狂気な心で愛して 「望美」 「え?」 洗濯物を干しているとき、弁慶さんに呼ばれて振り返ったら いきなり・・・ 「んっ・・・」 キスされてしまった。 「うぅんっ・・・」 両手の自由を奪われ、 縁側の廊下に押し倒される・・・ シュル・・・ 弁慶さんってば・・・そでに帯なんかほどいて・・・ ! 「ちょ・・・っちょっと・・・弁慶さん!何するんですか! いきなり・・・」 「いきなりじゃありませんよ。望美の背中が僕を誘ったんです」 「そ、そんなことあるわけ・・・っ。ん・・・っ」 私に喋らせないような激しい口付けを 繰り返す・・・ そして・・・ 「・・・僕を惑わせる望美が悪い・・・。観念してください・・・」 「・・・。観念させられてます・・・」 「ふふ・・・」 抱き上げられて・・・部屋の中に連れて行かれる・・・。 勝ち誇った微笑を浮かべて・・・ 私は弁慶さんの罠にはまっていく・・・ 私は弁慶さんの束縛が好きだ。 ・・・たとえ狂気な部分があったとしても・・・。 買出しの帰り弁慶さんと久しぶりに勝浦まで足を伸ばしてみた・・・。 「望美。別行動はいいですが、男の誘いには乗らないように」 「え?べ、弁慶さんこそ、綺麗な女の人にちょっかい出さないでくださいね」 「・・・ふふ。さぁ。それはどうかな・・・」 口ではそう言っていても 弁慶さんはまじめな人。 私のやきもちやいたところがみたいから言ってるだけ・・・ ・・・あれ。これって自惚れかな・・・? それから私は弁慶さんと別れてそれぞれに町を回った。 そこで・・・。 「よっ。龍神の神子さま、新婚元気かー?」 偶然、ヒノエ君にあった。 「ヒノエくん!」 「ふふ。久しぶりだな!オレの姫君」 チュっ ヒノエ君は私の手を取ってキスをした。 「わっな、なにすんの」 「オレの挨拶だよ。ふふ。初めて会ったときもそんな 驚いてたよな」 「んもー・・・。ヒノエ君は相変わらずだね」 久しぶりに会った仲間。 私とヒノエ君は茶屋で暫く話をした。 平家との戦い・・・ 八葉同士の出来事・・・ 思い出話はつきなくて私は時間を忘れていた。 「・・・望美・・・!」 弁慶さんが息を切らせて走ってきた。 「一体どこにいたんです!?僕がどれだけ心配したか・・・」 「ごめんなさい・・・!ヒノエ君と久しぶりに会って話が盛り上がって・・・」 「あ、悪いな。弁慶。お前の姫君を捕まえちまって」 「いえいえ・・・。ヒノエが相手なら仕方ない。 女子の扱いは僕より数段上ですから」 ・・・弁慶さんのこの微笑・・・。 なんだか裏がありそうでちょっと怖い・・・。 「さてと。もうすぐオレを迎えに船が来るんだ。じゃあな! お二人さん。今度会うときは・・・赤ん坊の顔を見せてくれ」 「ふふ。ご期待に添えるようがんばりましょう」 な、なんて会話してるの・・・! 私は一人、赤面してしまった・・・ 「くはは。初々しいねぇ。そういう望美はオレは好きだぜ」 「・・・僕もです」 ・・・この二人の饒舌には適わない・・・。 「じゃあなー!」 ヒノエ君はヒノエ君らしい余裕の笑顔で去っていった・・・。 「・・・ふふ。ヒノエ君・・・元気そうでよかった・・・。 ね、弁慶さん・・・」 「・・・。そうですね・・・。帰りますよ。望美」 (え・・・?) なんだか・・・。弁慶さんの様子が変・・・。 屋敷に帰っても黙ったまま俯いて・・・。 「ね、ねぇ弁慶さん。あの・・・。怒ってる・・・?」 「・・・違いますよ」 「じゃあ・・・」 「・・・今・・・。僕は狂ってます・・・」 え・・・ 「きゃあっ!!」 突然、弁慶さんは私の両手をつかんで壁に押し付けた・・・ 「べ、弁慶さ・・・。うっ・・・」 口は弁慶さんの手で塞がれて喋れなく・・・ 「・・・ヒノエと・・・楽しそうに話している姿をみた瞬間・・・。 僕は・・・恐ろしいほどの嫉妬に襲われましたよ・・・?」 い・・・。息ができない・・・。 弁慶さんの少し狂気に満ちた瞳が怖い・・・。 「・・・どうしたらいいんでしょう・・・?僕は・・・。本気で君に 狂っている・・・」 手が痛い・・・ 弁慶さん・・・。 「君にどうやったら・・・。僕の想いを伝えたらいいんだろうか・・・? 君の・・・体の隅から隅まで口付けようか・・・??それとも・・・」 シュル・・・ 弁慶さんは帯をほどいた・・・ 「それとも・・・。君と僕の愛で・・・新しい命を・・・宿そうか・・・?」 ・・・って・・・。 弁慶さん、私のお腹を撫でて・・・る! どういう意味って聞き返せない・・・ 「・・・ねぇ・・・。どうしてくれるんです・・・?この僕の・・・ 狂気な・・・。愛を・・・」 「・・・んぐ・・・っ」 弁慶さんは私の首筋に きついキス・・・ 「・・・僕の・・・命を君の中に宿してもいい・・・?」 ・・・!!な、なんて台詞を・・・!! 「い・・・いいかげんにしてください!!」 ドスン!! 私は思いっきり弁慶さんを突き飛ばした。 「・・・ハァハァ・・・。わ、悪ふざけしすぎです・・・っ!! 私のことなんだと思ってるんですか!!」 「・・・ふふ・・・。さぁ・・・僕にも分からない・・・。 ただ・・・。ヒノエと君の姿を見たら・・・我慢ができなかった・・・。 ごめん・・・。」 「・・・弁慶さん・・・」 し、しおらしい弁慶さんなんて・・・ なんか変だな・・・ 「・・・なーんてね。今の僕・・・怖かったですか?」 や、やっぱり!全部お芝居・・・! にやっといつもの意味深な微笑みの弁慶さんに戻った。 「もう!!本当にもう!!弁慶さん私を 困らせること、生き甲斐にしてません!?」 「ええ・・・。だって。愛しい人の怒った顔や困った顔を見ることで 僕は・・・愛を感じてしまうのですから。仕方ありません」 「・・・よくないですよ。もう・・・」 弁慶さんに背を向けて いじけるてみせる。 弁慶さんの束縛は嫌いじゃないけど 今日のはちょっと・・・。 「でも・・・。嫉妬したのは本当ですよ。望美・・・」 弁慶さんはせなかからふわっと私を抱きしめる・・・ 「弁慶さん・・・」 「・・・で。物は相談なのですが、今度ヒノエに会った時のために ”子作り”がんばりません?」 耳元で囁く弁慶さん・・・(汗) 「!!全然こりてないじゃないですか〜。弁慶さんったらもう〜!!」 嗚呼・・・。 弁慶さんのこの愛情表現ははたして”狂気”なのか”純粋”なのか・・・。 それでも 彼のそばにいたいと思う自分に私は改めて気づいた。 ねぇ・・・私のこの想いはどうやって・・・。 弁慶さんに伝えたらいいのかな・・・。 とりあえず・・・貴方の耳元で囁くね。 愛していますって・・・。