ジェラシー 「将臣くん」 「な・・・」 ・・・朝食中。 望美は目を閉じて何かをねだる。 ・・・キスだ。 ちっ。女ってのはどうしてこう・・・ 行動で愛情を示せっていうんだろうか。 ま、オレも嫌じゃないから代わりに望美には骨抜きになるような キスをしてやるけど・・・ 「こんっちはー!」 「!!」 口付け寸前・・・で・・・ヒノエの野郎が突然遊びにきやがった。 「あー・・・。悪い、タイミング、悪かったみたいだな・・・」 「・・・な、何なんだ。お前・・・」 オレと望美はぱっと離れた。 「あ、いやー。船で近くまで来たんで仲間の顔をみて帰ろうと 思ったもんだから・・・。あ、お邪魔だったようだな」 「そ、そんなことないわよ。ヒノエ君、ささ、どうぞ上がって上がって」 望美の奴・・・ ヒノエに愛想振りながら座布団なんか出しやがって・・・。 ってこんな嫉妬はおれらしくねぇかな? 「あ、そうだ。美味しいお饅頭もらったの。ヒノエ君食べて」 「悪いねぇ・・・新妻さん」 なっ・・・! ヒノエの奴、望美の手を握りやがった。 ・・・これ見よがしに・・・。 考えてみたら、ヒノエははじめてであったときも 望美を口説いてたな・・・。 「ねぇ。将臣くん。せっかくヒノエ君来てくれたんだから お昼、一緒に食べていってもらいたいな。お魚釣ってきて」 「なぬ!?」 望美はオレに竿と籠を持たせてた。 「いってらっしゃーい。将臣くん!フフフ・・・」 ・・・ヒノエの奴・・・! 面白がってやがるな・・・! こうなったら大物釣ってきてやれねぇと・・・っ。 オレは自分でもムキになっちまって 屋敷にヒノエと望美を二人きりにしてしまった・・・ その事に気づいた時にはもう昼になってて・・・。 あわててオレは帰った。 「わぁ!すごーい!将臣くん流石!」 「どうだ。大物だろ」 1メートル近くはある鯖(さば)を一匹釣ってきた。 「ほう。すごいねぇ。同じ”海の男”でも将臣は漁師の鏡だねぇ」 「・・・お前に言われたきゃないね」 客間でヒノエと一杯やる。 杯に冷酒を注いでオレは飲み干した。 「龍神の神子が女房か・・・。ふっ。男冥利につきるだろ」 「そんなこと関係ねぇ。アイツはアイツだ」 「ヒュー。カッコいいねぇ」 ・・・やけにヒノエは絡んでくる。 酒のせいか? 「うらやましいよ。将臣が・・・。オレ、望美を連れて帰って 女房にするつもりだったから」 「・・・」 「・・・今からでも遅くねぇかな。実はきょう望美をかっさらいにきたんだ」 「へっ。やれるものならやってみろ。お前のおちょくりには 乗らないぜ?」 年下になめられたくはねぇ。 酒を交わしながら、オレとヒノエは平家との戦いでの思い出話に 花を咲かせていた。 「はーい。将臣君が釣ってきた魚のお刺身だよ〜」 望美が皿に切り身を盛り付けて持ってきた。 「おお。すげぇ。では将臣の戦利品をご賞味しましょうか」 ヒノエはぱくりと食べた。 ・・・うまい筈だぜ。脂身がたっぷりついて・・・。 「うーん。うまい!このプリプリ感!まるで・・・」 「きゃっ」 なっ・・・!ヒノエの奴、望美を膝にのっけやがった。 「まるで・・・望美白い肌みてぇだな」 望美の頬に口付けなんかしやがって・・・ これもオレに妬かせるためのジェスチャーってことは わかってる・・・ 「新妻っていいよなー・・・。新鮮なにおいがする」 「ちょっ・・・やめて!ヒノエくん。ふざけるのは・・・」 「・・・っ」 の、望美の頬に口付けを・・・! バキ・・・っ  握っていた杯を割ってしまった・・・ 「ふざけてなんかないさ・・・。大体オレは・・・。 望美のことが好きだったんだ・・・。それを将臣にさきこされちまって・・・」 「ちょっ・・・や、やめてっ」 ヒ・・・ヒノエの奴・・・! 望美を押し倒して・・・っ 「い・・・いい加減にしやがれ・・・!!」 オレは望美をヒノエから引き離した。 「ヒノエ・・・!いくら酒がはいってるからってワルノリしすぎだ・・・!!」 「・・・ふふ・・・。ごめんごめん。でも半分は悪乗りじゃねぇよ」 「ヒノエ君・・・」 「・・・本気になった女は望美だけ・・・。だからさ、 今、幸せかどうか・・・見に来たんだよ」 ついカッとなってしまったオレだが・・・ ヒノエはどこか余裕の表情だ・・・ 「・・・将臣は硬派だろ?望美が苦労してるんじゃないかって 思ってたけど・・・。ちゃーんと”嫉妬”してた。うん。いい反応だったぜ」 「ひ、ヒノエき、貴様っ///」 年下にはめられて オレって奴は・・・ 「ハハハ。望美。お前はいい男を掴まえたな。ま、俺には劣るが」 「やかましい!!ヒノエ、罰だ飲めっ!!」 ヒノエの口に杯を突っ込む。 「きゃああ!将臣くんやりすぎ・・・!!」 屋敷に ヒノエとオレと 望美の騒ぐこえが響く・・・。 そういえば こうして仲間たちで騒いだ夜があったな・・・。 懐かしい・・・ 「・・・え?ヒノエ君帰るの・・・?」 「新婚夫婦の屋敷に泊まるほど野暮じゃねぇよ、んじゃ、将臣。望美を 今晩も可愛がってやれよ」 「ばっ・・・」 最後の最後まで人を小ばかにして・・・ ヒノエは帰っていった・・・。 「ヒノエ君らしい帰り方だったわね。フフ・・・。でも ヒノエ君が私のこと好きだった・・・なーんて冗談はちょっと びっくりしたけど・・・」 「・・・冗談かどうかわわからねぇぜ・・・?」 「え・・・?」 男同士・・・。 分かることがある。 ”本気で惚れた女・・・” あの台詞のフレーズだけは・・・ 声のトーンが違ってた・・・。 「さて・・・と。お布団の準備しなくっちゃ・・・」 (え・・・っ) 隣の部屋に行こうとした望美の腕をオレは引き寄せ 背中から抱きしめた・・・。 「な・・・。何・・・?突然・・・」 「いや・・・。ただ・・・。こうしていたい・・・。駄目か・・・?」 「・・・いいけど・・・」 ・・・考えてみたら・・・ オレがこうして望美と一緒にいるのは奇跡なのかもしれない。 他の八葉たち・・・ もしかしたらヒノエのように望美に惚れていた奴が いるかもしれねぇ・・・。 ・・・譲・・・。 「・・・望美」 「なあに?」 「お前・・・。オレで・・・よかったのか・・・?」 「え・・・?」 きょとん・・・とした顔をしてやがる・・・。 鈍感のお前に・・・男心がわかりゃしねぇだろうな・・・。 ってオレが男心なんて・・・。柄じゃねぇか。 「いいんだ・・・。望美・・・。少し早いけど・・・。寝ようぜ・・・」 「・・・え、う、うん・・・(照)」 オレは望美を抱き上げ・・・。 寝室につれていく・・・ 今日はなんだか・・・ 心ン中・・・もやもやしてる・・・ 布団に望美を寝かせる・・・ 望美の前髪に触れる・・・ 「・・・将臣君・・・。どうかしたの・・・?」 「・・・別に・・・。酒が・・・まわっただけだ・・・」 「ならいいけど・・・」 心配そうにオレを見つめる望美・・・ 望美の視線を 今はオレが独占してる・・・ この瞳に他の男が映ったらと思うと・・・ 苛つきがおさまらない・・・ 「・・・望美・・・。ずっと・・・一緒にいてくれよな・・・」 「うん・・・」 口付けをして・・・ 望美に触れて・・・。 体も心も結びつける・・・。 嫉妬なんて・・・男がするもんじゃねぇって思ってきたけれど・・・ 違ってたんだな・・・ 嫉妬するってことは 本気で誰かに惚れた証拠・・・。 望美に惚れてる限り俺は・・・。 何度もでも嫉妬しつづけるんだな・・・。