ上げした素線の締め付けが出来る。ナットの外側プラスチックでも電線に当たる部分が金属になっていれば「金属」としてよい。

市販のバナナプラグの形状はRCA同様マチマチで、電流容量や接触抵抗について不明なものがほとんど、高価な割に粗悪な商品もかなりある。そもそも、バナナは元々計測器用途のプラグであり、簡単に抜けてしまう。こういうプラグをSPターミナルに使っていいものか疑問だ。
バナナプラグ選定のポイントは以下の通りだ。
- 電線のハンダ付けが可能である
バナナを使う場合は電線をねじ止めせず、必ず半田付しなければならない。バナナに電線をネジ止めしていたのでは、バナナを使う意味がない。
- 出来ればツイン
バナナは単体のもの(シングル)と、1対を一体形にした(ツイン)の2種類がある。ツインの方が相対位置が拘束される分安定して取付できる。ターミナルの間隔が約19mmであればツインに対応している。
- 本体がプラスチック製である
ハウジングの材料はプラスチック、金属(写真で一番左)、両者混在があるが、オールプラスチックで出来る限り軽量なものがよい。金属製や大型の物はその重みでターミナルにストレスをかけるし、金属が露出しているとショートの危険がある。バナナもRCA同様、真っ直ぐ平行に取り付けできることが第一である。
- コンタクトがベリリウム銅で出来ている
ベリリウム銅は耐疲労性と導電性に優れたバネ合金で、バナナのコンタクトには理想的な材料である。
- コンタクトがバナナ形でないものは要注意
バナナの中には薄板を風車のように成型してスプリングを形成したもの(写真 左から2つ)や、様々な特殊形状がある。スプリング付きはSP端子との接触抵抗は減らせてもスプリングと本体との間に新たな接点ができ、この部分の作りが問題になる。
バナナはIEC規格にパスし、電流容量が明確になっていることが最低条件である。世間には「オーディオ専用」と称する特殊バナナがあるが、そのほとんどがガラクタだ。規格に準拠してもエッジ処理がいいかげんで、抜差しによってターミナルをキズつけてしまうものはダメだ。
左は上の写真で示したツインバナナのボルトを抜いて、電線を通し直接ハンダ付けしたもの。プラグが軽量化し、ハンダ付けによって接点の接触抵抗をゼロにできる。
<参考>
スペックが明確で信頼性のあるバナナプラグは下記から入手できる。1010-I-シリーズがお勧めだ。ベリリウム銅のスプリングリングが差し込むことで締まる構造。バナナにしては低い接触抵抗を実現し、36Aとスピコン並の電流容量を有する。
ネット通販TOKIWA ELENET.JP
フルデジタルアンプの問題点と実力(2008/8/8)
入り口から出口まで全てデジタル処理し、一切のアナログ処理が介在しない「フルデジタルアンプ」は、アナログでは望み得ない高精度のボリウムコントロールと忠実な信号伝送が期待できる。しかし、このタイプのアンプはまだ発展途上にありいくつかの問題がある。これを次に示そう。
- 演算時の桁落ちによる情報量の減少
ゲイン、トーンなど演算処理をすれば必ず桁落ちで情報が欠落する。ただし、十分な演算語長があればあまり問題にならない。ゲイン調整が最大の問題で、これをわり算で処理すると小音量において極端に情報量が減る。これに関しては、わり算をやめてPWMの波高値を変えたり、小音量用の低電圧電源を別途用意し、切替えて使うことで改善できる。
アナログアンプでは半導体の特性やノイズによって情報が損失するが、デジタルの場合は演算処理の桁落ちによって情報の欠落が起こる。アナログの場合、その改善にひたすらコストがかかるが、デジタルの場合は演算処理で決まるためコストはほとんどかからない。デジタルアンプが安くても音が良いのは、この為だ。
- 左右の位相誤差
ゲイン誤差が無くても位相誤差があると音像定位がズレる。アナログアンプの位相は振幅特性だけで決まっていたが、デジタルの場合は無駄時間があるため可聴域に位相ズレが観測されることがある。
位相誤差はスイッチング周波数でほぼ決まる。たとえばケンウッドのR-K1000では20kHzで10度の群遅延があるので、10/(360*20*10^3)=1.38μs=720kHz あたりで駆動していると推定できる。20kHzで10度という数値は聴感で解るはずもないが、可聴域に誤差が出ていると気になる。無意味な過剰スペックはHi-Fiオーディオ機器のモットーだからだ。ちなみにシャープのSG40は5.6MHzスイッチングで20kHzまでの位相誤差は測定限界以下である。
- 低いDF
入力がデジタル信号だと原理的に電圧フィードバックがかけられず、結果として出力インピーダンスを下げられないため高DFが実現できない。この問題は原理的に改善困難といえる。現在のデジタルアンプのほとんどがプリ部をアナログで処理しており、この場合フィードバックして高DFを実現できる。「フル」のデジタルアンプが少ないのは、この問題が原因の一つかも知れない。
- 負荷によって特性がかわる
デジタルアンプは出力にローパスフィルタが入っているが、このカットオフやQが繋ぐスピーカのインピーダンスによって変わってしまう。ネット上にはこのことを大げさに取り上げた記事が見られるが、アンプで規定されているインピーダンスを逸脱した負荷を繋がない限り問題はない(可聴域以上の話になる)。
フルデジタルアンプを求めると、現在の選択肢はケンウッド、ソニーくらいしかない(10万円を超える高額商品、外観にある程度の高級感がない商品は除外)。ケンウッドは音量調整をわり算で処理しているのか、ボリウムレンジを変更できるAModeが付いている。このモードを解除すると音場が多少、希薄になるようだ(レベルが1dB変わるので、視聴の際は補正が必要)。
ソニーとケンウッドのDFはどちらも実測20前後であり、半導体アンプとしてはかなり低い部類に入る。これだけDFが低いとどんなに太いケーブルを使っても5%程度のQの上昇は避けられない。しかしDFが低いことを「音の特徴」と解釈することも可能だ。たとえば最新のデジタルアンプの音調は、真空管アンプに近いという風だ。
ソニー TA-F501の音質は実に優秀で、低音に芯があり細かな音がよく分離して聞こえる。無論、ケンウッドも優秀で、フルデジタルのメリットを堪能できる。フルデジタルには上記のようにいろいろ問題があるが、出てくる音からは問題を意識させない。このピュアで分離の良い音は、価格が1桁〜2桁以上高いアナログアンプと同等、もしくは越えており、もうこれで十分と思わせる実力がある。
デジタルアンプには10万円を超える高額な商品もあるが、対象外である。デジタルアンプは本来安く出来るので、数万円の商品で十分だ。10万円を超えるものは、無駄な所にコストがかかっていると見るべきである。ソニーにはより高額な商品もあるが、安心を求めて上位機種を選択するのは間違いだ。価格と音質は比例せず、出力は小さい物ほど音がよい傾向にあるからだ。この原則はデジタルアンプでも変わりはない。
また、世間には発信素子を取替えてオーバークロックした改造品が出回っているが、音質改善に疑問があるばかりでなく発熱が増えて寿命や故障の点で確実にマイナスになる。
写真はデジタルアンプ比較テスト時の様子。我が家では結局、ソニーTA-F501がリファレンスになった。ネットでみかけるこのアンプの音評は、外観に影響されたものが多い。この音を越えるアンプは、そうそうないだろう。次候補はケンウッドだが、作りがミニコンポの延長でありHi-Fi機器として見たとき気になる点が多い。フルデジタルを買うなら、ソニーがお勧め。
最近のコンポは小さいためラックががら空きになった。しかし重量物だったアンプが小型軽量になったのは喜ばしいことだ。セッティングやメンテに重労働を強いるアナログアンプは、うんざりである。
注:TA-F501は出力波形がおかしくて初期不良交換を体験している(スパイク上のノイズが乗っていた)。これが定位の偏りとして表れていたので、定位がズレる場合は一度点検に出すことをお勧めする。
アンプのボリウム精度を検証する(2008/8/8)
以前こちらの記事で、アンプの価値はボリウムの性能・品質で決まると述べた。音像定位、音場密度はよく話題になるが、それはあくまで、L,Rの音量がキッチリ等しいという前提で成り立つ話だ。たとえば、L,Rの音量差が3%あると、センターに定位するはずのボーカルが、スピーカ間隔に対し約3%偏る。5%も違っていると、全体に音場が偏って聞こえ、音量が低いチャンネルの音場が希薄になる。無論、視聴位置の方がズレても同じ現象が起こるし、スピーカのセンターに座って聴かない人には関係のない話である。数パーセントの誤差が問題になるのは、Hi-Fiアンプとして見た場合である。
市販のアンプのボリウムはどのような特性、誤差があるのだろう。測定は簡単で、1kHzの正弦波が記録されたCD(DENON AUDIO TECHNICAL CD 38C39-7147)などを使ってSP出力電圧をデジタルテスタで測るだけである。このCDにはいろんなテスト信号が記録されており、1枚あると何かと便利である。
ボリウムのカーブと誤差について測定したでデータを示す。 横軸のボリウム位置は、アンプ本体に表示の出る物はその値を、表示の無い物は時計の時針位置で示した。
注:テストCDの中には、アナログ信号を録音したものがある。今回のような微妙な比較をするケースでは、デジタル波形の数値データをそのままCDに記録したもの(上記DENON製など)が適している。

左のグラフは誤差が大きい順にべてある。以下、上から順に考察する。
- ・最初のグラフは50万円を超える海外製高級アンプだが、ボリウムはお粗末で、誤差が大きい上に位置によって大きくブレている。こういうアンプは音質云々する以前にまともなステレオ再生が期待できない。
- ・2番目のミニコンポは可変抵抗器を使いながら健闘している。Hi-Fiオーディオが廃れた今、ミニコンポといえど醜い手抜きは無くなっている。
- ・SG40はパワー部がデジタルでプリ部はアナログだ。そのボリウムコントロールはおそらくデジタルポテンションメータ(デジタル指令で抵抗の大きさを切り替るIC)だろう。このICも中身は抵抗アレイなので誤差が避けられない。
- ・C-275はさすがに高級機、なめらかなカーブを持ち、誤差も少ない。ボリウム位置1以下は測定限界以下で不明。
- ・ケンウッドはフルデジタルアンプだけあってさすがには誤差は少ない。僅かな誤差はDA変換部分に非直線な部分があるせいか。コスト的な制約で高品質の部品が使えないのかも知れない。
- ・最後のソニーもフルデジタルアンプでありこちらは誤差がほとんど無い。ヘッドフォン出力もこれと同様ほとんど誤差がなく優秀だ。
海外製アンプは超高級機でも粗悪なボリウムが使われていることがあり要注意だ。上記の機種も何となくボーカルがズレるのは解っていたが、スピーカの感度か部屋のせいだと思っていた。また、アンプの価格が高いだけに、
「アンプに問題があるはずがない」
という先入観もあった。そんなこともあって、気が付かないで使っているケースは相当あると思う。これまで、こうした測定データをほとんど見たことがないからだ。
アンプの価値はボリウムの性能・品質で決まる。これがいい加減な機器は、音以前に使い物にならない。アンプの出口で左右のゲインが揃っていることは、Hi-Fiオーディオ機器の大前提とえいる。この特性が正確な機器には「信頼感」があり、問題解決を容易にする。たとえば、定位や音場がおかしければ、SPもしくは部屋が原因というように、問題をアンプの外に限定できる。
新築リスニングルームの設計3(2008/7/30)
リスニングルームが完成したので公開しよう。


部屋の大きさは14畳、将来2部屋に間仕切って子供部屋にすることを考慮し、ドアが2つ設置してある。このドアはダイケンの防音ドアでカタログスペックは-34dBだが、実測すると-25dB〜-26dBである。
最大7.1chシアターに対応できるよう、スピーカターミナルを壁面4カ所に先行配置してある。一番奥に見えるスピーカはJBL S3100だ。
左は始設計図。設計に置いて一般に難しい「残響時間」と「有害反射防止」の両立を目指した。一般に、直方体の空間で残響時間を求めると有害反射が避けられないが、勾配天井と、当面使わない間仕切り壁(フリーウオール)を反射壁に流用してこれを改善する試みだ。
残響時間については、先の記事で示したように、吸音材の面積・種類を吟味して綿密な計算をしている。周波数別の測定は困難だが、インパルス音源(手を叩いたときの音)を使った簡易測定の結果、約0.4秒であることが判明した。計算より短いのは、室内に家具を配置したせいだろう。
有害反射については、フリーウオールを使わなくても満足いくことが確認できたため、現在では後ろの邪魔にならない所にまとめてある。
定在波を防止するため、部屋の4隅に12mmの穴あき石膏ボードを貼ると共に、天井の全周隅部に中〜高周波の吸音ボードが貼ってある。正弦波を再生すると定在波は確認できるが、反射のある部屋でこれをゼロにするのは無理な話だ。
この部屋で音楽を再生すると、音に潤いが感じられる。ピアノやフルートなど、綺麗に響き渡る。性能、仕上がり共に十分と感じている。

角部の低周波吸音パネル(穴あき石膏ボード)

天井隅部の中〜高周波用吸音パネル(ダイケン製)
隅から、中〜高周波用の吸音材(TA2713)、高周波用吸音材(TA2711,ブロック形)が貼られており、残りが反射壁(石膏ボード+クロス貼り )になっている。吸音材を隅部に配置してあるのは、定在波の全てのモードで隅部が腹になるためだ。
吸音、反射の面積比率は、周波数別の残響時間を計算してフラットになるように決めてある。

残響時間の測定結果
手を叩いたときの音をMDデコーダでデータを取り、パソコンでデータ処理。手の叩き音は300〜7kHzまでの比較的広帯域な音源成分を含むため、簡易的な残響時間の評価に使える。

サラウンド用ターミナル(オーディオラック裏)
ここから側面2カ所、背面2カ所に繋がっており7.1chまで対応できる。
究極のスピーカセレクタを作る(2008/7/28)
複数のアンプやスピーカを持つとスピーカセレクタが欲しくなる。スピーカセレクタで最も重要なポイントは、「接触抵抗」であり、これが可能な限り小さく、安定することが要求される。このような要求を満たす商品はごく少数市販されているが、アンプが一台買えてしまうほど高価である。
スピーカセレクタではなく、「スピーカプラグ」の形にすると、市販の電力用コネクタが利用できる。具体的には、下記を使う。
- ゴムプラグ&コネクタ。接地3P引掛防水で容量は250V20A。松下電工のWF8420K、WA5429Kなど。
- 2スケ以上のキャブタイヤケーブル。仕上がり外径について、プラグ、コネクタと適合するものを選ぶ。これはスピーカケーブルとして使う。
- コネクタの内部に接続するためのスズメッキ圧着端子。サイズをよく確認して選ぶ。
この実施例を示す。左右対称なので片側のみ図示した。

プラグ式スピーカセレクタの実施例 2スピーカ1アンプの場合
このシステムだとセレクタのような瞬時切り替えは出来ないが、10秒以内で切り替えが出来、アンプ側がショートする心配もなく安全である。
接地3Pコネクタは4極あるので2極ずつパラに使い、それぞれのスピーカにオスプラグを付けて、アンプからメスコネクタを持ってくる形がよい。この方法は接触抵抗を下げる点でも有意だ(ショートを防ぐため、必ずアンプ側をメスにする)。1個のコネクタでLR両方の切り替えも出来るが、プラグがアンプの裏に隠れてしまうため使い勝手が悪い。
プラグ&コネクタは必ずJIS規格に準拠した国産製品を使う。そうすることで接続の確実性、信頼性が保証される※。接地3Pの形状は誤って100Vに差し込むこともないし、ラバー付きなので外した方を床に落下させるような扱いをしても安心である。
マニアが気にするファクター、つまりコンタクトやメッキの材質、導線の純度などは、すべて忘れてもらっていい。ただ、このプラグ自身決して安い物ではなく、図の構成を実現するため3SET揃えると8千円くらいの投資になってしまう。頻繁に切り替えないのであれば、やはりSP直結がよいと言える。
プロ市場にはスピコン、カムロックなどの商品があり、サウンドハウスなどから入手すれば価格も高くない。これらも含め使いやすいものを選べばよいだろう。
※ JIS C8303によると、接触抵抗は50mohm以下の保証規定があり、パラで使うことで25mohm以下、コンタクトオイルの併用で実質10mohm以下にでき、耐久性も規格で保証され抜群に高い。
なお、実施に必要な電設資材は下記から一括購入できる。一般に入手しずらい大型のY形圧着端子や絶縁スリーブなども入手可能だ。
https://www.monotaro.com/
アンプのダンピングファクタを実測比較する(2008/7/25)
各種アンプの出力抵抗(DF)を測定した結果を公表しよう。この結果は、2.5〜4ohm程度の固定抵抗を負荷として使い、ON/OFF法を実施して出力抵抗を計算したものだ。測定には1kHzの正弦波が記録されたCD(DENON AUDIO TECHNICAL CD 38C39-7147)を使い、出力電圧はデジタルテスタを用いて測定した。
ON/OFF法による出力抵抗の測定には賛否あるが、TRアンプの場合参考になる。デジタルアンプの場合L負荷が必要かも知れないが、無しでも正弦派に近い波形が出るため参考にはなるだろう。
表1 各種アンプの出力インピーダンスとDF(実測値)

マッキントッシュの( )内抵抗値はトランスのタップを示す。
これを見るとDFは概ね、価格に比例するようである。DFが300を超える物は、テスタの接触抵抗が無視できず誤差が大きいと見て欲しい。おなじDF=300でもプロ用アンプとアキュのそれとは中身が異なる。プロ用アンプの高いDFは強いNFBの結果であり※、アキュのDFは多数の出力素子をパラにした結果だ。A-N701はディスクリート構成の出力段を持つミニコンポで、なかなか健闘している。
※プロ用アンプはSPケーブルを長く使う事情から、NFBを強くかけてDFを高くしているのが普通であり、アンプの「素」の特性が良いとは限らない。DF大きさだけをみてアンプの優劣を判断するのは間違いである。
ところで、アンプに関してはDF(出力インピーダンス)と音量(ゲイン)を統一するのが評価方法の一つであることをこちらで述べた。そこで、DF=40を目標として、必要なSPケーブルの長さを計算した結果を次に示す。表中の「スケア」はケーブルの太さ(mm^2)である。
表によると、パイオニアミニコンポ(A-N701)を2スケア5m、アキュp-550に1スケア5mのケーブルで繋げば、DFの影響を除去したアンプの固有音について比較することが可能だ。世間には多くのアンプの音評があるが、外観の印象をそのまま文章にしたようなものが多く、正確にその音色を評したのか、疑わしいものがほとんどである。
表2 DF=40を満足できるSPケーブルの許容最大長さ

計算式
L = A (Rsp - DF・Ro)/(0.001・2・17.241・DF) (m)
= 29 A (Rsp - DF・Ro)/DF (m)
Rsp:A:スケアサイズ(mm^2)、SPの公称インピーダンス(ohm)、DF:目標DF、Ro:AMPの出力インピーダンス(ohm)、17.241:銅線の抵抗値(mΩmm^2/m)、分母を2倍しているのは往復分。
また、表の結果からすると、2スケのケーブルを3m以下で使えば多くのケースでDFが40以上になり、ケーブルの影響が無視できることがわかる。
表の中のいくつかの機種は手持ちにあるので実際比較視聴できる。アナログアンプ同士の音色差は判然とせず、むしろ左右のボリウムゲイン誤差による音像の偏りが気になる。
(L,Rのゲイン誤差は国産機種で3〜4%が普通で、海外製では高級機でも10%近い誤差が見られる。誤差が4%もあるとボーカルがセンターに定位せず小さい音量のcHで音場が希薄になる。これについては次回詳述しよう)
このHPの内容を試される場合は、ご自身の責任において行ってください。また、使用感や考察はあくまで私見であり、決して断定的な結論を下すものではありません。
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