あなたが、だいすき。 あなたがなにものでも あなただいすき。 それ以上の必要事項はない。 あなたが、だいすき。 それだけで私の生きている意味があるから・・・
望美の風邪も回復し、敦盛も安堵していた。 「よーし。復活!じゃあ食料を調達してきますか!」 布団をさっさとたたんで、籠をかつぐ望美。 「な、何をしているんだ。貴方はまだ病み上がり・・・」 「だいじょーぶ!あのね、美味しいそうな 茸この間、みつけたの。とってこようと思って」 「駄目だ。まだ顔色はすぐれない」 敦盛は望美が担いだ籠を下ろさせた。 「大丈夫よ。かご返して」 「駄目だ。もう少し休んでから・・・」 「平気だってば」 「駄目だ」 籠を取り合う二人・・・ バキ・・・ッ。 かごはまっぷったつに割れてしまった・・・ 「・・・あ、す、すまない・・・。私が・・・」 「ふふ。ふふふ・・・」 「?」 突然笑い出した望美に顔をかしげる。 「・・・初めてだね。喧嘩したの」 「え・・・」 「だって敦盛さんいつもどこか私に申し訳なさそうって言うか・・・」 「あ・・・」 敦盛は図星を突かれて言葉が詰まった。 どうしても・・・。自分は生身の人間でないという後ろめたさが 消えない。 「・・・喧嘩できて・・・。嬉しいんだ」 「え?」 「敦盛さんが・・・何だか近く感じるから・・・」 望美はそっと敦盛の手を握った・・・ 「・・・望美・・・(照)」 「今日は、一日、敦盛さんとゆっくり過ごすことにするね」 二人はその日。茸取りはやめて・・・。 静かに八葉たちとの思い出話に花を咲かせた。 静かに過ごす一瞬一瞬を大切にしていきたい・・・ そんな想いで二人は語り合った・・・。 翌日。 天気で快晴。 「よおーし!今日こそ茸取りがんばるぞー!」 望美は元気よく籠を担ぎ、やる気満々の様子。 いつでも明るい笑顔を絶やさない望美に・・・敦盛は救われた気持ちになる。 自分が此処に居てもいいと思わせてくれるから・・・。 「私も行こう・・・。あの森は何が出るか分からないから」 「うん。頼りにしてる。敦盛さん」 「・・・(照)」 望美に必要とされることがこの上なく嬉しい ”生きている”と感じられる・・・。 「あ・・・たけのこ発見!かわいいね」 「ああ・・・」 土の上から可愛い三角の頭を出していたたけのこを見つけた。 「あ・・・。椎茸もある。ふふ。やっぱり村の人が言ったとおりだね。 ここはきのこの森だね」 「ああ」 生きている人間と同じ・・・。 食料を得たり、狩に出たり・・・ ごく当たり前な暮らし。 (・・・生きていた時より・・・。今の時間のほうがずっと・・・ 人間らしい気がする・・・) 縛られる家柄も 戦う相手もなにもない・・・ 「はー。沢山取れたねー。今日は茸ご飯だね」 籠いっぱいのきのこに望美はとてもご満悦。 「はい。敦盛さんおにぎりどーぞ」 「・・・ありがとう」 ちょっと丸のような三角のような微妙な形のおにぎり。 敦盛は何故だがマジマジと眺めている。 「あ・・・味はだいじょーぶだよ。保証する」 望美はぱくっとおにぎりを食べて見せた。 「い、いやそういうことじゃなくて・・・。初めてだから誰かの握り飯 なんて・・・。そんなことが嬉しいなんて変だけれど・・・」 「敦盛さん・・・」 「・・・今は・・・。私を縛る何もない・・・。私が思うように ままにいられる・・・」 風を感じ 草花に気を寄せて 見るもの感じるもの 全てに慈愛を注がれている 自分も注げられる・・・。 「・・・。望美のおかげだ。私は生まれて初めて・・・ ”この世に生まれてよかった”と思えているから・・・」 「・・・敦盛さん」 敦盛の言葉が”思えた”じゃなくて”思えている”なのが望美をほっとさせた 過去形じゃなくて現在形・・・ (・・・敦盛さんは前向きな気持ちでいてくれてる・・・) 「・・・。とても・・・おいしい・・・」 「よかった・・・」 穏やかな敦盛の 微笑が望美の想いを形に変えさせる。 「敦盛さん、私、今、すっごく叫びたいことあるんだけど・・・ 叫んでもいい?」 「え・・・?」 すくっと望美は立ち上がり、空に向かって 顔を上げた。 「敦盛さんがだいすきーーー!!私はあなたがだいすきーーー!!」 「のっ・・・望美・・・!?」 望美の声は すがすがしい青い空にきえた・・・ 「愛の告白、終わり。ふぅすっきりしたー!」 「す、すっきりしたって・・・(照)」 突然の告白に 敦盛はただただ・・・頬を染めるばかり・・・ 「うふふ・・・。空が綺麗ねー・・・」 同じ空を見て 素直に想いを伝えられる この時間を大切にしたい。 望美も敦盛も想いは一緒・・・ 「ねぇ敦盛さん。私・・・。幸せだよ」 「・・・私もだ・・・」 大好きな人と一緒に居られたらそれが一番幸せ。 あなたがただ だいすき・・・ そう伝え合えることが 一番幸せだから・・・。