数多の星と数多の愛と・・・
初夏。
星が綺麗な夜だ。
「望美・・・。い、いいのか・・・?勝手に・・・」
「いーの。いーの」
望美とリズヴァーンはこっそりと
立ち入り禁止の鎖をくぐって屋上の階段を上る。
「わー・・・!やっぱりきれーい!!」
誰も居ない屋上。
空を見上げれば満天の星。
「きゃははは!わー!天然プラネタリウム!!」
はしゃぐ望美・・・。
立ち入り禁止の札を気にしていたリズヴァーンだが
楽しそうに空を見上げる望美の姿に何も言えず・・・。
(・・・まぁ・・・いいだろう・・・。望美の笑顔が見られるなら・・・)
「はー・・・。ホントに綺麗・・・。どうせなら
ねっころがって見よう」
望美は敷物を取り出してごろん、と大の字になった。
「・・・。うわぁ。このほーがもっと綺麗。ねぇリズ先生も
おいでよ」
「お、おいでと言われても・・・」
望美のこういう突発的な行動に
リズヴァーンは時々戸惑う・・・
自分が躊躇することをサラリとやってのけてしまう・・・
「早く。きもちーんだよ」
「・・・。わ、わかった・・・」
望美ペースについつい乗ってしまう・・・
静かに横になるリズヴァーン・・・
身長が高いので敷物から足がすっぽりと出てしまう。
「ふふ。おっきいなぁ。先生・・・」
「・・・す、すまない・・・」
申し訳なさそうなリズヴァーン・・・
(体は大きいけど・・・。可愛いな、なんだか)
愛しさがじわっと沸いた・・・
そっと・・・リズヴァーンの手の甲に自分の手を重ねた。
「・・・」
リズヴァーンは一瞬、ビクっと反応したが望美の
手のぬくもりをそのまま受け入れてくれて・・・
二人は並んで・・・
空に光る星々を眺める・・・
黒い折り紙に
金色の粉をまいたようにきらきら輝いている・・・
幾千年
幾万年
変わらずに・・・
「・・・。あの星たちは・・・。知ってるかな」
「何をだ・・・?」
「・・・。私達の運命・・・。何度も運命を上書きして・・・
何度も時間を往来したこと・・・」
「・・・」
運命を何度もさかのぼっても
変えても
変わらない空の星々。
だが今は・・・
(私の愛した”運命”・・・。望美という名の星が
そばにいる・・・)
きらきらと輝くその瞳で微笑む・・・
まぶしく・・・
愛しい・・・
「沢山の星・・・。どうして落ちないんだろうね」
「さぁ・・・」
「きっと・・・。手をつないでるからだよ。こうして・・・ね」
そっと添えた手を・・・望美はしっかりと握った・・・
「ね・・・?きっとそうだよね・・・?」
「ああ・・・きっとそうだな・・・」
望美の手を・・・
リズヴァーンは力強く握り返した・・・
夜風が二人の頬を撫でる・・・
「・・・沢山の星・・・。ずっと二人で見ようね・・・。
来年も・・・再来年も・・・」
「わかっている・・。ずっと共に見よう・・・。ずっと・・・」
望美の肩を引き寄せる・・・
この温もりを手放すことなど考えられない。
(望美・・・。お前はやっと掴んだ・・・。たった一つの
星だから・・・)
数多の星だけ・・・
二人の愛もまた・・・輝き続ける・・・
たった一つの・・・
愛しい星が・・・。