湯の花に魅せられて 「ふぅ・・・」 お風呂に浸かり、体の疲れを癒す。 ・・・。疲れたのは弁慶さんがあんまり昨晩凄かったから・・・(照) 庭の白い椿の花を湯船に浮かべて・・・ 「いい香り・・・」 椿の薫りを堪能したいのに 私の頭に浮かぶのは・・・ ”僕の・・・可愛い人・・・” 弁慶さんの腕の中で囁かれたつぶやき・・・ (・・・火照ってきた・・・) 私の耳の奥に残すように・・・ 甘い声と吐息で呟くんだもの・・・ お風呂くらいゆっくり入っていたい・・・ 「はぁ・・・」 目を閉じて深呼吸をする・・・ 「椿の花はいい香りですね・・・」 「!?」 この声は・・・ 「やあ。僕の可愛い人」 「べっ弁慶さん!!」 済ました顔した弁慶さんが真後ろに・・・! い、いつのまに入ってきたの!? 「いやー。実にいい湯です・・・」 「どっどっから入ってきたんですか!!」 驚く私を他所に余裕に笑ってる・・・ 「あの。どーでもいいですが、丸見えですよ」 えっ・・・ そうでした。ここはお風呂・・・ 「きゃああ!!」 私は慌てて手ぬぐいで隠して後ろを向いた。 ・・・。なんかもう弁慶さんペースだな・・・ 「・・・ふふ。ま、毎晩見てますけどね」 「・・・」 余裕綽々。もう。反発する元気ないな・・・ 「あ、あのっ・・・。ぜ、絶対こっちにこないでくださいね」 「え?」 「へ、へんなこととかしそうだもの・・・」 「・・・ふふ。へんなことって何ですか」 「・・・!」 何かしゃべるたびに・・・ 揚げ足をとられて・・・ 嗚呼やっぱり・・・もう私は弁慶さんの手の上で踊らされているのかな・・・ 「何にもしませんよ。今は共に椿の湯を堪能しましょう・・・」 「・・・」 この笑い方は信用できない。 でも・・・ お湯と椿の花の香りで・・・私の羞恥心も 和んでしまう・・・ 透明の湯船に・・・ 白い花びらが浮いている・・・ 格子戸から漏れる月明かりだけが・・・ 湯面に反射して・・・ 暫し湯殿は静寂につつまれる。 「・・・。君の背中をこうしてじっと見つめているのも・・・いいですね」 「・・・」 この情緒あふれた空気に酔っていたのに ”弁慶節”が再び再開。 「うなじが色っぽくて・・・細い首も・・・そそります」 「・・・(照)」 もう・・・好きな様に言ってください。 弁慶さんには適わないあきらめました・・・(汗) 「・・・鎖骨の赤い痕は・・・昨日僕が君につけた花だ・・・。 薄くなってるな・・・」 チャポ・・・ えっ 「きゃ・・・っ」 弁慶さんがわたしの腕を引き寄せた・・・ 「ちょ、ちょっと・・・!何もしないって・・・」 「ええ。でも君を引き寄せてはいけない・・・とは聞いてません」 「・・・そ、そんな・・・」 「・・・貴方が言う”変な”ことまで・・・はしませんから。 今はね(笑)ただこうして肌を肌を合わせるだけだから・・・」 「・・・っ」 私が感じるようにわざと耳元で喋って・・・ 「・・・君を・・・。この湯花と共に抱きしめて・・・。 月夜を楽しみましょう・・・」 「・・・ひっ」 弁慶さんが耳に軽くキスを・・・ 「・・・可愛い声。ふふ。湯からあがったらもっと聞かせてくださいね」 「・・・。観念しました。弁慶さん・・・」 「ふふ・・・」 弁慶さんが私の濡れ髪を なでてくれる・・・ 恥ずかしいけれど その手つきは優しくて・・・ 「・・・って弁慶さん・・・。どこ触ってるんですか(怒)」 「いやー。なんとも柔らかい”湯花”ですねぇ」 弁慶さんの手がいつのまにか胸元に・・・ ・・・ホントに弁慶さんには適わない。 でも・・・ そういう人を好きになったのは私。 恥ずかしさも恋の醍醐味。 そして今宵の醍醐味は・・・ 好きな人と見た月・・・ どんな月よりも綺麗だった・・・