君のハートを狙い撃ち 譲の高校の弓道場。 「はっ!!」 ドシュ! 譲が放った矢が的の真ん中に突き刺さる。 「ふぅ・・・」 正座して 息を整える譲・・・。 久しぶりの弓道部。 最近は受験勉強ばかりしていた。 (頭をすっきりさせることもたまには必要だ・・・) そう思って弓を構えるのだが 浮かぶことは・・・。 ”譲君・・・” 「・・・!」 自分の名を呼ぶ悩ましい声。 (ぼ、煩悩よ立ち去れ!!) 譲は再び瞳を閉じて正座するが・・・。 ”好き。私は譲君だけのもの・・・” 「わッ!!」 自分の腕の中で愛を呟く望美の声ばかり・・・。 「いけない!これじゃあ!!」 譲は深呼吸をして 弓をかまえた。 (・・・先輩・・・) 的に浮かぶ望美の顔・・・ (オレは早くなりたい。貴方を守れる男に・・・!) 強い想いと共に弦を引いた・・・! 「ゆっずるくーん♪」 「うわぁあっ」 甲高い声に 譲の腕の力がふにゃあっとぬけ、矢は どすっとそのまま地面に真っ直ぐに落ちて突き刺さった・・・ 「せ、せせせ先輩・・・(汗)」 「ふふ。何だか懐かしくなって寄っちゃった」 「そ、そそそそうですか」 せっかくまとまりかけた精神統一が 一気に崩れて焦る譲。 そんな譲の心を何も知らない望美は にこにこ笑顔で・・・。 (相変わらずマイペースだな(汗)) だが望美の笑顔の前では 精神統一も・・・ (崩れ去るよな・・・) 「かっこよかった」 「え?」 「暫く見てたんだ。譲君の弓道姿・・・。 惚れ惚れしちゃった」 「・・・」 (先輩。貴方はオレを溶かしにきたんですか(汗)) 望美の笑顔に 頬を染めまくる譲。 「あれ?顔、赤いよ?大丈夫?」 「だ、大丈夫です。こ、これは病気じゃないですから(汗)」 (でも恋の病の一つでもあるけれど・・・。なんて気障かな) じっと見詰め合う・・・。 「ねぇ。私もやってみたいな。教えてくれる?」 「え、ええいいですよ」 見詰めあいから解放され、ほっと息をつく譲。 (あのまま見詰め合ってたら・・・。俺の理性が吹っ飛びそうだ) 譲は弓と矢を望美に手渡した。 「先輩。とりあえず構えてみてください」 「うん・・・。えと・・・。こうかな」 ギシ・・・ 望美は弓をかまえるが・・・。 「ちょっと肩に力が入りすぎですね。もっと 楽な姿勢で・・・」 譲は望美の力む肩と腕に触れて直に指導。 肩と腕に触れられただけなのに その部分が熱く・・・。 (・・・や、やだ・・・。なんか意識しちゃう) 「それからもっと顔をまっすぐに」 くいっと望美をあごを指で上げ、 「腰を軸に・・・背筋を伸ばして・・・」 腰に手を回されて・・・。 (・・・ドキドキ止まらない) 弓より 譲が触れる場所に意識が集中して・・・。 「・・・真っ直ぐに弓をたてて矢を構えてください」 望美と腕を重ねるように ぐっと望美の手の上から矢をひく譲・・・。 (・・・くそ・・・。先輩の匂いと感触が・・・) 体を密着させて これじゃあ弓指導というより (・・・かなりやらしい”指導”に見えそうだ(汗)) 譲の五感全部で望美を感じて・・・。 「じゃ・・・。俺の合図と同時に・・・矢を離してください」 「わ、わかった・・・」 「狙いをさだめて・・・」 望美と譲は・・・ 互いを意識しあいながら・・・ 的の一点だけを 狙い定めた・・・。 「・・・今だ・・・!」 譲の声と同時に矢を放つ望美・・・。 「きゃッ」 放った矢の衝撃で一瞬よろめく望美・・・。 譲は望美をしっかりと抱きとめた。 「大丈夫ですか!?先輩」 「うん・・・。ありがとう。譲君」 しっかりと抱き留めてくれる 頼もしい腕・・・。 「・・・やっぱり・・・。譲君かっこいいよ・・・」 望美は譲の腕を ぎゅっと絡めた。 「・・・あの・・・。あんまり刺激しないでください。でないとオレ・・・」 (・・・矢みたいにオレの理性も飛びそうだから・・・) 「一緒に矢を放ったとき・・・。なんか 譲君と”ひとつ”になった気がした・・・」 「・・・ひ、ひとつ・・・///」 理性と格闘している譲にとってその意味は違う風に聞えてきたり・・・。 「あ、見て!どまんなか・・・!」 「本当だ・・・」 二人が放った矢は・・・ 真っ直ぐに的の真ん中に的中していた。 「・・・二人の息がぴったりあったからだね」 「あ、はい・・・そうですね」 やっぱり”違う意味”に聞えてくる・・・。 「・・・俺の心は・・・。先輩の矢に一発で居抜かれたみたいです・・・」 「・・・譲君・・。もう少し・・・。このままでいてもいい・・・?」 「・・・先輩が望むならいつまでも・・・」 そのまま譲は・・・ 望美を背中抱きして座り込む・・・。 ただ・・・ 抱きしめあう・・・。 二人の放った矢のように まっすぐに心の的に 届けあって・・・。 永遠に抜けることのない 心の的に・・・。