一緒にいるだけで
「望美・・・。具合はどう・・・?」 風邪でダウンした望美。 床に横になる望美を心配そうに見つめている・・・。 「敦盛さん・・・。ごめんなさい・・・心配かけちゃって・・・」 「謝らなくなくていい・・・。望美は休んで・・・」 望美にそっと布団をかける敦盛・・・。 パキ・・・。敦盛は望美の体が冷えぬようにと焚き木を燃やす・・・。 (望美・・・) 熱で息苦しそうな望美・・・ (風邪に効く薬草など知らないし・・・。どうしたら・・・) 望美の額に濡らした布を置く・・・。 「望美・・・。苦しい・・・?」 「・・・少し・・・。でも休めば大丈夫だから・・・」 (望美・・・) 物の怪や怨霊を蹴散らす力はあっても・・・ 大切な人を癒す力は自分にはない。 (・・・私は・・・なんて無力なのだろう・・・) 自然に敦盛の眉間にしわがよる・・・。 「あ・・・。敦盛さん。また何か思いつめてるでしょ?」 「えっ」 図星をつかれる敦盛。 「・・・敦盛さん・・・。自分は怨霊だから・・・なんて すぐ思わないで・・・。私は敦盛さんがそう思うことが 一番寂しい」 「望美・・・」 健気な望美の言葉に敦盛の手は自然に望美の手を握った。 「・・・望美・・・。では私は何をしたらいいのだろう・・・。 貴方のために・・・」 「・・・一緒にいてくれたら・・・それでいい・・・」 (・・・一緒に・・・) 少し疲れたのか・・・ 望美の瞳は静かに閉じられた・・・。 「・・・一緒にいるだけで・・・。それだけでいいのだろうか・・・」 手を握るしか・・・ (・・・でも・・・。私は望美のそばにいたい・・・) 望美の寝顔を見ていたい・・・ 「はぁ・・・」 熱に少しうなされる望美・・・ 敦盛は望美の額をそっと拭う・・・。 (・・・私は自分のことばかり考えていた気がする・・・) どんな姿だろうと 無力だろうと 今、自分がここにいる”理由”は・・・。 (望美・・・貴方が生きているからだ・・・) 「敦盛さん・・・。ずっと・・・そばにいて・・・」 望美の頬がしずくが伝う。 切ない願いの寝言ともに・・・ 「・・・いる・・・。望美が生きている限り・・・私も生きる・・・。 貴方が死ぬときが・・・私も死ぬときだから・・・」 「敦盛さん・・・」 何度もつぶやく呼ばれる自分の名・・・ 握った手を頬にあてて応える敦盛。 「・・・愛している・・・。貴方を心から・・・」 貴方がいるだけで 一緒にいるだけで 存在し続ける意味があるから・・・。