世界で一番優しい風 神神しい神の世界より か弱き命 人。 されど その魂の深さ、尊さに勝るもなど どの世界にもない。 心と心の通わる喜びを 自分の想いを注いで 貴方が応えてくれる この嬉しさを 教えてくれた貴方がいる世界。 それがオレの・・・ ・・・生きていく世界。 生きたい世界なんだ・・・。 ※ 「・・・風早」 「どうしたんです?元気が無いですね」 一人、村の祭りを抜け出して星を見上げていた千尋。 すぐに風早は追いかけてきた。 千尋の心の動きに無意識に反応する。 (千尋が元気が無い) 「私・・・。王になるって・・・みんな言ってるけれど・・・ 私・・・。なんだか自信がなくて・・・」 「・・・。最初から自信がある者などどこにもいません」 「・・・。でも・・・」 俯いて顔をあげない千尋。 幼い頃の記憶が突然戻り、そして次は国の王になれ・・・などという あまりにも、少女の肩には大きくそして辛い試練。 迷わない方がおかしい。 だが・・・。 (ヒトが・・・迷い、成長することを教えてくれたのは・・・ 貴方だ) 「迷いましょう。思う存分・・・こうやって・・・ね」 「え・・・」 風早はごろんと草むらに体を寝かせ、大の字になった。 「のんびり、ゆっくり迷いましょう。おもいーーーきり・・・ね」 。案外答えが近くにあるかもしれないし・・・」 「風早・・・」 「きもちいーですよ。千尋。ほら、 可愛い花も咲いている」 ゆっくりと千尋は腰を下ろした。 サラっと栗色の髪が流れる・・・。 薄い桃色の小花。 そっと横髪を耳にかけ、花を添える。 「・・・。蒼い花に薄紅色の花・・・。 千尋の髪に良く似合う」 「・・・そ、そうかな」 「千尋の髪を梳かして何年。千尋の髪のことなら オレが世界で一番よく知ってますから」 「・・・な、なんか照れくさいな・・・」 「照れくさがると髪を掻き分け方も知ってますよ。 最近はすごく女性らしい仕草になりましたね」 「・・・んもう!言いすぎ・・・///」 「ふふふ・・・」 たわいの無い 照れくさい 会話。 そこには風早のさわやかでやわらかい風のような 優しさが溢れている。 (やっぱり風早には・・・叶わないなぁ・・・) 当たり前にその優しい風を 期待して待っている自分がいる。 「千尋」 「ん?」 「・・・何があってもどんなことがあっても オレは貴方の味方です。それだけは・・・変わりません」 「風早・・・」 「だから・・・。オレの前では・・・ ありのままの千尋でいてください」 優しいまなざしのなかに 真剣な想いが伝わってくる・・・。 「ありがとう・・・。なんか・・・申し訳ない くらいに・・・」 「千尋・・・」 (突き放されたようで・・・。千尋と心の距離ができるようで・・・) いつだって繋がっていたい。 他の誰かに支える役目を渡したくない。 (オレのわがまま・・・けれど譲れない) 「申し訳ないだなんて言わないで・・・切なくなる・・・」 (・・・風早・・・なんて・・・切ない声・・・淋しげな・・・瞳) 「・・・だって・・・。 貴方の支えになることが・・・オレの幸せだから・・・」 「風早・・・」 「・・・。って・・・今のは気障だったかな・・・。はは・・・。親心って やつですかね」 照れくさそうに髪をかきあげる風早。 ”親”という言葉に 千尋の心は妙な痛みが走った。 「親心って・・・。風早は”親”じゃないよ。優しくて・・・。 いつも甘えさせてくれて・・・。世界で一番・・・優しい風・・・っていうか・・・」 「世界で一番・・・?」 「・・・優しい風かな・・・。そう・・・。心地よくて・・・。 安心できて・・・。とても大切な風・・・かな」 風早の笑顔が千尋の心に 走馬灯のように思い出される。 いつも自分を励ましてきてくれた笑顔・・・。 「ありがとうございます。光栄だな。”家族”としては 優しいのは千尋の方ですよ。上手にオレなんかを褒めてくれて・・・」 「そんな・・・。ただの家族じゃないよ! 私にとって風早は・・・風・・・早・・・は・・・私の好きな・・・」 「好きな・・・?」 「す・・・っ」 (わ、わ、私・・・) 「・・・」 風早の鼓動が早くなる。 千尋の言葉が早く聞きたい。 続きが聞きたい・・・と・・・。 (・・・。何を・・・言おうと・・・私・・・) 見詰め合う二人・・・。 今までなかった緊張感が・・・ 漂う・・・。 「すっ・・・すすすす、”数学を上手に教えてくれる人”だよ・・・」 千尋は思わず風早から視線を逸らした。 「・・・。す、数学ですか。確かに教師でしたけど・・・。ふふ。 そうですか数学を教えてくれる人・・・ですか。ふふ」 「・・・そ、そうだよっ。な、何笑ってるのっ。もうっ」 頬を染めて照れる千尋が 千尋の笑顔が愛しい・・・。 不器用な笑顔が・・・。 「千尋」 「なに?」 「”好きな人”が出来たらちゃんと オレに『報告』してくださいね。オレは”教師”なんだから」 「・・・んもうっ。意地悪なんだから!」 「ふふふ・・・」 拗ねる顔も 照れる仕草も 子供の頃から変わっていない (ずっと・・・貴方の側にいます・・・) そう心に誓う。 そして千尋も・・・。 (風早は私にとって・・・。世界で一番優しい風・・・そして・・・) ”好きな男性(ヒト)” いつか 想い告げられるその日まで。 もう少し 優しい風を 吹かせていたい。 草むらに寝転がる二人の手と手が 自然と・・・ 繋いでいた・・・。 想いを伝え合うように・・・。