プロポーズ 望美は最近ふと気がついたことがある。 (私と将臣君・・・。一緒に暮らしてるし・・・。 ずっと側にいるって誓い合った・・・つまりそれって・・・) 現代用語では”結婚”という言葉が当てはまる状況だろう。 (でもさ・・・。”プロポーズ”ってらしい言葉ってないような気が) ただでさえ、硬派な将臣は甘い台詞はあまり吐かない。 (・・・やっぱり・・・。あこがれるよね。女の子としては・・・) 二人にとって”節目”となる言葉が。 「ねぇーえ・・・。将臣くん」 「グー・・・」 大の字になって眠る将臣・・・。 (・・・プロポーズしてって言ってしてくれるような 人じゃないわよね・・・) 「はぁー・・・」 女心と夏の空。 夏の空のようにすかっとしない望美の心。 そんな望美がうらやましい光景が村に最近多い。 「めでてぇなぁ。祝言続きだ」 「ああ。花嫁姿は見飽きないねぇ。男は」 漁師たちの祝言が続いて、望美達も呼ばれた。 「大将!大将はいいねぇ。こんなべっぴんな奥方がいてよー。 そういや花嫁衣裳、着せてやったんですかい?」 「おいおい飲みすぎだぞ」 仲間達を酒を楽しそうに飲む将臣。 (”花嫁衣裳着せてやったら”ってとこ、 全然聞いてない) 将臣のそっけない態度に望美は苛苛してきた。 (もう・・・。なんかどうでもいいや) 望美はお猪口をぐいっと一気飲み。 何杯も飲んだ。 (あー・・・なんかまわってきた) みるみる望美の顔は赤くなりぼんやりして・・・。 「奥方!大丈夫ですかい!?」 ばたん! そのまま望美は酔いつぶれ・・・。 「しょーがねぇなぁ。ったく・・・」 将臣は望美を背負って、漁師の屋敷を後にした・・・。 「飲めない奴ががぶ飲みしやがって」 ぼんやりしながらも 将臣の言葉は耳に入って。 「・・・将臣君のばか」 「あ?」 「・・・女心ってもんぜーんぜんわかってなぁあい!」 (酒癖も悪くて絡む性質か(汗)) 真っ赤な顔で望美は愚痴り始めた。 「どういう意味だ?」 「私だって女の子だよ。ひっく。 綺麗なお嫁さん見たら・・・なんだかいいなあって・・・」 「・・・」 「・・・衣装が着たいわけじゃないの。ただ・・・ 将臣君のお嫁さん・・・私でいいのかなって・・・ひっく・・・。 もっと素敵な女の子いるんじゃないかって・・・。不安になるんだよ」 望美は泣き上戸なのか、ぽろっと涙を零す。 「・・・ったくしょうがねぇ奴だな・・・。 お前のほかに誰がいる?この俺に付き合える女はいねぇだろ」 「・・・そういう言葉じゃなくて・・・」 欲しい言葉。 たった一言なのに・・・。 どうしていってくれないのか。 「望美・・・。家に帰ったら・・・。お前に見せたいモンがある」 「なあに?」 「帰ってからのお楽しみ」 くすっと笑う将臣。 (何さ。私の気持ちなんて・・・) 酔いと小さなことにこだわってしまう自分の情けなさで 望美はもやもやしてきた。 家に着き、将臣は真っ先に居間へ・・・ 「さぁついた・・・。望美。これだ」 「・・・」 「望美・・・?」 スー・・・。 完全に熟睡している望美・・・。 「なんだよ・・・。肝心な所で寝やがって・・・」 居間の真ん中。 衣文賭けに白い着物がかけられている・・・。 「ふふ。まぁいいか。時間はたっぷりある・・・。 お前が起きたら・・・。着物を欠けて言うよ・・・」 ”結婚して欲しい” と・・・。 「・・・。俺が一生添い遂げたい女は・・・世界でお前だけだぜ・・・」 白い着物を布団代わりに寝る望美のおでこに キス・・・。 望美の念願の将臣からのプロポーズは 明日の朝になりそうだ。 起きたらきっと忘れられない朝になる・・・。 望美は夢の中で 白無垢をきた自分を思い描いていた。 ・・・目が覚めたときの光景を・・・。