「神子・・・。じゃなかった。望美・・・」 「白龍・・・」 目覚めると、横に白龍がいて・・・。 私の鼻をくすぐる。 優しい眼差しを私にくれる・・・。 今でもこの人が異世界の・・・。それも”神様”だったなんて 信じられない・・・。 神様だった人が・・・。 私のそばにいてくれるなんて。 「今日はとってもいい天気だよ・・・」 「そうだね・・・」 白龍がこちらの世界に来てどれだけの時間が流れたかな。 私は両親はいなくて元々一人暮らしだったから・・・ 好きな人が側にいてくれる今がとても幸せなのだけど・・・。 「白龍。あの・・・」 「望美。もうすぐご飯、できるよ。待ってて」 流石元、神様だけあって、こちらの世界の物事にすっかりなじんで 料理までしちゃうくらいに器用で・・・。 「いただきます。白龍」 「はい、どうぞ」 私が美味しそうに食べる姿に白龍はこの上ない 嬉しそうな顔をする。 「すっごく美味しいよ!白龍」 「よかったぁ!私も嬉しい」 ・・・でも。普通、女の子が男の子に作ってあげるっていうのが 相場なんだけど・・・。 「白龍も食べなよ。はい。この玉子焼きは私が作ったの」 「うん」 子供みたいにぱくっと口に放り込んで・・・。 「おいしい・・・!神子の味がする・・・!神子の柔らかい肌の味がする!」 「・・・ぶっ・・・!」 私は思わず口から吹いてしまった。 白龍ってば・・・。思い切り爽やかな顔で爆弾発言するんだもの。 「神子・・・。あ、じゃなかった望美・・・。私、何か悪いこと、言ったか?」 「ううん・・・。べ、別に・・・。そ、それより白龍・・・私のこと、神子って読んでもいいんだよ。 言いやすい呼び方で・・・」 「でも・・・。貴方はもう神子ではないし・・・。私も神の力もない」 「・・・そうね。でも・・・。ずっと白龍は私の龍だよ。そして世界で一番・・・。大好きな人」 「神子・・・」 本当は私も。 神子って呼ばれるほうが・・・好き。 白龍と私の絆みたいで・・・。 「・・・神子・・・。私も・・・」 「って。あ、あの・・・。白龍ご飯中・・・」 白龍は問答無用で私の手を引き寄せ、すっぱりと抱きしめた。 「・・・神子・・・。私の神子・・・」 「・・・は、白龍、あ、あのだから朝ごはん・・・」 「・・・神子・・・。神子・・・。私の愛しい神子・・・」 やっぱり・・・弱いなぁ。 白龍に神子・・・と呼ばれて見つめられたらもう私は・・・ 体の力が抜けてしまう。 「・・・白龍・・・。朝ごはん・・・」 「神子・・・。」 パサ・・・。 食べかけの玉子焼きを残して・・・ 私は・・・ 白龍の腕の中に身を任せた・・・ 優しい言葉とは裏腹に力強い腕に抱かれてしまう。 私を愛してくれる白龍がいない世界なんて・・・ 私はもう考えられなかった・・・。 でも・・・。いいのかな。白龍の生き方を・・・。私のためだけに 在るなんて・・・。 白いシーツにくるまれ眠る白龍の横顔を見つめて・・・ 私は少し不安にかられていた・・・ 「・・・神子・・・。神子の肌は・・・とっても綺麗だ・・・」 「白龍・・・」 白龍の瞳の方が綺麗・・・。心が綺麗・・・ 「何・・・?神子」 「・・・お散歩、行こうか?」 「お散歩?」 「・・・外、歩こう・・・」 私と白龍は近所の神社に散歩に出た。 赤い鳥居をくぐって・・・境内へ・・・。 こういう場所に来ると思い出す・・・。 あの世界での戦の日々を・・・。 「白龍・・・」 白龍は社をじっと、懐かしいような穏やかな表情を浮かべて眺めている・・・。 神社の神聖な空気はきっと・・・ 白龍にとっても心地いいのかもしれない・・・。 やっぱり神様・・・だったから、かな・・・ 「白龍。お願い事、しようか」 「願い事・・・?」 「そ!ここの神様はね、縁結び神様なんだよ」 私は白龍の手をひっぱって、お賽銭箱まで連れてきた。 そしてお財布から100円玉を2枚とりだして、一枚、白龍に渡した。 「あのね、これをその箱にいれるの・・・。 そして、この鈴を鳴らして・・・。手を合わせてお願い事をするの。白龍も 何か、お願い事、してみて」 「え?でも私は・・・」 「いくよ。えいっ」 チャリン! 私はお賽銭箱に100円玉を放った。 そして鈴をならして・・・。 手を合わせた・・・。 「・・・」 白龍も目を閉じて何かを・・・願ってる。 『神子・・・。あなたの願いを教えて。貴方の願いは私の願いだから・・・』 白龍はそう前に言ってくれたけど・・・。 白龍は白龍の心があるはず・・・。私だけのための願いであってはいけないんじゃないかな・・・。 「望美・・・。聞いてもいい?」 「うん」 「・・・何を願ったの・・・?」 私達は神社の境内の階段に座って 話す・・・。 少し冷えてきたのか小雪が降ってきた・・・。 「私はね・・・。勿論。白龍と一緒にいられますようにって・・・お願いしたよ」 白龍はにこっと笑って私の肩を引き寄せた。 「・・・そんなの・・・。”神様”にお願いしなくても・・・。 私が叶えてあげるよ・・・」 「うん・・・。でもね。白龍・・・。白龍は白龍の個人の心・・・大切にしなきゃ いけないよ」 「・・・コジン・・・?分からない・・・。私は神子、いや望美のために生きている。 そして存在している・・・。それ以外の意味はないよ・・・?」 「私のために生きる、じゃなくて、自分のために、”生きる”・・・意味、わかるかな・・・?」 「・・・わからない・・・。分からないけれど・・・。神子は私がそばにいると迷惑・・・?」 ・・・嗚呼。白龍。なんて哀しそうな顔をするの・・・。 私は・・・。 私は・・・。 私・・・。そう。私はどうしたいの・・・? 白龍が私のために生きるというなら・・・。 私も彼のために・・・ 「迷惑なわけないよ・・・。白龍は・・・。私には勿体無いくらいの素敵な 人だもの・・・」 「神子・・・」 「だからね・・・。私・・・。私も。もっと素敵な人間にならなって・・・。 白龍の願いを叶えたい。守りたい・・・」 「・・・神子・・・っ」 「・・・んっ・・・」 は、白龍ってば、突然、キスを・・・。 「ちょ・・・。ちょっとあの、白龍、ここ、神様の前だよ・・・」 「神子があんまり嬉しいことを言うから・・・。じゃあ早くうちに帰ろう」 「えっ!?」 白龍は私をひょいっとお姫様抱っこして階段を降りていく。 「は、白龍・・・っ」 「うちに帰って・・・。もっともっと”楽しいこと”しよう・・・。神子」 「///。う、うん・・・」 私のいとしの神様は・・・。 最近少し大人な発言が多いです。 やっぱり・・・離れられない。 ・・・もし、恋の神様がいるなら聞いて。 私は精一杯白龍を幸せにするから・・・。 ずっとずっと一緒にいさせてください・・・、 ずっとずっと・・・。