眼鏡の向こうの熱い瞳 「・・・のこちゃった」 譲が悪戯半分でつけた手錠。 その痕が望美の右手にくっきりと残っていた。 ”先輩がどこへもいかないように” 譲は本気のようだったようで、一日、ずっとつけたままだった。 (それだけ譲君の想いが強かったって事・・・。私も頑張らなくちゃ) 湯船の中で望美は手の痕をなでながら思う。 ”早く上がってきてくださいね・・・オレ・・・一時でも先輩と一緒にいたいんです” (・・・譲君たら・・・) 眼鏡越しに潤んだ瞳。 愛らしさが胸に込み上げる・・・。 (・・・早くあがろ。譲君がまってる・・・。寝床で・・・///) 望美は手ぬぐいを胸に当てて静かに風呂からあがった。 だが脱衣所に・・・ 「先輩。体、温まりましたか?」 着替えの着物を持った譲。 笑顔でたっていた。 「・・・き、きゃああッ」 「わあ。す、すいませんッ」 望美はあわててしゃがみこんで体を隠し、譲は後ろを向いた。 「ど、どうしているの!?」 「・・・い、いやあの・・・。長湯だったんで何かあったのかと心配で・・・」 「・・・だ、だからってここまで来なくても・・・」 「す、すみませんッ・・・。お、オレ・・・。一人きりの部屋じゃ 寂しくて・・・。それに・・・」 「それに・・・?」 「・・・。待ちきれなくて・・・///。興奮して・・・オレ・・・。 気がついたらここに・・・」 (譲君・・・///) 譲は頬を染めながら、少し曇ってずれた眼鏡を人差し指であげる。 「す、すぐ着替えるから・・・そ、外で待ってて」 「はい。先輩・・・。早く・・・ね」 パタン。 (あー・・・。なんか一気に熱くなってきた・・・) パタパタと手で顔を仰ぐ。 湯にあてられたのかそれとも・・・。 ”オレ・・・興奮して・・・” 「・・・って!私まで何考えてるの。ふぅッ」 望美は猛スピードで着替えて湯床を出た。 「譲君。おまたせ。待たせてごめんね」 「いえ・・・。オレの方こそ先輩に失礼なことを・・・」 「い、いいよ。気にしないで。その・・・。譲君なら 平気・・・。み、見られたって・・・」 「先輩・・・」 身をよじられせて照れる望美が可愛い。 一人置いていかれた痛みなんてすっ飛ぶぐらいに 可愛い。 「くしゅんッ」 可愛いくしゃみ。 全てに優しくしたくなる。 「・・・先輩。ちゃんと髪、ふかなかないといけませんよ・・・? ふふ」 「・・・うん///」 白い布で望美の濡れ髪をつつんでふく。 わしゃわしゃと。 くしゃくしゃと。 「それにちゃんと体も洗いましたか?」 「えっ」 「カラダも水滴がなくなるまで綺麗にしないと・・・ね」 首筋につたっていた水滴をそっと拭う・・・。 「・・・オレの大切な先輩・・・。先輩のカラダ・・・」 (か、カラダって・・・///) 「・・・まぁいいです。見えない部分はこれから俺が・・・全部 引き受けますから・・・」 (・・・見えない部分って・・・) 譲は望美の着物の襟を少しめくった 「先輩・・・。もう本当に離れたくない・・・。先輩のいない時間・・・ 寂しくて寂しくて・・・もう死にそうです・・・」 「ゆ、譲君・・・」 「・・・だからもう逃がさない・・・。先輩・・・」 力強い譲の腕の力に負け・・・ そのまま抱き上げられて・・・ そのまま寝かされて・・・ 「・・・覚悟・・・してください・・・。寝かせない位に・・・ 愛します・・・」 「・・・ゆず・・・る君・・・」 「眠らないで・・・。ずっとオレだけを見ていて・・・オレだけを・・・」 眼鏡をすっとはずして放り投げられた・・・ 望美の唇から 愛を注ぎ込む・・・。 眼鏡をはずした譲の瞳は・・・ 唇より熱く・・・ そして優しく・・・。 再会した喜びを二人は 何度も何度も確かめ合うのだった・・・。