泣かないで、私の神子 (・・・激しい雨ね・・・) 窓の外の激しい雨。 掃除機のスイッチをきって望美はテレビをつけた。 白龍の撮影先。 深い山間だと聞いていた。 (白龍の撮影先って・・・大丈夫かな) 天気予報を見ようとテレビのチャンネルとつけた。 すると丁度臨時ニュース速報のテロップが流れた。 『○○海岸道路が土砂崩れ。何台かの車が埋もれた模様』 「えっ・・・」 嫌な予感ほど的中する。 PPPPP! 「!!」 PPPPP!! 電話が鳴る・・・。 (・・・いや・・・出たくない・・・) PPPPPPP!!! 望美を呼ぶように 出てくれと叫ぶように 「・・・。も・・・もしもし・・・?」 望美は手を震わせて受話器をとった・・・。 相手は・・・。 「・・・望美?」 受話器から聞こえる 優しい声。 (・・・白龍・・・!!) 間違いない・・・ 白龍の声だ・・・。 「・・・白龍・・・ッ」 「ど、どうしたの・・・?そんなに哀しそうな声で・・・」 ”撮影が終わったらすぐ帰って来るから・・・” 「白龍・・・。本当に白龍ね・・・?」 「そうだよ・・・?望美・・・?」 「よかった・・・。本当によかった・・・」 恋は ちょっとした不安を煽り立てる。 「・・・テレビで・・・。白龍の撮影場所が・・・ 通行止めって聞いて・・・。不安になったの・・・」 「そうだったのか・・・。ごめん・・・。連絡遅れて・・・」 「ううん・・・いいの・・・。白龍が無事だったなら・・・」 「望美・・・」 望美の心配そうな声・・・ (嗚呼・・・。早く帰えりたい。望美の腕の中に・・・) 「・・・神の力が今だけ戻ればいいのに」 「え?」 「だって・・・。すぐ望美の元へ帰れるから・・・」 「白龍・・・」 声だけじゃ 声だけじゃ ・・・会いたい想いは抑えられない。 「・・・じゃあ早く帰って来て・・・。待ってるから・・・」 「うん・・・。すぐ帰る・・・帰って一万回でも ”愛してる”っていうから・・・」 「・・・うん・・・。待ってる・・・」 望美と白龍は受話器にキス・・・。 しずかに受話器を置く望美・・・。 「・・・雨が止んだら・・・帰って来てね・・・」 激しく降る雨に 望美は呟く・・・ 二人を遮る雨が虹に変わるように・・・