2006年 8月  2泊 飛鳥Ⅱ 横浜→神津島→横浜

1 やっと乗れた、初めての「飛鳥Ⅱ」
 
15年間、日本のクルーズ客船の頂点にあった「飛鳥」が引退。
日本郵船が、その代わりに就航させたのが「飛鳥Ⅱ」
総トン数50,000トン。全長240m。日本最大の客船です。

と言っても新造船ではなく、アメリカで就航していた「クリスタル・ハーモニー」を日本向けに改装したもの。
船齢は実は前飛鳥より1年古い1990年生まれ。 

日本向けに展望風呂を増設したり、かなりの大改装だったのですが、なにしろ船齢16年。
裏方の設備面ではかなりの苦労があるようです。

「飛鳥Ⅱに乗ろうよ!」
と我家で話が出たのはデビュー前の昨年の暮れ。しかしこの飛鳥Ⅱ、今年3月のデビュー以来満席が続き予約は取りにくく、我家も8ヶ月前にキャンセル待ちを入れ、ようやく今回の乗船となりました。

「いや、そんなに待たないでも乗れたよ」
とおっしゃる方は上級客室の方。

我家が狙ったのは「ステートK」という最安値の部屋。
いつもお世話になっているP社で申し込んだ時、「ステートKは満員ですが、バルコニー付きなら空いております」
と言われたのですが、バルコニー部屋はチョット手は出ません。

「とにかく ステKで待ちます」

最安値と言っても、ホテルのツインルーム程度。前飛鳥より広くなっているはずです。
それに案内には「窓の外の救命ボートが視界を遮ります」と書いていますが、我家は以前アラスカに行ったとき、
窓なし部屋に1週間住んでました。問題はありません。

2泊3日で92,000円。 以前の最安部屋は2泊で98,000円なので今回はお得です。
それに、旅行会社P社の割引や、日本郵船の割引券で更に格安に。


今回、横浜出航は22時ですが、停泊中に横浜港の花火を観るために、16時からの乗船となります。
満席ということで、横浜客船ターミナルは超満員。

向かいには「ふじ丸」もチャータークルーズで停泊中です。
少し離れたターミナルには「にっぽん丸」も停泊中。
3隻とも花火が終わった後、22時には出航し、それぞれの目的地に向かいます。
  





「いい部屋じゃん!」
船室は思った以上に広く、使いやすく出来ています。
窓も大きく、外に吊るしてある救命ボートも、それほど気になりません。

以前の最安部屋は廊下の天井も低く、機関室の入口や倉庫と同じフロアーだったので、
「倉庫を改造したオマケの部屋じゃないのか?」 といったイメージでしたが、飛鳥Ⅱになって余裕が出来たのか立派な部屋になってます。

船内新聞で今日の予定を確認すると、夕食は17時から19時までご自由にと書いてあります。
飛鳥は普段は決まったテーブルに案内される方式。
今日は花火のため、変則的な方式です。

船内探検と展望風呂から帰ったら、5階のダイニングルームに向かいます。
今日のドレスコードは「カジュアル」。花火大会なので特にユカタでもOK。
ただし、温泉街のユカタではありません。帯も角帯でないと不可。
   




夕食は花火に間に合うようにと、高級な幕の内弁当風。
最初からゴハンが出るので、こっちのほうが助かります。

ウナギにアナゴにハモ。長物が3種類入ってます。
なかなかの出来で、飛鳥のポイントが一気に上がります。

あまりゆっくりは出来ません。この後は12階のデッキに上がって花火見物です。
デッキには既に椅子が並べられており、椅子の向きで打ち上げの方向が分かりました。
よくよく見ると、椅子の最前列には「ロイヤルスイート指定席」の張り紙が。

「どんな人が座るのかなあ」 
花火よりこちらのほうが気になります。

「それにしても、意外に空いてるねえ」
600人も乗っていては椅子取合戦で大混雑かと思いきや、デッキは意外に空いています。
「バルコニー客室は、自室で見てるんだよ」

我家が陣取ったのは、11階の最前部。ラウンジの奥になるので穴場です。

眼下のレンガ倉庫を見ると、花火の見物客で大混雑。
客船ターミナルも見物客でいっぱい。

港内も屋形船やクルーザー・遊漁船でビッシリ。
これから花火の始まりです。                 



2 元は取ったぞ、花火大会

長かった梅雨もあけ、最高の天気での「神奈川新聞花火大会」

次々に大きな花火が上がります。
最近は「キャラ花火」が流行っているようで、「キティーちゃんだ!」「ドラえもん!」と
子供たちが声を上げますが、言われなきゃ正直解りません。

船室に配られていた、神奈川新聞の打ち上げスケジュールを見て確認します。
打ち上げ場所とは、そこそこ距離がありますが一番大きな尺玉は「ズシーン!」と腹に響きます。

「お得だな。元は取ったぞ」

クルーズ船で花火を見るのはこれが始めてですが、思った以上に快適。
おつまみあり、無料のビール有り。混雑とは無縁で、帰りの電車の心配もなし。

クルーズ船会社もその辺は心得ており、今回も飛鳥Ⅱ以外に「ふじ丸」「にっぽん丸」が停泊。
それぞれ花火が終わったら、小笠原や大島に向けて出航です。

屋形船で見るのも楽しそうですが、花火が終わったら満員電車で帰らなくてはいけません。
おまけにこの花火の時の屋形船は、特別料金で夕食付き20,000円程度。

1時間以上続いた花火大会が終わると、湾内にいた小船が一斉に動き出します。
この小船達が帰るまでは、「飛鳥Ⅱ」は出航できません。




10時の出航までには、まだかなりの時間があります。

「新しくなった海彦を見に行こう!」
海彦は先代飛鳥の頃からあった寿司屋。ここだけは追加料金がかかります。

1日8食もタダで食べ放題なのに、お金を払って行く人もいるんです。
長い航海になるとディナーのメニューを見て気に入らないと、それを食べないで海彦に行くというお客もいます。
もったいない話です。

我家はそんなことはありません。
ディナーはタップリ食べ、海彦にもチョットだけ顔を出し、その後夜食にも行く予定です。

そんな訳で頼んだのは1人前とお酒。
寿司屋といってもメニューにはシャブシャブや天麩羅もあります。

改装前の「クリスタル」時代、ここは和食屋だったそうで、アメリカ人は前菜に寿司を食べ、メインでシャブシャブ。つまみに天麩羅と食べたそうです。




10時になり湾内から小船がいなくなりました。
飛鳥Ⅱもようやく出航です。

いつもの出航なら、紙テープでのお見送りや、音楽・ダンス そしてシャンパンが振る舞われますが、今日はイベントも無く、静かに出港します。

それでも桟橋には花火を見たついでに送ってくれるギャラリーがチラホラ。
だれかが「UW」旗(いってらっしゃい)を振ってくれたら「UW1」旗(いってきます)を振り返そうと準備していったのですが出番はなし。

出航後は夜食の時間ですが、今日はまだ仕事が残っていました。
「荷物仕分けるの手伝ってね」と女房。

今日は乗船してすぐ展望風呂に行き、あわてて夕食。そのあとデッキで花火鑑賞。
終わって海彦。10時に出航見物と動き回り、持ってきたスーツケースの中身をクローゼットに収納するのを忘れてました。
                       



3 夜が明ければ神津島
  
2日目の朝
ふと目を覚まして時計を見るとすでに6時。

日の出を見ようと思っていたのですが、すっかりと寝坊しました。
あわてて船室のカーテンを開けます。

この「ステートK」という船室は、窓の外に救命ボートがあって視界が遮られるとの事で、格安になっています。
しかし視界が遮られるといっても、以前の小さな丸窓より明るく広くなっており不満はありません。



部屋から外を見るとこんな感じ。
ちょうどボートとボートの間だったのでお得でした。

窓に貼っているのは出番の無かった「UW1」。デッキから自分の部屋がすぐわかります。
みなさん自室の窓に、マスコットを吊るしたりして楽しんでます。

全長240mのデッキは先が見えません。
先代飛鳥はデッキの高さと部屋の高さが同じだったので、外から覗かれる事がありましたが、飛鳥Ⅱは階段数段分下がっています。これなら安心。

既に飛鳥Ⅱは神津港沖にアンカーを入れたようです。
神津港は狭く浅く、飛鳥Ⅱは入れません。

そこで地元の漁船と本船の救命ボートで島まで往復し、乗客を運ぶ事になります。
今日は8時から神津島へのピストン輸送が始まります。が、その前に朝食へ。

11階後方のバイキングで食べ放題。
いつもの様に単価の高い物を狙うのですが、飛鳥はパンが美味しく、ついつい食べ過ぎます。

女房はコックさんにオムレツを焼いてもらっています。
プレーンでもミックスでもチーズでもOK。




上陸を急ぐ人は急いで出て行きますが、我家は今回上陸は急ぎません。
飛鳥Ⅱを充分楽しみます。

ゆっくりと朝食を終えて、外部デッキにコーヒーを持って出てみました。
デッキから下を見ると、すでにピストン輸送が始まっているようです。

飛鳥Ⅱが空いているうちに船内を探検し、11階前部のラウンジに行ってみると、なにやらセレモニーが。




どうやら島から最初の便で、島のお偉いさんが上がってきたようで、船長たちに記念品の贈呈が行われ、ミス神津島からは花束の贈呈が行われています。

お偉いさんのスピーチはチョット長かったですが、暇なので最後まで見てました。
その後、島の人は取材班を従え、船内見学に。
今晩のケーブルテレビにでも出るのでしょうか。

さて、ピストン輸送も一段落したようです。
「じゃあ、そろそろ行くか?」
「あたし、エステに行きたい」
「エステェ~?」

そんな訳で、めずらしく我家は別行動。女房は12階のエステに予約の電話を入れてます。

「上陸したら、島で寿司でも食べてくれば」
「冗談じゃない。帰ってくれば昼飯はタダなんだから。昼には帰る」

せっかくのタダ飯を無駄には出来ません。
                  



4 さあ神津島上陸
  
島までの通船は、飛鳥Ⅱの救命ボートと、地元の漁船が担当します。
救命ボートは屋根付きですが当然エアコンはありません。この太陽で中は蒸し風呂。 
せっかくなので地元の漁船に乗って飛鳥Ⅱをあとにします。




島までの通船は漁船が人気者のようで、漁船だけが忙しく往復しています。
人気の無い救命ボートは帰り道に寄り道をして、浮遊物に近づいたり離れたり。どうやら訓練を始めたようです。

神津島のビーチにはカラフルなパラソルが沢山。
飛鳥Ⅱを遠くに見ながら海水浴を楽しみます。

「飛鳥でお越しのお客さま~、これからスイカ割りをおこないま~す」
スタッフの呼びかけで子供たちが集まってきました。

今回、島では有料のオプショナルツアーはありません。
「飛鳥も世界1周で疲れきって、今回は気合が入っていないんじゃないの?」
「梅雨で上陸出来ないと思って、用意してないんじゃない」

と思っていたのですが、温泉までの無料シャトルバス運行や、ビーチでのイベントで乗客を盛り上げます。
このまま海で遊んでいようかと思ったのですが、昼食が気になります。
一旦船に帰ることにしましょう。

今回はせっかくなので人気の無い救命ボートで帰ります。
考えてみたら救命ボートに乗れる機会はあまり無いはずです。

帰船したらとりあえず昼食。
5階のダイニングで和定食。午前中は下船しなかった乗客も多くいたようで、ダイニングはそこそこの混み具合。
刺身・アマゴの焼き物・手まり豆腐・赤だしトン汁。デザートはりんごのシャーベットでした。

「じゃあ11階に行ってコーヒーでも」
と、言いながらバイキングをのぞきます。

「コーヒーでも」と言いながら、それで済む訳も無く、大きなお皿を手にします。
チキンソテー・サーモンとホタテのマリネ・ポテサラ。
美味しそうなのでついつい食べすぎ、ケーキまで3つ食べてしまいます。




「あたし、上陸しなくてもいいんだけど」
「何言ってんだよ! 元取れないぞ。」

あまりにも外が暑いと言って、上陸を嫌がる女房を連れて再上陸。
午後からは神津島のお祭りがあると聞いています。

何のお祭りか分かりませんが、お神輿には大勢の子供たち。
少子化はいったいどこの国の話なんでしょうか。
神津島は海が綺麗で、海に惚れ込んだ本土からの若い移住者も多いようです。

さて、短い滞在の神津島ともそろそろお別れ。
「名残惜しいけど帰るか、また東海汽船で来よう」

東京23時発の東海汽船「さるびあ丸」に乗れば翌朝9時には島に着くことが出来ます。
頭の中ではすっかり次の行程が完成してます。

帰船しても夕食までにはまだ時間があります。
我家はいつも夕食は2回目を希望。
2回目のほうが上陸時にゆっくり遊べるからなのですが、今日の2回目は19:45からの指定。

「腹減ったな、我慢できねーよ」
といった乗客のために、11階のラウンジではグリルコーナーがオープン。
ハンバーガーとホットドッグが食べ放題! さらに今日はアイスクリームも食べ放題!

今までの飛鳥はパンとピザだったのですが更にグレードアップ。
食べ過ぎると夕食に響くので、我慢して1個で抑えます。
   


   
5 夕食前に驚きの再会
 
「あのご夫婦、見覚えない?」
と、女房が聞いてきました。 ダイニングの入り口でオープンを待っていたときのことです。

よくよくそのご夫婦を見ると、なるほど見覚えがあります。
「小笠原行った時に、一緒に取材を受けたご夫婦だ」



「ぱしびい」小笠原クルーズのページでも書きましたが、我家はこのとき雑誌の取材を受けていました。
掲載誌には、我家の写真の隣に同年代のご夫婦の写真が載っています。
この時のご夫婦に間違いありません。

「失礼ですが、以前小笠原で雑誌の取材を受けられませんでしたか?」
いきなり声をかけたのですが、先方も覚えていたらしくビックリ。

他の船なら「じゃあ食事はご一緒に」となるのですが、飛鳥のダイニングは座席指定。
ボーイさんにカードを渡すと、席まで案内してくれます。

「大テーブルだと良いんだけど・・・」
以前の飛鳥では指定されたのは2人テーブル。

2人テーブルだと、我家はいまさら会話も無く、食事はすぐに終わってしまいます。
そんな訳で今回は予約時に大テーブルを希望したのですが、案内されたのはまたしても2人席。
おそらく我家は若い部類に属するので、船側が気を使っているんでしょう。





前菜    コンソメじゅんさい・イベリコ生ハム・オクラのタルタル
スープ   コーンスープ
メイン1  手長海老と魚介ムースの包み焼き
メイン2  ヒレ肉のポワレ
サラダ・デザート・パン・コーヒー

夕方にハンバーガーを食べたのですが、ディナーはペロリとたいらげます。

ディナーが終われば、明日朝の下船まで12時間あまり。
2泊3日のクルーズは時間がありません。

11階のラウンジで軽く一杯。その後カジノで遊ぶと、もう24時。
「まだ夜食まにあうぞ」

眠いのを我慢して、例のご夫婦も誘い夜食へ行きます。
いったい今日の何食目でしょうか。

明日の朝は、スーツケースを早めに出さなきゃいけないので、あまり遅くまで遊べません。
クルーズの最後の夜は毎回こんな感じです。
   



6 旅の終わりは第二海堡

残念ながら最後の朝です。
「寝坊したよ!」

空いている早朝に船内の写真を撮るつもりだったのですが、すっかり寝坊。
船は既に浦賀水道に入っています。

「どうせ荷造り手伝わないんだったら、邪魔だからデッキに出てれば」
女房のありがたい言葉を受けて、帰りの支度はおまかせ。
カメラを持って最上階のデッキに上がります。

前方に見えるのは「第二海堡」
仮面ライダーやアクション映画のロケで、よく使われる人工島。
これが見えてくれば船旅は終わりに近く、毎回寂しい気持ちになります。

マストには、円筒形の形象物が2個。 これは巨大船(全長200m以上)を表します。
水道通過時にはマストに揚げなくてはなりません。

法的に巨大船に分類されるといろいろと制限が多く、今までの客船やフェリーは200m未満に抑えた設計になっていました。 飛鳥Ⅱは240m。文句なし巨大船です。



女房の荷造りが終わった頃を見計らって、船室に戻ります。
大きなスーツケースは廊下に出しておけば、下船してからターミナルで受け取れます。

荷物の整理をしてからようやく仕事に目覚め、カウンターや便器の高さをメジャーで測ります。
もともとアメリカで使っていた船なので、カウンターも便器も高くなってます。
高齢の女性には使いにくいのでは。

部屋は一部斜めになっているので、隅っこの引き出しは角が切れています。
2人で行った時、どの引き出しを使うかは開けてから決めないと、後でケンカになります。





支度が終われば、あとは朝食に向かうだけ。
例によって大盛でお代わりしながら、接岸を待ちます。

初めての飛鳥Ⅱ。予想以上に快適でした。

「船内が広い!」
定員は若干増えましたが、なにせトン数は1.7倍。
今回も満員と聞いてましたが、混んでいるとは感じませんでした。

「プリンセスみたいだ!」
以前乗ったサファイアプリンセスと同じ水平配置です。
ショップやラウンジなどの公室は6階と11階に集中。
迷うことなく遊べます。

「展望風呂が広い!」
アメリカ時代のカジノを改装した展望風呂は、浴室も脱衣所も以前の倍はあります。

「スタッフがフレンドリー」
以前の飛鳥は格式が高かったのか、スタッフも厳しい顔をしていました。
飛鳥Ⅱになってからは、すこしカジュアルになったのでしょうか。
「ぱしふぃっくびいなす」のようにスタッフに笑顔があります。

「カジノのチップは2年貯金」
以前は1年間しか保管出来ませんでした。
そのため2年前ロシアに行った時に、思いっきりかせいだチップは消えてしまいました。
今回はこれを聞いて気合が入ったのですが、気合の入れすぎでスッカラカンになりました。

飛鳥Ⅱは有名になりすぎて、乗客もクルーズ未経験者が多いようです。
そのため、ドレスコードを守らない等のマナーが守られなくなった。と聞いていました。

しかし、今回はもともとカジュアルクルーズだったためか、見たところ特にトラブルはありませんでした。

我家の評価では、飛鳥Ⅱはポイント倍増。
機会があれば(正確にはお金があれば・・・)ぜひともまた乗りたい船です。