束縛
僕の可愛い人。 ちょっと目を離すと僕の視界から消えてしまう。 その都度僕は不安と寂しさにかられ、どうにかなってしまいそうだ。 どうしてくれよう。 ねぇ。僕の可愛い人・・・?
「弁慶さん、これ・・・薬草になるかな?」 可愛い小さな声で君は僕に尋ねる。 「ああそれです。大分薬草の種類を覚えましたね」 「はい」 屋敷の裏に生える野草を二人で摘む。 こんな天気がいい日。きっと君は外に出たがるだろうと思った。 僕も・・・。太陽の陽射しの下で笑う君を見たかったし・・・。 「・・・痛・・・っ」 君の痛がる声に僕の心は逐一反応する。 「どうした!??」 僕の心は慌てふためくよ。君の一大事は僕の一大事でもあるからね。 「・・・じっとして・・・」 着物の裾を少しまくり、君の素足を僕は診る。 ・・・ふふ。少し照れた顔が可愛いよ。 でも自体はそんなに安易じゃないようだ。 見ると、足首に二箇所、噛まれたあとがあった。 この噛み痕は・・・。毒蛇だ。 ああほら・・・。既に赤くはれてきている。 「・・・ちょっと我慢して。すぐに毒を吸い出すから・・・」 「はい・・・」 君の肌に口付けるなんて、毎晩のことだけど 今は夢を見ている場合じゃない。 君の命を脅かす毒を取り除かなければ。 「・・・っ」 僕は傷口を吸い出す。 君の体が僕の唇に反応して少し震えた・・・ 嬉しい反応だけど今は君の反応が最優先事項じゃないからね。 「・・・。ふう・・・。毒はとれたと思う・・・。でも 念のため毒が体に回らないように暫く、血を止めておこう・・・」 僕は自分の着物を引き千切ってそのハギレで彼女の膝をぎゅっと縛った。 「・・・これでよし・・・。少し休もう・・・」 「ありがとう。弁慶さん」 「・・・お礼なんて必要ないさ。君の怪我は僕の怪我・・・だからね」 僕の甘めの台詞にはにかむ君。 可愛いと思う。抱きしめたいけど、今は流石にやめておくよ。 怪我人に迫るほど僕も落ちぶれてない。 「・・・望美・・・。痛みはないかい?」 「はい」 よかった。思ったほど、腫れてない・・・。毒も 回ってはいないようだ。 「・・・でも君にはほんとうにはらはらさせられますよ」 「え?」 「・・・。目が・・・離せないってこと・・・」 「べ、弁慶さんたら・・・」 君の耳元で囁く・・・ 君はこそばゆそうな顔して・・・ ・・・君が感じる弱い部分をもっと攻めたい気分になるね・・・ 「・・・縛っておきたいな・・・。君を・・・。どこにも いかないように・・・」 「・・・っ」 軽く耳に口付け・・・ 嗚呼いけないな。僕の悪い部分が暴走しはじめた。 「・・・もっと・・・。僕を感じてください・・・」 「えっ」 僕は・・・ もう一本着物でハギレをつくりそれを君のと自分の手首にまきつけ 繋げた。 「・・・し・・・縛るってこういう意味・・・ですか?」 「ふふ。君・・・。なにか違うこと・・・想像した・・・?」 「や・・・っ。そ、そんなこと・・・っ」 「そうだな・・・。君の怪我が治ったら・・・。是非・・・ 床の中で挑戦したいね・・・」 君の体を引き寄せる。 本当はいますぐにでも挑戦したいけれど 我慢するさ。 「・・・でも実際はね・・・。僕の心の方が縛られているんですよ・・・。 君って可愛い人に・・・」 「弁慶さん・・・」 「・・・僕を解かないで・・・?一生・・・。僕を・・・。縛って好きでいてほしい・・・」 「はい・・・」 僕の胸に顔を埋める君が愛しい。 ああ、早く夜にならないか・・・ 早く君の怪我が治ったら 君を愛したい。 互いを心地よく束縛しあうんだ・・・。 身も心も全て・・・。ね・・・。