夕暮れ、教室で・・・ 望美と将臣。 二人は異世界での闘い終え、自分達の時代に返ってきた。 平和な日常が戻ったというのに 二人とも、どこか気がぬけてしまったように 虚無感を感じている。 (・・・。力が・・・はいらない・・・) 怨霊も居ない、戦いもない・・・ 平和な空・・・ 窓を見上げれば飛行機雲が見える・・・。 キーンコーン・・・。 昼休み。屋上・・・ 「よお。なんだ、そのつまらなそうな顔は」 将臣がごろんと寝転がる。 「将臣君こそ・・・」 二人は並んで座る・・・。 ザワ・・・。 以前と変わらない風景・・・。 安全で平和な日常なのにこの虚無感はなんなのだろう・・・? 「・・・将臣君・・・。夢・・・見ない?」 「・・・たまに・・・な」 何の夢かは言わなくてもわかる・・・。 命がけだったあの闘い・・・。 一日一日が本当に無我夢中だった。 「・・・私達・・・。よかったんだよね・・・?こっちに 帰って来て・・・」 「・・・後悔・・・してるのか?」 「ううん・・・。そんなこと・・・。ただ・・・。 胸にぽっかり穴が開いた感じがしちゃって・・・」 あれは夢だったのか。 夢にしてはあまりにも鮮明で・・・。 「・・・。夢だっていいじゃねぇか・・・。 あっちの世界でのことは・・・。オレの心にもお前の心にもちゃんと 残ってる・・・。そうだろ・・・?」 「・・・うん・・・」 色あせない記憶。 あの世界が夢か事実だったかが問題なのではない。 二人の心でどうこれから生かされていくか・・・なのだ。 「あーあ。ふふ。でもこっちの世界はホントに 平和で幸せぼけしちゃいそう。少し”スリル”が足りないな。 よッ」 ひょいっと望美は屋上の角を綱渡りするように歩く・・・。 「おい。あぶねーぞ」 「だいじょーぶ。戦で鍛えたこのバラ・・・。きゃああッ!!」 バランスを崩して倒れる望美。 「望美ッ!!」 すんでのところで将臣に手をつかまれ、引き上げられる・・・。 「・・・馬鹿野郎ッ!!!何やってんだ!!」 「ご、ごめん・・・」 望美の手が少し震えている・・・。 「・・・ったく・・・。お前って奴は・・・。無鉄砲すぎだぞ・・・」 「・・・ごめん・・・。ごめん。将臣君・・・」 怖かった。 あちらの世界へ流されたとき・・・ 手を離してしまった自分を責めた。 この世で一番離したくない手を・・・ 離した自分を・・・。 「・・・全然平和なんかじゃねぇな・・・」 「え・・・?」 「こっちの世界でも・・・。今みてぇに お前を失う危険があるんだ・・・」 「将臣君・・・」 抱きしめる細い肩・・・。 どこの時代だろうと世界だろうと この肩を守りたかった いや守りたい・・・ 変わらない・・・気持ち・・・。 「・・・。仕方ねぇ・・・。俺が一生守ってやるか・・・」 「将臣君・・・」 「お前みてぇなじゃじゃ馬・・・。俺がついててやれねぇと 駄目だろ・・・。な・・・?」 腕の中の望美は・・・ くすっと微笑んで頷く・・・。 守れらるだけの女じゃない。 強い強い心・・・。 (オレの心はは・・・ずっと・・・。お前に守られてきたんだな・・・) 「でも私も守るよ・・・。将臣君のこと・・・。これからもずっと・・・」 「ふっ・・・お手並み拝見だぜ・・・。”神子様”」 長い髪をすくう・・・。 二人だけの屋上・・・ 戦もなければ敵もいない。 互いの心を確かめ合う時間が在ることを 「・・・。好きだぜ・・・」 触れ合った唇から 二人は知ったのだった・・・。