保険会社の手抜き修理を回避するには(2006/2/2)


 保険によるクルマの修理は「元通り」が原則である。ところが、板金の場合、どこまでやれば元通りといえるのか、曖昧な部分がある。通常、保険を使ってオマカセの修理をすると、手抜きできる所はできる限り手を抜いて、最低限のことしかしない。素人が見てわかるような、修理の痕跡を残すのが通常である。粗悪な塗料を使われると、数年後問題が出てきて、売るときに大きな「評価損」を被る結果となる。特に、ソリッド系のカラーは手抜きがされやすい※1

 保険を使って板金に出すときは次の点について、自分で直接、修理する業者と打ち合わせすることが重要である。

  1. 塗装は、品質の良い塗料を使ってきちんと焼き付け、ミガキがされるか?
  2. フェンダーなど一枚ごと交換する場合は、排水溝にかけてのボカシや下回りのピッチ塗装(アンダーコート)がキチンと元通り再現されるか?※2
  3. 塗装工程を、板の取付前後に分けてくれるか? (取付ボルトごと仕上げ塗装をするか)
などがチェックポイントだ※3。板金塗装というと、通常は部品を取外して色を塗り、ポン付けしておしまいであるが、工場で生産されるクルマは、個別に塗装したパネルを組み付けることはしていない。板金屋には手間だが、板を取り付けた後でボルトごと仕上げ塗装すると、脱着の痕跡も残らないようにできる※4。

 これらを徹底することで、査定士が見てもわからないレベルの仕上げが可能である。査定士は、元通りになっていない部分を見て査定するのだから、査定士にわからないレベルが、本当の「元通り」である。自分のクルマを大切に思うなら、まずは、最高品質の見積もりを取って相手にぶつけてほしい。
 ただ、こういう面倒な話は、業者によっては嫌がる。融通の利く板金塗装業者を、日頃から開拓しておくことも大切である。

 次に、修理が出来てクルマを受け取るとき、説明もなく「ここに印を押して」とハンコを要求されることが多いが、それを押したら最後である。押した後で、「そんな大事な印とは知らなかった」と後悔する人が多い。その場で押さずに書類を持ち帰って、修理結果や保証内容が、納得できるものか、本当にこれでおしまいにしてよいのか、よく考えるのだ。保険会社に対しても、自分が納得いかなければ、最後までハンコを押さないぞ、という姿勢を示すことが重要である。



保険会社は自分の味方ではない(2006/2/1)〜契約者が泣きを見る自動車保険の実態


 自動車に乗っていれば、誰でも一度や二度、保険のお世話になるだろう。今では外資系の保険会社と契約できる世の中であるが、外資系と日本系には大きな違いがある。日本の保険会社の多くに共通していえることは、「顧客の立場に立ったサービスを提供していない」ことであり、会社が大きいほど、その傾向が強い。

 私が最初のクルマを買ったとき契約したのは、日本の大手損保T社である。契約時には、「大きい会社にしておけば安心だろう」くらいしか考えていなかった。ところが実際お世話になった結果は、自社で決めた保証内容の一方的な押し付けと、最悪の手抜き修理であった。

 顧客の希望や要求は、一切考慮されなかった。保証の内容が気に入らなければ、相手と直接交渉せよと言われ、ひたすらペンディングするだけであった。結局、保険会社の提案をそのまま承諾するしかなかった。
 示談交渉サービスは名ばかりで、何が起きても結局交渉らしいことは何もしなかった。この会社では、保険手続のための連絡を、契約者に代わってすることを、「示談交渉サービス」と呼ぶようであった。
 板金修理の内容を任せたら、安い塗料を吹き付けただけで、焼き付けもミガキもなかった。そのため塗装が柔らかく、細かいデコボコだらけであった。

 結局この保険会社では、保険の支払額を抑える(できるだけ安くあげる)ことが第一で、顧客は二の次であるように感じられた。私がT社と契約することは、今後一生ないだろう。


 それと対照的だったのが、外資系の保険会社である。このとき私は被害者で、保険会社の担当者と直接相手をしたが、とても手強かった。すぐ電話がかかってきて、相手から詫びの一報もないうちに、ああしましょう、こうしましょう、と言ってくる。「相手の詫びもないうちに、保険会社と話をする気はない。順番がおかしい」というと、「それなら代車も出せないし修理もしない」と言うのだ。

 外資系保険会社は、対応が担当の評価に繋がる仕組みがあるのか、少なくとも顧客の立場に立った対応をする。その示談交渉サービスは、顧客に代わって、都合のよい要求を相手に押しつけることである。そのため、顧客にできるだけ負担を掛けず(直接連絡を取らせないようにして)、自発的に動くのが特徴だ。これに素人が相手をするのは困難である。
 このように外資系保険会社は、相手にすると手強い。しかし、自分が契約者であれば、頼もしいパートナーになりうる可能性がある。


 最後に、保険会社から、「そんな保証しません」と言われた時は、どうしたらよいか。自分が被害者なら「自分で費用を立て替えて、相手に直接請求する」と言えばいい。これによって、会社の許容範囲内ではあるが、最大限の要求を通すことができる。なぜなら、保険会社は契約者が勝手に保障内容を決めたり、契約者に直接請求が行くのを一番嫌うからだ。



<参考になる記事>
交通事故と闘う
損保業界の記事が参考になる。

自動車保険を選ぶ,保険会社を決める前に
払い渋りの傾向がある会社は避けよう




知られざる大排気量車のストレス(2006/1/15)


 大排気量のクルマに期待するのは豊かなトルクと加速感だろう。ところが、燃費志向が強い現代では、1.5L以上では何Lあっても普通にアクセルを踏んだ場合のパワーフィールがほぼ同じである※1。それは、排気量の余裕をすべてエンジンの低回転化(燃費向上と静粛性)に振り向けてしまっている為だ。
 出足に関しても、2L以下はスロットル開度を増やし、3L以上は燃料カットしたり、2速発進するなどして、感覚を揃えているようである。

 大排気量のエンジンに多段ATを組み合わせると、パワー感が1.5L以下になってしまう場合がある。それは、重たいクルマをつねにハイギアで動かそうとするからだ。
 例えば、発進してから、アクセル開度小でゆっくり走っている場合などは、必要に応じていつでも加速したい場合が多い。この場合、MTだとドライバーの判断で低いギアのまま走れるが、ATは勝手にシフトアップしてしまう。ATが多段になるほどきめ細かくハイギアを維持しようとするから、いくらアクセルを煽っても、クルマはほとんど応答しない。それはまるで、「パワー抜け」したかのようである。それでも加速したいと思ったら、アクセルをしばらく踏みつづけてキックダウンさせなければならない。

 排気量が3Lを超えるクルマの多くは高級車の部類に入り、ジェントルな走りのセッティングになっている。すなわち、急激にトルクが出るようなことは避けるようコントロールされ、ギア比(ファイナル)も低めの設定だ。だから、大排気量のクルマをフンパツして買っても、いざ走り出してみると、今まで乗っていた車と大して変わらない。それどころか、アクセルを煽っても加速しない場面が増えて「アレ?」と感じてしまうわけである。

 結局、大排気量のクルマで普段感じるメリットは、回転数が低いことによる「静粛性」だけである。

 排気量相応のパワーを正味で味わおうと思ったら、MTを買うしかない。ATは摩擦によるロスや遅れがある※2ので、それだけでパワー感はMTの1〜2割引である。ATとMT両方が用意されている車種では、MTのほうがパワフルなことを覚えておいて欲しい。


※1 排気量の違いは、通常を超えてアクセルを踏み込んだときにしか現れない。2L以下では最初のアクセル開度が大きいため、それ以上踏み込んでもあまり加速しないが、3L以上の場合は、踏めば踏んだだけパワーが湧き出すという具合だ。

※2 ATのスリップロスは知られているが、摩擦トルクが大きいことはあまり知られていない。燃費に出ている数字の差は、摩擦トルクによるものである。CVTの場合はこれがさらに大きく、無段変速による燃費のメリットも、このロスでチャラである。ATが多段化された今となっては、CVTのメリットはコストしかない。




真のエコタイヤは、扁平率が高いタイヤなのか(2005/11/29)

 インチダウンのついでにエコタイヤ(DNA ECOS 205/55R16)に変えたことはこちらで述べた。このタイヤを履いて最初に気が付いたことは、思った以上によく転がることである。妻のプラッツも65サイズのECOSを履いているが、これほど転がる印象は無い。55サイズのECOSは、あまりにも良く転がるのだ。無論、空気圧は標準値である。ちなみに、以前はブリジストンのB500Si 205/55R17であった。

 同時に、ステアリングが軽くなり、発進加速が良くなった。MT車はクラッチミートの瞬間にクルマの重さを感じ取れるが、それが軽くスッとつながるように変わったのである。メーカはエコタイヤのメリットに燃費向上を挙げていても、加速が良くなるとは書いていない。しかし、ころがり抵抗が減れば加速が良くなるのは理屈上の自明である。

 また、ステアリングが軽くなったおかげで、フロントが軽くなったような感じさえする。タイヤひとつでこれほど大きくクルマの性格が変わるとは、予想外だった。

 燃費を計ってみると、今まで見たこともない数字が出た※。過去5年間の燃費記録をみると、平均6.5km/Lで7km/Lを超えることは少なかった。ところが、チョイ乗りオンリーでいきなり8km/Lを超えてしまったのである。
 通常、後付のアクセサリや、オイル、ドーピング剤などをいくら駆使しても、加速や燃費を良くするのは難しい。多少は体感できても、数字に出るほどの効果は、ほとんど期待できなかった。燃費改善が数字に出たと言うことは、加速や燃費に、転がり抵抗が大きく影響している証拠といえる。

※タイヤを変えると、直径や空気圧の違いによって、積算距離計に誤差が出る。実燃費を評価する場合は、この点に注意が必要だ。


 タイヤがよく転がるおかげで、MT車の場合、結構な距離を慣性走行が出来、渋滞時もクラッチワークが軽減されて楽である。慣性走行とは、最初ちょっと加速したら、あとはアクセルOFFで走行することだ。AT車の場合は、Dレンジのロスが大きいので、MT車のような慣性走行は出来ないかもしれない。

 慣性走行がしやすいおかげで、クルマの重さがあまり気にならなくなった。普通、荷物や乗員が増えると走りも重くなるが、このタイヤの場合は、クルマが重くなればその分、慣性走行の距離が伸びる。つまり、質量が運動エネルギーとして保存されやすいから、重くなることが、ネガにならないのだ。この性質を上手に利用すれば、燃費をかなり伸ばすことも可能だろう。

 悪くなったこともある、ロードノイズが増えたのだ。これはおそらく、ゴムが硬いせいで高周波の振動伝播が増えた為だ。このノイズが気になるなら、DNA dBをどうぞ、という商品戦略なのだろう。

 DNA ECOSは、エコタイヤでありながら珍しく扁平率の高いラインナップが充実している。ひょっとしたら、扁平率が高い方が、タイヤの変形が少ない分、こりがり抵抗を減らしやすいのではないだろうか。エコタイヤというと、扁平率の低いものが主流だったが、本当のエコタイヤは、扁平率の高いものかもしれない。


<エコタイヤのその後>
 ころがりや燃費が良いと感じたのでは給油一回目までで、2回目以降は空気圧を管理しても燃費の向上はみられなかった。どうもこのタイヤ、表面に何らかの加工がしてあって、一皮むけたら普通のタイヤと変わらないことになっているのかもしれない。今後、詳細に観察していこうと思う。





タイヤ空気圧のマジック〜空気圧を変えると走りはこんなに変わる(2005/11/18)


 タイヤの空気圧を変えるとこりがり抵抗係数が変化する。これが、どの程度の動力性能に影響するか、調べてみよう。
 ころがり抵抗力Rは、

  R=9.8μ・m (N)   μ:ころがり抵抗係数、m:車重(kgf)

である。ここで、一般舗装路のμを0.015、m=1400kgf、タイヤ径を640mmとすると、R=205.8N、損失トルクは、65.9Nmとなる。

 タイヤ交換の際、タイヤの空気圧を高めにして!というと、規定値より+20kPa(約1割り増し)となる場合が多い。空気圧が規定値から1割増すと、μが最大1割低減する※。このときの損失トルクの差分は、65.9*0.1=6.59Nm(max)となる。この値は、こちらの記事で、ホイールを10kg軽減した場合の損失トルクにほぼ等しい。

※実際1割もあがらない場合が多く、いくつになるかは、タイヤや条件により異なるようだ。


 損失トルクの低減効果が同じでも、軽量化によるものと、ころがり抵抗を低減したものとでは、全く性質が異なる点に注目したい。質量は加速したときしか関係しないが、ころがり抵抗力は、加速度、速度に依存せずつねに関係する。ホイールを軽量化した効果は、加速度が高いときしかわからないが、空気圧の効果は体感しやすく、ゆっくりとした出足からも、明らかな違いとして感じることが可能だ。

 そうすると、「ホイールを軽量化したら加速が良くなった」というリポートのほとんどは、空気圧の違いを体験しただけと推察される。空気圧を押さえていないリポートは、まったく参考にならない。

 空気圧を上げれば簡単に加速が良くなるが、弊害もある。空気圧を1割あげると、タイヤのばね定数が上昇して乗り心地が悪くなったり、ロードノイズが増えてしまうのだ。当方の測定結果によると、205/55タイヤの場合、空気圧を1割上げると、45タイヤに近い値になった(前のトピック参照)。

 空気圧を変えたくない人は、ころがり抵抗の少ないタイヤを選択するといい。最近のエコタイヤは、ころがり抵抗を1割以上減らしたという物があるので、タイヤ交換の機会に、エコタイヤに替えるのも、一つの手といえる。




R34スカイラインのインチダウンは可能か〜キャリパ干渉との戦い(2005/11/18)


 R34スカイラインのターボとGT-Vの標準タイヤは225/45R17であるため、そのままだとステアリングフィールがすこぶる悪く、乗り心地も悪い。生活スタイルの変化により、そのままでは問題になってきたため乗り心地の向上について検討をした。

 単純にステアリングフィールだけを改善したい場合は、フロントタイヤを205/50R17にサイズダウンすればよい。これによる効果は確認済みである。しかし、乗り心地を改善するには、インチダウンしてタイヤのばね定数を下げなければならない。

 ところが、このクルマは純正のブレーキキャリパーが大きいため、インチダウンは出来ないとされている。事実、純正17インチリム内径とキャリパ−との隙間は、指1本分程度しかなく、16インチにすると、オフセット以前にほとんどが内径と干渉してアウトになってしまう。しかし、インチダウンは不可能ではない。
 ホイールを変える際、原則としてオフセットを変えてはならない。R34の場合、純正ホイールのオフセットが+40だが、これにこだわると適合するものが全く無くなってしまう。そこで、オフセット誤差を7mm、つまり+33まで許容して調べた結果が以下の表である。


R34スカイラインの16インチホイールに関する適合
メーカ名称サイズ適合備考
RAYSVOLK RACING TE3716 7JJ +33○(未確認)鍛造&軽量
RAYSVOLK RACING CE28N16 7JJ +33○(未確認)鍛造&軽量
RAYSVERSUS TURISMO SPADA16 7JJ +35鋳造
バーディークラブP1レーシング1670 +35○(未確認)絶版
ディスモンドリーガマスターEVO16×7 +35○(未確認)絶版
エンケイRS+M16 7J +35×鋳造&軽量
ニッサンR32純正16 6.5J +40×鋳造
ニッサンEstilo16 6.5JJ +40×鋳造


 適合が○のものはまず大丈夫だとは思うが、思わぬ部分が干渉するかもしれない。選定においては、「ビックキャリパ対応」となってることが最低条件となる。それでも、実際に当ててみるまで確実とは言い切れないため、填らない場合は返品可能か、事前にショップに確認しておくことが大切だ。

 乗り心地を良くするためにはホイールの重量は重いほど良いことをこちらの記事で述べた。しかし、ビッグキャリパに対応しているものは、レース用の軽量ホイールがほとんどで、多くが絶版※1になっている。新品で入手できる候補は3つしかなく、いずれもRAYS製だ。鍛造品は必要以上に軽いから、これを選ぶと乗り心地の改善効果は低いかもしれない。乗り心地をメインに考えると、選択肢はSPADAしかなくなる。

※1 売れないホイールは型番廃止になったり、絶版(メーカが潰れるなどして)になることが多いため、適合するホイールが見つかったらすぐに確保しないと、次は手に入らないかも知れない。


 SPADAに履くタイヤは、経済性を最優先してヨコハマのDNA ECOSを選んだ。ショップの店員いわく、「スカイラインをわざわざインチダウンして、ECOSを履くような人は、聞いたことが無い」そうである。それなら、私が第一号になってやろう。第一、ロードゴーイングなスポーツカーにスポーツタイヤは無駄である。ECOSは妻のプラッツにも履いているが、感覚的にも良く転がるタイヤで、大変気に入っているのだ。


 写真は R34のビッグキャリパに干渉せず、16インチホイールを収めることに成功したところ。ホイールはRAYSのSPADA 16/7JJ/+35、タイヤはヨコハマのDNA ECOS 205/55R16である。キャリパーとリム内径との最小隙間は5mm程度確保でき、バランスウエイトも問題なく付けられる。SPADAは16インチでスカイラインのビッグキャリパに干渉することなく履ける数少ないホイールの一つだ。

 テーパーナットだけで芯を出す社外ホイールは取付精度が出ないため、高速走行時のステアリングフィールが不安定になることが多い。ハブリングの装着は必須である。



 重量は、SPADAとタイヤのセットで19.6kg、純正の17インチはタイヤとセットで21.0kgだったから、4本で5.6kgの軽量化になってしまった。ばね下全体の質量からすると、この程度の差は、ほぼ無視できるレベルである。
 ばね定数に目を向けると、元々履いていた50タイヤ(B500si)が3.66e5N/m、55タイヤのECOSが2.99e5N/mだから※2振動伝達率はこの比率、つまり22%改善した計算になる。

 実際の走行フィールは、乗り心地とスポーツフィールのバランスが取れた、あのR32スカイラインの乗り味がよみがえった感じた。わずか22%でも、その効果は想像以上である。また、50までは「ゴムブロック」に乗っている感じだったが、55からは若干ふわふわとした「空気ばね」のような感じに変わることもわかった。
 タイヤにECOSを選んだおかげで、体感的な加速フィールも向上した。これについての詳しい考察は、次のトピックで詳述しよう。


 ※2 乗り心地の変化を知るにはタイヤのばね定数を知る必要がある。これは、後輪のタイヤのつぶれ量を測定すればおおよその値がわかる。まず空荷の状態で地面からホイールまでの距離を測定、次に、後部座席の測定したタイヤ側に人を乗せて、同じように距離を測定し、その差と、乗せた人の体重から求めることが可能だ。路面には平らなレンガなどのブロックを置き、ノギスを使って5回以上測定した平均を取る。左のグラフは、このようにして測定したばね定数の例である。
 前回の記事ではタイヤのばね定数を2*10^5N/mと仮定したが、このグラフからすると65タイヤに相当するようだ。

 ばね定数は空気圧の影響を大きく受け、55タイヤでも空気圧を高めにしてしまうと45タイヤに近いばね定数になってしまうこともわかった。





アルミホイールの真実〜軽量ホイールは乗り心地を悪くする(2005/9/16)

 世間では、ホイールを軽くすると、燃費が良くなる、加速が良くなる、ブレーキがよく効く、ハンドルの応答が良くなる、乗り心地が良くなるとかいろいろ言われているが、定性的な話ばかりで、いったいどの程度良くなるのか、数字で示された物は無い。そこで、今回はこれらついて検証してみよう。


1.ホイールを軽くすると乗り心地はどうなるか

 ホイールの重さを検討するためには、地面とホイールの間にばね要素(タイヤ)を考慮する必要がある。その場合の車体の振動モデルは2質点モデルとなって図1のようになる。

 モデルの要素は、m1:ホイールの質量(実際にはばね下の総質量)、m2:車体の質量、k1:タイヤのばね定数、k2:サスのばね定数、c1:タイヤの減衰係数、c2:ダンパーの減衰係数、x0:路面の上下変位、x1:タイヤの上下変位、x2:車体の上下変位である。

 図1のモデルの運動方程式は、次のようだ。

  m1x1dt^2+(c1+c2)x1dt+(k1+k2)x1−c2x2dt−k2x2=c1x0dt+k1x0  (1-1)
  m2x2dt^2+c2x2dt+k2x2−c2x1dt−k2x1=0  (1-2)

 dt:微分、dt^2:2回微分を示す。このモデルを使って振動伝達率を求めてみよう。

 図1 自動車のタイヤ、ホイール、サスペンションのモデル


 この運動方程式から振幅応答を調べる場合は、一旦ラプラス変換して処理すると簡単だ。式(1-1),(1-2)のすべての初期値を0としてラプラス変換すると次式を得る。

  X1(s)(m1s^2+c1s+c2s+k1+k2) - X2(s)(c2s+k2) = x0(s)(c1s+k1)     (1-3)
  X2(s)(m2s^2+c2s+k2) - X1(s)(c2s+k2) = 0     (1-4)

sはラプラス演算子だ。

(1-3),(1-4)の式から振動伝達関数 G01 ( = X1(s)/X0(s) )、G02 ( = X2(s)/X0(s) ) を求めると、それぞれ次のようになる。

 G01 = (c1s+k1)/(α - γ^2/β)     (1-5)
 G02 = (c1s+k1)/(αβ/γ - γ)     (1-6)

 α = m1s^2+c1s+c2s+k1+k2、β = m2s^2+c2s+k2、γ = c2s+k2

 ここまでの解は、教科書によってはそのまま載っているものもあるだろう。
 次に、周波数応答を求めてみよう。s=jωとおいて、減衰がないときの振幅比(振動伝達率)の周波数応答を求めた結果を次に示す。

 τ01 = 20*log10(| k1/(α' - k2^2/β') |) (dB)     (1-7)
 τ02 = 20*log10(| k1/(α'β'/k2 - k2) |) (dB)     (1-8)

  α' = k1+k2-m1ω^2、β' = k2-m2ω^2

 (1-8)式を用いると地面から車体への振動伝達率が求められる。そこで、 m1=20kg、 m2=300kg、 k1=2*10^5N/m、 k2=2*10^4N/m と仮定、これを「標準」の条件とし、各パラメータを標準から1/2振ってみたときの振動伝達率の変化を調べたグラフに示す。


 注:左のグラフは振幅比である。階段状の路面の段差 x0(m)を乗り越えたときに車体に伝わる力≒体に感じるショック(dBm/s^2)は、20*log10(x0)+40*log10(2πf)をこのグラフの結果に足してやれば求められる。

  グラフ1-1 地面から車体までの振動伝達率に関する周波数応答

 標準における固有値(共振点)は、1Hz付近と16Hz付近の2つある。1Hz付近の固有値は主に車体とスプリングで決まるものであり、16Hzは主にタイヤとホイールで決まるものだ。わざわざ二自由度系で解いたが、2つ固有値が十分離れていて連成しないので、独立した1質点系と考えても問題は無いようである。
プロット間隔の関係上、ピークが鈍ってしまうのはご容赦いただきたい。

 防振効果は、共振周波数以上で発揮され、共振周波数以下では一体となって動くため効果はない。従って、スプリングと、タイヤ&ホイールとは、違う帯域を受け持つことがわかる。例えば、標準の場合、スプリングは1Hz以上の広い領域で効果を発揮するが、タイヤ&ホイールでは16Hz以上でしか効果を発揮しない。

 横軸は周波数であり、10Hz以下の低周波は車体の揺れなどに関係し、10Hz以上の高周波は突き上げや段差を乗り越えたときの衝撃の強さに関係すると考えてもらえばいい。このグラフから次のことがわかる。

  1. ホイールを軽くすると、主に突き上げなどに関係する高周波の乗り心地が悪化する。具体的には、ばね下総質量1/2で標準から約6dBの悪化となっており、振動振幅は 10^(6/20)=2倍に増える。
  2. タイヤのばねを減らす(扁平率を下げる)と突き上げなどに関係する高周波の乗り心地が改善する。
  3. 車体の揺れなど、低周波の乗り心地は、タイヤやホイールをいくら変えても改善されない。
  4. 低周波の乗り心地は、サスのばねレートを下げることで初めて改善できる。

<備考>
 本によっては、「ばね下を軽量化すると衝撃が小さくなる」と書いているものがあるが、その衝撃は、車体に対してではなく、「ばね下に対して」であることに注意する必要がある。つまり、ばね下が重いほど、大きな荷重がサスペンションにかかり車体への負担が増えるが、これは乗り心地とは何の関係もない。



2.ホイールを軽くするとバタバタする、跳ねやすくなるのはなぜか

 ホイールを軽量化した人が「足回りがバタバタする」「飛び跳ねやすくなった」といった症状を訴えるケースがある。図1のモデルを見てわかるように、タイヤ&ホイールの部分は質量m1、ばね定数k1、減衰項c1、の3要素から成り、m1,k1,c1の3つのバランスから成っている。そこへ、ホイールm1だけを大幅に軽くしてしまうと、c1,k1が相対的に高くなり、振動伝達率や減衰特性が悪化して、バタバタしたり跳ねやすくなる。
 これを避けるためには、ホイール軽量化と同じ比率でタイヤの減衰率とばね定数(扁平率)も下げなければならない※。

 同じことがサスペンションについてもいえる。ローダウンでサスがバタバタするのは、ダンパーやスプリングを硬くしすぎたせいで、m2,c2,k2のバランスを崩した結果と考えられる。

※c=2ζsqrt(m・k)だから、mとkを同時に1/2にした場合、cはsqrt(0.5*0.5)=1/2にすれば元の特性を損うことがない。


3.インチアップorダウンで乗り心地を犠牲にしないためには、どうすべきか

 インチダウンによる乗り心地の改善を考えた場合、ホイールは軽量化or重量化、どちらが良いのだろう。(4)式を使ってタイヤのばね定数を1/2とし、ホイールの質量を2倍、1/2倍した場合の検討結果を次のグラフに示す。



グラフ3-1 インチダウンした場合、ホイールの質量がどう影響するか、調べたグラフ。

 インチダウンしたとき軽いホイールを選ぶと効果が相殺してチャラになることがわかる。たとえチャラでも、ホイールを軽量化した分、サスペンションの負荷や、タイヤ接地性などは向上する。

 ばね下の質量はホイールだけで決まる物ではないから、注意が必要だ。例えば、軽自動車など、もともとばね下の機構が単純(ばね下が軽い)なケースでは、ホイール質量の変動を受けやすいが、ばね下に複雑なリンクや大型ブレーキなどが付く(ばね下が重い)ケースでは、ばねした荷重全体に占めるホイールの比率が小さいため、タイヤのばね定数の低下だけが主に効く形になるだろう。

 いずれにしても、インチダウンによって乗り心地を改善したい場合は、ホイールが軽くなり過ぎないよう注意を払い、インチアップで少しでも乗り心地の悪化を押さえたい場合は、現状より重くしていくのが正解だ。世間では「ドレスアップ」と称してローダウン&インチアップする人が多いが、このとき軽量ホイールを選択するのは逆効果であり、最悪の結果を招くだろう。

 ローダウンやインチアップの際、ホイールの質量やばね定数がノーマルから2倍以上になると、軸系の曲げ、ねじり剛性の関係で発生する共振点が常用域に入ってくる恐れがある。これが起こると、特定の速度で振動が発生するようになる。この問題はバランスをとっても改善できない。


4.軽量ホイールは加速や燃費にどの程度寄与するか

 ホイールを軽量化した場合、加速や燃費はどの程度良くなるのだろうか。下の表は、ホイールの回転慣性による損失トルクを計算し、比較した例だ。

        表4-1 ホイールサイズと損失トルクの関係
ホイールサイズ
(インチ)
リム幅
(インチ)
リム平均肉厚
(mm)
リム質量
(kg)
慣性モーメント
I1(kgm^2)
損失トルク
T1(Nm)
17(軽量)7.574.820.2181.89
177.5106.840.3042.64
167.0106.000.2362.05
156.5105.210.1801.56
146.0104.480.1341.16

 表の損失トルクT1(Nm)は次式で計算できる。

 T1 = I1・ω2    (4-1)

 ω2はホイールの回転角加速度(rad/s^2)で、ω2=2v/(D・t)である。 I1:回転慣性モーメント(kgm^2)、v:車速(m/s)、D:タイヤ径(m)、t:加速時間(s)
 φ640のタイヤを使って0-100km/hを10秒で加速した場合、ω2=2*27.8/(0.64*10)=8.68rad/s^2である。

 表の一番上の例が、17インチのホイールを軽量化した例だが、軽量前と比較すると、リム質量は2.0kg減(4本で8.1kg)、損失トルクは0.75Nm減(4本で3.0Nm)となっている。3.0Nmは減速比を考慮すると1Nm以下になってしまい、エンジントルクと比較しても2桁以上小さい。従って、回転慣性をいくら小さくしたところで、加速の違いを体感できる人は、まずいまい。数字に表れるような燃費向上も、全く期待出来ないだろう。

 今度は、ホイールの進行方向の慣性に注目してみよう。この場合、ホイールの全質量が影響し、ばね下、ばね上は関係しない。進行方向の慣性による損失トルクT2は、

 T2 = m・a・D/2    (4-2)

である。aは車両加速度(m/s^2)で、a=v/t=100km/h/10sec=2.8m/s^2。ここで例えばホイール4本で20kg軽量化した場合、タイヤ径D=φ640とすると T2=20*2.8*0.64/2=17.8Nm となり、回転慣性の影響よりもひと桁大きいことがわかる。

 従って、加速性に関しては、リムの回転慣性はほとんど影響せず、ホイールを軽くした分が、単純に車体全体の質量から減算される※3と考えて良い。その効果(%)は、100×軽量化した質量(kg)/車重(kg) だけの簡単な式で、定量的に見積もることが可能だ。

 元々のホイールが16インチ以下の場合は、超軽量ホイールに変えてもトータルとして大幅な軽量化が出来ないため※4、高価な鍛造ホイールを使うメリットはほとんど無い。それでもなお、加速感がアップしたと感じた場合は、他の変化要因(空気圧や、ころがり抵抗の変化)によるものだろう。

※3 100kgの重量増による0-100km/h 10sec加速の損失は、W=mv^2/s=7.72kW=10.5馬力であるから、ほぼ10kgあたり1馬力と考えて差し支えない。タイムに換算すると、1.4トンのクルマを100kg軽量化すれば、0.7秒もの短縮になる。クルマが軽いことが、いかに大切か、わかるだろう。
※4 16インチのホイールは鋳造品でも9kg前後の物が多い。これをたとえ半分に軽量化できたとしても4本合わせて18kgの軽量化に過ぎず、車重がよほど軽くない限りほとんど体感できないだろう。




5.ホイールを軽くするとステアリングも軽くなるか

 回転しているホイールの切り角を変えると、その軸回りの回転慣性によるトルクT3(Nm)と、ジャイロモーメントJm(Nm)の2つがホイールに作用する。これらは、それぞれ次式で示される。

 T3 = I2・ωsdot2     (5-1)
 Jm = I1・ωn・ωsdot    (5-2)

 I2:ホイール切り角に関する回転慣性(Kgm^2):ωsdot2:ホイール切り角の角加速度(rad/s^2)、I1:ホイール回転慣性モーメント(Kgm^2)、ωn:ホイールの回転速度(rad/s)、ωsdot:ホイール切り角の角速度(rad/s)

 表4-1の17インチホイールを軽量化した例で考えると、I2は、軽量化前で0.17Kgm^2、軽量化後は0.12Kgm^2となるから、2本分の差分は0.10Kgm^2、同じように、回転慣性I1の2本分の差分は0.17Kgm^2である。
 ステアリングの切り角は、かなりクイックな操作を想定して1秒間に±10度(±0.17rad)の周期的変動とすると、角速度ωsdot=2π0.17f=1.10rad/s、角加速度ωsdot2=2π1.10f=6.89rad/s^2である。
 さらに、時速100km/h、タイヤ径0.64mとすると、ωn=86.81rad/sである。以上のパラメータを使って

 切り角による慣性トルクT3 = 0.10*6.89=0.69Nm
 ジャイロモーメントJm = 0.17*86.81*1.10=16.2Nm

が得られる。これだけクイックなステアリング操作をしても、切り角による慣性トルクはとても小さいことがわかる。Jmはそこそこあるが、100km/h以下の低速ではパワーステアリングのせいもあって体感できないだろう。高速域では、高速安定性にマイナス効果として現れる可能性がある。

 従って、ホイールの軽量化によるステアリングの重さの変化は、低速域ではほとんど体感できず、高速域では直進安定性の悪化要因となる可能性がある。低速域でステアリングの重さが大きく変化した場合は、空気圧や、タイヤ幅の変動(接地面積の変化)の影響だろう。



6.「ばね下重量の軽減は、ばね上の約10倍の重量軽減に匹敵する」とはどういうことか

 販売元、製造元の記事によっては4倍、15倍と記載されているものもあるが、根拠が示されているものは、見あたらない。このような情報によって、世間では「ばね下を1kg減らしたのだから、車体を10kg以上軽量化したことになる」と勘違いされている人が非常に多い。
 シャーシやサスペンションにかかる負荷荷重は、ばね下の質量に比例するから、軽量化は構造の簡素化やコストダウンの為には効果的である。しかし、この理屈からは10倍という数字は出てこない。

 10倍という数字は、やはり回転慣性に関係した物だろう。そこで、ホイールの回転慣性を、ばね上の質量に換算してみよう。(4-1)式を(4-2)式に代入し、mについて整理すると、

 m = 4I/D^2    (6-1)

を得る。これが、回転慣性モーメントIをばね上質量mに変換する式だ。4項の表4-1より、軽量ホイールを使うと回転慣性モーメントは、0.0860kgm^2の減量(4本で0.344kgm^2)となるから、I=0.344kgm^2、タイヤ径D=640m として計算すると、m=4*0.344/0.64^2=3.36kg というように、Iに対してほぼ10倍の解を得る。従って、慣性モーメントからm^2を省略して読めば、1キロがばね上換算でほぼ10キロの軽量化に相当するという説明が成り立つ。

 この換算値はタイヤ径Dによって大きく左右される。たとえばD=520mmとすると約15倍、D=1mにすると4倍というふうに、世間で言われている様々な係数が求まる。ちなみに、進行方向の慣性は、ばね下を1kg軽量化したら、ばね上でもやはり1kgである。

 同じ1キロでも、ホイールの質量と慣性モーメントではぜんぜん違う。質量を1キロ減らすのはたやすいが、もともと0.2〜0.3キロしかない慣性モーメントを1キロ減らすのは、不可能な話である。これも結局、商売に都合がよいように、巧妙に作られたセールストークだろう。




7.路面追従性を良くすると乗り心地は良くなるか

 軽量ホイールの能書きには、

 「ばね下が重いとサスペンションの動きが鈍くなるので乗り心地が悪くなるのです」   (a)
 「ばね下が軽くなれば、サスペンションの動きが良くなり、乗り心地や居住性が改善されます」  (b)

というような表記をみかける。これらは一見正しそうだが、二重に誤りだ。これはスプリングやばねレートが相対的に上昇することを考慮していないし、たとえそうしたとしても、軽量化によって路面追従性を良くすればするほど、乗り心地は悪い方向に行く。

 ホイールが軽くなれば、その分、ホイールの動きが激しくなるが、それはサスペンションから見ると、路面のおうとつが増えたのと同じなのだ※。

※グラフ1-1には、タイヤとホイールで決まる16Hzの「共振点」がある。この周波数から下が、ホイールと路面が一体で動く、「つまり100%路面追従する」帯域だ。共振点から上は、路面が変動してもホイールが追従して動かない、「路面追従が悪い」帯域である。100%路面追従する帯域では、路面の振動が直接サスペンションのバネに伝わる結果となるので、乗り心地が悪化するのは自明だ。「防振」とは、路面追従しないことで発揮される効果である。
 ホイールを軽くするとこの共振周波数が高い方へシフトするから、100%路面追従する帯域が拡大する。これによって、ホイールを軽くすればするほど、車体に伝わる振動が増えることがわかるだろう。



 少し詳しい人になると、タイヤが激しく上下動しているのに車体がフラットを保っている図を連想し、「路面追従性を良くすれば乗り心地も良くなるのではないか」と考える。これは、サスペンションのばね定数k2を低くした場合の話であって、ばね下を軽くした場合の作用とは、まったく異なる点に注意しなければならない。
 従って、(b)は、次のように言い換えると正しくなる。

 「サスペンションのばねを弱くすれば、サスペンションの動きが良くなり、乗り心地や居住性が改善されます」   (b')

 「サスペンションの動きが良くなると乗り心地が改善される」のは、摩擦が影響してダンパーの動きが悪く、乗り心地悪化の原因になっている場合だけである。



8.軽量ホイールにメリットはあるか

 どんな慣性でもその影響は「加速度」だけに関係するため、軽量ホイールのメリットが生きるのは激しい加減速を繰り返す用途、すなわちレースに限られる。
 以上の検討結果からすると、たかだか、0-100km/h 10秒程度の世界では、軽量ホイールのメリットはほとんどなく、体感もできない。もし体感できたとしたら、空気圧など別の要因によるものと考えるのが妥当だ。公道しか走らないのに高価な鍛造ホイールを買うのは無駄であり、乗り心地を悪くするだけである。



9.インチダウンに花道あり

 最近の車は営業的な配慮から17インチ以上の大径ホイールが純正で付いてくることが多いが、公道を走る限り16インチを超えるホイールは必要ない。純正で17インチ以上のホイールが付いてきた場合は、16インチ以下にインチダウンすることをお勧めする。乗り心地のほかにも経済性、耐久性などの面でメリットは数多い。

 一般車でホイールが16インチを超えるとタイヤの扁平率が55を超えてしまうことが多い。扁平率が上がれば横剛性はアップするが、それを超えると轍にハンドルを取られやすくなったり、乗り心地の面で問題が出てくる。横剛性が必用なのはサーキットだけで、公道しか走らないクルマが扁平率を上げる必要性はないし、無駄と言っていい。

 「見た目」だけのためにわざわざインチアップする人が多いが、同時に扁平率を上げることになるし、他にもデメリットが多すぎて全くお勧めできない。ホイールデザインは、小さくても品が良い、カッコ良く見えるものがベストであり、そういう方向で検討を進めるのが、賢いドレスアップといえよう。


<参考になる記事>
自動車のグリーン・マーケティング
 ばね下荷重の軽減に関する論述が、Elctlic Vehicleの引用部(11)にある。このほかにもEVやハイブリッド車に関する論述が参考になる。

<計算データ>
 本記事で使用した計算ワークシートを公開します。足回りの検討にご活用ください。




レガシィのレイアウトは合理的か(2005/8/29)


 現行のレガシィのラインナップを見ると、すべてAWD(4WD)付きである。レガシィが高価で重いのは、この4WDを構成するための余計なシャフトやデフが沢山付いるためだ。これによって、価格や重量がいくらプラスαされているかは、2WDを持つインプレッサのラインナップで差額をみればわかるだろう。

 4WDシステムの重量と駆動ロスは、燃費に悪影響を及ぼす。とある評論家が、「水平対向+4WDは世界で唯一無二のレイアウト」と論評してきたせいか、それを単純に有り難たがる人は未だ多い。「唯一無二」はその通りかもしれないが、それが本当に合理的に優れているか、ということとは、別である。4WDは、走破性が役に立たない場合でも、普段の走りの性能が良くなると言うが、ドライなアスファルト道路を走る限りメリットはなく、経済面のデメリットの方がずっと多い。

 4WDがそんなにいい物なら、どのメーカも必死で研究開発を行い、ほとんどのクルマに乗せてくるだろう。そうしないのは、マネできないからではなくて、合理的でない、つまり経済性を犠牲にするほどのメリットがないからだ。

 確かに、過去レガシィがヒットしたとき、各社一斉にサルマネしたが、とうとうマネしきれなかったのは事実である。これは、4WDや独自性のおかげではなく、サルマネしたクルマが、あまりにも安直に作られたのが原因だろう。

 レガシィには「水平対向エンジン」という特徴がある。これも最近、排気干渉を改良したら、個性と思われていたバサバサいう音が消えてしまい、特徴は低重心化や4WD化に有利ということだけになってしまった。レガシィのエンジンはショートストローク形で低回転トルクが細い傾向にあるが、2.5Lだけは低回転トルクが豊富でとても乗りやすかったのを記憶している※。
 しかし今ではその2.5Lもカタログから消えてしまい、一部の熱狂的信者だけが好むラインナップになりつつある。今は燃費の時代であり、今後もそれは変わらない。4WDだけに頼っていると、将来必ず行き詰まるときがくるだろう。

 3Lは将来最も有望なキーハードだが、今はまだ完成度が中途半端で、いろいろコネクリまわして何とか成立させているのが実態だ。富士重にとって本当のプレミアムカーは、この3Lが熟成されたとき初めて現出されると思われる。

※1気筒当たり625ccだから、このエンジンは1気筒がほぼ軽自動車1台分に相当する。

<参考になる記事>
インプレッサFAQ
水平対向の「味」って?
クルマの基礎用語 水平対向エンジン



2005年スポーツカー選び〜チャパツ整備士のいるディーラの対応はまともか(2005/8/27)

 私のGT-Vもそろそろ5年目の車検を迎える。この節目にスポーツカーについてリサーチしてみた。ここでいう、スポーツカーの定義はこちらで述べたとおりである。これまでいろんなクルマを試乗してきたが、スポーツを名乗るクルマは1.4トンを超えたらダメである。1.4トンを超えてしまうといくらクルマにパワーがあっても重たい感じがつきまとい、軽快にキビキビ走れなくなる。排気量は車重に比例して大きいことが望ましく、1.3トン台なら2L以上はほしい。そうなると、2L以上&1.4トン未満&MTという条件が、ひとつの基準となる。


 この基準をもとにサーチすると、トヨタ、ニッサンには該当車種がなく、アテンザ、アクセラ、ロードスター、インプレッサWRX(STiではないやつ)、B4 2.0iなどがスペックの選考をパスする。意外にも、マツダが多い。真にライトウエイトスポーツと言えるものは、ロードスターしかなくなりつつある。
 ホンダには多くの該当車種があるが、スポーツVTECは高回転型で低回転トルクが細く、駆動方式もFFに限定されるため、私的には対象外である。FF&NA&VTECが良くも悪くもホンダの縛りといえる。

 B4は魅力的だが、未だ続いている水平対向+4WDというおかしな構成や、ディーラの対応やサービスの面でボツになってしまうのである。
 マツダはRX−7の事例もあるように、軽量化のこだわりは相当なものがある。スポーツカーにとって、軽いことがいかに大切なことか、良く認識している数少ないメーカだ。しかし、ディーラの対応やサービスの面が伴っていないため、やはり対象外になってしまう。


 レガシィは4WDメカニズムを乗せているせいで、2Lクラスなのに2.5L以上の価格と重量になっている。レガシィは「プレミアムカー」と評されるが、高い値付けを正当化できるだけのプレミアムがあるかといわれれば、やや疑問だ。

 「プレミアム」という言葉を使うには、品質のみならずディーラの対応やサービスにおいても満足でなければならない。しかし現実の富士重は、いずれの平均レベルも低く、マツダといい勝負だ。いくらクルマが良くても対応が悪いと、トラブルが起きたとき後悔する※。

 以前ロードスターを買ったとき、チャパツのニーチャンが整備をやっていて、作業着はTシャツだった。買う前からいやな予感がしていたが、実際お世話になってみると、心配は的中したのだ。サービスも営業も、頭髪や服装に乱れが見られるディーラでは、まともな対応は期待できない。中身の悪さは、必ず外見に表れるものである。


 上記で候補を挙げたが、私的な場合、近所のディーラを観察し、対応面でふるいをかけると、選べる車種がなくなってしまう。当面は、買い替えができない状況が続きそうだ。直6にこだわると、今後はBMWにいくしかないかもしれない。




知られざるハイパワーターボ車のストレス(2005/8/24)

 インプレッサのSTiに試乗して、久しぶりに高圧縮ターボの問題を思い起こした。ターボエンジンはだいたい排気量1L増しに相当するピークパワーが得られるが、その代わり低回転トルクがとても細い。これは、エンジンの圧縮比が低く、しかもマフラーのヌケを良くしているためである。この傾向は小排気量で馬力を稼いでいるものほど強く、ブーストが効かない低回転では、NAと違ってアクセルを踏み足してもほとんど反応しない。

 ハイパワー車を所有していて、日常最も感じる(感じたい)優越感といえば、信号スタートにおける余裕ではないだろうか。他車と同時にスタートして、余裕を持って前に出る。後のクルマからすれば、「おおッ、さすがにスポーツカーは速くてカッコイイな」そう思われたいはずだ。ところが、ターボ車を買うとその逆になってしまうケースが多い。

 私は過去、R32のGTS-tに乗っていたが、信号スタートで普通に発進した時の出足が遅く、1.5Lクラスの乗用車はおろか、軽にも遅れをとる有様であった。スタートで他車より前に出るには、あらかじめ回転を上げておいてクラッチをつなげば済む話だが、自分だけそんな特殊なことをしなければ周りについていけないことに、納得いかない思いがあった。勾配やカーブのきつい山道では、一旦回転が落ちるとなかなか回復せず、かなり苦しかったのを記憶している。

 結局ターボの利点が生きるのは、高速道路など速度(回転)を落とさずに走れる場合であり、この場合は確かにターボが付いていると気持ちがいい。しかし、ゴーストップの多い町中を走る場合はターボのデメリットが目立ち、より排気量の小さい、価格の安い車に置いて行かれるばかりである。
 この問題は、GTS-tに限らず、ハイパフォーマンスを誇るインプレッサWRX STiやスカラインGT-Rにも共通する。これらのパフォーマンスはよく話題になるが、低回転域の非力さについては、あまり語られることがないようだ。

 R34スカイラインに乗るターボはリニアチャージコンセプトであり、ターボらしいパワーの盛り上がりが無い代わりにそういう問題を少なくしている点で好感が持てる。「チューニング」と称して純正のバランスを崩すようなことをすれば、一挙に低速トルクが細る結果となろう※。

※ カタログデータでは低速トルクからNAを上回っているが、これはエンジンを全開で回した場合の話である。通常は、2000rpmまではターボのブーストがかからないから、NAに劣ることになる。



 結局、公道を走ることを前提にすると、絶対的なパワーやトルクよりも、低速トルクが太い方が乗りやすく、発進加速に優れ、満足を得やすい。高回転でパワーを発揮するエンジン、例えば小排気量のVTECやターボは、回せば確かに気持ちが良いが、燃費や騒音のことを考えると、のべつ高回転を使うわけにはいかないのが現実だ。

 回すことでパワーを発揮するエンジンは、「回さないと真価を発揮できないエンジン」と言い換えることが出来、そのほうが実態に合っている。
 「自分の車は、速いんだぞ、すごいポテンシャルを持っているんだぞ」と思っていても、常用回転域が非力で、軽にも遅れをとるのでは、ストレスになるばかりだ。


<参考になる記事>
Z33 vs R34 比較
3.5L、NAと、2.5L、ターボのエンジン特性の比較があります。



キャパシタ−ハイブリッドは将来の主流になるか(2005/7/10)

 何気なく購入したベストカーの8月号を読んでみたら、とあるライターがとんでもないことを書いていたので、思わずのけぞってしまった。一言で言うと、「10倍の容量を持つキャパシタが開発されそうなので、10年後はハイブリッドだらけになる」「モータースポーツでチョロQのごとくダッシュもできる」
 というのだ。やっぱり、素人の技術評論は問題である。

 キャパシタの実用性を語るには対象物の電圧事情をあわせて考えなくてはならない。ハイブリッド自動車や鉄道などのモータ駆動系では出来るだけ電圧を高くしたいという要求がある。電圧が高いほど機器がコンパクトになり、効率がよくなる。たとえば現行プリウスではそのためにわざわざ昇圧回路を用いて最大500Vまで電圧を上げている。

 ところが電池やキャパシタは簡単に電圧をあげられない事情がある。電池もキャパシタも、電圧を上げるためには沢山のセルを直列に繋がなくてはならない。沢山の蓄電媒体を直列につなぐと内部抵抗のバラツキが問題になって使い物にならないのである※。これが、いつまで経ってもキャパシタが電気駆動系に採用されない最大の理由だ。

※通常、個々のバラツキを緩和するための制御回路が内蔵されている。しかし、見かけを良くしているだけで、本質的に改善できるわけではない。


 キャパシタ側で10倍容量アップが出来たところで、実用化は難しい。キャパシタというのは、「容量」「内部抵抗」「体積」の3つがお互い相反する。従って、どこかを良くしたら、他の何かが犠牲になっているのと考えるのが妥当だ。たとえば、これまでに無い大容量を実現して、大きさが変わらないのであれば、「内部抵抗」が犠牲になっているだろう。

 内部抵抗が高いということは、電気を出し入れするときに取られる税金が多いことを意味する。それを「消費税」としよう。電力変換機器の税率は、最も良くて現行の消費税(5%)と同程度である。この税金は、往復ビンタで効くから痛い。
 例えば、10倍の容量アップをした代償に、内部抵抗が増え消費税が10倍になったとしよう。この場合、入れるとき50%とられて、出るとき50%とられるから、25%しか残らない結果になる。

 取られた税金は熱になるから、発熱のせいで電気を頻繁に出し入れすることも、電流の出し入れも困難になる。従って、モータースポーツでチョロQのごとく使うなど、不可能である。さらに、キャパシタに寿命がないと勘違いしている人が多いが、寿命はある。ヒートサイクルによって電極の接合部がイカれてしまうのである。

 結局、内部抵抗の高い大容量のキャパシタを、頻繁に電気を出し入れする用途に使うのは無理である。こういうものは、もっとゆっくりとした充放電サイクルの用途(たとえば風車など)に適しているといえよう。

 バッテリにしろキャパシタにしろ、こういう問題は時間が経てば技術が進歩して、いずれ解決すると思う人もいるかも知れない。しかし、それも難しそうである。現在のレベルで既に物理的限界が見えているためだ。容量はもうこれ以上増えることはないだろう。今後は容量を多少犠牲にして寿命やコストのメリットを出していく方向になると予測される。

 ハイブリッドの需要も現在がピークで、これ以上伸びるとは考えにくい。もし伸びることがあるとすれば、それはガソリンの値段が300円/Lを超えた時である。




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