伝え合う熱
ヒノエは海の男。 することも考えることも豪快だ。 望美とヒノエは勝浦の海岸に握り飯を持って釣りに来ていた。 激しい岩場で細い釣り糸をたらす。 「なかなか釣れないね・・・」 海面を身を乗り出して覗く望美。 「ふっ・・・。オレはお前っていう乙姫を釣ったけどね・・・」 「もう・・・。相変わらず口が上手いんだから・・・。ねぇ。 私、もっと浅瀬の方、行ってみたいな」 という訳で二人は岩場を降りて、浅瀬へ。 「気持ちいーねー・・・」 足の踝(くるぶし)ほどの深さ。底は白い砂でサラサラしていた。 「あ・・・。可愛いカニ・・・」 望美は着物の裾をまくりあげてしゃがみ、小さなカニを手のひらに乗せる。 「・・・本当にオレの姫君は面白いな。普通、女は綺麗な貝とか 探すんじゃないか?」 「え?そう?」 「ふふ・・・」 夢中でカニとにらめっこする望美にヒノエの心は目が離せない。 ヒノエは色んな女を見てきた 可愛いだけの女 男に縋る女 (オレの姫君は・・・。どんな女かまだわからない) 「きゃあああ!」 バッシャーン! 足を滑らせてびしょ濡れの望美・・・。 「大ジョブか!?」 「えへへへ・・・ごめん。ドジっちゃった・・・」 ヒノエはぐいっと望美を引き上げる。 「全く・・・。オレの姫君は本当に予想がつかねぇな・・・」 「面白い形の魚がいたから・・・。痛・・・」 膝小僧がすりむけ少し血がでている・・・ 「しょうがねぇな。お転婆姫君・・・」 「えっ」 ヒノエはひょいっと望美を軽々とお姫様だっこして浅瀬から上がる。 「ヒノエ君、一人で歩けるよ」 「怪我してる姫を歩かせるわけにはいかないね。ふふ・・・」 なにやら悪戯っぽく笑いながらヒノエは浜辺の漁師小屋に望美を連れ、入った。 「・・・あ、あの。ヒノエ君・・・?怪我の手当てするだけなのに 何故こんな人気の無いところへ・・・(汗)」 「オレの奥方の素足を誰かに見られちゃ我慢ならねぇんでね・・・。ふふ」 (ヒノエくん・・・。何か企んでる(汗)) 「どれ・・・足見せてみな・・・」 ヒノエは涼しい顔でぺろんと望美着物の裾を捲りあげた。 (わ・・・) 「・・・これくらいの事で頬を染めるなんて・・・。初ねぇ。オレの 奥方も・・・。ふっ」 「もう!か、からかわないで」 「足どこか、お前の体の隅から隅までオレは・・・」 「あー!もういいから!」 耳の先まで真っ赤にする望美ににやりと含み笑い。 (もう・・・いつもヒノエ君ペースになってしまう・・・。でも・・・) 「傷は深くはねぇ。血が止まれば大丈夫だろう」 自分の着物をビリッと引きちぎり、傷口にぐるぐる巻く・・・ ナンパな言葉とは裏腹に・・・。 慣れた手つきに男らしさを感じてしまう。 本当は誰より他人を重んじ、 仲間を想い、正義感に満ち溢れた誠実だということを望美は知っていたから・・・ 「・・・おい。奥方。あんまり見つめるなよ?誘ってると思うだろ?」 「なっ・・・」 「ふふ。怪我してなかったらここで”一汗”かきたかったのに・・・」 「ひ、一汗って・・・」 ヒノエは望美を膝の上に乗せ耳元で囁く・・・ 「・・・体冷えてるな・・・。オレがアッタメテヤル・・・」 「・・・ひ、ヒノエくん・・・っ」 「オレのお前への熱い想いで・・・な・・・」 耳の裏に軽くキス・・・ ヒノエは本当に自分の体で望美を覆うように 抱きしめる・・・。 「お前の体は・・・。抱き心地がいいな・・・。癖になりそうだ・・・」 「もう・・・」 「お?また熱くなったぞ・・・。ふっ・・・」 濡れた襦袢は望美の肌を露出させ熱も・・・ でも一番あつくなる言葉は・・・一つだけ・・・ 「望美・・・。愛してるぜ・・・」 「・・・私も・・・」 心も体も熱くなるのは互いへの想い。 伝え合おう。 体から・・・ そして心から・・・。