穏やかな波の音が・・・。
「ん・・・」
目を覚ますとそこには・・・。
少年みたいなあどけない寝顔の涼がいた・・・。
スースーと寝息をたてて・・・。
(そうかあたし・・・。涼兄ちゃんと結婚したんだ・・・。
そしてハネムーンの朝・・・)
昨夜の事が突然鮮明に里緒の脳裏に蘇って思い切り赤面する里緒。
(・・・。やだ・・・あたしってば・・・)
そんな里緒をよそに涼はまだ熟睡。
「あ・・・。もう7時ね・・・。起きなくちゃ・・・」
里緒は涼を起こさぬようにと静かにベットを出て着替え、朝食の準備に取りかかった。
ルームサービスで頼んだ今日のメニューはハムエッグと野菜サラダ。それにオレンジジュース。
初めて涼と二人で迎える朝食。
小さなスプーンもフォークも里緒にとっては何もかもがきらきらと光って見えて、新鮮に思える。
「ん・・・。里緒・・・」
涼が目をこすって起きあがった。
「あ、お兄ちゃん、おはよ!もうすぐご飯できるからね!」
「う・・・。里緒・・・。ちょっと・・・」
涼が腹の辺りにてをあてて里緒を手招きしている。
「どうしたの!お兄ちゃん!」
里緒はあわてて、ベットにかけよった。
「お兄ちゃん、大丈夫!?」
心配そうに涼をのぞき込む里緒。
「捕まえた。俺の奥様」
「きゃあッ!?」
涼は里緒の腕をぐいっと掴んでベットの中に強引に引き込んだ。
気がつくと里緒の目の前に涼の優しい顔がドアップで・・・。
そして涼は可愛くてたまらない里緒の笑顔を見下ろして・・・。
「も・・・。もうお兄ちゃん、騙したのね!」
「ふふ・・・。ごめんごめん。あれ・・・。なんだ。里緒もう着替えちゃったのか。残念・・・。昨夜の続きをしようと思ったのに・・・」
「も・・・もう!お兄ちゃんたら!!」
ぷいっと横を向く里緒の顔をグッと自分の方へ向かせる涼。
「ふふ・・・。もう『お兄ちゃん』じゃないだろう?俺の奥さん」
「・・・。りょ・・・。涼・・・」
「それでいい。俺の可愛い奥さん・・・。愛しい何より愛しい・・・」
そして涼はゆっくりと里緒髪や頬を順番になぞるように手で触れた・・・。
「この髪もこの頬も・・・。そしてこの唇も・・・。愛しくてたまらない・・・。今までずっと・・・。触れたかったんだ・・・。子供の時からずっと・・・」
里緒の瞳に愛しげに自分を見つめる涼の瞳・・・。
そうだ・・・。あたしもずっと・・・。お兄ちゃんにこうして見つめられたかった・・・。
“妹”としてじゃなく一人の女の子として・・・。
ずっとずっと見つめて欲しかった。触れて欲しかった・・・。
抑えていた想い。
やっと、やっと解放できる・・・。
やっと・・・。
「里緒・・・?」
白いシーツに里緒の涙が一筋こぼれた。
「ご・・・。ごめんお兄ちゃん・・・。あたし・・・。今でも信じられなくて・・・。ずっと大好きだったお兄ちゃんがこうしてあたしだけを見てくれてるなんて・・・。ゆめじゃないかって・・・」
夢なら覚めないで。永遠に。ずっと幼い頃から、焦がれてきた夢。
お願いどうか・・・。
涼はそっと里緒の涙を人差し指ですくった。
「夢なんかじゃないさ・・・。里緒が俺の腕の中にいる・・・。里緒の優しい匂いも里緒の温かな肌のぬくもりも・・・。確かに俺の腕の中にある・・・。昨夜俺の体に刻み込んだ・・・。永遠に忘れはしないさ・・・」
「おにちゃん・・・」
もう、何も縛るものはない。
家族とか血縁とかそんなものすべてにさよならして・・・。
「里緒・・・。夢なら永遠に俺の腕の中で見ていてくれ・・・。覚めない夢を・・・」
涼はありったけの想いをこめて里緒の唇を塞いだ・・・。
息も漏れないほどに・・・。
白いレースのカーテンが揺れる・・・。
やっと愛をつないだ二人を優しく・・・。優しく・・・