お前だけを見てる 「でねー・・・。駅前のケーキ屋さんが・・・」 望美と将臣が廊下を離しながら歩いていると・・・ 一人の男子生徒が二人の前に飛び出してきた 「春日先輩!突然ですが・・・。オレと付き合ってください!」 「え・・・?」 「ずっと前から見てました・・・!オレの彼女になってください!」 男子生徒は望美に手を差し出す・・・ 望美はちらっと将臣に視線を送った。 (将臣君・・・どうしよう) 「おい・・・望美。返事してやれや。男がここまで 言ってんだから・・・」 と、涼しい顔。 (何よ!その無関心な態度は!) 「ごめんなさい。お付き合いはできません・・・!!」 妙に将臣の態度が勘に触っていらいた望美。 「・・・そ、そうですか・・・。わかりました。う、うわああんん!!」 男子生徒は泣きながら去っていく・・・。 「わー・・・凹んでんぞアイツ。望美お前、なにもあんなに強く断ることもねぇだろうに・・・」 「・・・何よ!じゃあ曖昧に断ればよかったていうの!?」 「べ、別にそういうわけじゃ・・・。何怒ってんだよ」 「怒ってないわよ!!怒る理由ないじゃない!! 将臣くん!私、先教室行ってるから!!じゃあね!」 望美はなんだかかんかんに怒って一人先に教室へ入っていてしまう・・・ 「なんだ・・・?オレ、なんか言ったか?」 頭をぽりぽりかく将臣。 (・・・ふぅ・・・。女心ってのは難しいな・・・) 何がそんなに腹が立ったのか (でもまぁ・・・アイツの機嫌は治さねぇとな。そういえば 駅前のケーキ屋がどうこう行ってたな・・・) 「よし・・・!ここは”彼女孝行”しますか!」 将臣は学校が終わり、望美を駅前のケーキ屋に誘った。 「・・・って女ばっかだな・・・」 きゃピきゃピと女子高生ばかり・・・。 「仕方ないでしょ。甘いもの好きなんだから」 せっかく連れてきたのにまだ 少し膨れ顔の望美。 (甘いモンでも食わせりゃ・・・機嫌治るかと 想ったんだが・・・) と頬杖をつく将臣。 「甘いもの食べさせたら機嫌治るって思ったんでしょ?」 「・・・!お、お前・・・地獄耳か?」 「図星だったか・・・。もう。何年幼馴染やってると 思ってるの?分かるわよ」 「・・・幼馴染・・・?オレ達って、幼馴染なのか? カレシカノジョって奴じゃないのか?」 「えっ・・・」 にやっと悪戯げに笑う将臣・・・ 「・・・///な、なによっ。お、幼馴染・・・だったでしょ!」 「だった・・・か。ふ。そうだな・・・。ほんの何年か前は・・・」 「・・・そうよね・・・」 ”幼馴染”と”カレシとカノジョ”どこが違うんだろう・・・ いつも一緒にいて 楽しく話して遊んで・・・。 (・・・私達って・・・。結局何も変わってないのかも・・・) 「・・・」 (・・・なんか・・・ちょっと虚しくなってきたな・・・) ”応えてやれよ” 本当に好きな女の子が他の男に言い寄られたらそんなこと言わない? 「どうしたんだ。急に黙って・・・。腹でも壊してるのか?」 「・・・(汗)」 (な、なんか・・・意味不明な怒りが沸いてきた・・・!) 「・・・私さきかえる!」 望美はスクッと席を立ってそのまま店を飛び出した 「え、ちょ・・・ちょいまて・・・れ、レジしてねぇだろ!」 将臣はレシートを持ってレジを済ませて店を出る。 「ったく・・・」 女の心はやっぱり分からない。 (・・・。オレはいつもお前の笑顔が見たいて 思ってんだけどな・・・) 甘い台詞なんて柄じゃない。 「・・・はぁどうすりゃい・・・」 (ん?) 歩道で望美と少年がなにか争っている。 (あのガキは・・・さっき望美に告白したガキじゃねぇか) 「・・・だから私には好きな人が居て・・・」 「でも片思いなんでしょう!?じゃあ僕のこと好きになってください。 僕ずっとずっと本当に貴方のこと見てたんです。ねぇ先輩・・・!」 「きゃ・・・ッ」 少年は望美の腕を強引に引っ張って 路地へ連れ込もうとした。 「てめぇッ!!!」 ドカッ!! 将臣は少年を望美から離して突き飛ばす 「人の女に手ぇ出してんじゃねぇよ!」 「・・・。有川先輩・・・」 「女々しい奴は男じゃねえ。てめぇはフラレたんだから 潔く諦めな!!」 だが少年は臆することなく将臣に言い放つ。 「・・・諦められません!!オレは・・・オレは高校ハイってからずっと・・・ 春日先輩を見てきたんです・・・!!このキモチは誰にも負けません!! たとえ有川先輩でも・・・!!」 「・・・」 少年の粘りに将臣も少し見直したようで・・・ 「・・・オレだって譲れねぇ・・・。オレもがきの頃から・・・ 望美だけ見てきたんだ・・・。だからコイツだけは・・・渡せねぇんだ」 望美の肩を強く引き寄せる・・・ (将臣くん・・・) 「・・・。ごめんね・・・。私も将臣くんがすきなの・・・。 ごめんなさい・・・。私は将臣くんだけなの・・・ごめんなさい・・・」 泣きながら何度も何度も頭を下げる望美・・・。 少年は流石に悟ったのか 「・・・オレはまだまだですね・・・。先輩を泣かせちゃ・・・ いけない・・・」 「・・・小池君・・・」 「・・・先輩のことは・・・ずっと好きです・・・でも・・・ オレはお二方を引き裂くほどの・・・熱さはないから・・・」 少年は二人に一礼して 走り去った・・・。 「・・・。アイツ・・・。本気だったんだな・・・」 「・・・。将臣君は・・・?」 「え?」 「さっきの台詞・・・。本気だよね・・・?」 ”こいつだけは譲れねぇ” 望美が一番ほしかった言葉。 「・・・。本気じゃなきゃいえねぇ台詞だろ・・・?」 「・・・不安だったんだ・・・。私と将臣くんのキモチ・・・ 温度差があるんじゃないかって・・・」 「・・・馬鹿だな・・・。温度差だと・・・? 触ってみろよ・・・ほら・・・」 俯く望美をそっと抱きしめる・・・ (あ・・・) 将臣の背中が・・・ 熱い・・・ 早い鼓動も聞こえる・・・。 「・・・他の男なんか見んじゃねぇ・・・。オレだけ見てろ・・・」 こんなに余裕がない将臣は初めて・・・ 「・・・将臣君・・・」 「・・・。オレはいつだって・・・。お前だけ見てる・・・」 抱きしめる将臣の腕に力が篭る・・ そして・・・ 「・・・。俺ん家・・・。来る・・・か・・・?」 将臣の声が耳にかかる・・・ 「・・・うん・・・」 手をつなぐ二人の手は・・・ 一層熱い・・・ ”お前だけ見てる・・・” 寄り添う・・・ 幼馴染が恋人になった証拠・・・ 望美の耳の奥に 将臣の言葉がその夜 ずっと呟かれたのだった・・・