温もりの中の温もり 死人の体。 体温のある生ある人の温もりはない。 でも望美は言った。 「・・・敦盛さんは・・・。温かいよ?誰より・・・ここが・・・」 敦盛の心臓をそっと撫でる。 ・・・裸身の望美。 敦盛は少し頬を染めて望美の長い髪を撫でて応える・・・。 「こうして・・・抱きしめあっているだけで・・・幸せ・・・」 望美の幸せそうな顔が 敦盛に自分が怨霊だの生ある人間だのという 概念を忘れさせてくれる。 だが・・・。 この体はまがい物。 至福と不安が入り混じって・・・。 「・・・望美・・・。私は生ある時よりも・・・。 今の自分が好きだ」 「うん」 「でも・・・。貴方にはどうだろうか・・・」 少し不安げな顔で敦盛は尋ねた。 「・・・さっき言った台詞、何度でも言うよ・・・。 こうしているだけで私は幸せ・・・。敦盛さんが側にいてくれるだけで・・・」 「望美・・・」 自分の胸に頬を当ててくる望美・・・。 葛藤は消えない。 怨霊の自分が果たして望美を幸せに出来るのか・・・。 でも望美を手放したくないという強い想いが 敦盛を支えている・・・。 「さてと・・・。そろそろ朝食の準備しようか」 望美は静かに起き上がった。 (・・・!) 裸身の望美が目の前に・・・ 敦盛は思わず目をそらす。 「・・・。あ、あの望美・・・き、着物を着てくれないか・・・」 「え?」 「・・・何だかそ、その・・・。目のやり場に・・・///」 「え、あ、ご、ごめんなさい」 望美は着物をさっと胸にあててかくした。 「・・・で、でも敦盛さん、もう見てるでしょ・・・(照)」 「・・・///」 見ただけじゃなくて・・・そのぬくもりも感触も 確かに感じた。 「・・・じゃあ釜戸に火を・・・」 立ち上がった望美の腕を 敦盛がぐいっと引っ張った・・・ 「もう少し・・・。このままで・・・いたい・・・」 「・・・うん・・・」 敦盛の胸。 心臓の鼓動は聞えないけど・・・。 (・・・この人は生きる・・・。私が愛する限り・・・) 「・・・敦盛さん・・・。今日の夜も・・・。一緒に寝ようね」 「///あ、ああ・・・」 生あるものよりずっと 温かい。 望美は敦盛の優しさを 肌から心から 感じ取って そして自分も温もりを伝えたのだった・・・。