2009年09月 あぜりあ丸 神新汽船 下田→神津島→式根島→新島→利島




以前より 乗りたい乗りたいと言っていた 神新汽船(東海汽船子会社)の 「あぜりあ丸」
伊豆下田から 神津島・式根島・新島・利島 の4島を回ります。

出航は9:20。 この時間に下田に行くのが、これまた大変。
なにせ自宅は海の無い埼玉。 始発電車で行っても間に合いません。

前夜に、竹芝桟橋から夜行の東海汽船「さるびあ丸」で、新島あたりまで先回りする手も考えたのですが、
今回は頑張って3時起床で車を飛ばしました。


天気予報はかなり悪く、途中で携帯から東海汽船のHPを見ると、神津航路は 天候調査中の△マーク。
眠いのを我慢して下田に到着。

「ローカル航路なので、乗客は自分ひとりでは」などと思っていましたが、 意外や意外、
下田港の「あぜりあ丸」乗り場は大賑わい。
大きなサーフボードを持った若者が、どんどん集まります。 どうやら新島で大会が行われているようです。

窓口で「ワンデークルーズ 1枚」とチケットを買います。
一番遠い神津島まで3,600円ですが、1周回って帰ってくるチケットは、5,040円。
途中下船は出来ないので、これを買うのは「船オタク」だけです。

このチケットで船内に入ると、改札していた事務長さんと、 「おおっ! ワンデーですね 有難うございます」と、おもいっきり仲良くなれます。
この事務長さんは マニアの間では有名な方で、東海汽船・新神汽船を応援するホームページの管理人さんです。

乗船客はサーファーが20人位。 旅行者が2人。釣りのオヤジさんが5人位。 そして「オタク切符」の私が1人。
天気予報は雨。波の高さ2~3m。 思いっきり揺れそうです。

 

ワンデークルーズンのチケット

2等船室(窓あり)

珍しい1等船室の花毛布

ラウンジ

「あぜりあ丸」は480トン。 2000馬力で、航海速力14ノットです。

1等室・特2等室・2等室 がありますが、全て座敷。
何も無いか、毛布があるか、布団があるかの差です。

写真を撮ろうと1等室を覗いてビックリ。 なんと、毛布が綺麗にたたまれ 「花毛布」になってます。
豪華客船でもなかなかお目にかかれない「花毛布」 まさかこんなローカル航路で見られるとは。

見かけは小さな船ですが 客室は3層になっており、内部はかなり広々。 早速船内を探検します。
サロンもあり、電子レンジも完備。カップラーメンの自動販売機もあります。



「どこでワンデークルーズを知りましたか?」
出航後しばらくして、乗船時に声をかけてくれた事務長さんが、話しかけてきました。

ローカル航路には珍しく、専任の客室係が乗務しているんです。
ワンデークルーズは知っている人も少なく、当方が船マニアだと気がついたようです。

「お客さんは 船が揺れた方が良いですか?」
不思議な質問ですが、マニアの間では、わざと揺れる日を狙って乗る人もいるようです。

「先週は台風だったので、揺れ狙いのお客さんが来てましたよ」
私も少しは揺れた方が楽しいかなと思う反面、船酔いも怖い。

「軽めの揺れが良いですね」 後で聞いたところによると、例の「花毛布」もこの事務長の作品。



「あぜりあ丸」は4島を回りますが、コースは日替わりで、右回りと左回りに分かれます。
この日は土曜なので、左回り。 一気に一番遠い神津島まで行って、この後に各島を回って下田に帰ります。

3時起床だったので、そろそろ睡魔が襲ってきます。
最初の神津島まで2時間半かかるので、その間に仮眠することに。
陣取ったのは最下階中央の2等船室。 揺れは少ない場所ですが、外洋に出るとやはり揺れてきました。

 

船内案内

自販機コーナー

 

船底でしばらく寝た後に甲板に出てみると、海上は雨。 波も高く、船は良い感じに揺れています。
「お弁当は持ってますか?」 事務長さんが聞いてきました。
食堂があるような船ではなく、ワンデークルーズだと昼食にありつけません。

「我々は式根島で弁当の配達をしてもらいますが、一緒にどうですか?」
事務長は心配してくれたのですが、船はこの先も揺れそうで船酔いが恐ろしい。
イザとなれば船内にはカップラーメンの自販機もあるので、せっかくの弁当ですが、辞退することにします。



出航から2時間半で神津島ですが、今日は風の影響で、予定した港に入港できず、島の反対側の港に入港することに。
途中降っていた雨も、タイミングよく上がりました。

島の裏側を見るのも良い経験です。
あぜりあ丸は頑張って走ってますが、島の裏側に回るので15分ほど遅れて到着。
以前、神津島に来た時には、島の表側の港だったので、海産物のお土産屋などもあったのですが、 裏側の港は何もナシ。

「こんなところで降ろされたらどうする?」 と思っていたら、旅行者2名が下船。
大きな荷物を持った2人は、船を降りたあと桟橋の上で途方にくれてるように見えます。

タクシーでも呼んで待っているのかもしれません。
2人が降りたら、アット言う間にタラップが外されます。
クレーンでの荷物の上げ下ろしもすぐに完了。
乗り降りが終わるとすぐに出航です。   

アンカー入れて機関後進面舵

もやいを繋いで接岸

離岸はアンカーを巻き取って



バスのようにあっという間の乗り降りで出航した「あぜりあ丸」
降ろしたコンテナが3個。乗せたのが1個。 降りた乗客が2名。乗ったお客は0。

もし、荷物や乗客がいなければ、バスのように素通りするんでしょうか。


「あぜりあ丸」は左舷を桟橋に着けます。 ユックリ直角に近づいて 少し離れた位置に右のアンカーを投げ入れ 後進で舵は左。
 次に右に舵を取って前進。また後進。

この繰り返しで桟橋と平行になり、もやいを巻き取りソロソロと接岸。
毎日やっているので 隙がありません。

発進は右のアンカーを巻き取って、舵は左で前進。
スラスターも付いていないのに、真横に平行移動の裏技です。


「舵角が大きいので、スタンにスラスターが付いてるみたいでしょ」 と、事務長の話。
神津島を出ると次は式根島。

港は湾内では無く、外洋に長く突き出した桟橋。
うねりの影響をモロに受け、波が高いと接岸が出来ません。

事務長の話では、目の前まで迫りながら、どう頑張っても接岸できず、 諦めて引き返すこともあるそうです。



3島目の新島では、大勢のサーファーが下船しました。
30年前。私が高校生の頃は「新島」と言えば、ある目的で有名な島でした。 今は、どうなんでしょうか?

神津島での遅れを取り戻し、「あぜりあ丸」は最後の目的地 利島へ向かいます。



最後の利島を後にした「あぜりあ丸」は 一路下田に向かって航行します。
到着までは1時間半。
船底の2等客室で、帰りの運転に備えて仮眠することにしましょう。


今回の旅の目的は 「船酔いの克服」 予報では波が2~3mだったのですが 実際は1m程度。
最初は「7時間は逃げられない」と覚悟していたのですが、 うねりも予想より小さく、船酔い体験には物足りなかったです。

船底でユラリユラリと揺れながらウトウトしていたら、事務長さんがやってきました。
「どうですか、楽しめましたか?」 「揺れが物足りなかったですね」
事務長さんから名刺を頂いて、アドレス交換。

離島航路の苦労話も聞けました。
帰ったら、事務長さんのホームページにメッセージ入れるのを、 忘れないようにしなくては。


下田帰港は16:20。 これから自宅まで200キロ以上の運転が待ってます。
航海記を考えながら、頑張って走りましょう。