素足の女神 今日は久しぶりに休みがとれたから。望美と白龍は 海に遊びに来ていた。 「久しぶり・・・。鎌倉の海・・・」 懐かしい鎌倉の海・・・ 源平合戦の時、立ち寄った海を白龍も望美も思い浮かべる。 「・・・ここには・・・怨霊も平家も戦も・・・。何もないんだね・・・」 「うん・・・」 穏やかな海。 こうして静かに二人だけの生活を営んでいるなんて嘘みたいだ・・・。 「はい、白龍。お茶」 「ありがとう」 水筒のコップに注いで白龍に手渡す。 「・・・。白龍、大分この世界に慣れたね・・・」 「うん。望美と一緒に居られるならどんなことも 頑張りたい」 「ありがとう。白龍・・・」 白龍に肩を引き寄せられる・・・ (・・・未だに・・・。時々・・・不思議に思う) 人間離れした端正な姿・・・ ”元・龍神だった”風格が今でも漂っている。 「・・・どうしたの?私の顔に何か・・・ついてる?」 「え、ううん・・・」 (・・・私だけの龍神・・・でいいのかな・・・) 白龍には白龍の生き方があるんじゃないかって 時々感じる・・・。 静かに海を眺めていた二人に、若い女の子が2人近寄ってきた。 「あ、もしかして、モデルの”白龍”さんですか!?」 「え。あ、そ、そうだけど・・・」 「きゃああvやっぱりー。私達ファンなんですー」 きゃぴきゃぴとはしゃぐ女の子たちに少し望美は圧倒される。 「あ、握手してください」 女の子達が片手を差し出すが・・・ 白龍は首を横にふった。 「ごめんなさい。私は好きな人の手以外は握らない・・・」 (白龍・・・) 「ごめんなさい。本当に・・・」 白龍は丁寧に頭を下げて謝る。 女の子達は逆に恐縮がって会釈して立ち去って行った・・・。 「白龍・・・。よかったの・・・?」 「うん。いい加減な態度はとりたくないんだ」 「白龍・・・」 まっすぐな白龍の気持ち・・・ それはとても嬉しいけれど、その想いが 白龍にとってマイナスになるのではと今の出来事で望美は少し感じた・・・。 「・・・望美?」 「・・・白龍・・・。海、はいろうか」 「え?」 望美は立ち上がり、白いヒールを脱いで裸足になった。 「あ、望美まってよー!」 白龍もスニーカーを脱ぎ、波打ち際に走る。 「きゃー。冷たい!」 波に素足をつけてはしゃぐ。 「うふふ。きもちいーね!白龍!」 「うん」 「うふふ・・・」 波打ち際ではしゃぐ望美・・・ 白いワンピースが翻り 長い髪が海風になびく・・・ 「・・・。望美・・・。綺麗だよ」 「えっ・・・」 突然の言葉に・・・ 望美の頬が染まる。 「笑ってる・・・望美が大好きだ」 「も・・・もう。白龍ったら突然びっくりすちゃったよ・・・。う、 嬉しいけど・・・///」 「だって・・・。笑ってる望美を見ていたら・・・。 胸が熱くなって・・・大好き・・・って言いたくてたまらなかった・・・」 (・・・っ) 素足に感じる波は冷たいはずなのに・・・ 頬は熱くて・・・ 「・・・も、もう〜!!白龍ったら照れくさいことばっかり言って! おしおきよ!えいっ」 バシャ!! 望美は白龍に向かって思い切り海水をかけた。 「やったなぁ!望美!えい!!」 白龍も負けずに応戦。 「ははは・・・!望美、びしょぬれ!」 「んも〜!!きゃッ!」 バッシャーン! 望美はバランスを崩して倒れた。 「望美!大丈夫!?」 白龍は望美に駆け寄る。 「うん。ここ浅瀬だから・・・。あーあ・・・びしょぬれ・・・」 望美はワンピースのすそをぎゅっと搾る。 白龍は自分のジャケットを望美にふわっと着せた。 「・・・私の大事な望美の体・・・。冷えちゃいけないね」 (望美の体って・・・///) ザザン・・・ 波打ち際で・・・ 見詰め合う二人・・・ 「・・・。望美は・・・私にとって・・・。女神だよ・・・ 誰より綺麗な・・・」 「・・・ほめ過ぎだってば・・・(照)」 「誉めすぎなんかじゃ・・・」 白龍は望美を引き寄せて・・・ 「濡れた髪も・・・唇も・・・。みんな・・・ 愛してる・・・」 呟いた順番に・・・ 親指でなぞっていく・・・ 「・・・大切な私の・・・望美・・・。愛しくない部分なんて ないよ・・・」 「・・・は、白龍ったら・・・。あんまりドキドキさせること言わないで」 「・・・水に濡れた女神・・・。私だけの・・・神子・・・」 瞬きもせず・・・望美だけをまっすぐ見つめて・・・ (・・・嗚呼・・・駄目だわ・・・。白龍の”スイッチ”はいっちゃってる・・・) 白龍の・・・ 純真無垢な愛の伝達はどんなに照れても戸惑っても とめられない。 「・・・望美・・・」 (はぅぅ・・・。そんな腰が砕けるような甘い声ださないでったら・・・) 「・・・私の・・・望美・・・。ねぇ・・・。抱きしめたいんだけど・・・いい・・・?」 「・・・うん・・・」 望美の了承を得ると白龍はにこっと嬉しそうに笑い、 望美の体をぎゅうっと包んだ。 自分をいたわるような でも決して離してはくれない・・・心地よさ・・・ (白龍ってば・・・。ハグ・・・いつのまにこんなに上手に・・・(ドキドキ)) 「・・・大好き・・・。このまま・・・海に二人で溶けたいほどに・・・」 (・・・。白龍が言うと・・・ぐっとくるんだよね・・・(照)) 「は、はくしゅんッ」 「いけない・・・。望美が風邪引いちゃう」 白龍は望美をお姫さまだっこして海から出た。 「早く帰ろう・・・かえってあったまらなくちゃ」 「あ、あったまらなくちゃって・・・」 ニッっと少し意地悪に笑う白龍。 そして耳元で囁いた・・・ ”海の風と匂いがしみ込んだ望美を・・・。私が温めてあげるから・・・” (!?) 「・・・。ホテル、予約いれておいたから。ふふ。行こう」 (は、白龍!?よ、予約って。何時の間にそんな 芸当が・・・っていうか、もしかして最初から・・・) 「ふふふ・・・」 (な、なんだか白龍・・・しらない間に大人になった気が・・・(汗)) 異国では万物の力を支配する龍神だったけど・・・ 今はたった一人、好きな人と一緒にいたいと願うただの男。 願うだけでは抑えられないほどの想いの強さが 大人の大人にさせていく。 「望美・・・愛してる・・・」 「・・・もう・・・。分かってるから・・・(照)あ、甘い声で囁かないで・・・」 素足の女神を抱いて 砂浜を長身が歩く・・・ 濡れた体も冷たさを忘れるくらいに・・・ 熱かった・・・