「少しでも痛かったら言うんだよ」
 つぷ、と指の先が差し入れられた。それだけでも、強い違和感を覚えるし、少し痛い。でも、痛いなんて言ったらロイはやめてしまいそうだったから、口をぐっと結んで耐えた。ロイはエドワードの残滓を塗り込めるようにして、指をもぐらせていく。
「んっ……んんっ、」
 入口がちょうど、ロイの指の太さの分だけ開く。自分でもわかるほどにきつく、ロイの指を締め付ける。そのロイの指が抜けていった。
「ん、あ、あっ」
 達したのと、緊張で萎えていたエドワードのものが、ロイの手でまた高められていく。先っぽをくすぐるようにされると、すぐに反応を示してしまう。満足そうに笑んだロイは、先走りを手にとっては、エドワードの後口に流し込んだ。そのたびに、一緒にロイの指が出入りする。
 そのうち、ロイの指は何かを探るように中でうごめき始めた。
「っ、なあ、たいさっ、……何やってるか、きいていい……っ?」
「探してる」
 簡潔な答えが返されると同時に、エドワードの身体はおおきくふるえた。
「ひゃっ……ああっ、なに、……なに、これ……っ」
「さっき言っただろう? 君の身体のどこが感じるか、教えてあげるって」
 その一つがここだよ、とロイは嬉しそうに囁いた。
「あっ、ああ、……だめっ……あ、っん、ああっ……」
 少しの痛みなんて飛んでしまうほどの快楽。ロイに先端を舐められたときよりももっと強い快楽だった。足の先までビンと張って、太ももでロイをはさんでしまう。自身もすっかり昂ぶって、ロイにいじられるまでもなくちょろちょろと蜜をこぼしている。
「う……あ、あんっ……ひっ」
 二本目の指が入りこんできた。やはり痛みはあったが、それよりも圧倒的に気持ちいい。痛くないかと聞かれても答えられない。開きっぱなしの口から出るのは高く掠れた声だけだ。後ろからは、じゅぷじゅぷと水音が止まらず、いつのまにか内でうごめく指は三本になっていた。
「わかるか、鋼の? ほら……もう三本入ってる」
「やっ、言う、なあっ……」
 ロイに呼びかけられると思わずそちらを見てしまう。当然、ロイが何をしているかを目の当たりにすることになって、ロイの勃ちあがったものもしっかりと見えた。指が三本入っても、とてもそれは入りそうにない。でも、ロイが入れたいというのなら、いいと思う。男相手に足を開き、喘いで、はしたなく先走りをちょろちょろとこぼしている姿でも、ロイを興奮させることはできた。なら、もうちょっと我慢するくらい、なんでもない。
「なあ、っ……たいさ、もう、いいよっ……いれて……っ」
 黒髪に指をすべらせ、くしゃっと掴むと、ロイは顔をあげ、エドワードを見つめた。
「もう少し解したほうが楽だよ」
「いいっ……! も、だいじょ、ぶ……たいさが、ほしい」
 ごくっとロイが唾を飲み込んだ。ロイの瞳はエドワードを気遣うように優しかったが、一瞬、その中に険呑な光が過るのを見た。ああ、食われる。たべてほしい、と言ったとおり、これからロイに食われるのだ。
「……私も、君が欲しい」
 ロイの屹立が後口へと宛がわれる。ぎゅっと目をつむると、息を吐いて、と囁かれた。
「はっ……あう、あっ……ああっ……うっ……」
「鋼の。鋼の、息を吐いて。ゆっくり、ゆっくり吐くんだ」
 そんなこと言われたって、無理だ。指とは比べものにならない圧倒的な質量が押し入ってくる。皮膚が内側から外へまくりあげられていくような痛みを感じた。痛い。痛い。とても熱い。やけどしそうな熱さが捻じ込まれてくる。
「う、うあっ……」
「……きつ、い……鋼の、辛いか?」
 ロイの動きが一旦止まり、今度は出て行こうとする。ここでやめるなんていやだ。これからなのに……!
「ちょっ……鋼の、」
「……だめ……いかな、いで……っ、いたく、ない、からっ」
 ロイの肩を抱きよせ、自分から口づける。舌を忍び込ませ、ロイにしてもらったことを思い出しながら舌を絡ませた。
「んうっ……あんっ、……ん、んっ……」
 ようやくロイは、止めるのを諦めたようで、エドワードの稚拙なキスに応えながら、萎えかけたエドワードのものに手を伸ばした。
「あっ……ん、……はあ……っ」
 ゆっくりと、エドワードの緊張を解くようにぬめりを広げながら這わせてゆく。
「すまない……ここが入ったら、楽になるから……」
 ロイはエドワードの性器に愛撫を施しながら、少しずつ自身を埋めていった。いたわるように、あちこちにキスを落とす。痛かったけれど、ロイも苦しそうだった。ロイは先を進めてはわずかに抜き、また入ってくる。自分をなじませるようなその動きに、入ってくるときは少し痛くても、出て行くときは吐息をもらしてしまうような快感があることに気づいた。エドワードの意識は、そのわずかな快感を貪欲に拾っていく。ロイを受け入れたいという想いが、小さな快感をどんどん集めてゆく。前のほうではもっと直接的な刺激が与えられている。
「だ、だいじょ、うぶ……んっ、……んう……もっと、はいって、いい、よ……っ」
 ぎゅうぎゅうと締め付けたロイのものが、急にぐいっと入ってきて、息がつまった。全部、入った、とロイが教えてくれた。
 二人で荒くなった息をどうにか整えていると、ロイがぽつりとこぼした。
「まったく……君にはかなわないよ、鋼の」
「……たいさ、きもち、いい……?」
 ロイはそれには答えず、一言「動くよ」と告げた。
「あっ、……はあ……んっ、やっ、やあっ……」
 ゆっくりだったさっきとは違う速さで突き上げられ、エドワードは眉を寄せてひたすら喘ぐしかない。シーツを掴む手はいつのまにかロイの背中に回され、ぐいぐいと抜き差しされるたびにその背中に傷をきざんだ。機械鎧の右手なんて特に痛いだろうに、ロイはエドワードをちっとも咎めなかった。
「たい、さ……おーと、めい、る……はずすっ」
「……何故?」
「だっ、て……いたい、だろ……?」
 ロイは、馬鹿なことを、と一蹴し、機械鎧と生身との接合部をいたわるように舐めてくる。引き攣れた皮膚は敏感で、たっぷりと濡らされた舌でたどられるたびに、エドワードの身体は正直な反応を返す。
「ひゃっ……あんっ……あっ、ああんっ……ふ……んあっ」
 指でいたずらされていた箇所がロイに擦られると、快感が跳ね上がった。痛みと熱さに麻痺したと思ったのに、まるでロイの形に沿うように、やわらかくうねっていく。
「ずっと、こうして……きみを、抱きたかった」
「やっ、あっ……あん、あっ、はあ……っ」
 熱に浮かされたように揺さぶられ、ひっきりなしに嬌声をもらした。冷たい機械鎧すら、ロイはあたためてくれる。その二つ名をあらわすかのような熱さに蕩けてしまいそうだ。
 激しく突き上げられ、息も上がる。ロイにいいところを突いてもらえるように自分から腰を動かす。はしたないと思っても、もう止まらない。
 ロイのものが、ぐっ、と大きくなったのを感じるとともに、ロイは身体を離そうとした。
「っ……んで……? いい、よ……なか……だして……?」
 きっと中で出したほうがロイも気持ちいい、と意識して後口を締めつけてみる。
「……わかった、最後は一緒にね。……エドワード」
「え、……? やっ、なん、でっ、……ああっ、あ、あっ、あ……!」
 名前を呼ばれて、激しい快感が一気に押し寄せる。自分が勝手にぎゅっとロイを締めつけたのがわかった。その狭い内を、ロイは強引に硬い屹立で擦り上げる。荒い息と、打ちつける水音と、ベッドが立てるぎしぎしという鳴き声に襲われて、エドワードの頭にあったのはロイの熱い囁きだけだった。
「たいさ、たいさっ、ああっ……オレ、も……はあ、あっ……でちゃっ……ああっ――」
 真っ白になったなかで、ロイの熱だけを感じた。達してふるえるエドワードの内部は、ロイの迸りを貪欲に飲みこんだ。

 
 くたびれるものなんだな、とエドワードがぼんやり呟いたのは、ロイにお風呂に入れてもらって、シーツも替えてもらって、窓を開け放った部屋でふたたびベッドに寝転んでからのことだった。
 中に出されたものをかきだされる間の恥ずかしさといったら、セックス自体よりもひどかったけれど、自分ですることも出来なくて、赤面しながらやってもらった。ああもうオレ、お嫁にいけない……と冗談まじりで言ったら、ロイは優しい瞳でくすくすと笑っていた。そんな表情でも、中に埋められたロイの指の動きは不必要に卑猥で、エドワードは風呂場で三度目の絶頂にみちびかれた。足ががくがくしてまともには立てず、結局、体もロイに拭いてもらって、おんぶされて部屋に戻ってきた。途中、廊下と階段にぽいぽいと投げ捨てられた靴を見てまた赤面したのは秘密だ。
 あんな声を出したのは初めてで、エドワードの声はすっかり掠れている。用意された冷たい水を、ロイが傾けたコップから飲み干す。汗を流してさらりとしたロイの肌にすり寄ると、力強い腕が背に回った。
「疲れるからもうしたくない、なんて言わないでくれると嬉しいな」
 頭の上から振ってくる声はすこし心配そうな響きを含んでいて、エドワードはバカだなあと思った。
 すべてがめまぐるしくて、痛かったし、つらくもあったけど、痛みは我慢できないほどではなかったし、身体も心も満たされた。ロイが気持ちよさそうだったのが何より嬉しかった。
 だから、答える代りにロイの両頬をつねって「バーカ!」と言って笑ってやった。


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文字書きさんに100のお題 Project SIGN[ef]Fより

このあと増田さんは、焦らしプレイとか上に乗せて「自分で動いてごらん」とか言って、兄さんに「いたい! ばか! へんたい!」とか言われます。だめなおとな!