温もりに溺れて
鳥が鳴き、空は青く、そして風はすがすがしく・・・。 あまりにも、この日々が穏やか過ぎるから今でも、夢ではないかと 不安になる。 幾度繰り返された悪夢。 冷たくなるお前を見届けてはまた・・・。時空を越え、お前に出会い、そして お前の死を阻む運命を探して・・・。 底の無い暗い暗い海底に突き落とされていく ように 苦しかった。 苦しかった。 「・・・リズ先生・・・」 ハッと我に返る。 優しいお前の声が私を呼び覚ました。 「ソファでうたた寝なんて・・・。体が冷えますよ・・・」 愛しい微笑みを浮かべ、私に温かな毛布をかけてくれる。 その温もりは・・・ お前に似て・・・。さっき見ていた悪夢の痛みを忘れさせてくれる・・・。 「・・・どうかしましたか?」 「・・・。陽の・・・匂いが・・・する・・・」 心地いい・・・。 優しい匂いがする・・・。 「・・・。お前と・・・。同じ匂いだ・・・」 愛しいお前を隣に座らせ、腕に引き寄せる・・・。 確認したい。何度も何度も確認したい。 「先生・・・?」 お前が生きていることを。お前が・・・私のそばにいることを・・・。 「お前は・・・。どうしてそんなに温かいのか・・・」 「・・・先生・・・」 お前の髪を掬い・・・。お前の頬を撫でる・・・ 「お前の髪も・・・頬も・・・。私の腕にある・・・。確かだな・・・。お前は確かに 生きているのだな・・・」 「はい・・・。生きて・・・。先生の側にずっといます・・・」 お前の瞳が私に応えてくれる・・・。 希望に満ちたこの時を。 「・・・先生・・・。先生はもう苦しまなくていいんです・・・。 私は死にません。先生が・・・大好きだから・・・」 私の胸に顔を埋めるお前が・・・お前が・・・。愛しくてたまらない。 「・・・。私はもうお前の師ではない・・・。お前も弟子でもない・・・。 名で・・・。名で呼んで・・・欲しい・・・」 お前は少し 頬を染めて・・・ 「リズ・・・。私の・・・大切な・・・リズ・・・」 私を名を・・・口にしてくれた・・・ 「・・・望美・・・。愛しい・・・。私の・・・全て・・・」 私の名を口にしてくれた その唇へ・・・私は伝えよう・・・ 「愛している・・・。望美・・・」 「リズ・・・」 目を閉じて・・・私の口付けを受けて止めてくれるお前・・・。 柔らかな唇・・・。 ああ・・・夢ではない。 お前の温もり。 体の 心の温もり全ては確かに・・・。私の内に在る・・・ 微かな不安も きえる。 溺れよう 一生・・・ お前という温もりに・・・。