2005年6月   7泊 サファイアプリンセス シアトル→アラスカ→シアトル

第1章  「何を持っていけば良いのか?」

初の外国船。 最長の7泊8日。
「何を持って行けばいいんだ?」出発前夜だと言うのにまだこんな事を言ってます。

事前の情報によれば、防寒具は必ず必要とのこと。
オプショナルツアーで氷河を歩くつもりなので、これは絶対必要です。

また7回のディナーのうち、2回はフォーマル指定。
タキシードは持っていないのでダークスーツで誤魔化すしかありません。

残りの5回はスマートカジュアル。
「スマートカジュアルって何?」

一般的にドレスコードは、
1 正装のフォーマル(基本的にはタキシード)。
2 準正装のインフォーマル(結婚式の2次会程度)。
3 普段着のカジュアル(普段着と言ってもGパンTシャツは禁止です)
の3段階に分かれています。
昼間は構いませんが、おおよそ17時以降はこの服装を守らないとダイニングには入れません。

スマートカジュアルは初めて聞きました。
タイタニックのイメージからして、外国船はこのあたりが厳しそうです。
「その格好ではダイニングには入れませんよ」と早口の英語で言われるかもしれません。
「ダイニングに入れてもらえなくて飯食えないと困るから、インフォーマル程度にしよう」
と勝手に判断し、我家にあるだけのまともな服をスーツケースに詰め込みます。

国内のクルーズなら船宛に宅配便でスーツケースやダンボールを送るのですが、今回は自分で持っていくしかありません。持てるのはせいぜい1人1個のスーツケース。

その他、邪魔なのは100円ショップで買った洗面器。
なにせ今回の我船室は、格安のインサイドルーム。
窓もなく、バスタブも無く、シャワーは固定式と聞いています。

船室にはスリッパも無いと聞いたので、これまた100円で購入します。
英語が苦手なので電子辞書も用意。

タイタニックの映画でも、辞書を片手に案内板を読みながら脱出するシーンがあったので、
いざと言うときのために、なるべくコンパクトな電子辞書を選びました。

それから直前にあわてて造ったのが表札。
マグネットでドアに貼れる物で、名前のバックには外人が喜びそうなコテコテの金閣寺とフジヤマ。

エコノミークラスの重量制限いっぱいのスーツケースをゴロゴロ引っ張りいよいよ出発です。



1日目  16:00 シアトル出航
2日目  終日航海
3日目  ケチカン (上陸)
4日目  トレーシーアーム (氷河見物)  ジュノー (上陸)
5日目  スキャグウェイ (上陸)
6日目  終日航海
7日目  カナダ ビクトリア (上陸)
8日目  7:00 シアトル入港




第2章  「出航」

総トン数  116,000トン
全長    290メートル
乗客定員  2,670人
乗員    1,238人

とんでもなく大きな船です。
これだけの乗客を短時間で乗せるのは不可能なので、乗船手続きは
出航5時間前の11時ごろから始まります。

格納庫のような大きな場所で受付を済ませてから、金属探知機をくぐって乗船開始となります。




8日間お世話になる部屋は11階にあるインサイドルーム。
窓なし部屋と言っても、船底ではありませんでした。

全幅が37.5メートルあるために、全ての部屋が窓付きと言う訳にはいきません。

寝室の大きさは約6帖で、ウォークインクロゼットとトイレ・シャワーを入れて10帖程度です。
壁には大きな鏡が貼ってあり、窓無しの圧迫感はありません。



部屋に入るとカウンターにメモが置いてありました。
『長旅お疲れ様です、船内生活の説明をさせてもらいたいので、××までお電話ください』
日本語で書いてます。

この船には日本人コーディネーターが乗船しており、船内新聞やメニューの和訳もしてくれますし、必要ならオプショナルツアーの手配やダイニングの予約までしてくれます。
英語が出来ない我々にはありがたい存在です。



16時の出航ですが、早く乗船した人のために昼食用のビュッフェがオープンしています。1食儲けました。

乗船前に預けたスーツケースはまだ部屋に届いていないので部屋にいてもすることがありません。
出航前に船内探検を兼ねて14階のビュッフェに行く事にします。

船には3箇所にエレベーターがあり、中央部は大きな吹き抜けを展望エレベーターで上がります。

日本の三菱重工で作った船なので、船内探検をしていると、いたるところに「日本」が出現。

プールサイドに大仏様や灯篭。
畳ルームは実はジュータン。靴は脱がなくてもOKです。





出航前に日本人コーディネーターと顔合わせを行います。

集まった日本からの参加者は3組6人。
年末やゴールデンウイークは、100人以上乗ることもあるようですが、今回は日本人にとっては中途半端な時期。
よほどのことがなければ9連休は取れません。

さて、船内見学を続けます。

船内見学で迷子になっているうちに、いつの間にか船は快晴のシアトルを出航していました。
船尾から遠ざかっていくシアトルの街を眺めます。


この船の食事はシーティング(指定席制)とパーソナルチョイス(自由席制)が選べます。

シーティングは日本船の飛鳥のように、航海中は毎回同じ時間に同じ席で同じメンバーと一緒になります。
途中で変えることは出来ません。
今回は5箇所のうち2箇所のダイニングが指定されています。

パーソナルチョイスは完全自由。
3箇所のダイニングの好きなところに好きな時間で予約します。
予約がなくても構いませんが、混んでいると少々待たなくてはなりません。

その他にイタリア料理の「サバティーニ」 ステーキの「スターリング」がありますが、これらは15ドルほどの追加料金が必要です。

また14階のビュッフェはなんと24時間オープン。
最初からここに行っても良いし、ダイニングだけでは足らないという方にもありがたい存在です。

先月まではこのダイニングはテーマ別に分かれていたのですが、今月からはどこに行っても同じメニューになりました。ちょっと残念。



我家はパーソナルチョイスを選びました。
全てのダイニングを回ってみたいのと、上陸日には帰船時間ぎりぎりまで遊ぶためです。

初日は時差ボケだったので予定が立たず、予約はせず空いているダイニングを探しに行きす。

初日のドレスコードは例の「スマートカジュアル」
事前に旅行社からもらった案内には「男性はジャケット、女性はワンピース等」と書いてあります。

制限のあるスーツケースにジャケットを入れるかどうか最後まで迷ったのですが、「日本人は礼儀知らず」と言われるのは困るので、頑張って持ってくることにしました。
気合を入れてジャケット着用で部屋を出て、とりあえずホールに行きます。

廊下ですれ違うアメリカ人。ホールで飲んでるアメリカ人。
ちょっと様子が違います。



「ちょと周り見てみろよ。ジャケットなんかいないぞ」
周りの乗客はGパンやらフリースやら。
日本船のカジュアル以下です。

「ちょっと この格好じゃ浮いちゃうよ」
あわてて部屋に戻りジャケットを脱ぎます。
苦労してスーツケースに詰め込んだジャケットの出番は、この数分で終わりました。

気を取り直してダイニングに向かいます。

最初の2軒で40分待ちと言われ、迷いながらたどり着いた3軒目のダイニングで聞きました。
「ああ~ ウイハブ ノー リザベーション・・・うううう」
と毎回同じセリフを繰り返します。

出てきた黒服は「#&%*¥・・・・」と言ってます。
どうやら「ここはシーティング用のダイニングです」と言っているようです。
うっかり迷い込んでしまいました。

仕方なく帰ろうとしたところ黒服が声をかけてきました。
「日本人かい? 特別に空いてる席に案内しましょう」(勝手に解釈)

英語も分からないでダイニングを探してウロウロする姿が哀れに見えたのでしょう。

おかげで助かりました。黒服に案内されテーブルに。
ありがたい事に日本語で書いたメニューも持ってきてくれました。






外国船なので、とんでもなく量が多いと思っていたのですが、意外です。

日本で朝起きてから30時間以上まともに寝ていません。
今日の夜食はあきらめます。




第3章  「終日航海」

2日目は終日航海となります。
時差ぼけも治って船内探検の続きを行います



中央部には室内プールと外部プールがあります。そのほかにも後部にプールがあり、複数のジャグジーがプールを取り囲んでいます。
だんだん北に向かうので、外部プールは人がまばらですが、室内プールは早速子供たちでいっぱいになりました。

終日航海日は船内のイベントも盛りだくさん。

 カラオケ大会やダンス大会。
「1人での参加者大集合」や「結婚40年以上のカップル大集合」などという催しも行われます。

もちろんカジノもオープン。当然日本船と違ってチップは現金に交換出来ます。
残念ながらカジノは撮影禁止です。



今まで日本船で鍛えた腕前でルーレットに挑戦。
赤黒や確立1/3の部分は最低5ドルから。その他は最低1ドル。

36倍になる1発勝負が数回当たって、最終日まででトータル3倍になりました。

船内には画廊があり、時間になるとオークションが始まります。
テレビの通販のようにハイペースでしゃべる司会者。

英語は分かりませんが、色々な言葉で絵を褒めちぎります。
見ていて飽きません。



今日のドレスコードは「フォーマル」

昨日のカジュアルから考えて、たいしたことは無いと考えていたのですが、ホールに出てびっくり。
昨日のアメリカ人達。やるときゃやります。
ビシッとタキシードで決めています。

タキシード2割。ダークスーツ7割。
残りの1割はマイペースのカジュアル。

カジュアルの方たちはダイニングには入らず、14階のビュッフェに行くようです。




ダイニングでのメニューは
前菜・スープ・サラダ・メイン・デザートと それぞれ数品の中から選びます。

ものによっては前菜とサラダで満腹。


だんだん北に向かうにつれ白夜で日が長くなります。
日の出は4時。日没は10時。

夕食後もしばらく明るいので時間の感覚がおかしくなりますが、ありがたい事に我家は窓無し。
朝までぐっすり眠れます。



第4章  「ケチカン入港」
3日目は朝からアラスカ州のケチカン入港となります。

ここはサーモンで有名な港町で、港の前がキレイな街並みになってます。
この小さな港に今日は4隻の大型客船が到着。乗客1万人以上が上陸です。



 
これらの客船は サファイアプリンセスと同じ航路でアラスカの港を巡り、この後も、ちょくちょく顔を合わせる事になります。

朝早くから水上飛行機が観光客を乗せて飛び回っています。
夏場だけの観光商売なので、アラスカは全般的に物価が高いようです。

オプショナルツアーも割高。
「市内観光」や「きこりショー」は50ドル程度。

ボートでのフィッシングやシュノーケル(寒そう)は100ドルから200ドル。
水上飛行機に乗って遠くの湖に着水、自然の中でランチを食べて帰るスペシャルツアーは300ドル。

我家は湖でのカヌーツアーを選択。1人89ドル。


港からバスで30分ほど走り湖に到着。
10人から15人が1艘のカヌーに乗って沖へ出ます。

対岸に着くとスモークサーモンとスナックのサービス。
お腹は空いているのですが、船酔いが怖いので控えめに。

帰りは3艘が並んで競争します。
我家のカヌーは男性が3人。
その他は女性と子供たち。

これではまったく勝負になりません。
女性陣はまるで漕ぐ気が無く、パドルを上げてしまって、すっかり観光モードです。

男性陣のインストラクターとオジサン(名前が分からないのですが、この後、女房との会話では勝手に「ジムさん」と呼んでました)と私の3人は必死で漕ぐことになりました。



街でシャケ缶を買って、急いで帰船。
ケチカンは16時に出航。船は狭い水路を通って北上します。

水路をはさんで港の反対側はケチカン空港です。
アラスカ航空のB-737が離着陸していましたが、驚いたことに旧式のDC-3が健在でした。定期便でしょうか。


空港の前は水上飛行機の発着場になっており、大型機の到着にあわせて乗り換えの小型水上機が飛び回ります。



本日のディナーは「エビチリ」
正式には何と言うのか忘れましたが、真ん中にライスがあるので、エビチリ丼と言った雰囲気です。

この船は意外に肉より魚介類がおいしく、メインはシーフードばかりチョイスしていました。
時差ぼけも治って夜遊びしたいのですが、明日は氷河見学で4時起床の予定。日没前ですが窓無し部屋で寝ることにします。





第5章  「トレーシーアーム」

トレーシーアームはフィヨルドの狭い水路。





水路の行き止まりには氷河があり、崩れ落ちた氷河が水路に浮かんで船の行く手を遮ります。
早朝5時ごろに水路に入り、片道2時間程かけて奥まで進入。
突き当りまで行けるかは、その日の流氷の状態によります。

早朝5時の時点では甲板の乗客はまばらです。
これから氷河に近づくとおそらく見物の乗客で甲板は超満員に。

何といっても2,900人の乗客が乗っているので1箇所に集まれば大変なことになるでしょう。
場所取り用のゴザを持ってこなかったことを後悔しました。

水路に入ると漂っている流氷の数がだんだん多くなりました。
見物の乗客もだんだん増えてきます。

しかし、甲板に出ているのはせいぜい200人。
「何でみんな出てこないの?」
今航海のメインイベントなのに、なぜ?



不思議だったのですが後で訳が分かりました。

ほとんどのみなさんは自室のバルコニーから見ていたのでした。
おまけにこの時、バルコニー付きの部屋にはシャンパンのサービスもあったようです。

寒いなか甲板に出ているのは、窓無し部屋の住人かよっぽどの物好きだけでした。

上流階級の皆様は優雅にシャンパン片手にバルコニーのチェアーに座って見ていたんですね。
同じ道を往復するので、どちら側でも両方見ることが出来ます。

そんなことも知らず、「ちゃんと見ないと元取れないぞ」と、情けないことに我々は4時に起きて早朝から場所取りでした。



「寒いよお~」寒がりの女房は凍えてます。

甲板には特設の防寒具売り場がオープン。ホットウイスキーの屋台もオープン。
商売がウマいですね。

クランクのような狭い水路を、11万トンの大型船が進みます。

今回は天候にも恵まれ、突き当りまで進むことが出来ました。
15階のデッキから見る流氷は小さく見えますが、実際は大きいはずです。

ボートと比べるとこんな具合。
ときたま氷の上にアザラシが寝ている姿が見えます。



「アザラシだ! ザラシー!」と女房に叫んだら、周りにいたアメリカ人達も反応して、ワーっと寄って来ました。
日本語だったのですが気持ちが伝わったようです。

突き当たりで船は回頭します。
どうやってこんな狭いところで回るかと思ったら、バウスラスターとスタンスラスターを使って、その場でくるりと回りました。

女房の車庫入れよりはるかにウマいです。

船は今来た道を引き返します。
片道2時間のデッキ滞在で皆さん凍えたと見えて、皆さん帰路は船内に入って温まっているようです。
防寒具とホットウイスキーの屋台も店じまいです。



しばらくすると。船長からのアナウンス 「もうすぐ姉妹船の、ダイヤモンドプリンセスとすれ違います」
サファイアはアラスカ各港に停泊しながら北上し、帰りは一気に南下しますが、
1日前に出たダイヤモンドは、一気に北上し、各地に寄港しながら南下します。

山手線の内回り外回りみたいなものなので、どこかですれ違うだろうと思っていたのですが、ここですれ違うとは思ってませんでした。
すばらしい演出です。

船長のアナウンスを聞いて、暖を取っていた乗客もデッキに集まってきました。

遠くからダイヤモンドプリンセスが近づきます。
先方はこれから氷河に向かうのでデッキは満員です。

『ぶおおおおーーーーー』
船は汽笛を鳴らし、乗客は大声で叫びます。

感動のランデブーとなりました。

 




第6章 「ジュノー」

今朝は4時に起きて場所取りをして、トレーシーアームで氷河を見て、ダイヤモンドプリンセスとすれ違い、アザラシを見て感動。

すっかり1日が終わったようですが、実は今日はこれからが本番。州都の「ジュノー」に上陸です。
上陸は午後2時。出航は10時と遅いのですが、日没が10時なのでフルに遊べます。


ジュノーは映画のセットのような港街で、船が接岸する岸壁の前は土産屋が連なっています。
小さな町だと思ったのですが、何とここはアラスカの州都。

港から少し離れると空港と洲の役所があります。が。
「なんだよ、州都っ言ったって、役所の建物はウチの市役所と変わんねえな」
といった感じです。

ここでのオプショナルツアーは、序の口の「市内観光」や「シャケ試食」が50ドル前後。
十両クラスの「ホェールウォッチング」や「フィッシング」が100~200ドル。

横綱は「ヘリで行く氷河トレッキング長時間コース」445ドル。

我々は迷った末、大関の「ヘリでの氷河散策短時間コース」310ドルに決定しました。
310ドルはかなり高いです。
「Expensive!」と、ランチで同席したアメリカ人も驚いていました。
考えたら、シアトル-成田の片道航空券と変わりません。

しかし、ここまで来たら氷河に立つしかありません。



迎えの車で飛行場に行き、用意された防寒靴とジャンパーを着てヘリに乗り込みます。
この時、ペットボトルの水とお菓子の入ったウエストバックを渡されます。
氷河の上でのスナックタイムになるのでしょうか。

ヘリは「AS350」 パイロット1人と乗客6人乗れますが、乗ったのは乗客4人。
乗る前に体重を申告し席が決まります。
日本人は軽いので前席になることが多く、コックピットから見る景色は抜群です。
ちなみに体重が115キロ以上の方は料金が50%増しになるのでご用心。

離陸前パイロットに聞いた雲の高さは3,000ft。
山の高さと同じです。

どうやって飛んで行くかと思ったら、雲の下ギリギリに谷を縫って飛んで行きます。





「007」のワンシーンのようで、前席に座ったので、氷河より操縦席の計器が気になって仕方ありません。
速度計は120ノットを指しています。

30分ほど氷河を上空から眺めた後、ヘリは氷の上に着陸します。
ここでブーツにアイゼンを付け、ピッケルを持って氷河を歩きます。

いたるところにクレパスが口を開け、奥はソーダ水のようにブルーです。青や水色ではなく「ブルー」です。
流れ出している水も飲んでみました。

お土産に持って帰ろうかとも思ってペットボトルに汲んだのですが、どうせ信じてくれないだろうと考え、船に帰って全部飲んでしまいました。



1時間ほど氷河を散策していると、残念ですが迎えのヘリが来てしまいます。

「それでは皆さん、アイゼン外してヘリに乗ってください」
「あれっ? ウエストバックのお菓子は食べないの?」

迎えのヘリに急いで乗り込んで飛行場に帰ります。
飛行場で借りたジャンパーと靴と、気になっていたお菓子入りのバックも返します。

どうやらあのお菓子は、天候悪化でヘリが迎えに来れない場合の非常食だったようです。

もう少し天気が良ければもっと雄大な景色が楽しめたでしょう。



第7章  「スキャグウェイ」

シアトルを出て5日目。
アラスカでは最後の寄港地となるスキャグウェイに入港します。

スキャグウェイは、かつてゴールドラッシュで栄えた街ですが、今は人口たったの 1,000人。
そこに今日は5隻の大型客船が入港し、13,000人が上陸します。

ここでもフィッシングや氷河へのヘリツアーのオプションもありますが、我々は山岳鉄道に乗ることにしました。
1人97ドル。

『ゴールドラッシュ時代に砂金を運んだナローゲージの鉄道で、標高1000mのホワイトパスに登ります』
と案内書には書いています。

ナローゲージ(狭軌)と言うからには軽便鉄道のトロッコ列車を想像していたのですが、実際は重連のディーゼル機関車で10両近い客車を引いて走ります。この客車は日本のJRと同じサイズ。

忘れていましたが、世界標準では日本の新幹線が標準軌。同じく在来線はナロー(狭軌)でした。



汽車は1時間半かけて1000mまで登ります。
気分は「世界の車窓から」

「チャラッ チャッ チャッ チャ チャー チャチャ・・・・」
と歌っていたら、隣のオバサンに笑われました。

 

 

 


汽車は一瞬カナダとの国境を越えるのですが、我々は降りないでそのまま帰る為、パスポートは必要ありません。
パスポート持参でカナダに入り、ゴルフやトレッキングで遊んできた乗客も多かったようです。

写真を撮るために寒いのを我慢して外のデッキに立ちます。
どの国にでも鉄道マニアはいるようで、身を乗り出してカメラを構えます。



突然。「ベアー ベアー」と、 みんなが大騒ぎ。
小熊が機関車の前を走って逃げています。
横に逃げれば良いのに、しばらく機関車と追いかけっこ。

ようやく谷に下りて、小熊は無事のようです。



往復3時間の旅を終えて市内観光に歩きます。
ここが最後のアラスカになるので、「元を取ろう」と帰船時間ギリギリまで市内を散策。

スキャグウェイは北緯59度26分。
屋久島が北緯30度。稚内が45度なので、日本列島1個分北に上ったことになります。
カムチャッカ半島の付け根と同じ緯度なので寒いわけです。



残念ながらこの旅では北緯60度を超えることが出来ませんでした。
ここからはシアトル目指して南に帰ります。



出航は17時。
船尾のバーでシャンパンを飲みながら、遠くなるアラスカを見ていたら、俗に言う「サザエさん症候群」になってしまいまったようです。
(日曜の午後6時半、サザエさんが始まる頃になると、月曜から会社に行くのが辛くなり落ち込むこと)

気分が暗いのでダイニングに行く気にはなれず14階のビュッフェで夕食を摂ります。
窓際席に座ったところブリッジからの放送が・・・



「ポートサイド・・・・オルカ・・・・」

ポートサイドは左側。我々のいる窓側です。
「左にオルカだって? オルカはどこにオルカ?」

と、アメリカ人に通じないオヤジギャグを言いながら窓の外を見ると。
「いたっ! ジャンプ!」

近くにオルカが数頭、垂直にジャンプしたり、ひねりを加えて飛び跳ねたり。
別の数頭は、船の舷側ギリギリを群れを成して追いかけてきます。

この間約5分。



乗客だけでなくビュッフェのボーイさんも 「こんなのはじめて見た」と興奮しています。
もしこれがオプショナルツアーだったら、30ドル位の価値があります。

サザエさん症候群もオルカのおかげですっかり治りました。




第8章  「船内探検

アラスカを離れる際に「サザエさん症候群」になったのですが、よく考えるとまだ3日もあります。

6日目の本日は終日航海日。
上陸地で遊びまわり疲れもたまったところですが、今日はノンビリしていられません。



10時からは厨房見学が待っています。
今回、日本人コーディネーターのTさんが特別に企画してくれた為、参加者は日本人だけとなります。

アメリカは特に衛生にはうるさく、日本の客船もアメリカを航行するときには特別の検査が必要と聞いています。

 


就航して1年経っているのに、厨房はピカピカ。
まるでこれから初めて航海に出る船のようです。

船内後部の5階と6階に大きな厨房があり、5つのメインダイニングを賄います。
厨房スタッフは250人。ホール担当が250人。

乗客2,900人と乗員1,100人で合計4,000人の食糧として、1回の航海で110トンもの食糧を積み込むとの事。

「そんなに食えねえよ」と、思ったのですが、計算すると、

110トン÷4,000人÷7日で、1人1日あたり3.9キロ。
納得の量です。



厨房見学から帰ると急いで昼食を済ませます。
ノンビリしてはいられません。今日のイベントはもうひとつ。

実は前夜のうちに客室のポストに、なにやら怪しげな封筒が入っていました。

「何?請求書じゃないだろうな」
おそるおそる封筒を開けると、
『to visit the navigational bridge』
と、読めます。

「これって、もしかしてブリッジへの招待状?」

セキュリティーが強化されたので、最近はブリッジの公開は行っていないとの事でしたが、日本人と言うことで特別に優遇されての招待でした。



今までに、日本船のブリッジには入ったことはありますが、その違いにびっくり。
全体的にはスタートレックのエンタープライズ号を感じさせるレイアウトになっています。

ガラスも腰壁でなく床からの大窓。 当然視界は抜群です。

操縦席は椅子になっており、2つの席の間にスロットルがあるため、まるで大型旅客機のコックピットのようです。

もっと驚いたのはウイング。
これは後ろを見るために大きく外に張り出した部分。

日本船は屋根無しのバルコニーになっており、キャプテンは雨の日はびしょ濡れで出入港を指揮します。

サファイアプリンセスは全面ガラス張り。
濡れる事はありません。

ブリッジには日本で進水したために、神社の御札がありました。




第9章  「シャンパンタワー」
                    
6日目の夜のドレスコードはフォーマル。
この日は航海中最大のパーティーとなり、深夜まで盛り上がります。

1回目のフォーマルではダークスーツを着て地味なネクタイをしたので、まるで会社訪問のようになってしまったのですが、今日は船内のショップで購入した派手なネクタイを締める事にしました。

「漫才師か地上げ屋だなあ」
派手すぎて、日本に帰ったらとても出来ないようなネクタイです。

ダイニングには直前に予約の電話をして行きます。お腹の都合で行けるのでこのシステムは便利ですね。

今日こそはステーキと思ったのですが、今日のお奨めはイセエビ。
迷わずイセエビにしました。



23時からは、いよいよシャンパンタワーの始まりです。
吹き抜けのホールに約600個のグラスを積んで、最上部からシャンパンを注ぎます。

注ぎたい人は列に並んでステージに上がる事も出来ます。
2,900人の乗客が並んだら大変な事になるのでは。

「よし並ぶぞ! 急げ急げ」と女房の手を引っ張りステージに急ぎます。
こんな海外の豪華客船に乗ることなど、この先めったにチャンスは無さそうなので、一生の記念になると考え必死で走ります。

女房も慣れないハイヒールで転びそうになりながら、ようやくステージの下にたどり着きました。
「列の最後尾はどこ?」



係りの人がこちらを見て呼んでいます。
「さあ、どうぞステージに上がってください」
意外にも列は無く、すぐにステージに上がれてしまいました。しかも2回も。

先日の氷河見物と言い今日と言い、アメリカ人はマイペースです。
「元を取ろう」と、必死に並ぶ人はあまりいないようです。

ステージに上がってシャンパンを注ぐときに写真を撮られます。
気に入らなければ買わなくても良いのですが、実はこの写真、
1枚2,000円。かなり高いです。



シャンパン代が勿体ないなと思ったのですが、100組以上がステージに上がったので、写真の売り上げで元を取っているのではないでしょうか。

「あのシャンパンどうするのかな」
「最後にみんなに配るんじゃないの?」

期待したのですが、片付けたグラスは皆に配ることも無く、さっさと奥へ。
「あのシャンパンって本物だったのか?」

シャンパンを片付けた後は、会場はダンス大会になります。
航海はもう1晩あるのですが、なんだか明日には下船しそうな雰囲気です。
みなさん寝ないで遊ぶのでしょうか。



第10章 「ビクトリア」

前夜は1時すぎまで大騒ぎ。
最後の航海日なので、思い残しの無いように遊びたかったのですが、すっかり朝寝坊。

総復習で船内探検を行ったら、すでに昼食の時間。

航海日はお昼になると室内プールの脇に日替わりで屋台が出ます。
本日は「アラスカの味」
サーモンや海老が並びます。




「ケーキandチョコ」の時には長い行列が出来ていたのですが、今日はガラガラ。
アラスカの味に飽きたのか、みんな寝ているのか。

その後、ビュッフェに寄ると、ここには「寿司コーナー」が出来ていました。
サーモンと海老でお腹は膨れたのですが、寿司と聞いたら食べないわけにはいきません。



ビールでも飲みながらノンビリしたいのですが、今日はこれから大仕事が待っています。

「ノンビリご飯食べてないで、荷造り手伝ってよねっ」
と女房に急かされて自室に帰ります。

下船は明日の朝ですが、スーツケースの搬出は今日の夜まで。
しかし今日は午後からカナダのビクトリアに上陸するので、荷造りはある程度その前に行わなくてはなりません。

「荷物増えてるけど大丈夫?」
船内の売店で買ったフリースやジャンパー。アロハシャツ。お土産のシャケ缶。寄港地のビデオやDVD。
スーツケースにはかさばる物ばかり。

捨てていくのは100円均一で買ったスリッパや洗面器。

「明日の分は置いとけよ」
全部詰めてはいけません。明日の朝の着替えは残さないと大変なことになります。
パジャマで下船する事は避けなくてはなりません。

日本出国前に聞いていたので小型バックに1日分を詰め替えます。

スーツケースと格闘すること2時間。
一応落ち着いたので、上陸前にミュージカルを見に行く余裕が出来ました。

「ウチの市民ホールより広いじゃん」
埼玉県の某市にある市民ホールより広いシアターで「ピアノマン」を観ます。



ビクトリアに入港したのは17時。

初カナダ!と言う事で緊張したのですが、入国はパスポートを見せるだけ。スタンプも押してはくれません。

「せっかくカナダに着たのに証拠が残らないじゃん」
観光地にあるスタンプを勝手に押してみたい気になります。

ビクトリアでは豪邸見学ツアーに参加。

かつて大金持ちが住んでいた家と言うか城で、室内は当時のように再現されています。
いったいどんな仕事をすれば、こんな城に住めるのでしょうか。

出航は23時半なので余裕はあるのですが、荷造りの残りが気になるので早めに帰ります。

買い物はメイプルシロップの缶。じつはこの缶が、後でとんでもない事になります

 

                 


第11章 「シアトル到着」

ビクトリアの街から帰り、お土産の缶入りメイプルシロップもスーツケースに入れて、荷造りは完成。

部屋の外に出しておき、明日の下船後に港で受け取ります。
シャトルバスで空港に行く人は、空港で受け取ることも出来るようです。

今晩が本当に最後。
寝てしまうのは勿体ないので、最後の船内散歩に出ます。
カジノも回って最後にスロットで遊びます。

最上甲板に出ると、隣には「ノルウェイジャンスター」が停泊しています。



最後の朝、 最後まで元を取ろうとビュッフェに行き、食べ忘れたものが無いかチェック。

シアトルへでの下船開始は7時。
2,900人の乗客が全員降りるには3時間かかります。
最後に降りる人は10時以降。

しかしお昼には新たな乗客を乗せてアラスカに向かうために、船室は戦場のようになって掃除が始まります。
7時には部屋を空けなくてはなりません。

そのため遅く降りる人たちは、部屋を出て荷物を持ったままビュッフェやサロンで過します。
我々も荷物を持ってビュッフェで最後のコーヒータイム。



昨夜から「最後だ最後だ」と言いながら、何回通ったことか。
十分に元は取ったはずです。

前日のうちに希望の時間を申請してカードをもらっています。
アナウンスで「赤の5番」とか「緑の3番」とか呼ばれるとゾロゾロ動き出します。

残念ですが、ついに我々も下船です。
「宝クジでも当てたら、また来ようや」と後ろ髪を引かれタラップを下ります。

アメリカへの再入国もいたって簡単。税関申告書を提出するだけ。

今回は、港から空港までの送迎付きのパックだったため、来るときと同じリンカーンが待っています。
本来ならマイクロバスになるはずですが、申し込みが2名だったため特別扱いになりました。
旅行社は赤字でしょうが我々はラッキーでした。

午後発の成田行きまで時間があるので、シアトル観光に出かけます。

シアトルと言えば「スターバックスコーヒー」の1号店。
なぜかロゴが違います。

言われなければ、スタバのバッタモンのようです。
そして忘れちゃならないイチロー


シアトル空港のセキュリティーは厳しく、ゲートでは上着も靴も脱いで検査されます。
スーツケースも探知機に引っかかれば、持ち主の知らない所で勝手に開けられるとの事。

鍵がかかっていると壊されますが、なんの保障もありません。
そのため鍵はかけられません。盗難が心配なら切られても良いベルトを使います。



例の缶入りメイプルシロップ。
さすがと言うか当然と言うかセンサーに引っかかり、スーツケースを開けられたようで、
帰宅後にスーツケースを開けたら「開けました」(英語なので推測)と書かれた紙が入ってました。

ご丁寧にメイプルシロップが一番上に置いてあります。
おそらく検査の担当官は、
「何だよ、メイプルシロップかよ。爆弾かと思ったよ」と、言いながら
「まったく、次からまぎらわしい物入れるなよ」と舌打ちして、缶を一番上に置いたのでしょう。

もうひとつのスーツケースは、金属物や液体が入っていなかった為か開けられませんでした。



裏でスーツケースを開けられたことも知らず、ゲートに向かいます。
今日はオーバーブッキングだったようで、しきりにノースウエストからのアナウンスが流れます。
「どなたか搭乗をあきらめてくれれば700ドルの金券を差し上げます」

ホテルも取ってくれて、翌日の便に振り替えして700ドルは美味しいです。
時間に余裕があれば名乗り出たいのですが・・・。

豪華客船の後に10時間のエコノミーは辛いです。
成田に到着しドアが開くと、
「むあ~・・・ 暑い」

この日関東は35度を記録。アラスカの氷河を懐かしく思いました。




第12章 「日本船との違いは」

初めての外国船。それもメガシップ。
今回の「サファイアプリンセス」、日本船とどこが違うのか?

まず値段

今回のクルーズ。航空券を含まず純粋なクルーズ料金は、窓なし部屋で早期申し込みで1,100ドル。
7泊なので1泊17,000円になります。

ただし港の税金や最近の原油高のあおりを受けての燃料調整費。それに自動的に引かれるチップが1日10ドルかかるので、1泊22,000円。
日本船と同じ条件の窓あり部屋で1泊27,000円。

日本は1泊40,000円。

シーズン中は、毎週同じコースをフル回転で運行し、毎回満員になるプリンセスと、
毎回違うコースで短いクルーズを行い、定員の半分で運行することもある日本船とでは、効率の良さが違うのでしかたありません。



次に食事

日本船は夕食1回目が5時半ごろ。2回目が7時半ごろで、乗船前に希望を出し決定します。
もし夕食を食べ損なうと、11時の夜食まで空腹を抱えることになります。
また、夕食が足らない場合(私ぐらいですが)も夜食まで待たねばなりません。

もっとも『飛鳥』の場合は、寿司屋がありますが、これは別料金です。

プリンセスはダイニングも自由。ビュッフェも24時間オープン。
このシステムは助かりました。



船室と設備

ほとんどの船室にバルコニーが付いています。
我々の窓無しは例外。

日本船はよっぽどの上級クラスでないとバルコニーは付きません。
『飛鳥』や、次期『飛鳥Ⅱ』はバルコニー率が高いですが、元々の値段が高いので手が出ません。

プリンセスではバルコニー付きと窓無しの価格差が大きくありません。
せっかくのチャンスだったので、ケチらないでバルコニー付きにすればよかったかなとチョット後悔。



営業

船内の営業がウマいです。
寒くなれば甲板に防寒具の販売所がオープン。暖かくなればプールサイドで水着とアロハの販売。

下船前には「今航海のDVD」が売られます。
乗船から最終日までのイベントや寄港地で撮影した物で、自分が映っているので皆さんドンドン買って帰ります。
写真は日本船でも売られてますがDVDは初めてでした。



日本にも1泊3食+アルファーで2万円程度のクルーズがあれば気軽に乗れるのですが。
アメリカのように、気軽にクルーズに行きたいものです。