あとがき



■名づけられざるもの
 初めて2と4を腹いっぱい書いた話。サイボーグたちの出発点の物語ということで気合も入りまくり。おかげでセリフも話の展開も青臭いこと(ボカ〜ン)。書いている時も思ったし、また今回ここに載せるために読み返した時も思ったんだけど、私って本当にアルベルトが好きなんだな。ああもう読んでて恥ずかしかった。文章も下手だしねえ(今でも下手だけど)。
 もともとコピーで出して、それが009放映したての時だったせいであっちゅう間に完売したので(つっても作ったのは全部で60冊ばかしだけど)、すぐにオフセットに再録したんだが、それももう在庫がなくなっちゃったので、今回ネットに再掲載した。基本的に私の009本はこれが第一話みたいなもんなので、これ読んでないとあとの話が分かりにくくなっちゃうんですわ。「他界の水ぎわで」と「名づけられざるもの」で、どっちを入れるべきかちょっと迷ったけど、こっちの方が短くてアップするのに楽なのでこっちにした。まあ、あらすじだけならこの二つは概ね同じなので。
 誤植や、大事なシーンなのに文法が変、という部分のみ修正した他は初出時のまま。


■赤土に浮かぶ家
 今年は2,004年、009連載開始40周年である。4がぞろぞろ並んで004ファンとしては張り切らずにはいられない年なのだ(突っ込みは断る)。その上しんさんのヴァイスが4周年&15万ヒット突破とくりゃ、ますますもってめでたいというもの。その上初秋はアルベルトのお誕生日シーズンだ。しんさんにはずーっと前から何か一筆啓上したいと思っていたんだが、ええ加減な私には人様に贈るに相応しいコンパクトかつちゃんとしたものが書けなかった。でも今せっかくこれだけいろいろなお祝い事が重なっているんだから、この期にきっちりシメにゃあ、と書き上げたのがこれ。アルベルトのお誕生日が9月19日ってことを考えると、書き上げた日が微妙に遅いのがちょっと悔やまれるが。お話自体はとても気に入っている。でもしんさんが喜んで貰ってくれたのが一番嬉しいや。
 ところで、小説のタイトルも決めてあらすじも大方決まってから初めて知ったんだけど、「埴生の宿」って「ビルマの竪琴」とかに使われていたんだね(『火垂るの墓』のラストに流れるのは知っていたけど)。「ビルマの土は赤い」なんて感じのセリフもあるんだって知ってびっくり。今回のあたしときたら冴えてるじゃないか(言ってろ)。
 ちなみにグレートが出てくる時代はぴったり現代、2004年です。


■黒をかぶったあなたと私
 ハーさんはヒルダが子供の頃どんな風だったかとか細かいことは知らないです。知らないのになんでこんな形で出てきたんだ? 電波か(ボカ〜ン)。
 この話、描写が不親切な部分もありますが、その辺りに関しては想像してもしなくてもいいです。
 書いてから気がついたんだが、「名づけられざるもの」→「黒をかぶったあなたと私」→「赤土に浮かぶ家(後半部分)」は、ぴったり二十年ごとのお話なのであった。うーん、しみじみ。
 ちなみにBGMは中島みゆきの「雨月の使者」と「誰のせいでもない雨が」。こんなもんを書く際の足しにしてしまって申し訳ない・・・。

 ところでこっから先は物語とは直接関係ない話になってしまうが、まあちょっとばかし。
 この小説を書いている間、自分の中で「久しぶりに曇りない心でモノを書けたなー」という感慨がとにかくあった。と言うのも自分が今まで009を書いていた時って、没ゼロという究極ヤなもんが内にも外にもごーろごろという時がほとんどだったのだ。まあ同人やってる時の私は結構マゾだったりするので、そういう環境でも大いに楽しく書いていたわけなんだが、その間、「にしても今の状態に慣れちゃって、逆にこういう状態じゃなきゃ同人が書けない人になっちゃったらどうしよう」という不安がちょっとあった。でも今回これを書いている間ふと、「ああいろんなヤなもんがとうとう抜けたなあ」という感覚が自分でもはっきりと分かる瞬間が何度もあった。それが自分的には本当に嬉しかった。もちろん、没ゼロの悪口はその気になれば今だっていくらでも出てくるが、今ならもっと適当な気持ちで文句が出せる。ようやくそういう状態になれた、と思う。
 というわけでこれは数年ぶりに(と言うよりひょっとしたら初めて)きれいなココロで書いた小説なのだ。まあ、私の「きれい」など「どうにかベストごまかし角度で撮られた渡辺美里のCDジャケ写真」程度だが(ボカ〜ン)。


■車椅子
 ノートパソコンのマイドキュメントの片隅に保存してあったメモ帳から発掘。009本をまあまあ頻繁に出していた頃に書いたのだと思う。ファイルのプロパティを見てみると、作成日時は2002年7月19日の夜中の0時37分50秒、とあった。単純に逆算すると「いつも心に太陽を」と、それと同時収録の「せめてもの祝別を二人の亡人のために」を書いていた頃である。あの本の入稿締め切りっていつだったっけ、と引き出しの中の領収書を取り出してみたら7月24日とあった(ちなみにこの時は仕事帰りに直接入稿したから印刷代もその場で払ったのだった)。・・・あんな切羽詰っていた時にこんなもんを書いていたのか。ああ夜中って恐い。でもなんだかんだその後もいろんな原稿の合い間にパカっと眺めては手を入れていた覚えがある。
 どこで公開するつもりもなかったが、まあこんなものでもスペースの賑わいにはなるかと今回公開した次第。


SCAPEGOAT SHEEPDOG
 こんな昔の原稿出すの恥ずかしいよう。
 私にしては珍しく一人称でしかも島村が主人公のお話。しかし現実に犬を飼っている今となっては、こんな話絶対書けないなあ。犬そのものを出すことはいいんだけど、こういう結末はちょっとねえ。
 基本的に009の世界に、猫はともかく犬は存在して欲しくないね。不幸なのは人間でたくさん(ボカ〜ン)。


■第四世界の聖人
 こん時の冬コミは落ちてたし、新刊出す気なんてゼロだった。SNL本の準備が大変だったし、気分的にもそっちに集中したかったしね。まあでもこの頃から出したくて仕方なかったのよね、ドイツ話を。て言うか私はやっぱアルベルトが不幸になる話を人に読ませたくて仕方がないのよ。しかし今はよっぽどのことがない限り、コピー本作ろうなんて、ならんなあ。根性ねえ。
 しかしあのクソ長い「無限分割 第一話」も圧縮すればこんなもんの話なんだよな(笑)。レニもエルンストも名前でしか出てこねえし、ママと兄ズに至っては名前すら出てこない(涙)。
 後の本編(?)と比べるとありゃりゃな所が一杯ありますが、その辺は勘弁したって。五年もたちゃあ、そりゃいろいろ変えますて。しかしこれだけ読むとパパは単に胡散臭い人ですね。もう裏切るに決まってるじゃん、みたいな。あ、あとテンポの都合であんな風に書いてますけど、現実の調律はあんなにぱぱっとできるもんではありません(何をどうしたいかにもよるが)。念のため。
 ちなみに、いまだに「雪割草交響曲」の入った単行本は持っていない。そう、今でもあの「青い本」で読んでいるのであった。