待ちぼうけもいいじゃない 雨・・・。 あーあ・・・。弁慶さんの言うとおり傘もってくればよかったかな・・・。 隣村までお使いを頼まれたのだけど・・・。 私は大きなすぎの木下でしばらく雨宿り・・・。 ポタ・・・。 雨のしずくが肩に落ちる・・・。 ふふ。なんか・・・一人でゆっくりするのもいいかな。 いっつも気がつけばそばで弁慶さんが悪戯を・・・。 ・・・。 静か過ぎるのも落ち着かない感じも・・・。 あ・・・。目の前のもう一本のすぎの木下で 女の人が雨宿り・・・。 しばらくしすると 「お前さん」 傘を二本持ったお侍さんが迎えにきたみたい。 「トキ。すまなかったね。行こうか」 「はい」 手をつないで・・・。 しかも相合傘・・・ ・・・いいなぁ・・・。 弁慶さんだったら絶対・・・ あんなに素直に優しくは・・・ してくれないよね。 ポタ・・・ポタ・・・。 雨も大分止んできたな・・・。 ・・・やっぱり・・・。迎えになんてこないか・・・。 背伸びして遠くを見つめても来ない・・・。 たまには・・・ 迎えに来て欲しい。 待ってるだけじゃ・・・。 「・・・誰をお探しですかな?愛しい人」 「!!」 木の反対側から弁慶さんの声が・・・。 「・・・いつからそこに・・・」 「そうですなぁ・・・。向かいの恋人同士が帰っていく様を うらやましそうに見ている時ぐらいか・・・」 「・・・んもう・・・。また私のこと観察してたのね」 「・・・いやいや・・・。僕を待つ貴方の顔が見たくて・・・」 ほら。やっぱり。こうだものね・・・。 いつもどこかで出し抜かれて・・・。 「・・・望美。雨の中の貴方も綺麗でしたよ」 「誉めても何も出ませんよ。雨も止んできたし帰りましょ」 ちょっと苛苛してきちゃった。 「・・・なんだか機嫌を損ねたようですね。では・・・」 「きゃっ」 ぐいっと手をつかまれて反対側に 引っ張られた。 そして木を背に弁慶さんが私を見下ろす・・・。 「・・・。意地悪・・・」 「・・・生まれつきですv」 はぁ・・・。まっすぐな優しさを弁慶さんに求めても仕方ないのかな・・・。 でも意地悪な弁慶さんを好きになったのは私だけど・・・。 「・・・口付けをすれば・・・ご機嫌はなおります?」 「・・・さぁ・・・どうでしょう」 「では・・・試すとしましょうか・・・」 弁慶さんは悪戯に笑って・・・ 私の頬に手を当てて口付けた・・・。 雨の中・・・ 少しだけ濡れて道の真ん中でキスをした。 まっすぐな優し旦那様じゃないけれど・・・ キスは優しい・・・。 私の機嫌も治っちゃうね・・・。ふふ・・・ 「・・・濡れた唇はいけないですね・・・。その気になってきましたよ?」 「・・・ならないでください(汗)」 「ふふ。ならば早速帰りましょう!」 「あ、ちょ、ちょっと弁慶さーん!」 弁慶さんと私。 雨の中、濡れて走る。 雨が少しずつやんでいくように 私の心のもやもやも少し晴れた。 ・・・待ちぼうけもたまにはいいかな。 自分の恋を確かめられる。 手をつないだまま走る 雨も嫌いじゃない。 私は少しだけ雨が好きになったのだった・・・。