試着室にて 〜弁慶編〜 望美は弁慶と買い物に行くのがちょっと 嫌なときがある。 何故って・・・。 「・・・。ほうほう。君のサイズでいいデザインのものが 出てますよ」 といっては、”率先”して下着売り場に行くからである。 「もう!今日は弁慶さんの洋服を買いに着たんでしょ!」 見るもの全て新鮮。 とにかくあちこち子供のように回るので 望美が気が気でない。 「望美ー!ほら。望美に似合いそうな素敵な 着物がありますよ」 と、一枚のワンピースをひらっとどこからか持ってきた。 純白の胸元にリボンがついたワンピ。 「ちょ・・・勝手にっ」 「試着室とやらできて見ましょ。ささ」 「え?え?ちょ、ちょっと!」 と、無理やり、ワンピースと望美を試着室に強引に押し込んだ。 「私着るなんて・・・」 「実は・・・この後、とあるレストランに予約をいれたんです。 お姫様。ドレスアップをお願いします」 「え・・・」 「僕からのプレゼントです・・・。今日、誕生日でしょう?」 (あ・・・) すっかり忘れていた望美。 「・・・ってなわけで。僕の贈り物、受け取ってくれます・・・よね?」 「もう〜。デートまで策略練りすぎだよ。弁慶さん・・・」 「ふふ・・・」 (でもうれしい・・・) 「僕がお手伝いします」 「ってもう入っちゃってるし」 ちゃっかり試着室にお邪魔。 せまーい試着室で二人だけ。 「いや〜。実にいい室内ですね。君の香りが充満している。 計算した甲斐がありました」 「!?まさか・・・こうなることまで 計算してワンサイズ小さなワンピを・・・」 「え?ちいさかったですか?胸の大きさは確かめましたが」 「///そ、そっちだけ見てどうするの。もう〜!!」 半分しまったファスナを 首筋に弁慶の息がかかる。 腕に包まれた二人の姿が鏡に映って・・・。 (なんか・・・ちょっと・・・) 恥ずかしい。 「いいですか?ファスナーあげて・・・」 「え、じゃ、じゃあお願いします・・・」 弁慶の細い指が ゆっくりとファスナーをあげていく・・・ 「・・・君の背中は・・・。 なんども触れているけれど・・・とても白いな・・・。 このドレス以上に・・・」 「///よ。余計なこといわないでさっさと あげちゃってください!」 「・・・ゆーーーくりあげてあげます。ふふ・・・」 「もう〜!!ふざけないでくださいっ・・・ってきゃあ!」 バランスを崩して弁慶の腕の中に 寄りかかる・・・ 「・・・君は本当に予想外のことをしてくれますね・・・。 ふふ。大歓迎ですけど・・・」 「弁慶さんが策を練りすぎなんです・・・もう・・・///」 狭い試着室・・・ 鏡に映る 弁慶に抱きしめられる自分を見ると・・・ 「・・・恥ずかしい・・・」 「そうですか・・・?」 「僕はとても幸せですが・・・」 「もう・・・」 「あと1分だけ・・・。こうしててくれます・・・? 至福のときを・・・」 「・・・1分だけですよ・・・」 狭い 二メートルもない狭い空間。 外には他の客もいるのに 密着したいという衝動が 抑えられない。 互いの熱が 「・・・ここが寝室ならば・・・ すぐにでも脱がせてしまうのに・・・。全てを」 「ば、馬鹿なこといわないでくださいッ///」 少し過激な言葉も 感じなくなって・・・ 「・・・。望美・・・」 「!?」 「一度・・・名前で呼んでみたかったんです。 君の事を・・・」 (急に呼び捨てなんて・・・) ドキドキが止まらない。 鼓動が鳴り止まないとき・・・ シャッ いきなりカーテンがいあいて。。 「・・・」 小さな子供がじっと見ています。 「・・・。ふぅ。小さな邪魔が入ったようです。 仕方ないですがでましょうか」 (なんでそんなに冷静なんだ・汗) と、済ました顔で試着室を出て行く弁慶。 「・・・。お姫様。ドレスアップは終了です。 さぁ、これから・・・。これからが本番のデートですよ」 「・・・怖いやらたのしみのような・・・」 「え?何かいいましたか?」 「なんでもないです!ふふ」 二人は腕を組んで 雑踏の中に消えていく。 ・・・本番のデートの始まり・・・。 弁慶の策略がどんなか胸が高鳴る望美だった・・・