新米パパブルース 九郎ジュニア誕生かと期待したが、勘違いだった。 しかしこれがきっかけで九郎の中でちょっとした意識改革が あったようで・・・。 ドサリ! 『パパになる前の心得三十か条』 育児書を何冊も置いて、きゅっとおでこにタオルをまく。 (・・・よし・・・。父としての心得を今から 熟知しておかなければ・・・!) いつ”出来て”もいいように・・・。 というか毎晩頑張っている九郎パパ(予定) (・・・い、いや、ふ、不埒な行いではない 自然の神秘で愛し合えば当たり前であのその・・・) 育児書をぺらぺらと捲る。 ・・・さかさまのまま(笑) 「九郎さん。何悶々してるの?」 「はッ!!望美!いや、オレは別にな、 やましいことを考えていたわけでは・・・ッ」 「・・・?」 九郎はさっとクッションの下に育児書を隠した。 「九郎さん。何隠したの?」 「え、あ、な、何でもな・・・」 ひょいっと隠した育児書を望美に没収されて・・・ 「”父親の心得”・・・?」 「・・・///」 九郎、恥ずかしさで咳払い。 「九郎さんたら・・・。気が早いんだからふふ」 「は、早いもんか!いつ授かってもおかしくはないだろう!! オレはその”つもり”で毎晩・・・」 (///) 九郎、本音が出ちゃってまた咳払い。 「・・・や、やだ・・・。九郎さんったら・・・」 「の、望美まで照れるな・・・。お、男の立場がないだろう///」 「ふふ。うふふふ・・・」 九郎の気持ちが嬉しい。 (・・・私は・・・幸せだな・・・) 未来の幸せを考えてくれる優しさ だからこそ九郎のそばにいようと想う・・・。 「な、なんだ。望美」 ぎゅっと九郎の腕に掴まる望美。 「・・・ふふ。ねぇ。ちょっと公園にいってみようか?」 「公園・・・?」 近所の公園。 今日は晴れているからきっと家族連れが多いはず。 「わぁ・・・かわいい!」 新緑の季節。 公園はベビーカーに押す親子であふれていた 「いま、どのくらいですか?」 「生後4ヶ月なんです・・・手がかかる時期で・・・」 だが母親の顔はとても幸せに満ちている。 「若いご夫婦ですね。お宅はお子さんまだですの? 旦那様」 「えっ、い、いやぁ・・・あのその///」 若い母親に”旦那様”といわれ、ちょっと嬉しい九郎。 「そうだ。よかったら一度抱いてみます?」 「え、い、いいんですか?」 若い母親は赤ちゃんをそっとベビーカーから抱き上げて 望美に抱かせた・・・。 「わぁ・・・。あったかくて・・・いい匂い・・・」 瑞々しい赤ちゃんの肌の感触と温もり 望美の顔に自然と柔らかな微笑が浮かぶ。 「赤ちゃんて・・・。みんなを笑顔にする力がありますよね・・・ ふふ・・・」 赤ちゃんを抱く望美の横顔を見つめて 九郎は・・・ (望美は・・・もうすでにお母さんの顔だな・・・) 母性本能というやつなのか 九郎にはまた違った笑顔を浮かべている・・・ (・・・母親の顔の望美も・・・。綺麗だ) いつの日か。 自分の子を愛情で包んでくれるのだろう (ならばオレは・・・.2人分の愛情で包んでやらないとな・・・) 父性本能? 九郎も穏やかで満たされた気持ちが溢れてくる・・・。 「はい。じゃあ九郎さんもどうぞ」 「え?ちょ、ちょっと・・・」 望美は九郎に赤ちゃんをバトンタッチ。 「・・・わ・・・」 いまにもこわれそうで・・・ 柔らかくて小さい赤ちゃんに九郎の大きな手はちょっと 不器用に抱く。 「ああ、そんなんじゃ駄目よ。首がすわっちゃう。 こう、赤ちゃんの頭を支える形で・・・」 九郎の腕の中の望美が赤ちゃんをそっと抱きなおさせる。 「こ、こうか?」 「うん。そう・・・。ほら。赤ちゃんも笑ってる」 「あ・・・」 九郎の腕が心地いいのか赤ちゃんはにこっと一瞬笑みを見せた。 「ふふ。旦那さん、いつお父さんになられても 大丈夫ですね。ふふ」 「・・・い、いや・・・///」 なんと幸せな空気だろう。 戦尽くしの世界では全く感じられなかった。 命がいつ失うか分からない切羽詰った 緊張感から解かれて・・・ (・・・。早く・・・オレ達の下にも幸せを運んではくれまいか・・・。 命の神よ) 赤ちゃんを抱きながら九郎は 自分と望美を繋ぐ新しい生命の誕生を強く望んだのだった・・・。 「・・・今日の散歩はなかなかいい勉強になった」 「そう?よかった」 帰り道。 腕を組んでぴったりと寄り添って歩く二人。 あの幸せな空気の余韻がまだ 二人の心に漂っている。 「きっと九郎さんならいいお父さんになるよ」 「///」 「あ、でもまだ”未定”だものね。いつなるかは・・・」 チラッと望美は九郎を見た。 「///・・・ゴホ」 「・・・今夜は・・・。早く夕食済ませちゃおうね(照)」 「・・・あ、ああ///」 ぎゅッ。 望美はもっともっと強く九郎の肩に顔も体も寄り添えて 歩く・・・ なんだか柔らかい感触が腕に・・・ (・・・(汗)い、家まで我慢できるか・・・分からんな///) 今日の夕日も優しいオレンジ色。 二人の未来を優しく導く 帰り道をずっと照らし続けたのだった・・・。