海辺の思い出 「・・・。もういいよ!知らない!!」 「あ、望美・・・!」 些細なことで、望美と景時が喧嘩。 望美は月姫を連れてなんと屋敷を飛び出してしまった。 (参ったな・・・。それより探さないと・・・!) 慌てて望美と月姫を探しに飛び出す。 (・・・まぁ・・・。多分あそこだと思うけど・・・) 行き先は分かっている。 ザザン・・・。 (ほら・・・いた・・・) 望美の寂しそうな背中が海を眺めている。 (ここは・・・オレと彼女の思い出の場所だからな) 望美に初めて花火を見せた場所・・・。 「・・・望美。風邪引くよ」 景時は羽織をそっと望美の肩かけ、隣に座る。 「・・・。ごめんなさい。景時さん・・・。私がかぁっとなっちゃって・・・」 「いや・・・オレの方が悪かった・・・」 静かに吹く波風が、二人の心を優しくなだめる。 「・・・ふふ。でも月姫のことで喧嘩するなんて・・・。 俺達相当の親ばかだよね」 「そうだね」 「なのに当の本人はまぁすやすやと・・・」 景時は月姫の寝顔を覗き込む。 望美の腕の中で白い産着を着て眠る月姫。 両親の喧嘩も知らず愛らしい寝顔を見せる・・・・ 「・・・望美。この場所・・・。覚えてる?」 「うん・・・。景時さんが・・・私に初めて花火を見せてくれた場所」 「そう。それから・・・。初めて口付けした場所」 「///。も、もう・・・っ」 頬を染めた望美の肩をそっと引き寄せる景時。 結婚前に・・・ よく二人で鎌倉の海を眺めた・・・。 「・・・君が本当にこの時代でオレと生きてくれるのか・・・不安だった。 断られるのが怖くてさ・・・。ふふ。オレってば花火で 望美を喜ばせようと必死だったんだ」 「そうだった。何発も何発も花火打ち上げてくれて・・・。 最後に花火が暴発しちゃったの」 「・・・。”オチ”はいいよ」 「ふふ・・・。”オチ”も好きな人との出来事は みーんな素敵な思い出よ」 望美は景時の胸に頬を寄せる。 暴発した花火で慌てて大騒ぎしたけど。 最後にはこうして・・・ 二人で肩を寄せ合って海を眺めた・・・。 「・・・ねぇ。望美」 「なあに・・・?」 「・・・もう一度・・・。聞いても・・・いいかな?あのときと 同じ言葉を・・・」 「・・・うん」 望美は深く頷く・・・。 「・・・これから先・・・ずっと一緒にいてほしい・・・。 オレのそばで・・・永遠に・・・」 「はい。よろしくお願いします」 景時はにこりと笑った。 その笑顔も・・・ あの時と同じ。 景時のそばで生きていこうと決めた・・・。 「・・・では。ではでは。その”後”の口付けも再現おば・・・」 景時はくいっと望美のあごをもちあげた。 「え。ちょ、つ、月姫が・・・」 「だーいじょうぶ。月姫は親孝行な娘さ。両親の愛の場面に 気を利かせてくれるよ。さ、目を閉じて・・・」 (もう・・・。調子のいいところも変わってないんだから・・・。うふふ・・・) 望美は静かに目を閉じた・・・。 「・・・愛してるよ・・・」 穏やかな声で囁いて ・・・思い出のキスと同じ・・・ 優しいキスをした・・・ 「・・・ん??」 だが。なんだかとっても月姫のおしりが生温かい・・・。 「景時さん・・・!大変!月姫、おしめとりかえなきゃ!!」 「なにぃ!?月姫、お前・・・。父上と母上の愛の営みに そういう展開で来るとは・・・」 「ぶつぶついってないで景時さんも手伝って!」 「はいはい・・・。ふ〜・・・いい思い出が娘のおむつの交換に変わるとは。 ふふ・・・」 花火が暴発した”オチ”が 今度は娘のオムツの交換。 ロマンチックじゃないけれど 愛しい家族の出来事。 そうやって 幸せを一つ一つ積み上げていく。 海辺の思い出がまた・・・。