お前の髪に触れて 長い長い髪。 お互いの長い髪はきっと 互いを追いかけあった時間の分だけ 長さだと感じる。 鏡の前に座って、長い髪をブラッシングする望美をじっと見つめるリズヴァーン。 艶やかさがまぶしく つい見惚れてしまう。 「リズ先生。どうかしましたか?」 「いや・・・。綺麗だと思ってな・・・。お前の・・・ 髪は・・・」 「・・・。先生の髪のほうが綺麗ですよ」 望美は少し頬をそめていった。 「私の髪など・・・。幾多の戦で汚れ、痛んでいるだけだ・・・」 「・・・そんな・・・」 「望美」 「はい」 「その・・・。お前の・・・。髪を・・・ 梳いて・・・みたい・・・のだかが・・・」 リズヴァーンは少し不器用に照れくさそうに 視線を少し逸らして言って見た・・・。 「え、せ、先生に樋でもらえるなんで・・・光栄です。 じゃ、じゃあおねがいします」 「そ、そうか・・・。ならば・・・」 ドレッサーの前に立って望美からリズヴァーンの手に ブラシが手渡される。 「・・・ふ・・・触れるぞ・・・」 (・・・///) 低い大人の男の人の声・・・ 望美の鼓動は嫌がおうにも高鳴ってしまう・・・。 ふわり・・・ (・・・やわらかい・・・。そしてよい香りだ・・・) 求めてはならぬと言い聞かせてきた想い。 今はこうして 想い人の髪に触れられるなんて・・・。 リズヴァーンは高まる気持ちを抑えて 静かにブラシにゆっくりと髪を通していく・・・。 「・・・。リズ先生・・・お上手ですね・・・美容師になれるかも」 「びようし・・・?」 「あ、えっと髪を綺麗に切ったり整えたりする仕事の名前です」 「そ、そうか・・・。ならば私は永遠にお前専属の 美容師だな・・・」 「専属・・・ですか」 「ああ。そうだ」 「・・・。嬉しいな・・・」 ”専属”というフレーズに心が躍る・・・ 静かに 静かに 不器用な大きな指の間から 望美の髪が流れていく・・・ 川の流れのように・・・。 静かな そして 優しい時間。 互いが同じ時間に生きていることを感じ合う・・・。 鏡の中で見つめあいながら・・・。 「・・・。終わったぞ・・・」 「・・・。あ、ありがとうございました・・・」 「いや・・・」 髪に触れただけじゃ なんだか 醒めない熱が お互いの胸に在る。。 「先生。今度は先生の髪を梳かさせてください」 「え・・・。いやいい・・・私の髪など・・・」 「けど私ばかりで・・・何かお礼を・・・」 「礼など・・・。礼より・・・。私はこうしていたい」 望美の腕を引き寄せ、抱き寄せる。 「せ、先生・・・」 「・・・梳くのも良いが・・・。やはり・・・ こうして直に頬で感じていた・・・」 「せ、先生・・・///」 (先生の胸の中は・・・大きいな・・・) 大人の男の人。 きっといろんな痛みを超えて 自分を探して長い長い時間を往来してきたのだろう・・・。 「先生・・・」 「ん・・・?なんだ・・・」 「明日は・・・。私が先生を抱きしめてもいいですか・・・?」 「・・・な・・・。い、いや・・・。お、お前が良いならば・・・」 「はい・・・」 抱きしめてもらうばかりじゃ 大切な人を大切に抱きしめたいのは 望美も同じ・・・。 「・・・お前のぬくもりを感じられるならば・・・。 私はどちらでも良いのだ・・・」 「先生・・・」 「・・・。髪からだけではなく・・・」 そっと望美の唇をなぞるリズヴァーン・・・。 「・・・お前を・・・。いつも・・・愛している・・・」 二人のまぶたは自然に閉じられて・・・ 唇が触れ合って・・・。 口付けは 長く長く そして優しく甘い 口付けで・・・ 激しくはなくとも・・・ 充分に想いを伝え合えて・・・。 唇が離れたあと・・・ 望美も耳元で応え返した。 「私も・・・ずっと愛しています・・・」 言の葉だけでは 伝えきれない想を・・・ 注ぎ込み合うように・・・。 長い長い時間 埋めていこう 新しくつくっていこう 未来という名の希望のために・・・。