相央暇人の神奈川地域情報相央暇人の酉物帖 > 国産ウイスキーの今(地ウイスキー)

国産ウイスキーの今(地ウイスキー)

 国産ウイスキーメーカーといえばサントリーやニッカなどの 大手メーカーを思い浮かべる人が多いでしょう。 しかし、全国各地に地酒を造る蔵があるように、 ウイスキーにも地ウイスキーを造るメーカーもあるのです。 昭和50年代に出版された「痛快!地ウイスキー宣言」、 「穂積忠彦・本物の美酒名酒を選ぶ」、 「郷土発見 地酒」には、 大手を含めた国産ウイスキーメーカーが掲載されています。 これらが2007年現在、どうなっているかを調べてみました。

国産ウイスキーメーカー一覧

 下の表は上記の本に掲載されたメーカーと、 それ以降に免許を取得したメーカーの現状をまとめたものです。 ウイスキーを造るメーカーのほとんどが、 多様な酒類を製造・輸入する大手企業や 日本酒や焼酎なども造る総合酒類メーカーであることが解ります。
(この中には、自社でポットスティルを持たず、輸入モルトと自社のグレーンを バッティングして販売している企業もふくまれています。)
※灰色のメーカーは、現在ウイスキーを販売していないメーカー

1983年当時の国産ウイスキーメーカーと現状
メーカー名
(旧社名)
銘柄
(旧銘柄)
本社所在地蒸留所・工場所在地
(旧地名)
ウェブサイト現状
サントリー(株)サントリー大阪府大阪市北区大阪府三島郡島本町
山梨県北杜市
http://www.suntory.co.jp/国内シェア1位
ニッカウヰスキー(株)ニッカ東京都港区北海道余市郡余市町
宮城県仙台市
http://www.nikka.com/国内シェア2位
メルシャン(株)
(三楽オーシャン(株))
軽井沢
オーシャン
東京都中央区長野県北佐久郡御代田町http://www.mercian.co.jp/
http://www.kirin.co.jp/
販売は麒麟麦酒(株)
キリンディスティラリー(株)
(キリン・シーグラム(株))
富士山麓
ロバート・ブラウン
静岡県御殿場市静岡県御殿場市http://www.kirin.co.jp/国内シェア3位
札幌酒精工業(株)サッポロ北海道札幌市北海道札幌市http://www.sapporo-shusei.jp/ウェブサイトで購入可
笹の川酒造(株)
(山桜酒造(資))
チェリー福島県郡山市福島県郡山市http://www.sasanokawa.co.jp/ウェブサイトで購入可
美峰酒類(株)ゴールドカップ
サンライズ
群馬県高崎市http://www.mihoshurui.co.jp/ウェブ上にウイスキーの
情報なし
(株)東亜酒造ゴールデン・ホース
『ロイヤル・コープ』
『カーム』
埼玉県羽生市埼玉県羽生市http://www.toashuzo.com/ウェブサイトで購入可
『』は日本生活協同組合
連合会が販売
金升酒造(株)キンショー
越後平野
新潟県新発田市新潟県新発田市なしウェブ上に取扱店あり
若鶴酒造(株)サンシャイン
地酒蔵のウヰスキー
富山県砺波市富山県砺波市http://www.wakatsuru.co.jp/ウェブサイトで購入可
富士発酵工業(株)リリアン山梨県甲州市
(山梨県塩山市)
山梨県甲州市
(山梨県塩山市)
廃業
合同酒精(株)コルトウイスキー
(ネプチューン)
東京都中央区http://www.oenon.jp/現在はコルトウイスキーのみ
協和発酵工業(株)ダイヤモンド東京都千代田区茨城県稲敷郡阿見町
福岡県北九州市門司区
http://www.kyowa.co.jp/アサヒビールに
酒類事業を譲渡
モンデ酒造(株)富士の精
(バッキンガム)
山梨県笛吹市山梨県笛吹市http://www.mondewine.co.jp/ウェブサイトで購入可
東洋醸造(株)ジュピター
バイロン
45
静岡県伊豆の国市
(静岡県田方郡大仁町)
静岡県伊豆の国市
(静岡県田方郡大仁町)
旭化成と合併後、酒類事業を
アサヒビールに譲渡
玉泉堂酒造(株)ピーク岐阜県養老郡養老町岐阜県養老郡養老町http://www.minogiku.co.jp/ウェブサイトに情報あり
東海醗酵工業(株)ラッキー・サン愛知県北名古屋市愛知県北名古屋市破産申請
相生ユニビオ(株)
(愛知酒精工業(株))
レインボー愛知県西尾市愛知県碧南市http://www.unibio.jp/ウェブサイトに情報あり
宝酒造(株)キング京都府京都市下京区福島県白河市
(工場閉鎖)
http://www.takarashuzo.co.jp/現在はキングウイスキー凛のみ
宮崎本店(株)サンピース三重県四日市市三重県四日市市http://www.miyanoyuki.co.jp/ウェブサイトで購入可
江井ヶ嶋酒造(株)ホワイトオーク
(ホワイトボール)
兵庫県明石市兵庫県明石市http://www.ei-sake.jp/ウェブサイトで購入可
中国醸造(株)戸河内
(グローリー)
広島県廿日市市広島県廿日市市http://www.chugoku-jozo.co.jp/ウェブサイトで購入可
日新酒類(株)ヤングセブン徳島県徳島市徳島県徳島市http://www.nissin-shurui.co.jp/ウェブ上にウイスキーの
情報なし
本坊酒造(株)マルス鹿児島県鹿児島市長野県上伊那郡宮田村http://www.hombo.co.jp/ウェブサイトで購入可
ヘリオス酒造(株)ハイランダー沖縄県名護市沖縄県名護市http://www.helios-syuzo.co.jp/ウェブサイトに情報あり
(資)バートンバートン沖縄県うるま市
(沖縄県具志川市)
沖縄県うるまし
(沖縄県具志川市)
廃業
クラウン商事(株)クラウン沖縄県浦添市沖縄県浦添市http://www.crown-shoji.com/ウェブ上にウイスキーの
情報なし
その他
(有)ベンチャーウイスキーIchiro's Malt埼玉県秩父市埼玉県秩父市http://homepage3.nifty.com/
venture-whisky/
2007年に蒸留所を
建設予定。

国産ウイスキーメーカーの現状

 酒類事業自体から撤退したメーカーや廃業したメーカーを除けば ウイスキーから撤退したメーカーは少ないように見えます。 しかし、現在も自社で製造したウイスキーを販売しているメーカーの中には、 新たなウイスキー原酒を樽に詰めていないメーカー、 商品が一種類だけになってしまったメーカー、 蒸留器を撤去してしまったメーカー、 蒸留器のあった工場ごと閉鎖してしまったメーカー などが含まれています。
 このような状態になった最大の原因は 国内のウイスキー市場が著しく縮小したことでしょう。 国税庁のウェブサイトにある「酒のしおり」によると、 国産ウイスキー類(ブランデーも含む)の酒類課税数量(メーカーから出荷された量)は 最も多かった1983年度に37.9万kLあったものの 2004年度には7.7万kLまで減少しています。 ウイスキー類の製成数量(製産された量)も最も多かった1983年度の41.2万kLから 2004年度には7.2万kLまで減少しています。
 1989年の酒税法改正による級別制廃止も原因の一つと言えます。 それまで高額な酒税を課されていた特級ウイスキーが安くなったものの、 標準小売価格が670円だったトリスやオーシャンホワイトが1230円になるなど、 大衆酒であった二級ウイスキーは大きく値上がりすることになりました。 そのため、ウイスキー全体の約40%を占めていた二級ウイスキーの出荷量は 法改正後の1989年4月から8月にかけて前年比97%の減少となってしましました。 その影響は低価格な二級ウイスキーを主力商品としていた 中小ウイスキーメーカーに最も大きな影響を与えました。 1985年には国産ウイスキー市場で三楽オーシャンが4.6%、 その他のメーカーが3.8%のシェアを占めていたものの 1990年には合わせて1.2%、1999年には0.9%になってしまいました。
 このように大手三社の寡占が進む国産ウイスキー業界ですが、 新たな蒸留所をつくる企業が現れました。 それは、東亜酒造の元社長である肥土伊知郎氏が率いる 有限会社ベンチャーウイスキーです。 現在は笹の川酒造で元東亜酒造の原酒などをボトリングしていますが、 2007年に埼玉県秩父市に蒸留所を建設する予定です。

国産ウイスキーの将来

 ウイスキー消費量の減少傾向が続いていますが、 サントリー、ニッカ、キリンといった大手のメーカーは 新たな原酒の樽詰めをし続けており、 その製品は今後も出荷され続けるでしょう。 しかし、1989年の酒税法改正前後に新たな樽詰めを止めてしまった 中小のウイスキーメーカーの製品の中には、 そろそろ出荷を終えてしまうものがあるかもしれません。 興味がある方は今の内に飲んでおいた方が良いかもしれません。


参考文献
穂積忠彦 本物の美酒名酒を選ぶ 著者:穂積忠彦
痛快!地ウイスキー宣言 著者:穂積忠彦
郷土発見 地酒 編者:家の光協会
全洋酒情報事典 Part1蒸留酒 時事通信社
酒類・食品産業 on GRAPHICS-21世紀への設計- (株)日刊経済通信社 調査出版部


「相央暇人の酉物帖」にもどる
最終更新日2008年1月14日