幸せ花火
「望美ったらそんなにまた動き回って・・・!」 ホウキで庭の落ち葉をはいていた望美から 慌てて景時がホウキを取り上げる。 「少しぐらい動きいていたほうが胎教にもいいって・・・」 「あのねぇ・・・。もし、転んだりしたらどうするんだい!? ほんっとに君は目が離せないひとだなぁ」 「・・・景時さんが心配性なだけですよ。大丈夫です」 望美はしょっと意地になってホウキを奪い返す。 「大丈夫じゃない。君はゆっくり休んでて!」 紅葉の木の下でホウキのとりあいっこ・・・。 「・・・休んでって・・・。何もすることがなくちゃ 気持ちが篭って体に余計、悪いですよ」 「・・・。よし!わかった!待ってて!俺、何か楽しいこと考える・・・!」 景時はホウキを望美に返して、どこかへ消えた。 (ふふ。これで静かにお掃除できる・・・) 数分後。 「望美ー!ちょっとおいでよ!」 縁側に座って、望美を手招きする景時。 「何ですか?」 「ちょっと季節は違うけど・・・ふふ。これさ」 景時が懐から出したのは・・・ 紙が巻かれた棒状の品物。 (あ・・・。これ・・・) 「望美の世界の花火のことを聞いて・・・。オレが作ってみたんだ。 って火、つけてみないとわからないよね」 景時はそういって石を摺って、火をつけた。 「わぁ・・・」 紅葉色の橙の色合いの花火。 シャワーのように噴出す。 「どうかな・・・。望美の世界の花火に似てる・・・?」 「はい!一緒です。ううん。景時さんの花火のほうが断然綺麗・・・!」 望美は満面の笑みで花火を見つめる。 花火一つで、太陽のような温もりを秘めた笑顔に変わる。 (それがオレにも伝わってくる・・・) 一番、幸せだと感じる瞬間。 「あーあ・・・。もう終わっちゃった・・・。 とっても綺麗だった・・・」 「・・・。でも君はもっと綺麗だよ」 CHU! 頬に軽くキス。 「なっ・・・。と、突然・・・っ」 「ふははは。初々しいなぁ。コレくらいで・・・。」 「は、恥ずかしいものははずかしいんです!もうっ」 望美は頬を膨らませてぷいっとそっぽを向いた。 そんな望美も可愛いと思う景時。 「でもねぇ”恥ずかしいこと”をして、愛の結晶を授かったというのに」 「景時さんッ!!もう〜!!」 「ふははは。ごめんごめん・・・。ったく君は本当にかわいいなぁー・・・」 「きゃ・・・」 望美をひょいっと抱き上げ、自分の膝に座らせる・・・。 「・・・。可愛いから・・・。もっと君を感じたいと思う・・・。 君の笑顔がそうさせるんだ・・・」 「・・・景時さん・・・」 景時は望美の顔を自分に向かせ、頬に手を添えてキス・・・ が直前で。 「・・・あ!!」 「え!?ど、どうした!??」 「動いた・・・!」 望美はお腹を両手で撫でて景時に訴える。 「ど、どこ!??」 「ここ・・・!」 景時が望美のお腹に耳を当てると・・・ 「・・・!わ・・・。ホントだ・・・!」 小さな宇宙で元気に暴れる我が子の鼓動が伝わってきた。 「・・・きっと私にばっかりキスするからやきもち 妬いたのかもしれませんね」 「そうか。ごめんごめん。でもお前の母上は本当に可愛いもんだから・・・。 あ、いや、お前も可愛いよ」 ボコ!! 景時の言葉に反応するように動く。 「ごめんごめん。生まれてきたらいっぱい幸せの口付けを あげるよ・・・。ふふ。オレと望美ちゃんの二人分な・・・」 ボコ! 今度のはちょっと優しい蹴り・・・? 「約束した。でも今は・・・お前の母上に口付け二人分・・・」 「景時さん・・・」 お腹の中の新しい命。 両親の愛を一心に(?)受けて育つ。 紅葉が舞い散る・・・ 秋の昼下がりの出来事だった・・・。