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恋笛
私の大好き人。 敦盛さん。 ずっとずっと探してた。 嵐の中に消えてしまったあの日から。 私はずっと・・・ 「・・・神子!」 「敦盛さん・・・!!」 そしてようやく・・・ 会えた。 「敦盛さん!敦盛さん・・・!」 「神子・・・」 舞台できえてしまった敦盛さん。 「・・・もう・・・。ずっとずっと探してた・・・。貴方に会いたくてずっと・・・」 会えた瞬間、私は溢れる想いをとめられなかった。 涙と一緒に彼に・・・ぶつけてしまった。 「すまない・・・。でも私も・・・ずっと貴方に会いたかった・・・。貴方の声を 頼りに探して・・・」 「・・・敦盛さん・・・。お願い・・・もう消えないで・・・。あんな寂しい想いはもう したくない・・・」 「神子・・・っ」 彼の胸で泣きじゃくる 私を抱きとめた彼のその手は・・・ とてもとても・・・震えていた・・・ そして彼が私に伝えてくれた。 「神子・・・。私は貴方にどうしても想いを・・・伝えたくて・・・」 「・・・敦盛さん・・・」 「神子・・・。私は・・・私は貴方が好きなんだ・・・。ずっと・・・惹かれていた・・・」 彼の声を・・・ 天から降ってきた雨音にかき消されぬよう 私は何度も 心の奥に焼き付けた・・・ 再会してどれだけの時間が経ったのだろう。 気がつけば日も暮れて私達は、無人の神社の社で暖をとっていた。 ぼんやりと火を私達はじっと見つめて・・・。 「神子・・・」 「敦盛さん・・・」 互いに言いたいことはあるけれど ただ、こうして一緒にいられることだけで 想いが溢れそうだった 「・・・敦盛さん・・・。笛を・・・。聞かせて・・・」 「え・・・?」 「貴方を笛が・・・とても聞きたい・・・」 彼はすこし笑みを浮かべ、静かに頷いた。 そして懐からあの綺麗な笛をとりだして・・・奏で始めてくれた・・・。 彼の笛・・・ 久しぶりの音色に・・・ 私の胸に刹那が込み上げてきた・・・ どこか切なく・・・哀しい音色なのに・・・ 私はこの音色がとても・・・ 愛しい・・・ 「・・・み、神子・・・」 「え・・・」 気がつけば・・・私の頬から雫が伝っていた・・・ 「・・・やはり・・・私の笛は神子を苦しめるのだろうか・・・?」 「そんなこと・・・!あるわけない!!私は敦盛さんの音色が・・・笛が大好き。 この世で一番・・・美しい音色だって思ってる・・・」 「神子・・・」 彼は笛をぎゅっと握り締め・・・複雑に顔をゆがめた。 「・・・神子・・・。私は・・・自分の想いを伝えられた・・・。願いは叶った・・・。 だから・・・」 「・・・嫌!!それ以上言わないで!」 私は彼の口元に手を添えて彼の言葉を遮った。 だって・・・。 彼の望みはわかっている・・・。 私が一番したくないことを 彼は望んでいる。 「・・・敦盛さん・・・。今度は私の番ね・・・。私が貴方に気持ちを伝える番・・・」 「神子の・・・気持ち・・・?」 私は頷いた。 そう・・・。 私のこの想い。 彼にちゃんと告げなければ・・・。何もはじまらない。 「私は・・・。敦盛さん、貴方が好きです・・・。誰よりも・・・」 「み、神子・・・」 「貴方がどんな存在であろうと私は・・・。貴方の全てが好き。愛しい・・・。 だからお願いです。ずっと私のそばにいてください・・・」 私は彼の白い清らかな手を握り締めた。 一瞬、彼は苦しそうな・・・切なそうな顔をした・・・ 「神子・・・。私は・・・。私は愚かだ・・・。自分の想いを伝えれた筈なのに・・・ それ以上の望みを持ってしまう・・・」 「敦盛さん」 「・・・貴方の想いを聞いてしまった今・・・。私は消えられない。消えたくない。 自然の摂理を無視しても私は・・・。貴方と共にいたい・・・」 彼は 瞳から涙し・・・ 私を抱きしめてくれた・・・ 「・・・ずっとこうされたかったんだよ・・・。敦盛さん・・・」 「神子・・・!」 「・・・。愛してる・・・。貴方の全部を愛してる・・・」 「神子・・・ッ」 その身は人間でなくとも 彼の腕の中は とても温かかった・・・。 普通の人より ずっと 優しかった・・・。 「神子・・・。私は・・・私は・・・っ」 「何も言わないで・・・。ただ・・・。側にいて・・・。お願い・・・。私を一人にしないで・・・」 「神子・・・ッ!!」 もう 貴方が消えてしまうあの恐怖は 味わいたくない。 ねぇ。もしあの世に神様がいるなら聞いて。 私が人の世にいきている間だけでいい。 この人を連れて行かないで。 この人が この世の者じゃないとしても 私は彼を愛している。 だからお願い・・・。 「・・・敦盛さん・・・。もう一度・・・。笛が聞きたい・・・」 「・・・神子のためなら何度でも吹こう・・・。私の愛しい人のためなら・・・」 彼は再び笛を奏でる・・・ 今度は少し穏やかな音色で・・・。 私は彼と共にいる。 生きる。 彼の存在がある限り。 私は・・・。 彼と一緒に・・・。