スピーカ台について考える

(2006/7/29 Update)



 オーディオ機器の中でもっとも難しいのがスピーカのセッティングである。置き場所の条件や周囲の状態もそれぞれ違うため、これで万事うまくいくという解がない。スピーカ台というのは、その一部にすぎないのだが、この選定や使い方を工夫するのは、オーディオの楽しみでもあるし、苦労の種でもあると思う。

 スピーカ台が必要なのは、ブックシェルフや小型スピーカの場合である。この中でもっとも扱いに困るのが、25〜30cmウーファを搭載したブックシェルフタイプのスピーカだろう。

 スピーカ台を考えるに当たって、押さえるべきポイントは以下のようである。

  1. 高さ
  2. 構造
  3. 材質
  4. スピーカに対する支持構造、接触面積

スピーカ台の高さ
 最初に考えなければならないのは、台の高さである。これは、ツイータが耳の高さに来るようにすればいい。低音の量感を高さで調整するよう勧める記事もあるようだが、低音の量感は周囲の壁との距離によって決まり、床はその一部にすぎない。高さはツイータと耳の位置との整合を第一に考え、量感については、後ろの壁との距離によって調整するのがベターである。座布団に座って聴くような使い方ではウーファが低くなりすぎる場合がある。このようなケースでは、試聴位置の方を高くすることも検討して欲しい。


スピーカ台の構造
 スピーカ台の構造は、定在波、気柱共鳴、バッフル板の延長効果、の3つについて考えればいい。気柱共鳴は空洞で発生し、定在波はお互いに平行な二面間で発生する。従って、スピーカ台には、このような構造がないものが適している。
 コンクリートブロックを使った場合、ブロック自体の穴や、並べ方によって300Hz以上の定在波や気柱共鳴が発生する。そのため、空洞にタオルを詰めたり、雑誌を詰めるなどの対策が行われているが、コンクリートブロックには若干の吸音性があるため実際にはこの共鳴はほとんど問題にならない。

 ウッドブロックなどの表面が平坦なスピーカ台を使って、正方形に近い空洞を作った場合、問題になるかも知れない。このようなケースでは、ブロックをハの字にすることで容易に解消できる。

 コンクリートブロックの平坦な面を前面に向けると、バッフル板の延長効果がある。すなわち、後ろに回り込んでしまう低音が前面に反射し低域のレベルが僅かに向上するのだ。小さな効果しか期待できないが、低域の量感を少しでも増やしたい場合は、このような構成にするといいだろう。


スピーカ台の材質
 スピーカ台の材質は、ウッドなどの損失係数が高いものか、石などの緻密で密度の高いものを、お好みに応じて選ぶ形になる。これらの材質の違いは、エンクロージュアの構造減衰に関係するだけである。すなわち、台が硬くて密度が高いものほど、響きが豊かで、音が明るくなり、逆に、台が柔らかくて減衰の大きいものほど、振動が押さえられ、デッドな音になる。この材料と響きの関係は、ワイングラスの実験結果がそのまま参考になる。物性に注目することが、無駄な試行錯誤や散財をしないために重要なことだ。

 スピーカ台はエンクロージュアの振動を受けて振動し、音を出すが、表面積が小さく、頑丈なことから、その音のエネルギーはきわめて小さい。それに、エンクロージュアの構造減衰は一般に大きいので、スピーカ台による音の違いは、そのほとんどが周囲との壁の距離や床の高さなど設置条件の変化を聞いていると考えられる。


スピーカに対する支持構造と接触面積
 スピーカ台による支持構造や、接触面積は、エンクロージュアの減衰に関係する。すなわち、底面との接触面積が多いほど、摩擦によって減衰が増えるため、音がデッドな方向に傾く。逆に、スペーサやインシュレータを使って接触面積を小さくすれば、減衰が減って音はライブな方向に傾く。この影響は、箱の響きを積極的に利用した海外製のスピーカで出やすいが、箱の響きを押さえる方向で設計されたスピーカでは出にくい。
 いずれにしても、支持のガタはなくす必要がある。ガタは、ワイングラスの実験で観察できるように、音が濁る原因になりやすい。


インシュレータとの関係
 インシュレータの効用は、機械的アース点の位置・数の変化による箱の振動モードのコントロール、接地剛性(=ばね定数)のコントロールの2点である。
 インシュレータの設置位置を決める際、モードの腹の位置を知ることが重要だ。これはスピーカを傾けた状態で鳴らし、底板を手で触れて振幅の大きい位置を探ることで判明する。インシュレータをこの腹の部分に設置するとで、箱のモードを最も大きく変化させることができ、箱から出る音に関して若干の調整が出来る※。
 効果の度合いは、インシュレータの剛性によって調整する。剛性はヤング率と素材寸法(太さ×長さ)だけに関係する。素材は金属系と、ウッド系の2種類が候補となる。同じ金属系なら何を持ってきても大差ない。物性に注目することが、無駄な試行錯誤や散財をしないために重要なことだ。
 どちらにしても、スピーカ台がウッドなど柔らかい材料でできていたり、台が頑丈でも畳のようなバネの弱いところに設置されていると、その効果はあまり期待できない。また、前項同様、箱が頑丈で、響きを押さえる方向で設計されたスピーカでは変化が出にくい。

※モードの腹の位置が不明確、もしくはどこを触っても振動が少ない場合は、インシュレータによるチューニング効果が期待できないことを意味している。


床の重要性
 インシュレータやスピーカ台の特性を利用して音をチューニングしようと思ったら、それら置く土台の剛性がより高いという前提が必要である。本来は建物の基礎にアースをとるのが理想だが、ほとんどの家庭でスピーカ台を基礎に直接アースすることは出来ず、フローリングされた床や畳の上に乗せて使うことになるだろう。

 この場合、スピーカ台の質量を大きくして、それを基準点と考えるのが現実的である。これを質量だけで求めると、かなり重いものになってしまうが、面積の広い丈夫なベース板を床に敷くことで、これを基準と考える方法もある。これにより、床が柔らかい場合でも、設置面積を広く取ることで見かけ上の剛性を稼ぐことが出来る。

 この場合のベース板の表面積は大きい程いいが、表面積が大きいほどベース板に高い曲げ剛性が要求される。このような商品は以前から市販されており、例えばタオックのサウンドクリエイトボードがそれに該当する。曲げ剛性は高いほどいいので、できるだけ厚いものを選ぶのがポイントである。

 タオックのボードは万能ではない。50キロをこえる重量級スピーカや、ウッドブロックより高剛性のスピーカ台を利用するためには、アルミなどの金属で作られた、剛性の高いベース板が望まれるが、残念ながら市販されていないようである。


 スピーカ台による音の変動要素を可能な限り排し、スピーカの素性を生かしたい場合、スピーカ台による音の変化といった余計なことを考えたくない場合は、スチールシェルフなどの金属製のパイプで組んだ、高さだけを稼ぐための台を用意するといい(シリーズによっては動的な強度が弱く、ぐらつきが大きいものがあるので注意。レギュラータイプを適当に組み合わせるか、BTOから選ぶ。すべて溶接で出来ている適当な台がみつかれば、ベスト。)。スタジオモニターの台にこのようなものが多いのは、そのためである。
 フロア形か、トールボーイタイプのスピーカを選べば、最初から台のことを考えなくてもいいし、低音再生の点においても有利である。このようなタイプのスピーカを選ぶのも、一つの方法といえる。


 オーディオ雑誌では、時々、スピーカ台はどんなものがよいか、試行錯誤する特集がある。コンクリートブロックやビールケース、テニスボール、雑誌、ガラスコップなど、セッティングして試聴を繰り返すのは、たいへんな作業だったろう。しかし、このページの記事を読んだ人であれば、答えの見えない試行錯誤をすることなく、自分が目標とする音に近づけるための効果的な手段を見いだせると思う。



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