わたしの好きな管弦楽つき教会音楽



 オラトリオ、ミサ曲、レクイエム…壮大な管弦楽を擁した教会音楽を紹介していこうと思います
   

ミサ・ソレムニス(荘厳ミサ曲 作品123)
Missa Solemnis Op. 123

第一弾はこの曲!。ベートーヴェンの名言「心から出て、再び心に入らんことを」」はこの曲の完成稿の冒頭に記されたもので、あの「第九」とともにベートーヴェンの「総決算的作品」とも言われる傑作なのです。

もともとは彼を庇護していたルドルフ大公がモラヴィアの大司教に任命されるにあたって献上するべく書き始められたのですが、取り組んでみるとその就任式に間に合わぬほどに楽想が涌き溢れ、「これは私の最大の作品、歌手にも聴衆にも敬虔な気持ちを起こさせる意図で書いたもの」と語るほどにのめり込んで就任式には結局間に合わなかったのだそうです(^^)。

[おすすめCD] 荘厳ミサ曲 作品123/オットー・クレンペラー指揮 ニュー・フィルハーモニア合唱団、ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 EMI CLASSICS / TOCE-59103 2002

この曲の特徴は、名前そのまんまの「荘厳さ」につきると思います。第1曲の「キリエ」では、真摯な呼びかけが厳かに歌われていきます。がっしりしたオーケストラに支えられて、混声合唱がまっすぐに「キリエ、エレイソン(主よ哀れみたまえ)」と歌っていきます。キリエに切なさがない、本当に哀れみを乞うてるんかオノレ、という向きもあるかもしれませんが、感傷的なミサ曲はイヤでございます私。
第2曲の「グローリア」も輝かしい響きで始まり、「主のみ聖なり」と自信たっぷり?に歌われていきます。第3曲の「クレド(信仰告白という意味です)」ではテンポを巧みに変えながら「苦しみを受け、死にて葬られ、死人のうちより3日のうちに甦り、主なる神の右に座したまえり」というキリスト教の信仰告白がそのまま音楽で描写されていきます。信仰告白の後は壮麗なフーガの後、テンポを落として祈るようにそっと終わります。
それではあまりこの曲に魅惑のメロディを期待しないほうがいいのか、と言うとそうではなく、神への感謝を歌い上げる第4曲「サンクトゥス=ベネディクトゥス(聖なるかな=ほむべきかな、という意味。サンクス!とは違います)には激しい賛美が歌われた後に素敵な前奏曲、そしてフルートとヴァイオリンによって崇高な旋律が歌われています。
ミサ曲というからにはミサの順序に従って作曲がなされているわけで、最終曲は「アニュス・デイ」です。バス独唱にはじまり、ベートーヴェンが「内的な平安と外的な平安への祈り」と記した祈りの音楽が続きます。その後ソプラノ独唱に続いて合唱が神の子羊よ、平安を与えたまえ…と最初は力強く、やがて静かに祈るように曲が閉じられます。

この曲は最初、CDショップでタイトルだけ見てCDを買いました。聴いてみて、自分が教会に対して抱いているイメージがそのまま描かれていることと、ベートーヴェンが信仰心を曲に表すとこうなるのかということに感動したのでした。
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