もっと抱きしめあえたなら ・・・。砂浜に散歩に二人で来た。 だがつく途端に 望美がやたらととあることをせがむ。 「・・・抱きしめてて。ぎゅってして」 「おい・・・。昼間から・・・」 「お願い」 そんなおびえた顔をされて頼まれたら断れるかっての。 オレは望美を抱きしめる。 ・・・砂浜には誰にもいないことと確認してからな。 「どうしたんだ。お前・・・」 「・・・将臣君が遠くへいっちゃう気がして」 「いくわけねぇだろ。行く場所もねぇよ」 「うん」 オレの言葉がイマイチ信用できねぇのか望美は砂をいじって 俯く。 おいおい・・・。一体本当にどうしちまったんだよ。 ・・・女心と秋の空っていうが、今は夏だし・・・。 ってのは関係ねぇか(汗) 望美はそれから押し黙ってしまった。 なんだこの重たい沈黙・・・。 「望美・・・。お前、どっか具合でもわるいのか?」 望美は首を振って否定した。 「だったらどうしたんだ・・・」 「・・・。女の子はね。いつも不安なの。好きな人が心変わりしないかって・・・」 「・・・!」 望美の言葉であることが浮かんだ。 そういえば、昨日・・・。 村から流れてきたとあるうわさの話をした。 その噂とは・・・。 オレと村長の娘が良い中だという噂だった。 オレは誉めたつもりで ”望美によく似てていい女だぜ” と言ったが・・・。 なんか望美、勘違いしたのか? ・・・って望美、妬いてるってことか・・・? そう考えるとなんか悪い気がしねぇ、いや、嬉しい・・・。 「・・・望美」 「なあに・・・?」 「オレは・・・。あれだ」 「あれってなあに。ちゃんと言わなきゃわかんない」 「・・・。オレにとって女は・・・。お前だけだ。一生・・・」 だぁあ。男がこんな台詞を吐くのはどうかと思うが・・・ それで望美の機嫌が治るなら・・・。 「・・・ありがとう。嬉しい。ふふ・・・」 「な。なんで笑うんだよ」 「・・・私の機嫌伺ってる将臣くんって可愛いなって思って」 「!お、お前・・・。図ったな!?」 「うふふふ・・・」 お、女って・・・。ちょっと怖いな。 でも・・・。 俺の腕の中で笑ってる望美が 愛しい・・・ そう思っちまうんだ 「・・・はぁ・・・。オレ、完璧に尻に敷かれてるって感じだな」 「そういう言い方はちょっと・・・。言い直し」 「・・・よ、ようするに。惚れてるってことだよ」 「うん。合格・・・。ふふ・・・」 ふぅ・・・。 本当の望美にはかなわねぇな。 けど・・・。 これだけはオレのほうから言わせろよな・・・? 「・・・お前こそ・・・。絶対に離さなねぇからな」 「うん・・・」 吐息が耳に掛かるほど 密着して抱きしめる。 抱きしめたいのはオレの方。 いつもいつも・・・。 「・・・好きだぜ・・・」 抱きしめて 耳元で何度も囁くさ・・・ 波の音にかき消されてもな・・・