夫婦花火望美と景時の間に女の子が生まれた。 「いやっほうーーー!!」 景時が喜びのあまり、屋敷の庭で花火を何発もうちあげた。 (・・・喜びすぎ・・・(汗)) それでも望美は景時の喜びようは素直にうれしかった。 そして愛娘は 月姫と名づけられ・・・ 「月姫や〜。あぶあばばー。なんて美しい可愛いんだろう・・・。 あぶあばばー・・・」 男前な顔をくしゃくしゃにして、あやす景時。 もう朝から夜までべたべたで・・・。 「景時さんったら・・・もう。抱き癖ついちゃうよ」 「いーじゃないか。なぁ月姫ぇ♪」 (何よ。痛い思いをして生んだのに労ってくれないわけ?) 望美がちょっとやきもちをやくくらい。 「あれ・・・。望美?何か怒ってる?」 「べつに。景時さん、月姫返して!」 景時から月姫を奪い返す望美。 「ああ、ずるいよ〜!もう少し抱かせてよ」 「だーめ!女の子同士。仲良くしようね。月姫」 すたすたと部屋にはいっていく望美を追いかける景時。 そんなちょっと騒がしいでも愛情深い両親に囲まれ 月姫はとても幸せそうに眠っている。 「・・・だから・・・。抱き癖つくから。景時さん」 「これならつかないよ。それに君を”抱く”癖は もうついちゃってます♪」 (”抱く”って意味が違う・・・(照)) なんと月姫を抱く望美ごと膝に乗っけてしまった景時。 「・・・はぁー・・・。愛する妻と娘を抱いて・・・。オレは幸せだなぁー・・・」 「うん」 縁側で・・・ 親子三人、空を眺める・・・ 「・・・なんか・・・。本当に嘘みたいだ・・・」 「え・・・?」 「・・・平家との戦いの日々が・・・幻のようだ・・・」 景時は遠く雲を見上げる。 その先に見ているのはあの切なさと哀しさが入り混じった戦いの日々・・・ 望美は景時の膝から降りて隣に座った。 「・・・幻じゃないよ・・・。幻だったら今・・・私はここにいない・・・」 「・・・そうだな・・・」 景時は望美の肩をそっと引き寄せる・・・ 幻ではないと確かめるように・・・ 「・・・。オレは・・・。今本当に幸せだけど・・・。君はどうかな」 「え?」 「・・・。君の幸せはもっと別に・・・あったんじゃないかなって・・・ 今でも時々思うよ・・・。今更遅いけど・・・」 自分が生きて生まれた世界を捨てさせたのは自分。 その念が幸せを感じれば感じるほど強くなった。 「・・・景時さんの馬鹿」 「え?」 「こんな幸せに満ちた雰囲気なのにどうして壊すようなこと いうのよ。ほんとに・・・。気弱な所、全然変わってないんだから」 望美はぷいっと背中を向けて怒った。 「・・・私のこの幸せは私が選んだこと・・・。それを否定するなんて 許せないわよ」 「はは・・・(汗)相変わらず強気の意見だね・・・。でもそういう君だから 好きになったんだけどね・・・」 つい、逃げ道を探したり 楽な思考になりがちな自分を引き戻してくれる・・・。 「景時さん。私は今、ほんっとうに幸せよ。好きな人の 子供をこうして抱いてるんだもん・・・」 「・・・ありがとう。じゃあオレは君をもっと笑顔に しないといけないね」 景時は着物の懐から花火をとりだして 火をつけた。 パーン・・・! 「わぁ・・・!」 「ふふ。題して”夫婦花火”かな」 青い空に、桃色と黄色の桜の形をした花火が咲いた。 さらに星型や雲の形まで・・・ 「すごーい。月姫、ほら、お父様がいっぱい 空にお花を咲かせてくれたよ」 望美の呼びかけに月姫のまるい瞳の視線は上へと向けられて・・・ 「あ・・・!景時さん、今、月姫、笑ったよ・・・!」 「え、ほ、ホント!?」 だが一瞬だけの微笑みで、再びすまし顔の。 「くっそー!愛娘の笑顔を見逃すとは不覚・・・!絶対見るぞ!」 景時は何発も花火をうちあげまくった。 「娘のため!なら何発でも!!」 「んもーーー!景時さん、やりすぎだってばーーー!!」 賑やかに、夫婦の、そして親子3人の笑顔が咲く。 それはどんな花火より綺麗で 優しい・・・。 両親の温かな愛情を感じながら月姫は すやすやと眠っていたのだった・・・。