一流と二流の違い

白剣 剣報 2002.4.1号

2月8日から、ソルトレークシティーで冬季オリンピックが開催されましたが、日本は銀メダル1個、銅メダル1個の散々たる結果で終りました。
その銀メダル1個の成績を納めた、スケート男子500メートル競技の清水宏保」選手(27)の事について少し触れて見ました。

清水宏保選手は、4年前の長野冬季五輪大会でスケート男子500メートル競技で日本人初の金メダルを獲得、4年後の今大会でも銀メダルと素晴らしい成績でした。
銀メダルでも、記録は500メートルを2回滑りその合計タイムが優勝者に0秒03及ばなく銀メダルに終ったという事です。
0秒03をセンチに直せばわずか7センチと言われますが、その7センチの差で世界のチャンピオンになれず、銀メダルに終ったのです。しかしこの記録はこの地球が存在する限り本人にも世界にも永遠に記録として残っていくのです。
今回清水選手は、大会前から腰痛がひどく、注射や痛み止めを飲んで臨み、自分の体調を100%に仕上げる事が出来なかった、だから絶対的な自信が無かったと言われます。
清水選手は、「それでも負けは負け。五輪に(ピーク)を持っていけなかったし自分の世界記録に迫れなかった。実力不足」と言い訳は無かったと、新聞がコメントを残しています。

大きな目標に向かって、挑戦し続けられるかだ

この大会の事はこれまでにして、最近考えられる事について記載してみました。全てについて上達する選手とそうでない選手、つまり、「一流」と「二流」の違いについてであります。
一口で言うなら「目標に向かって、あくなき挑戦を続けることが出来る」のが一流と言われる選手に共通する事ではないでしょうか。また、他の選手より多くのことを考え、そして実行できるというのも大切な要素だと思います。
私の師匠であった中尾巌範士八段が、よく私に「一流は一流の稽古をし、二流は二流の稽古しか出来ない。よって二流は一流に勝つことは困難である」と教えられました。
つまり、稽古の量だけでなくその内容も一流と二流では違うということであろうか。
また私は、失敗を次に生かせるのが一流であり、二流はすぐその悔しさを忘れてしまう。咽もと過ぎれば熱さを忘れる、ようでは駄目なのです。
失敗した原因、勝因。このことについて、どれだけ細かく分析し、その一つ一つについて次からの稽古にどれだけ反映できるかではないでしょうか。
「反省だけなら猿でもする。」です。
各分野で一流といわれた人達の話を聞いてみると、三通りの目標を持っているように思うのです。
まず一は、大きな目標(夢)を持つことです。人それぞれそれなりにみんな夢を持っていると思うのです。
しかし、その夢を信じてどれだけ努力しているかというと、それなりに違いがあるのではないでしょうか。
自分が作った夢だから、自分でその夢の実現を信じてどれだけ努力するかなのです。
信じる者は救われる、と言われます。
自分の作った夢に向かって最高の努力を惜しまず頑張る事です。
次は、実現可能な(夢)を持つことです。夢が夢で終わるような、実現不可能な夢を上げてもそれはただの空想のものに過ぎません。
夢は,人間として(自分としてのものでなく)実現できる大きな夢を持たなければなりません。現在では宇宙へ行くことも、剣道日本一になる事も決して夢ではないのです。
そして、その日その日の目標(課題)を消化する為に努力を惜しまない事。
「努力に勝る天才無し」という諺がありますが、人並みの努力は人並みの結果しか出ません。誰よりも多くの努力をするそれは、人がしない時に努力をして初めて人より努力したといえるのです。
他の人が1やるなら、自分は2やる。他の人が2やるなら自分は4やる。
それでやっと人の倍の努力なのです。
誰よりも多く努力をし、誰よりも多く苦しみの汗と涙を流しただけその、結果は大きいものがあるでしょう。
最終目標(夢)を達成する為に、残り2つの身近な目標が達成出来るように、こつこつと日々努力を惜しまない事が必要です。
最後に忘れてはならない事が1つ。
一流と二流の差は、実はそれほど大きくないと言う事です。
現在、プロ野球では阪神タイガースが破竹の勢いで各種記録を塗り替え、連勝を続けています。
昨年までは毎年あまり成績が良くなく、監督、コーチが変わっただけで何故これほど選手が変わるものだろうか?
それは、選手が自分で気が付いた事や、監督、コーチから受けた、助言や指導を素直に聞いてどれだけ実行して行く勇気が有るか無いかです。
毎日の稽古で、この小さな実行の差の積み重ねが何年後かに大きな違いとなって結果として表われてくるのです。
コーチは技術を指導し、監督は意識を改革すると言われます。
選手は監督、コーチ、そして自分を信じて実行して行くことなのです。
皆さんも、それぞれ大きな目標(夢)を持ってその目標に向かって飽くなき研究と努力を惜しまずがんばりましょう。
努力をした人が成功します、明日からと言わず今日から、「計画,実行、反省」の連続で、誰よりも多くの苦しみの涙と、汗を流しましょう。
                                文 一岡正紀  

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