嫉妬のあとに・・・


コンビニの雑誌コーナー。


メンズのファッション雑誌に
白龍の写真が何冊も映っている。



「きゃー☆白龍今月もいけてるー☆」


女子高生達が雑誌を手にしてきゃっきゃと笑っている。



その横を望美が通り過ぎていく。



(白龍も・・・すっかり有名人よね)



元は異世界の神だったなんて


誰も信じないだろう。




(嬉しいような・・・なんだか遠い人になったみたいで
寂しし様な)



微妙な気持ち。



(でも・・・応援してあげないとね。白龍が楽しんで
やってる仕事なら・・・)



今日は白龍が撮影から帰って来る日。



望美は白龍がダイスキなホットケーキを作ってまとうと
材料を揃えて帰る。




すると・・・




「あ・・・」



玄関に白龍の靴。




ドタドタドタ・・・





「望美・・・!!」




白龍が待っていましたよといわんばかりに望美にハグ・・・




「は、白龍・・・」




「嗚呼。望美・・・。五日も会えなくて寂しくて死にそうだった・・・」



「うふふ。私もよ・・・」



「望美・・・」


ぎゅううう。



白龍の大きくて広い両手は望美の体を隠すほどに



包み込んで・・・




そんな二人の様子を呆れ顔で見ているのは


白龍のマネージャーの由紀。




「・・・あの・・・。お取り込み中ごめんなさい。
今度の予定を確認したいんだけど」




「あ、ご、ごめんなさい」



ぱっと白龍の腕から離れる望美。



「由紀さん。仕事は終わったよ?私はもう望美と離れたくない」




「わがままいわないの・・・。ねぇ白龍。
もっといっぱいお金を稼いだら望美さんだって喜ぶのよ」



「え・・・」




なんとも悩ましげに、でも挑発的に望美に視線を送る由紀。




「わ、私、お金なんて・・・!」



「ふふ。いーのよ。謙遜しなくても。白龍にコイビトぐらい
いたってどうってことない。生活が良くなるだけだもの」



「だからお金なんて・・・!」




言い合ってにらみ合う二人。



「もういいよ。望美。喧嘩はやめて」




「白龍・・・」




「由紀さん。私・・・仕事頑張ります。だから
望美をいじめないで」




「いいこね・・・それでいいの。ふふじゃあ明日の朝。
また迎えに来るわね」



チュ!



赤いハイヒール。爪先で立って白龍の頬にキスをした。



(!!)




「じゃあね!」




最後に望美に挑戦的な微笑をおくって由紀は出て行った・・・。





(あの人・・・白龍のこと・・・好きなんだ)





女の嫉妬は怖い。



あからさまに攻撃を仕掛けてくる。




「・・・望美ごめんね・・・。やっと帰ってこれたのに・・・」



「・・・」



「望美・・・?怒ってる・・・?」



「怒ってない・・・よ」



けれど今は白龍の顔が見られない・・・



他の女にキスされた白龍なんて・・・




「嘘!顔がおこってるよ!ごめんなさい!望美」




「・・・怒ってないったら!」



パン!



白龍の手をはらってしまった・・・





「望・・・美・・・」




今にも・・・



泣きそうな顔の白龍・・・





「・・・ごめん。白龍・・・。少し一人にして・・・」



パタン!



寝室にこもってしまう。



(どうしよう!どうしよう!望美に嫌われた・・・!!)



ぺたりと座り込む白龍。




オロオロして



寝室のドアの前でうなだれる







「望美・・・!望美!ごめんなさい。ごめんなさい
私が悪い・・・ごめんなさい」





(お願い。少しそっとしておいて!今の私は
嫌な顔してる)



嫉妬してる顔なんて見せたくない・・・。




「望美・・・望美・・・お願い・・・許して・・・」




望美は1時間たっても出てこず・・・




(どうしよう・・・。望美に嫌われた・・・。
体に力が入らないよ・・・)


「望美・・・っのぞみ・・・っのぞ・・・み・・・ひっく・・・」





白龍の声が震えだし・・・とうとう泣いてしまった・・・




(白龍・・・)




「ごめんなさい・・・。望美・・・。でもね・・・望美・・・
お金がほしかったんだ・・・」




(え?)





「・・・もうすぐ・・・望美が誕生日だから・・・。
プレゼントしたくて・・・。ひっく」



鼻をすすりながら話す白龍。





「由紀さんに相談したら・・・沢山仕事すれば
素敵な贈り物が出来るって言ったから・・・。でも
間違いだった・・・ごめんなさい。望美・・・」






白龍が此処最近仕事に打ち込んでいたのは




望美へのプレゼントのためだった・・・




(白龍・・・)





「ぐす・・・っ。望美・・・。お願い・・・。何度でも謝るよ・・・。
だから・・・許して・・・。私の顔を見て・・・お願いだ・・・望美・・・っ」





ガチャ・・・





ゆっくりと扉が開く・・・





「望美・・・!」




「・・・。んもう・・・。泣き虫ね・・・」



「望美・・・っ」




涙で濡れる白龍の瞳をそっとハンカチでふく望美・・・




「いい男が・・・泣かないの。色男が台無しよ?」



「だって・・・だって・・・。望美に嫌われたと思ったら・・・
哀しくて・・・哀しくて・・・」




「白龍ったら・・・。嫌うわけ・・・ないでしょ・・・?」



「ホント・・・?」




小さい少年の瞳



上目遣いで涙を滲ませて望美を見上げる・・・




(こんな瞳されたら・・・。嫉妬心なんて飛んでちゃった)




そっと白龍を抱きしめる・・・




「私こそ・・・。白龍に嫌われないかって心配しちゃった」



「え?」



「・・・仕事の方がすきなのかなって・・・。ふふ」



「そんなこと・・・あるわけないよ・・・。私が一番好きなのは・・・
望美だけ・・・」




望美の胸に



練りこむように頬をこすりつける・・・





「・・・望美・・・。ほんとにほんとに
もう・・・怒ってない・・・?」



「怒ってない」




「よかった・・・。じゃあ・・・。いいよね」




(えっ)





ひょいっと望美をお姫様だっこする白龍・・・




「は、白龍!?」



「・・・望美・・・。私は・・・本当に怖かったんだよ・・・?
望美に・・・嫌われたら・・・。生きていけない・・・」




(い、言ってることとやってることが違う(汗))




パサ・・・



ベットに望美を寝かせる・・・




「・・・望美を・・・愛したい・・・」




「ちょ・・・は、白龍・・・」




(さっきのあのベビーフェイスはなんだったの(汗))



白龍のペースで既に望美の後ろで束ねていた髪を解いて・・・





「・・・5日間・・・。辛かった・・・。本当に・・・。望美に会えない時間が・・・」




「そんなの・・・私だって同じよ・・・」




「・・・ごめん。望美・・・。いい贈り物できないかも・・・。
だってだって・・・これ以上・・・仕事でも離れていられないよ・・・」




「白龍・・・いいの・・・。白龍さえいてくれたら・・・私は
それが一番ほしい・・・」






「望美・・・ッ!!」




ギシッ・・・




望美に覆いかぶさって、口を塞ぐ・・・




激しいキス・・・。





泣き虫白龍から・・・



生身の男に変わる・・・



愛しいぬくもりを目の前に




手に入れたいという感情を解放させる・・・







「・・・24時間・・・愛してる・・・!愛してる!」





ギシ・・・ッ



ギシッ




ベットの軋む音と一緒に



白龍の愛の言霊が部屋に響く・・・





5日あえなかったら


5日分の愛を



望美に注ぎ続ける・・・







PPPP!





『只今、電源が入っていないため、かかりません』



「何よ!!もう!」



由紀が白龍の携帯に何度もかけたが・・・。


白龍の携帯は・・・水の中。



水槽の奥深くに沈んで・・・。




水槽の硝子には激しくうごめく二人の影が


映って揺れていた・・・。