AKJ NEWSLETTER #3


心霊重建(精神の復興)、藝術重生(芸術の再生)

●遠方からの温もり

朗亜玲(ラン・アーリン 頑石劇団主宰)



 921大地震は大自然に対していかに私たち人間が無力であるかを思い知らせたと同時に、人々のやさしさも教えてくれました。
 地震の後、台湾の人たちは精神的にとても不安的な状況に置かれていました。けれども溺れている人や飢えた人を見て我がことのように思うという人間の心理から、国内だけでなく海外からも実に多くの人が援助の手を差し伸べてくれたのです。
 2000年8月、私たち頑石劇団が行った「921心靈重建・藝術重生」プログラムは、アクト・コウベ・ジャパンから3人の熱意に満ちた芸術家の参加を得、いっしょに泰雅(タイヤル)族の暮らす和平郷での3日間のワークショップを行うことができました。3日間の活動の中で、頑石劇団の演劇ワークショップだけでなく、東野健一さんもまた身体全体を使っての紙芝居を披露してくれました。彼の大きな身ぶり手ぶりや表情は、言葉の壁を軽々と超え、子供たちは彼の絵の世界に引き込まれていきました。彼は自作の絵巻物を使って天地開闢の物語をしてくれ、物語の中で天と地が離れた瞬間、子供たちは大地の深遠な神秘を感じ取りました。また、大きな紙に自分達の暮らす土地や家を描いた時、家族の団結が人生の幸福の基なのだと感じることができました。

歳森勲さんのワークショップはそれをさらに確信させてくれました。彼は中国名ではなく、タイヤル族の名前を使って家族の旗を作りました。その旗は、家族の絶えまぬ努力の精神や永遠の繁栄を高らかに宣言しているかのようでした。原久子さんは簡単な材料でオブジェを作ることによって、手と手を繋ぎ、心と心を繋いで家族を再建することを教えてくれました。まず自分の好きな言葉を描き、それを切り抜いてつなぎ合わせていくことで、だんだんと一つの形になっていきます。心をつなぎ合わせていくことでもう一度家族の絆を繋ぐことを示したのです。


 3人の芸術家たちとの活動は子供たちの心に楽しい記憶としてとどまるだけでなく、タイヤル族の人々の信念をも回復させてくれました。タイヤルの人たちは、みんなで力を合わせて描いた門の壁画の前を通る度、一緒に成し遂げることの貴さを思わずにはいられないでしょう。子供たちが自分たちで完成させた作品を見た時、芸術家たちの努力が決して無駄にはならないことを私は確信しました。
「さようなら!きっとまた来てね!」一人一人の顔には笑顔や感激の表情が溢れていました。タイヤル族の人々と出会わなければ、そして3人の日本人芸術家がいなければ、このような感動を味わうことはできなかったでしょう。この経験は忘れることのできない記憶として心にとどまり、私たちが再び会える日が来ることを願ってやみません。


頑石劇団(Stone Theater)
台中を中心に活動する現代演劇団。芸術監督である朗亜玲女史により1994年創立。「社会の中で人々と積極的に関わる」という考え方のもと、演劇発表だけでなく、一般の方や子供たちを対象とした演劇ワークショップも数多く行う。今回の「心靈重建、藝術重生」では、台中でのネットワークと実績を持つ彼らがプログラムをコーディネート/運営した。


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