わたしの好きな管弦楽つき教会音楽
オラトリオ、ミサ曲、レクイエム…壮大な管弦楽を擁した教会音楽を紹介していこうと思います
ミサ曲第3番ヘ短調 (ブルックナー作曲)
Messe f-moll WAB28 / Composed by Anton Bruckner
一聴(っていう日本語あるのか?)して惚れました、この曲に。ブルックナーの交響曲といえば長くて重厚で聴いてて疲れる(ファンの方ごめんなさい)印象しかなく、あまり期待していなかったのですが、この曲にはすっかり惹かれてしまいました。
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ブルックナーは修道院付属の寄宿学校を出ており、またリンツ大聖堂のオルガニストを務めたこともあるカトリック信者です。大作はみな交響曲となっていますが、実は彼の作品の75%は声楽作品、しかもその大半が宗教音楽の作品です。彼の作品にはメロディックなアリアやリートはなく、ほとんどが合唱作品となっています。このためか、ブルックナーは旋律作家というより和声作家であるとも言われています。交響曲も合唱作品も、まるで歴史的な建築物のように音楽の骨組みや壁、天井やステンドグラス、吹き抜けに至るまでがバランスよく配置されているように感じられるのはそのせいでしょうか。
ブルックナーが遺したミサ曲は全部で7曲ありますが、うち一曲は死者のためのレクイエムです。この第3番はミサ通常文に従って書かれました。作曲時期は1867年9月からの1年ほどですが、本人による改訂が重ねられ、初演は1872年にウィーン・アウグスティナー教会にて作曲者の指揮にて行われました。1867年、ブルックナーは体調を崩し、精神を病んでスメロマニアという状態に陥っていました。星の数や木の数、砂粒まで数えなければ気がすまないという状態だったとされています。
この曲はミサ通常文に従って6つの部分で構成されています。1曲目はキリエで、4/4拍子で厳かな出だしです。弦の下降主題動機が重なり、合唱の「哀れみたまえ」という讃歌と融和していきます。
2曲目はグローリアです。 始まりから輝かしく「グロ〜〜〜リア」と、天に向かって謳いあげるような壮麗な音楽が響きます。
3曲目はクレドで、最も長い楽章です。クレドというラテン語は信仰告白を意味しますが、まさにその告白を、力強く歌いだす始まり方です。輝かしい部分に続き、マリアの処女懐胎を告げるくだりでは神秘的なヴァイオリンとヴィオラのソロが聴こえます。深く瞑想するようなコーラスを中盤におきつつ、最後は荘厳に締められます。
4曲目はサンクトゥスで、木管の清冽な歌から始まり、やがて合唱とオーケストラがホザンナ(ヘブライ語で「私たちを救ってください」の意のho si a naに由来する、神の栄光を讃える喜びの叫びだそうです)部と呼ばれる「いと高きところにホザンナ」というフレーズを連呼します。天上に登るがごとき上行フレーズがかっこいいですよ〜。
5曲目はベネディクトゥス。穏やかな弦の歌いだしが印象的。ソプラノの独唱で再びホザンナ部が歌われます。そこから導かれるようにホザンナ部の大合唱があります。
6曲目はアニュス・デイです。最初のキリエに同じく、下降の音型で静かな導入部分があります。中盤に「王様」をイメージさせるような荘厳な高まりを持ちますが、やがて消え入るように終わっていきます。最後の、思い出したかのようなオーボエが何だかおかしいような(笑)。
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