甘くて幸せな部屋 (神子さまは朝から学校へ行かれた) 銀は寂しさでいっぱい。 時計の針が4時になったら望美が帰って来る。 それまでは望美のために銀はできることをする。 望美の部屋・・・。 いや、銀と望美の部屋だ。 望美が勉学に励む机。 銀には分からない書物が散乱している。 「・・・全くもう・・・。神子・・・いや望美様は勉強道具を出しっぱなしで・・・」 (ん?) 書物の間から”写真”といわれる印刷物が・・・ 「わ、私の写真・・・」 裏を見ると・・・ 『銀。銀の一番大切な人』 と書いてある。 「・・・///神子様・・・。私を喜ばすことが 本当にお上手なのだから・・・」 望美が故意に置いていったのかと 一瞬思った。 (自惚れかもしれないが、自惚れたい) 「神子様のために家中を綺麗にしなければ!」 現代というのは本当に便利は道具があるものだと 銀は思う。 掃除機という道具を使えば、ホコリやチリはすぐ吸い取れる。 「ん?」 掃除機の先になにかまた吸い込んでつまった。 チラシと呼ばれる紙の裏面を見た。 『銀へ。お掃除。いつもありがとう。大好きよ』 「・・・。こ、これも・・・。神子様の仕業ですか。 なんて・・・なんて銀を喜ばすものをお書きになる・・・///」 望美が銀にあてた手紙。 (掃除機なんぞに吸い込まれてたまるか!) 銀はそっと懐にしまった。 (・・・宝物だ) 「さて次!」 さらに洗濯機といわれる着物を洗う機械。 やっと使い方を覚えた。 「布団を包む布(シーツ)どうしてこんなに 皺に・・・」 ・・・理由は分かっている。 (///み、神子様があんまり美しいから昨夜は・・・) 洗濯機の前で昨晩の愛しい時間を思い出す・・・ (嗚呼・・・早く会いたい。神子様に会いたい) 想いは募るばかり ガガガガ! 「わっ。泡だらけだ・・・!」 銀の想いが強すぎるせいか洗濯機が嫉妬したように ガッタンガッタンと暴れたのだった・・・(笑) 「・・・遅いな・・・」 午後4時を過ぎた。 帰りが遅い望美が心配でたまらない銀は 居ても立ってもいられず、玄関まで出て行った。 「あ・・・」 玄関先で、見知らぬ男と望美が話している (だ、誰なんだ・・・) 望美は男と少し話した後、家の方へ歩いてきた。 「あ・・・。銀」 「お・・・。おかえりなさいませ。神子様」 「・・・。あ、ごめんね。遅くなるって連絡しておけばよかったかな・・・」 「いえ・・・。別に。私は神子様が無事に帰ってくださればそれで・・・」 ちょっとぎこちない銀の様子に望美は気がついて。 「ねぇ。やっぱり遅くなったこと、怒ってるの?」 「違います。怒ってなど・・・」 「ううん。怒ってる。ねぇ理由を聞かせて?」 「・・・。お、怒ってなど・・・」 (神子様は全てを見通されている・・・) 観念するしかないと思った。 「さ、先ほどの殿方は神子様に何を・・・」 「ああ。さっきの人ね。道を聞かれたの。 近所の病院。奥さんが産気づいたんだって。急いでたみたい」 「そ、そうだったのですか・・・。す、すみません。 愚かな邪推をしました・・・。お許しください。神子様」 銀は膝をついて謝った。 「ちょ、ちょっと。やめてよ・・・謝ることじゃないよ」 「しかし、幼稚な嫉妬をして、神子様に迷惑を・・・」 「迷惑じゃないよ。寧ろ嬉しい」 「え?」 「だって。好きな人からのやきもちなんて・・・。 嬉しいに決まってるじゃない・・・///」 望美は少し頬を染めて俯いた。 「・・・神子様・・・」 玄関先で なんともくすぐったい空気が二人の間に流れる。 「・・・と、とにかく中に入りましょ。な、なんか ここじゃあ・・・」 「ふふ。そうですね。では」 「きゃッ!?」 銀は望美をお姫様抱っこして中に入っていく。 「銀・・・!?」 「ふふ。神子様。今日は晴れて・・・。 私たちの寝床のシーツもよく乾きました」 「・・・///し、銀ったら・・・」 これから始まる二人の甘い時間。 二人の部屋へと続く廊下は 二人の幸せへのバージンロードのように想いが満ちている。 二人の幸せの扉の前で。 「神子様」 「なあに?」 「神子様が”いつか”産気づいても私はずっとおそばにおりますからね」 「・・・っ。も、もう〜///」 幸せな会話が耳打ちされて・・・ ドアを開け ・・・そして甘い甘い時間が始まった・・・。