たった一つだけの花 望美と白龍は買い物の帰り、花屋に立ち寄った。 「綺麗ね〜」 「・・・ああ」 はしゃぐ望美に対して白龍はどこか不満そうな顔だ。 「どうしたの?お花、嫌い?」 「いや、そうじゃないけど・・・。ここに咲いている花たち がなんだか・・・不自然ようなきがして」 「不自然?」 「・・・ばっさり切られたり・・・。人間のお金もうけに なっているなんて・・・」 (白龍) 元は神。 自然の理を何よりも重んじる神だった。 人間の都合で生かされる花たちに違和感を感じることは 当然だと望美はおもった。 「じゃああそこいこ!白龍!」 「え?」 望美は白龍の手をひっぱってつれて来た場所。 そこは・・・。 「わ・・・」 白龍は息を飲んだ。 大きな杉の木が丘に悠然と空に向かってはえていた。 「どう・・・?ここなら・・・。花や植物達は自由に 生きている場所って思ったの」 「うん。感じるよ。植物達の息吹を・・・」 白龍は目を閉じて 深呼吸した・・・。 サラッと空色の白龍の長髪が靡く・・・。 (・・・今でも・・・神様みたい・・・) 人離れした様相。 望美はいまだに白龍が自分だけの恋人になってくれた ことを信じらない気がした・・・。 「・・・ん?どうかしたの?」 「ううん。やっぱり白龍は・・・。素敵だなぁって思って」 「そんなこと・・・。望美はもっと素敵だよ。私をこんなに 夢中にさせる」 「・・・あ、ありがとう・・・」 限りなく優しい眼差しで見詰め返してくれる。 それが有り難くて でも少しだけ切なくて・・・。 (ごめんね。花や木達・・・。白龍のこと、独り占めして・・・) そう何度も心の中で呟く。 「あ・・・。樹が・・・何かを伝えている」 「え・・・?」 杉の樹が ざわざわとゆれる。 「・・・。意味は分からないけれど・・・。 望美に”いいよ”って言ってる気がする・・・」 「ほんと・・・?」 「うん・・・。望美・・・。何かお願い事したんだね・・・。 この世界の樹木や花達も・・・。神子の貴方を受け入れているんだ・・・」 「うん・・・」 そっと 優しいかぜのように 望美を抱きしめる・・・。 「・・・でも私は・・・。望美に受け入れて欲しい・・・。 貴方への愛は尽きることがないから・・・」 「白龍・・・」 「花や樹木に嫉妬するほどに・・・」 望美の温もりを ぎゅっと抱きしめて確かめる。 「貴方は私の永遠に焦がれる花・・・。ずっと 私の腕の中で咲いていて・・・」 「うん・・・」 神様のように不思議な恋人。 でも・・・。 (確かに私の愛する人・・・たった一人の・・・) 杉の木のざわめきがおさまっていく。 まるで抱き合う二人を包み込むように。 青空の下 ずっとずっと お互いの温もりを確認しあう二人だった・・・。 < /DIV>